吉村昭のレビュー一覧

  • 新装版 間宮林蔵

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    間宮海峡(タタール海峡)の名で知られる、間宮林蔵の知られざる生涯を描いた小説。前半はロシアの脅威から蝦夷地をはじめとした北方の防御を強める幕府の意向を受け、樺太からさらに海を渡ってアムール河口付近も探査するなど、冒険家としての未踏地帯を踏破していくサバイバル活劇となっている。後半は幕府の隠密として各藩の内情を探るといった動きが増えてきており、農家出身ながら幕府や体制維持に多大なる貢献を果たした人物である。

    間宮林蔵の才能は、会うべき人と出会いその人々の資質や想いを着実に受け継いで事を為すところにある。間宮林蔵の資質を最初に見抜き幕府の役人に取り立てた村上島之丞、測量の技術を惜しみなく伝え貴重な羅針盤を与えた伊能忠敬、ともに樺太を踏破して島であることを確認した松田伝十郎、そして恐らくは厳しい北の地で生きていく術を教えた名もなきアイヌの人々など、多くの師と巡り合った。

    その強靭な肉体と任務に忠実な姿勢、何よりどんな場所からも生還するサバイバル能力は幕府にとって好都合だったわけで、後半生は開国や尊王攘夷といった各藩の動きの間でスパイとして活躍する。その動きの中からシーボルトによって間宮林蔵の名が国際的に知られるようになり、日本人で唯一世界地図上に名を残す人物となったのである。

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    2025年03月09日
  • 新装版 白い航跡(上)

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    高木兼寛の伝記。兼寛は薩摩の軍医として戊辰戦争奥羽出兵に従軍しそこで蘭医関寛斎の治療を目の当たりにし自身の非力さと漢方の限界に気づく。戊辰戦争後鹿児島に帰り西洋医学を1からしっかり学ぶ決心をし師である石神良策の推薦で開成所洋学局に入学する。その頃中央政府では今後の日本の医学をドイツ式にするかイギリス式にするかで意見が割れ相良知安らにより当時世界で最も進歩的だったドイツ式を採用することになった。それにより内々でポジションが確保されていたイギリス医師ウィルソンがお役御免となり西郷隆盛、大久保利通らの画策で鹿児島へと派遣され兼寛はウィルソンから西洋医学について多くを学ぶ。その後石神の頼みもあり兼寛は海軍の軍医として東京へ出てその後イギリスへと留学し成績優秀者として多くの賞を取る。
    この時代の医学者の伝記はよく読むが皆勉強への意欲が尋常ではないな。学べることへの感謝が根底にあって学べるものはすべて学ぶ姿勢は見習わないといけない。

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    2025年03月08日
  • 雪の花

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    福井藩の町医である笠原良作が、種痘を用いて天然痘と戦った生涯について描かれている作品。松坂桃李主演で映画化されているので、手に取ってみた。

    コロナ禍を経て、現代人にも身近に感じるストーリー。
    また、昔から改革を行う人物には、変化を好まぬ気質の人間からの邪魔が入るということ。そして、人のために奔走する人物には、最後には天が味方するということが書かれていた。

    『世のため』という大義と志があれば、困難に当たっても、最後まで諦めぬことが重要である。

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    2025年03月03日
  • 三陸海岸大津波

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    三陸大津波の文献を丁寧に紐解いた文書。311前に発刊されているため、これには触れられていない。
    昔から三陸は大津波に見舞われたことは知っていましたが、実際見ると重くなりますね。小学生に津波発生前後の作文を書かせたのは貴重な証言になっているけど記憶が鮮明なうちに書くのもきつかっただろうな、とも思えます。

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    2025年02月22日
  • 新装版 赤い人

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    良本。日本史では学べない史実。素晴らしい史実本だが、これが実際に日本で起きたことかと絶望的な想いで読み進めた。

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    2025年02月18日
  • 敵討

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    ▼久しぶりに吉村昭さんを読みました。相変わらず、地味で硬派でコリコリしていて、エンタメにイキきらない独特の語り口が一種オモシロイ。森鴎外を読んでいる気分にちょっとなります。

    ▼確か、江戸時代の(明治大正もあった)、「かたきうち」の実話を歴史小説として描いていらっしゃる。そこではエンタメ性やヒロイズムは徹底的に排除されています。実にハードボイルド。ひとをころす、というしんどい肉体作業。長年かけて敵討ちをする精神的疲弊感。などなどがビシビシと容赦なく描かれて。それでいて、ちゃんと小説になっている。面白く読ませる。独特の背筋の伸びる持ち味、悪くないです。

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    2025年02月15日
  • 新装版 赤い人

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    「豊かに実れる石狩の野」が人権度外視の囚人労働により切り拓かれる過程を淡々と描写する。舞台となる町の町史を参照しており、特に札幌圏に住む高校生以上の人間への歴史教材としても秀逸だと思う。
    本筋ではないが、この作品で語られる積雪期の長さに僅か1世紀程度の気候変動の影を感じずにはいられなかった。

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    2025年02月10日
  • 雪の花

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    映画に、忘れられない台詞がたくさんあったので原作を読みたくなった。
    驚いたのは、脚本によって、かなり色彩が異なった作品になっていたのだと感じられたこと。
    どちらが良い、ということではなく、映画の力、その原点になった笠原良策という人の辛抱強さ、そして吉村昭さんが詳細に調べて小説にしなければ、ほとんどの人が知らずに終わっていたかもしれない、ということに驚いた。
    福井出身の津村節子さんの夫であるからか、福井藩を責めるような記述がほとんどないが、福井出身者としては「嫉妬」という言葉で全てを表しているように感じられた。
    天然痘が撲滅されてから久しく、福井医大(福井大医学部)の同窓会名に名前を遺していても、卒業生さえ全てが知って居る訳では無かったよう。
    「嫉妬」などが、より良い暮らしや発展の妨げになることが無いように、という戒めになって欲しい作品である。
    笠原白翁の辛抱強さ、誇り高く人々を守ろうとした精神こそが「越前らしさ」と胸を張れるように。

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    2025年02月07日
  • 冷い夏、熱い夏

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    作者自身の親兄弟のがん実体験であるので、がん末期の過酷さと看病する周りの疲弊が詳細に書かれている。
    当時、がん告知を本人にしないのが普通であったのを思うと、周りの人のストレスは相当だっただろう。
    作者の体調が終始悪いのが心配であった、そんな中仕事と両立しきったので、弟への愛情が大きかったのが分かる。

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    2025年02月01日
  • 夜明けの雷鳴 医師 高松凌雲

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    幕末の医師高松凌雲はパリでの最新医術の取得で戊辰戦争、東京の大洪水で負傷、被災した多くの人々を救ったことは、徳川への恩返しであり幕府側で戦死した凌雲の兄弟含め勇気を持って意志を貫いた抜いた事は人間として素晴らしい人だったと感銘する。また敵である薩摩藩士村橋氏、池田氏の姿勢も病人、負傷者には危害を加えず薬、食料などで支援した事は人間の道徳さの高さに感動する。文中での言葉「世の儚さを思ってさすらいの旅に出て客死した」(戊辰戦争での人間同士の悲惨な死闘の有り様を経験し孤独死した村橋への言葉)

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    2025年01月29日
  • 関東大震災

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    本所被服廠跡、二万四百三十坪余の広大な避難地で起こった悲劇。三万八千名の死者、多くの大八車に乗った家財等へ四方から火が襲いかかり引火。さらに思いがけぬ大旋風が巻き起こる。全東京市の死者の55%強に達する。大災害を克明に描く大作。

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    2025年01月23日
  • 新装版 赤い人

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    購入済み

    間違いなく読んでる

    ゴールデンカムイ、巻末にはアイヌ関連の文献しか載せていないが、この本は間違いなく読んでる。
    北海道の住民は読むべきでしょうね。
    お好みで。

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    2025年01月22日
  • 新装版 海も暮れきる

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    新年早々、クズ男に出会ってしまった。
    男の名は尾崎放哉。
    俳人。
    一高から東大、大手保険会社に就職。役職に付く。
    エリート。
    私生活が破綻。酒癖は悪い。友人知人に金借りまくる。
    奥さんには一緒に死んでくれと言う。
    クズっぷりに付き合いきれない。

    最後まで付き合った。
    小豆島へ渡り寺男として庵で暮らし友人知人に迷惑をかけながら結核で死んだ放哉。
    海の波の音とお遍路の鈴の音が心に残る。
    別れた最愛の奥さんが来てくれて良かったねぇ。
    「こんなよい月を一人で見て寝る」
    人格的にアレだからこそ心に響く俳句が読めたのだろう

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    2025年01月18日
  • 関東大震災

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    日本人にとっても不幸な災害であったが、それ以上に異常状態にあった人々の朝鮮人に対する行いはすさまじい。かくも人は簡単に理性を失うものだとつくづく思う。

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    2025年01月13日
  • 深海の使者

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    太平洋戦争開戦直後に、帝国海軍はインド洋にて様々な軍事作戦行動を敢行したようです(コロンボ空襲、マダガスカル島攻撃、インド洋での通商破壊作戦等)。その中の一隻(潜水艦)が、インド洋から喜望峰を廻り(悪魔の南緯40度を超え)、大西洋に出てドイツ軍の軍港を目指し、無事に到達をしたという。帰りも英軍等の追跡を躱して大西洋を南下、喜望峰を廻り(再び悪魔の南緯40度を超え)、無事にマレーシアのペナンに戻っている(その後、事情を知らない大本営命令によりシンガポールに回航され、機雷に触れ沈没)。戦争中に五隻の潜水艦が日本(呉)から欧州を目指し、3隻が無事に欧州に到達、そして呉に無事に戻った潜水艦は1隻あるという(様々情報、機密物資、密命を帯びた士官等を満載しての長距離移動だった様子)。内にはエアコン無く、シャワーも無く、食料等の補給も無い中で、アフリカを廻り欧州へ、そして、欧州から日本へという航海を無事に果たした艦長と乗組員たちの物語であります。インド独立の闘士で有名なチャンドラ・ボーズは、欧州からインド洋までドイツの潜水艦に乗船、インド洋上で日本の潜水艦に乗り継いで日本にやってきた由。どうやってインド洋の真ん中で、二隻の日独の潜水艦は会合していたのか等、そんな知られざる事実を掘り起こした吉村昭の取材力に、☆四つです。

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    2024年12月26日
  • 天に遊ぶ

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    見合いの席、美しくつつましい女性に男は魅せられた。ふたりの交際をあたたかく見守る周囲をよそに、男は彼女との結婚に踏みきれない胸中を語りはじめる。男は、独り暮らしの彼女の居宅に招かれたのだった。しかし、そこで彼が目撃したものは……(「同居」)。日常生活の劇的な一瞬を切り取ることで、言葉には出来ない微妙な人間心理を浮き彫りにする、まさに名人芸の掌編小説21編。(裏表紙)

    小説だけじゃなく、著者の取材紀行や過去の話など、わりとヴァラエティに富んでいる短編集。
    久しぶりに読んだけど、やっぱり面白い。未読の諸々を探したくなってきた。

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    2024年12月23日
  • 高熱隧道

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    ネタバレ

    圧倒する自然と人間との戦いの記録。
    ダイナマイトすら自然発火で爆発してしまう高熱な環境と、最後の人間の持つ冷たいまでの感情の余韻がすごかった。

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    2024年12月22日
  • 仮釈放

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    思ったより面白かった。
    前半は心理描写もそこそこにさくさく話が進んでいくので、薄っぺらくない??と思っていたが、具体的に自身の犯行を振り返るシーンが出てきてからは深みが出てきて面白かった。
    やはり、自分の犯した罪を心から悔いて反省するというのは、人間にとって難しいことなのだと思う。
    なのに主人公は抑制的で振る舞いも模範的だから、周りは(判決も!)「こいつはちゃんと反省している」と思いこんでいるのが興味深い。
    そしてそのすれ違いが悲劇を招くというのは、「罪を償う」ことをめぐる本質をついているような気がする。

    人を殺したときが逆上ではなく、逆に「感情というものがすべて欠落していた」「得体の知れぬなにかに操られているように、意志というものは全く存在していなかった」状態なのは、とても興味深い。
    同時に、犯行時は「目の前が朱の色だった」というのはどういう感覚なのか、全然ぴんとはこないが変に論理立っているよりかえって説得力がある。
    なんとなく、この主人公の場合は根底に女性蔑視があるように感じる。

    保護観察中の人がどのように保護司と関わり合いながら社会で暮らしていくのかについても理解が深まった。
    保護司、これだけの仕事を無償でやっているの改めて凄すぎる。どう考えてもきちんと対価が支払われるべき…。

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    2024年12月14日
  • 三陸海岸大津波

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    明治29年と昭和8年に三陸沖大震災が起きている事が、はっきりと理解できた。時が過ぎると、人は同じ過ちを起こす事も理解できた。

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    2024年12月14日
  • 敵討

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    「ぜひ読んでもらいたい。」と貸してもらうが、時代ものは慣れていないので少し読めない気もしているが、チャレンジして読んでみよっと。

    最初は、ただ慣れない時代小説に苦戦。
    無になって読んでみようと、必要以上に理解することを諦めて読んでみた。
    淡々と事実が書き込まれているのに、その事実が辛い。
    敵討…
    そのシステム?が侍魂が、恐ろしいとおもってしまう。
    時代によって価値観ざにが全然違うんだなーと、読み終わってから、なんとも、いえない気持ちになった。

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    2025年07月10日