吉村昭のレビュー一覧

  • 闇を裂く道

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    東京から新大阪への2時間半の旅。首都圏には三島から通う人もいる。そのとき潜る隧道がある…両端から掘り始めて行き会うのに16年。それぞれの堀口での崩落事故。奪われた坑夫の尊い命。作業を妨げる湧水の一方、下流の町での水枯れ。陳情から抗議に変わる。一触即発を避け、何とか得られた補償。…世紀の難工事、丹那トンネル。67名の殉職者。二度と戻らない水田とわさび田。多大な犠牲を払って得た教訓。地質調査や掘削技術の発展。反対を押し切っても成せば成るの成功体験。…リニア、万博、原子力発電。変な風には活かされて欲しくない。

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    2023年12月29日
  • 蚤と爆弾

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    第二次世界大戦中、満州で行われていた捕虜を使った細菌の人体実験や戦争で使用された細菌兵器の製造などが行われてたとされる731部隊(関東軍防疫給水部)について描かれている。京都大学医学部出身の曾根二郎(人物はフィクション)は細菌学者として細菌兵器の開発を満州にて行う。コレラやチフスなどの菌を蚤を使って兵器化し実際に寧波などで使用された。戦時中という倫理観が破綻した状況では人体実験を行うことにさえ正義が掲げられてしまうのはとても恐ろしいことだ。でも戦時中のこういう実験によって科学や医学が進歩している側面もあるんだよな。

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    2023年12月21日
  • 光る壁画

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    胃カメラを作り出すために奮闘する菊男、宇治、杉浦の奮闘が描かれている。宇治と杉浦は実際の人物と同じで菊男は深海氏をモデルとしているそう。今までにないものを作ることの大変さ、それに伴う家庭の問題とかが描かれている。戦後間もないのに技師として開発に携わる菊男の凄さに驚かさせた。話自体はテンポよくて読みやすかったが開発中の挫折がそこまで悲観してない感じがなんか気になった。日本人が開発したって凄いことよ。

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    2023年12月18日
  • 漂流

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    窮地に立たされた人の気持ちと、生き抜くための知恵。その知恵は、多くの事を知っていないとひらめかないものなんだなと思った。

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    2023年12月12日
  • 虹の翼

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    「お前が乗って空を飛ぶことができたら話を聞く」。それを実現するための相談であるのに...。時は明治。製薬業界で立身出世を果たした二宮忠八。陸軍時代は薬剤官を勤めながら”飛行器”を研究。類まれな才能で原理を発見。独力での開発は限界。上申が却下され、日本は航空機発祥の地にはならなかった。その言葉は今ならパワハラに当たるか。いや、今にも通じる何かがある。再び沈み始めたこの国自身が”虐め”を受けているようにも感じる。再浮上の答えは出ている。聞く耳持たない、理解しようとしない。その遺伝子がどこか受け継がれている。

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    2023年12月06日
  • 大黒屋光太夫(下)

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    なんで読もうと思ったか忘れたけどおろしや国酔夢譚(観てないけど)で有名なロシアまで漂流して皇帝にまで謁見した大黒屋光太夫の話。数奇な運命に驚くし、当時の日本人から見た先進国ロシアの姿がとても興味深かった。吉村昭が凄いのは巷で知られてる光太夫からの聞き書き以外にも同行してた磯吉の聞き書きも発掘して多角的に捉えて肉付けしてるところ。ロシア娘とのロマンスは流石にフィクションかと思ったら事実みたいで驚いた。面白かった。しかし、作中で光太夫が権利権利と帰国したがるんだけど、当時の日本人に権利などと言う意識があったのか?とそこはとても気になった。

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    2023年11月16日
  • 戦艦武蔵

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    巨大戦艦時代が終焉をむかえる中、最後の巨大戦艦になるのかな。
    宝の持ち腐れみたいに、機密にしていた戦艦やけど、いざ、使う時には、もう負け戦確定的…
    何か、悲しさ満点やな。

    こんな巨大なもの作るのには、その機材を運ぶのも大変で、巨砲運ぶ為に、運ぶ船作らなあかんとか…
    巨大戦艦建設の最大の難関は、進水なんか…

    武蔵の建造から、沈むまでの話やけど、ほとんどは、戦いまでの話が中心。

    実際に、もう時代は、戦闘機中心の時代に移行して、不沈艦と歌われた武蔵建造の帝国海軍の夢と野心は…
    何か、神話が一人歩きしてる感じ。

    その神話が崩れた時、武蔵本体の運命は知らんけど、乗組員の運命が悲惨…

    神話という

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    2023年11月14日
  • 破獄

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    戦前から戦後にかけて4回に渡り破獄を繰り返した無期刑囚佐久間清太郎の物語。ゴールデンカムイの白石のモデルである白鳥由栄がモデルと思われる。青森、秋田、網走、札幌の監獄をそれぞれ奇想天外な方法で脱獄をする。方法もすごいが最もすごいのは看守たちの心理をうまく読み取り手玉に取って行動していたこと。戦争の時代背景も描かれており、戦時中の監獄がどのようなものなのかも描かれており面白かった。戦争が進むにつれ食糧が不足していき栄養不足で死ぬ囚人が増えてい様を読むと戦争なんてするもんじゃないなと思う。

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    2023年11月12日
  • 破船

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    一人前の漁師/大人になるという自覚が芽生え始めた少年が主人公。出稼ぎ(身売り)により父が不在の三年間を描く物語。

    読み進めて早い段階から、自然現象に左右される寒村という共同体の、心細さと危うさが重くのしかかり息苦しさが続く。それでも、主人公が徐々に成長して生活は安定に向かうのかと思った矢先、ついにお舟様が到来し、寒村の日常は狂い始め、あまりにも悲劇的で無情な幕引きへ。

    村人の自死シーンでサラッとギョッとすることが書いてあったり、村人達の犯す大罪がテキパキ機械的に進んだり、文体/描写はかなり淡々としていて、だからこそ抵抗できない暴力の怖さ不穏さを強く感じた。一方で、クライマックスの母の健気な

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    2023年11月10日
  • 海の祭礼

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    先日、「ブラタモリ•利尻島」を見ていたら、ラナルド•マクドナルド(1824〜1894)というアメリカ人の記念碑があるということが紹介されていた。何処かで聞いたような…と思っていたら、この作品でした。

    ネイティブアメリカンの血を受けた彼は、日本に興味を持って幕末の1848年に利尻島に単身密入国します。長崎で幽囚の身となりますが、長崎通詞だった森山栄之助(1820〜1871)らに英語を教授します。物語は、森山栄之助がその後関わっていく幕末の外交交渉史を俯瞰的に描いていきます。一般的に、薩摩•長州ら新政府側からの視点で描かれる事が多い『幕末史』を、幕府側の外交下役だった一通詞の視点で見ることはとて

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    2023年11月05日
  • 三陸海岸大津波

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    明治から昭和にかけ三陸海岸を襲った三度の大津波の記録小説。
    著者の綿密な取材力が伺え、淡々とした描写が史実の有り様を際立たせているように感じました。
    初版が1970年とのこと。3.11を知る今、「自然は人間の想像をはるかに超える姿をみせる」という一文は痛切でした。

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    2023年10月31日
  • 冬の鷹

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    あなたは、「『解体新書』を翻訳したのは誰か」と聞かれたら何と答えますか?

    小学六年生社会科のテストなら
    『杉田玄白』
    と答えていれば丸になるかな。
    でも、実際の翻訳作業はほぼ全て
    『前野良沢』
    が手掛けたことまでは学習しません。

    本書はその前野良沢と杉田玄白を中心とした歴史小説です。オランダ語の習得に全身全霊を捧げようと志す前野良沢は、ほとんど暗号解読のような状態で翻訳を成し遂げます。しかし自分の名を著作に刻むことはよしとしませんでした。一方で用意周到に出版の準備を進めた杉田玄白は、後に医家として大成し医学界の頂点を極めます。
    吉村昭さんの小説は、対照的な二人を軸とするも、平賀源内や高山彦

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    2023年10月23日
  • 高熱隧道

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    頭の中の半分では感動.ただし残りの半分では,やはりどうしても嫌悪感を拭い去れない.人を人とも思わず,半ば気合いで乗り切ろうとする工程.当時から北陸の人たちは発電の犠牲になってきたんだなあ.

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    2023年10月20日
  • 関東大震災

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    NHKスペシャルで関東大震災の特集を放送した。
    積読に成っていた本書を読みながら、テレビで見た映像を思い出した。
    火災旋風により、人や物が宙を舞うという。まさに地獄絵図だ。
    持ち出した火災道具に火が付き、災害を増加させる。江戸時代には守られていた火災時の教訓が、大正になって守られず、むしろ後退していたとは、愚かなことだ。
    朝鮮人への根拠の無い迫害行動など、生々しく綴られていて、憤りを感じた。
    パニックを起こした人々が集団心理により、簡単に狂暴化する。
    幸い、東北大地震ではこのような事が起きなかった。過去の教訓が生かされたのだろう。
    2035年前後には東北大地震の何倍もの威力の南海トラフ地震が、

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    2023年10月12日
  • 破獄

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    昭和の脱獄王の話。
    佐久間は人情に厚く、自分を人として扱ってくれた人に対しては礼を持って接するが、そうでないと感情を爆発させ破獄にはしる。
    国家や社会に異常事態が発生した際に、囚人たちが懲役で軍務や労働力として関わっていたことを初めて知った。

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    2023年10月04日
  • 新装版 赤い人

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    あらすじを見て、囚人を北海道開拓に従事させていたなんてまったく知らなかった!と手に取った。
    囚人たちが、監獄やいまも残る国道整備に貢献したこと、危険を伴う炭鉱や硫黄山での作業に従事させられていたことを知った。
    (硫黄山での作業はゴールデンカムイにも出てきたぞ、と思いながら読んだ。)

    囚人を北海道開拓という困難な労役に充てるだけでも驚くけど、斃死しても構わない、という姿勢だったことにも驚かされる。
    また、囚人の中には明治維新において旧幕府側に立った士族や国事犯も含まれていて、殺人犯や窃盗犯なら労役に充ててもいいと思っていたわけではないけれど、ショックを受けた。
    官吏と囚人は元は同じ士族の身分だ

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    2023年10月04日
  • 漂流記の魅力

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    江戸時代の漂流船・若宮丸の記録。漂流記と言えば大黒屋光太夫の話が有名だが、それ以外にも多くの漂流民がいた。運よく日本に帰還できた人がその様子を伝えているが、これもその一つ。苛酷な旅の中で、自分の今後を悲観的に見る者、現地に順応する者、帰国への希望を捨てない者等様々な人生が語られる。
    当時の状況は、現代とは比べ物にならない位厳しかった。江戸時代の漂流記を読むと、自分が同じ立場だったらどうするかという事をいつも考えさせられる。

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    2023年09月28日
  • 破船

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    会社の先輩からお借りした一冊。

    この作者の本は、漂流から2冊目かな?
    漂流もこの先輩からお借りした本だった。

    漂流もリアリティ溢れ、臨場感が半端ない小説だったが、この本も凄い!
    目の前に情景が現れる。自分がその村に迷い込んだような錯覚を起こす。

    すっごい惹きつけられる小説なのだが、常に恐怖感が付き纏っていた。

    何処か不気味で、何かに怯えながら読んでいた気がする。何に怯えていたのかは、読み終わった今も謎だけど(^◇^;)



    北の海に面した、貧しい村が舞台となる。
    痩せた土地には雑穀しか育てたない為、村民は鰯やイカ、タコ、秋刀魚などを採り、隣村まで売りに行き、穀物と交換してギリギリの生

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    2023年09月25日
  • 関東大震災

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    膨大な事実を淡々と積み上げる手法が特に際立つ小説だった。
    時代を重ねるにつれ豊かになっていく事の裏返しなのか、震火災への人々の対応が江戸時代より退化していた、というのが印象的だった。

    小説の最後で、冒頭のエピソードの続きが始まり、ここで初めて表現された個人の心情が沁みた。

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    2023年09月21日
  • 高熱隧道

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    ネタバレ

    壮絶。。ここまでして工事をする必要があったのか?見直さない、鼓舞して続けるというところに、軍国主義真っただ中の日本がどういう社会であったかを物語っている。。色々とひどいことが多すぎて、呑気に観光なんてする気分じゃなくなりそう。。この工事がもたらした経済効果っていったいどれだけあったんだろう。この時代、人の命がほんとに軽すぎる‥。合掌。

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    2023年09月20日