吉村昭のレビュー一覧

  • ニコライ遭難

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    ”開花”を迎えようとしていた”まことに小さな国”。北方の大国の皇子来日は国を挙げての大イベント。長崎、鹿児島、京都と旅程は順調に進むが、事件は大津で起きてしまった。国家存亡の危機の騒ぎとなる中、法を捻じ曲げてでも死刑を適用すべきと圧力をかける行政。だが、司法は筋を通す。その後、賠償も請求されず、事は平穏に治まる。治外法権の解消。この決断も”開花”の一躍を担った。…頂点を極めたバブル。その崩壊後の衰退が止まらないこの国。モリカケ桜に裏金問題。忖度を思わせる数々の司法判断。いつのまにか筋が通らなくなっている。

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    2024年10月12日
  • 漂流

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    やめられなくて一気読み!

    無線も海図もなかったころの遭難は
    死と直結してたんですね。

    普通の若者、長平が
    いつの間にか遭難者たちのリーダーのような存在になる頼もしさも。

    いつも念仏を唱えている姿が印象的でした。

    高井有一さんの解説も読ませる。

    吉村昭先生の作品、
    やっぱり惹かれます。



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    2024年10月03日
  • 新装版 白い航跡(上)

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    たった200年以内の間でここまで医療が変わったのかと驚いた。移り変わりがこんなにも激しい中、医師いるのは今よりも大変だったんじゃないかなと思った。何歳になっても勉学に励み続けている姿、日本だけでなく海外でも1人の医師として大きく貢献しているのが本当にすごいと思った。
    漢方医、蘭学医、イギリス医学、ドイツ医学と日本の医学が良くなるようにと移り変わったのがすごい
    海外で日本人として恥じぬように勉学に励む姿、そして結果しっかりと残すところも見習うべきところがあると思った

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    2024年09月27日
  • 破船

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    他作品でもそうだが、なぜここまで細かく描写できるのか。200世帯弱の小さな集落での独特な文化に読みながらどっぷり浸かってしまい、早くお船様とお父さんが来るように願ってしまった。

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    2024年09月25日
  • 高熱隧道

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    トンネル工事の過酷さを知るだけでなく、自然を相手にするインフラ工事の難しさに想像を膨らませることができた。「死ぬ気で働く」とは言葉で言うのは簡単だが、本当の生死のはざまで働く現場監督や技師たちの想いや生き様に感銘を受けた。
    私事だか、父がゼネコンで働き、これまで国内外のトンネル工事やダム建設、道路工事などのプロジェクトに関わっている背中を見てきたが、改めて貴いことだと感じた。

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    2024年09月16日
  • 大黒屋光太夫(下)

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    『ロシアの風土は、自分たちの体になじめず、生きる力を奪い取る。そのために出来るかぎりの努力をしてきた』

     やはり、一つの山場は三度にわたる帰国願いだろうと思われた、それはこれまでロシアに漂流してきた日本人が誰一人として帰国できなかったという事実が、何よりも「大黒屋光太夫」らの心を重くさせながらも、温暖な伊勢育ちの彼らにしたら、ロシアの寒さは尋常でないことを悉く肌で痛感させられてと、まるで板挟みのような苦行を長いこと味わい続けた末の帰国不許可には、人間としての当然の権利を剥奪するものだと、激しい怒りに駆られるのも肯けるものがあった。

     また、そんな状況が死に別れた仲間たちだけでなく、生き別れ

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    2024年09月15日
  • 東京の下町

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    戦前の下町(日暮里/千駄木あたり)の風景。その時代の皮膚感を理解するに最適な書。昔は汚く不衛生でろくでも無いのを実感する。戦後昭和レトロ好き女子を馬鹿にする方は、戦前昭和好きのオジサン(お姉さん)たちをタコ殴りにしていただきたい。

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    2024年09月02日
  • ポーツマスの旗

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    日露戦争は日本海海戦で終結した訳ではなく、ポーツマス条約締結交渉が最後の戦い。世界中の諜報網、各国の思惑、世界のマスコミを相手にしたもう一つの戦い。国内世論と現実との乖離。真実を国内に明らかにすると露や世界との交渉が不利になるジレンマ。国内不満の皺寄せは最後は政治エリートが負うという覚悟。このような覚悟を持った政治家の歴史記録でした。

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    2024年08月30日
  • 関東大震災

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    著者初読み。歴史ドキュメント。「関東大震災」の存在は知っていましたが、その内実を読んだのは初めて。読むのが辛い場面多々ありますが、知っておくべき。特に流説、デマの類い。危険性は今も同じ。朝鮮人襲撃がこんなにも酷いものだったとは。日本人の「負い目」が恐怖へと変わったとの著者の指摘。なるほど。また、悲惨な状況は日頃規律正しくても人心荒廃させていくという真実。今こそ読むべき本だと思いました。想像すると怖いけど。

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    2024年08月24日
  • 破獄

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    昭和の脱獄王をモデルにしたフィクション大作。網走刑務所を訪れた際に、ついでだからと網走市の本屋で購入。
    四度の脱獄をした犯罪者とそれを防ごうと奮闘する看守の攻防に戦時中、戦後という社会情勢が複雑に絡み合う。社会面と人間ドラマ、孤独と反発、そして人間を更生に導く人間ドラマ。緻密な取材と文献資料を読み込み、構成したのだと感じずにはいられない作品だった。読後は時代の大きなうねりに巻き込まれた興奮と虚無感、感動が一度に押し寄せた。中々に素晴らしい作品でした。

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    2024年08月22日
  • 漂流

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    ネタバレ

    自分だったら、長平のように心身の健康を保つことはできないとおもう。あんな状況になったら、とても正常ではいられない。

    季節のめぐりに応じて、アホウドリが飛び去っては戻ってきたり、飛魚が飛んだり、嵐がきたりと、同じ描写が何度も繰り返される。もういいよと思うのだが、それが自然というものだと読んでいて気づく。読んでいるだけでこれなのだから、実際に12年も島で過ごした長平にとっては、さらにつらいものだっただろう。

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    2024年08月12日
  • 深海の使者

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    潜水艦の事は知らなかった。
    2ヶ月以上艦内に篭ったまま作戦を続けるなど 
    敵がいて危険な時は艦内の酸素が無くなるギリギリ
    まで潜るなど大変な苦労だと思った。
    無謀と思われる作戦も潜水艦の場合は
    亡くなっていく兵隊は逃げ場が無く全滅、
    今も戦争はあるが悲しい事です。

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    2024年08月11日
  • 新装版 赤い人

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    樺戸集治監の歴史が非常に淡々と語られていく。客観的に淡々と進むのだが、登場人物に妙に熱気がある。このあたりの文章の上手さが吉村さんならではなのだろう。解説を読むまで、囚人がほぼ言葉を発していないことも頭から飛んでいた。
    今の刑務所事情を知っていると、ここでおこなわれていることは人権侵害にほかならず、そりゃあ脱獄も反乱もおこるよな、という感じ。
    戊辰戦争、日清日露戦争、天皇陛下崩御と恩赦などの外的要因が集治監に影響していく様は時代を感じさせられるとともに、監獄というのはそれ単体で動くものでは無いことを実感する。
    北海道がこうして開拓されていったという、歴史の一部を学べた。

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    2024年08月07日
  • 漂流

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    江戸時代にシケにあい無人島に流れ着いた男が息抜き、島を脱出するまでの壮絶な生き様が描かれたドキュメンタリー小説。そう、これは事実であることに驚く。
    長平の「なるようにしかならぬのだ、飢えるか生きながらえるか、また船が沖をよぎって助けてくれるか否かは、仏のみ心のままで、自分がどう願っても叶えられるものではない」「これからは、ただ念仏をとなえ、あらゆる欲望を捨て、日々達者に暮らしてゆこうと思った」は印象に残るセリフだった。

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    2024年08月04日
  • 彰義隊

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    鶯谷駅から徒歩10分。現在の地図で見るとさほど広くない。当時の寛永寺のほとんどは上野公園となっている。上野戦争は慶応4年の旧暦5月15日。1日だけで決着がつき、山主の輪王寺宮は逃亡生活に入った。天皇の叔父である皇族が幕府側に立ち朝廷の敵になる。江戸町民への思い。後ろにいる薩長だけの好きなようにさせてはいけない。奥羽列藩同盟は早期に瓦解。無血開城。敗者に対する寛大な措置。比較的穏便に進行したという明治の政権交代。欧米列強の脅威。日本が早期に一つにならなければいけない。そのためにもささやかな抵抗は必要だった。

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    2024年07月13日
  • 高熱隧道

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    240712021

    人が自然に向き合い、どう生きるのか。そして、人は人とどうつながっているのか。時代がその関係を形作っている。

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    2024年07月12日
  • ポーツマスの旗

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    小村寿太郎のキャラクターも、ポーツマス条約の交渉の実情も、ほとんど何も知らなかったので読んでよかった。

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    2024年06月29日
  • 闇を裂く道

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    工学と社会の授業の中でおもしろいって言ってたから読んでみた。丹那トンネルの工事についての話だったかが、現場の緊張感などの雰囲気が文字に起こされていて臨場感を持って楽しめた。周囲の住民の心情の変化していくさまが、人間性に溢れていて、読んでいて非常に苦しかった。全体的に面白かったので、また読みたい。

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    2024年06月16日
  • 吉村昭の平家物語

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    原典を読む自信はないけど、内容は知りたい、とある舞台を見に行って思ったので読んでみた。教科書ではほんの一部しか出てこなかったし、話が繋がらなかったけど、一通りの流れを理解するには読みやすくてよかった。

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    2024年06月12日
  • 漂流

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    江戸時代の話かーと思ったものの、めちゃくちゃすんなりと読めてしまった。あらすじが完全にネタバレだけど、史実(?)ならいいのかな。
    無人島でサバイバルする船員の絶望と希望が繰り返される記述が、地に足のついた表現で、ぜんぶ想像できる。気力をなくして洞穴で寝たきりになる者もいれば、生きていくために目標を作る者など人により生き方が異なるのも面白い。
    これを書くための調査や時代考証は大変だっただろうなあ。

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    2024年05月28日