吉村昭のレビュー一覧
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吉村昭氏の「史実を歩む」を読んで、この作品を読みたくなった。
明治24年、まだ、明治維新から24年しか経っていない日本に、当時、世界一の大国・ロシアから皇太子ニコライが日本に訪れた。
国賓でも最大級のもてなしをし、長崎、鹿児島、神戸、京都と訪れ、滋賀の大津で暴漢に襲われる。
その大津事件までと後の展開がみごとに綿密につづられている。
いつもながら、淡々とした書き口のようで、登場人物であるニコライ皇太子、天皇陛下、西郷ほかの大臣、児島大審院長官などの「人物像」がよく伝わってくる。
この事件の後に起こる、日露戦争、ロシア革命と、主人公の運命にも感慨深いものがある。 -
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上巻は逃亡生活を克明に描くところが中心で高野長英の当代への影響については余り触れられていなかったが、下巻に入り島津斉彬や伊達宗城から評価を受け、彼の兵学書の翻訳が当時の開明的指導者に多大な影響を与えていたことが記されている。
高野長英が幕末の思想的な中心人物であったことを今更ながら理解することができた。
また、本著では彼やそれを匿う多くの人々の人間味あふれる関係にも心を動かされる。単に長英の博学ゆえだけでなく、江戸時代にはあった功徳の精神からなのであろうか。
幕末維新からもっとも学ばなければならないことは、当時の人々の志の高さと、その志の高さを以ってのみ偉業を成し遂げることができる、という -
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戦闘機という主人公が、生まれて死ぬまでのストーリーを当時の情勢と照らし合わせて描かれた一冊。欧米の模倣で生産されていた日本製戦闘機が、海軍厰と三菱重工設計者・その他全関係者の熱意と努力で世界一の性能に達し、第二次世界大戦にておよそ3年間は他を寄せ付けぬ大活躍を見せるが、米国の圧倒的な技術力・開発力・生産能力・人材資源を前に機も国家も敗れる。小説は敗戦と共に終わるが、その後のGHQによる統治で戦闘機生産は規制され、日本の航空機産業は競争力を失うも、50年以上を経た今、三菱は新たに旅客機でリベンジを図る訳ですな。とにかく歴史・技術・人間模様が見事なバランスで書かれていて、とても楽しめた!
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いやはやこれは力作でした。人間長英の逃亡劇。史実に忠実に、硬質なタッチで描く。
わたしも一緒に逃亡している気分になった。
彼を獄に投じた目付鳥居耀蔵が、彼の脱獄後失脚したことを知ったときの身もだえするような後悔。
「長英は、自分が早まったことを強く悔いた。わずか2ヶ月余の差が、運命を大きく狂わせたことを知った。」(p.268)
「悔いても悔いきれぬことであった。2ヶ月余牢にとどまってさえいれば追われる身にならずにすんだと思うと、胸の中が焼けただれる思いであった。」(p.269)
「過ぎ去ったことを悔いても仕方がない、と自分に言いきかせた。運命というものは人智でははかり知れぬもので、自分が負わ -
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ネタバレいやあ。面白かった。
思えば初めて,江戸以前の歴史ものを読んだかも。
種子島に流された罪人たちが島抜けを試みる「島抜け」,大飢饉の中で妻を失うまでを書いた「欠けた椀」,日本の解剖学のおこりについて書かれた「梅の刺青」。表題作「島抜け」は中篇程度で,あとの二つは短編です。
いずれもとても興味深く,面白い物語でした。
「島抜け」では,日本の懲罰制度について知ることができました。島流しとはよく聞きましたが,主人公瑞龍が島流しに遭った種子島のある村では,比較的自由が許されてただ「穏やかに暮らす」ことが望まれていたというのが意外でした。でも,妻子とも会えず,ただ静かに老いを迎えるというのは,確かに生 -
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大変面白く、興味深い随筆でした。
この随筆集は5つに分かれています。巻末の秋山駿氏の解説によると、「一章が人間の原型などを探る原理編、二章がその視線を歴史に投げての実験編、三章が戦争と敗戦、日本のことを考える編、四章が歩道橋など社会問題編、五章が日常の中の自分、いわば私小説編である」そう。
これを読めば本当に吉村昭と言う人の人となり、考え方が手にとるように解ってきます。そして誠に勝手ながら、吉村昭氏に親近感を抱くようになります。
一章では、「作家」(あえてここでは作家という言葉を使う。笑)としての吉村昭氏の姿がありありと見えてきて、普段ヴェールに包まれている (と私は勝手に思っている)作家と -
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ネタバレ先の震災後にも新たに注目されている三陸海岸を襲った大津波の記録です。書かれたのは昭和45年とあります。明治29年、昭和8年、昭和35年のチリ地震の津波について、丹念に地元を回り、生存者を訪ね歩いて書かれたものです。
大津波の前兆があちこちで聞かれたようですが、今回の地震のときにはなかったのかとネットで検索してみました。やはり結果論が多いのかな、中には「私は予知夢をよく見ます」という怪しげなのもたくさんありました。
それにしても三陸海岸というのはこの短い間に何度も壊滅的な打撃を受けて、人口のほとんどを失っていたとは驚きです。それでも海岸近くに家を建てるということは、それだけ魅力的な -
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誰も知らぬなら思う通りに書けばよい
ただ書くことに力を尽すだけでよい
名作に感動しないときは、自分の個性とは相いれぬものとかんがえる。生まれつきの個性だからしかたない
出前の皿は洗って返す しつけ
電車内のサンドイッチも
そばの食べ方
長崎、皿うどん、福寿
吉祥寺、寿司、富寿司
札幌、バー、やまざき
宇和島市、鯛めし、丸水がんすい
南アフリカ外交官、あくまでも毅然と振る舞い、厳重に抗議する
★星野道夫、自分の判断に揺るぎない確信を抱いている人間の姿
育児につとめる妻に感謝し、ゆとりを持って育児に専念できる環境を生み出すように努めるべき
…この本に出会えてヨカッた
吉村昭、よい