吉村昭のレビュー一覧
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間宮海峡(タタール海峡)の名で知られる、間宮林蔵の知られざる生涯を描いた小説。前半はロシアの脅威から蝦夷地をはじめとした北方の防御を強める幕府の意向を受け、樺太からさらに海を渡ってアムール河口付近も探査するなど、冒険家としての未踏地帯を踏破していくサバイバル活劇となっている。後半は幕府の隠密として各藩の内情を探るといった動きが増えてきており、農家出身ながら幕府や体制維持に多大なる貢献を果たした人物である。
間宮林蔵の才能は、会うべき人と出会いその人々の資質や想いを着実に受け継いで事を為すところにある。間宮林蔵の資質を最初に見抜き幕府の役人に取り立てた村上島之丞、測量の技術を惜しみなく伝え貴重な羅針盤を与えた伊能忠敬、ともに樺太を踏破して島であることを確認した松田伝十郎、そして恐らくは厳しい北の地で生きていく術を教えた名もなきアイヌの人々など、多くの師と巡り合った。
その強靭な肉体と任務に忠実な姿勢、何よりどんな場所からも生還するサバイバル能力は幕府にとって好都合だったわけで、後半生は開国や尊王攘夷といった各藩の動きの間でスパイとして活躍する。その動きの中からシーボルトによって間宮林蔵の名が国際的に知られるようになり、日本人で唯一世界地図上に名を残す人物となったのである。 -
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高木兼寛の伝記。兼寛は薩摩の軍医として戊辰戦争奥羽出兵に従軍しそこで蘭医関寛斎の治療を目の当たりにし自身の非力さと漢方の限界に気づく。戊辰戦争後鹿児島に帰り西洋医学を1からしっかり学ぶ決心をし師である石神良策の推薦で開成所洋学局に入学する。その頃中央政府では今後の日本の医学をドイツ式にするかイギリス式にするかで意見が割れ相良知安らにより当時世界で最も進歩的だったドイツ式を採用することになった。それにより内々でポジションが確保されていたイギリス医師ウィルソンがお役御免となり西郷隆盛、大久保利通らの画策で鹿児島へと派遣され兼寛はウィルソンから西洋医学について多くを学ぶ。その後石神の頼みもあり兼寛は海軍の軍医として東京へ出てその後イギリスへと留学し成績優秀者として多くの賞を取る。
この時代の医学者の伝記はよく読むが皆勉強への意欲が尋常ではないな。学べることへの感謝が根底にあって学べるものはすべて学ぶ姿勢は見習わないといけない。 -
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▼久しぶりに吉村昭さんを読みました。相変わらず、地味で硬派でコリコリしていて、エンタメにイキきらない独特の語り口が一種オモシロイ。森鴎外を読んでいる気分にちょっとなります。
▼確か、江戸時代の(明治大正もあった)、「かたきうち」の実話を歴史小説として描いていらっしゃる。そこではエンタメ性やヒロイズムは徹底的に排除されています。実にハードボイルド。ひとをころす、というしんどい肉体作業。長年かけて敵討ちをする精神的疲弊感。などなどがビシビシと容赦なく描かれて。それでいて、ちゃんと小説になっている。面白く読ませる。独特の背筋の伸びる持ち味、悪くないです。 -
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映画に、忘れられない台詞がたくさんあったので原作を読みたくなった。
驚いたのは、脚本によって、かなり色彩が異なった作品になっていたのだと感じられたこと。
どちらが良い、ということではなく、映画の力、その原点になった笠原良策という人の辛抱強さ、そして吉村昭さんが詳細に調べて小説にしなければ、ほとんどの人が知らずに終わっていたかもしれない、ということに驚いた。
福井出身の津村節子さんの夫であるからか、福井藩を責めるような記述がほとんどないが、福井出身者としては「嫉妬」という言葉で全てを表しているように感じられた。
天然痘が撲滅されてから久しく、福井医大(福井大医学部)の同窓会名に名前を遺していても、卒業生さえ全てが知って居る訳では無かったよう。
「嫉妬」などが、より良い暮らしや発展の妨げになることが無いように、という戒めになって欲しい作品である。
笠原白翁の辛抱強さ、誇り高く人々を守ろうとした精神こそが「越前らしさ」と胸を張れるように。 -
購入済み
間違いなく読んでる
ゴールデンカムイ、巻末にはアイヌ関連の文献しか載せていないが、この本は間違いなく読んでる。
北海道の住民は読むべきでしょうね。
お好みで。 -
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太平洋戦争開戦直後に、帝国海軍はインド洋にて様々な軍事作戦行動を敢行したようです(コロンボ空襲、マダガスカル島攻撃、インド洋での通商破壊作戦等)。その中の一隻(潜水艦)が、インド洋から喜望峰を廻り(悪魔の南緯40度を超え)、大西洋に出てドイツ軍の軍港を目指し、無事に到達をしたという。帰りも英軍等の追跡を躱して大西洋を南下、喜望峰を廻り(再び悪魔の南緯40度を超え)、無事にマレーシアのペナンに戻っている(その後、事情を知らない大本営命令によりシンガポールに回航され、機雷に触れ沈没)。戦争中に五隻の潜水艦が日本(呉)から欧州を目指し、3隻が無事に欧州に到達、そして呉に無事に戻った潜水艦は1隻あるという(様々情報、機密物資、密命を帯びた士官等を満載しての長距離移動だった様子)。内にはエアコン無く、シャワーも無く、食料等の補給も無い中で、アフリカを廻り欧州へ、そして、欧州から日本へという航海を無事に果たした艦長と乗組員たちの物語であります。インド独立の闘士で有名なチャンドラ・ボーズは、欧州からインド洋までドイツの潜水艦に乗船、インド洋上で日本の潜水艦に乗り継いで日本にやってきた由。どうやってインド洋の真ん中で、二隻の日独の潜水艦は会合していたのか等、そんな知られざる事実を掘り起こした吉村昭の取材力に、☆四つです。
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思ったより面白かった。
前半は心理描写もそこそこにさくさく話が進んでいくので、薄っぺらくない??と思っていたが、具体的に自身の犯行を振り返るシーンが出てきてからは深みが出てきて面白かった。
やはり、自分の犯した罪を心から悔いて反省するというのは、人間にとって難しいことなのだと思う。
なのに主人公は抑制的で振る舞いも模範的だから、周りは(判決も!)「こいつはちゃんと反省している」と思いこんでいるのが興味深い。
そしてそのすれ違いが悲劇を招くというのは、「罪を償う」ことをめぐる本質をついているような気がする。
人を殺したときが逆上ではなく、逆に「感情というものがすべて欠落していた」「得体の知れぬなにかに操られているように、意志というものは全く存在していなかった」状態なのは、とても興味深い。
同時に、犯行時は「目の前が朱の色だった」というのはどういう感覚なのか、全然ぴんとはこないが変に論理立っているよりかえって説得力がある。
なんとなく、この主人公の場合は根底に女性蔑視があるように感じる。
保護観察中の人がどのように保護司と関わり合いながら社会で暮らしていくのかについても理解が深まった。
保護司、これだけの仕事を無償でやっているの改めて凄すぎる。どう考えてもきちんと対価が支払われるべき…。