吉村昭のレビュー一覧

  • わが心の小説家たち

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    吉村昭がこれまで影響を受け、尊敬している8人の作家達について講演してきた記録を新書にしたもの。吉村昭の小説のスタイルがどのようにつくられてきたか、興味深い内容である。ここで紹介された小説も是非読んでみたいと思った。

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    2016年01月19日
  • 逃亡

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    「逃亡」は、「戦艦武蔵」の後に書いている。吉村昭の真骨頂とも言える史実に忠実な記録文学の手法は、「逃亡」のあと「破獄」や「長英逃亡」、「桜田門外の変」で、逃げ惑う人間の内面の描写に見事に引き継がれていく。
    人間は、思いがけないことをしてしまうもの、というなんでもない所作がストーリーの中で驚愕の展開で迫ってくる。
    語られない戦時下の出来事が、まさに人間の本質として表現され、また、触れられてこなかった戦時下の闇の怖さが伝わってくる。

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    2016年10月11日
  • 磔

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    この短編集には、磔の他、三色旗、コロリ、動く牙、洋船建造が掲載されている。吉村があとがきに寄せているように、この短編集の特徴は、磔が吉村にとって、初めての歴史小説であったこと。また、この短編集までが中短編集で、これ以降は、多くの吉村記録文学を連ねた長編に移るターニングポイントなのである。短編集と言えども、これまでに読んできた歴史記録小説と向き合う姿勢は変わりなく、資料に基づき事実を丁寧で描き、さらに内面を見事に浮き立たせていく。初めての歴史記録小説とは思えないタッチである。

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    2016年10月11日
  • 総員起シ

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    総員起しは、森史朗の「作家と戦争」で紹介された小説だったので読んでみた。終戦後になって沈没した潜水艦から、死亡した当時のままの姿で発見されたというショッキングな内容が書かれていた。一貫して、吉村昭の小説に描かれている死に際の内面に迫っていく手法なだけに身に迫る怖さがある。ここには、「手首の記憶」など短編5編が掲載されているが、あっと言う間に読み終わってしまったという印象である。中には、吉村自身が「私」はという主語で論じるスタイルもあり、面白い。ストーリーの構成としては、ショッキングな場面から始まり、そこに至る事実経過や取材の場面が書かれ、最後に、タイトルともなっている出だしのキモの部分に焦点が

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    2016年10月10日
  • 蚤と爆弾

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    これまで吉村昭の小説の中に731部隊に関するものがあることを知らずにいた。この小説が世に出たのは昭和45年頃で「細菌」というタイトルだった。
    私が読んだのは4版目で今年の4月に出されたものである。私が最初に731部隊を知ったのは、森村誠一の「悪魔の飽食」(昭和58年)からだったが、その14年前に出ていたことになる。まだ敗戦の記憶が浅い頃である。文中に出てくる個人名の登場人物が少ないことからも分かるが、当時、かなり際どい題材だったに違いない。あらためて、吉村昭の記録文学の凄みを感じる。

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    2016年10月08日
  • 新装版 落日の宴 勘定奉行川路聖謨(上)

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    勘定奉行 川路聖謨の生涯にわたる話である。幕末に生を受け、半生を主に日露和親条約の取り交わしの命を完うするためにプチャーチンらと命を厭わずに懸命に交渉を重ね、幕政に尽くした人物である。その人格は高く、今の外交官の模範となる静謐さと沈着冷静な判断力と物事の先を見抜く力を持った役人であった。これまでの吉村昭の小説の中で最も影響を受けた人物の一人である。墓所は、上野池之端の大正寺にある。

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    2016年01月19日
  • 零式戦闘機

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    零戦が企画される前から終戦までを追う。零戦が作られる上でどのような苦労があったか、裏話など大変おもしろい。

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    2015年12月01日
  • 味を追う旅

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    気軽に読める、食の随筆。食べることに対する吉村さんの感覚は、大切にしなければならないものの一つかもしれません。

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    2015年10月30日
  • 光る壁画

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     吉村氏ならではのノンフィクション小説。今回は戦後、世界発の胃カメラを実現した話。オリンパスの技術者と東大医研の先生との協同研究の顛末については、かつてプロジェクトXでも取り上げられていたが、別の視点からの事実ベースの小説で、非常に引き込まれた。短い記述ながら、技術的にはまってしまい苦悩する様子がありありと浮かぶ。当時のなんでもありの風潮もあったろうが、彼らの一途な指向に驚嘆する。残念ながら今、こんなかたちで開発のできる技術者は国内には存在しえないかもしれないが、思想、発想、そして哲学は継承されうる。とても臨場感があり、今後のためにも読んでおくと良いと思えた本であった。

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    2015年10月10日
  • プリズンの満月

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    これは多くの人に読んでもらいたいなぁと。
    特に戦後の連合国の処置に夢を持っている人には。
    私の母なんかはそうなんだけど、「アメリカが助けてくれた、軍国主義者をやっつけてくれた」ってよく言うんだけど、そういうもんじゃないんだって。

    戦後70年、そういうものに目を向けるものがほとんどなく、切ない節目だった。
    だから、繰り返すんだろう。

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    2015年09月25日
  • 虹の翼

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     ライト兄弟が世界最初の飛行機を飛ばす十数年前、独自の理論を構築し”飛行器”の完成を目指した二宮忠八の生涯を描いた歴史長編。

     吉村さんの作品でやっぱりすごいなあ、と思わせるのは綿密な取材に基づいた描写です。今作でもそれがいかんなく発揮されていて、忠八の生涯はもちろん、彼の人生のターニングポイントとなった日中戦争での調剤士としての従軍体験、軍から離れ製薬業界へ飛び込む様子。そうした折々のポイントが当時の世相や社会情勢の描写と共にしっかりと書き込まれています。

     卒論をちょくちょく書き始めている自分にとって、お手本にしたくなるくらいに詳しく、それでいて簡潔な文体で書かれています。ただ調べたこ

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    2015年08月08日
  • 島抜け

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     講釈師の瑞龍は幕府を批判する講釈を読んだ廉でしょっぴかれ、島送りの沙汰が下った。大坂は開放的な街だったが、ちょうど享保の改革に当たり、見せしめみたいなものだったようだ。船で種子島に送られた。

     島の暮らしは比較的自由で、海辺で貝拾いをしたり魚釣りをしたりした。ある日一緒に預けられている罪人二人とよそ村身体訪ねてきた者と四人で釣りに行った。ちょうど丸木舟がもやってあったのでちょいと拝借し沖釣りをした。浜で釣るより各段によく釣れた。

     ところが途中で一人がこのまま島抜けしようと言い出した。宛てなく漕ぎ出したが、途中時化にも遭い十五日後に着いたところは清国の島であった。

     何とか日本行きの大

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    2015年08月12日
  • 海の史劇

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    ネタバレ

    祖国の興廃をこの一戦に賭けて、世界注視のうち に歴史が決定される。ロジェストヴェンスキー提 督が、ロシアの大艦隊をひきいて長征に向う圧倒 的な場面に始まり、連合艦隊司令長官東郷平八郎 の死で終る、名高い「日本海海戦」の劇的な全 貌。ロシア側の秘匿資料を初めて採り入れ、七カ 月に及ぶ大回航の苦心と、迎え撃つ日本側の態 度、海戦の詳細等々を克明に描いた空前の記録文 学。

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    2015年08月02日
  • 仮釈放

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    「冷い夏、熱い夏」の次に読んじゃいけなかった…

    壮絶の一言。
    本当にノンフィクションなのかと思いつつ読んだ。一部のすきもなく、流れるように落ちていく。

    罪と罰、なんて、日本人の感覚にあるのだろうか。
    神に対する罪と罰であり、日本人にあるのは恥の感覚で、そう思うと更生ってなんだろうと思ってしまう。

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    2015年07月27日
  • 冷い夏、熱い夏

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    途中で読むのを止められず、一気読みしてしまった。
    最後までガンだと告げられなかった弟さん、それでも末期がんで痛みに苦しみながら、ガンの薬を打ってくれという…

    兄にも弟にもガンを隠し通し、そして周囲に「あなたが私にガンじゃないよと言っても信用しない」とまでいわれる著者のすさまじさ。身の中から食われていく気持ちだったのではないか。
    そして当人も最後はガンになり、自ら管を抜いて死んでいったことを思うと鳥肌が立った。

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    2015年07月26日
  • アメリカ彦蔵

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    吉村明に「漂流」という作品があるけど、
    こちらも漂流もの。

    江戸時代末期、廻船が難破し、流され、アメリカの船に救助され、アメリカに上陸し・・・、乗組員の彦蔵が数奇な運面をたどる、という内容。

    当時の日本の船は、嵐に弱く、多くの船が遭難したようだ。
    遭難して生き残った人々の記録が多くあるということは、助からなかった人々はそれに数倍したんだろうな。

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    2015年07月20日
  • ポーツマスの旗

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    日本の危機的状況を救った影のヒーローなのに、当時の国民の理解を全く得られなかった不運の主人公である。
    彼の歴史的成果や苦労が手に取るように分かる良書なので、坂の上の雲とセットで読むべきだと思う。

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    2015年06月14日
  • 星への旅

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    吉村昭の初期作品はずいぶん雰囲気が違うんですね。シュールな世界なのですが、「モノ」と「人の死」についてだけはひどく生々しく、即物的でなんとも言えない読後感を残します。

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    2015年05月17日
  • 蚤と爆弾

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    「時代の狂気」というのか、「狂気の時代」というのか、恐るべき企みに「大変に優秀な科学者」が熱中していく様が、何やら怖い…

    “曾根二郎”とは、実在の人物をモデルとはしているが、飽くまでも「小説の主人公」である。そして本作は、「具体的な個人名」で語られる劇中人物は“曾根二郎”のみという印象である…そういう文面の雰囲気が、「時代の狂気」とも「狂気の時代」とも言えそうな、「或いは、今からそういうような事態に?」という“迫力”を醸し出している…

    今年は戦後70年…こうした「戦中の秘話」に類する題材に触れてみる折なのかもしれない…

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    2015年04月27日
  • 総員起シ

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    戦争にまつわる実話を基にした5つの短編小説。

     もう、ずーっと読みたくて、古本で探しても見つからず1年。我慢できずに新刊をお取り寄せしました。読んで良かったです。戦争の悲惨さ、当時の人の思い、傷跡…。あくまで、「実話を元にした小説」なのでしょうけれど、Wikipediaなんかで調べただけではイメージ出来ないいろいろな情景が胸に迫ってきます。とても読みやすい小説で、引きこまれました。

    『海の柩』
     北海道で大量の水死体がある村に流れ着いた。その中に、手・腕のない死体が多く紛れていた。
    『手首の記憶』
     南樺太で起きた、看護師の集団自決。数名の看護師以外は一命を取り留めたが、彼女たちがその後背

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    2015年03月07日