あらすじ
祖国の荒廃をこの一戦に賭けて、世界注視のうちに歴史が決定される。ロジェストヴェンスキー提督が、ロシアの大艦隊を率いて長征に向かう圧倒的な場面に始まり、連合艦隊司令長官東郷平八郎の死で終わる、名高い〈日本海海戦〉の劇的な全貌。ロシア側の秘匿資料を初めて採り入れ、七ヶ月に及ぶ大回航の苦心と、迎え撃つ日本側の態度、海戦の詳細等々を克明に描いた空前の記録文学。
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舞台は日露戦争。主に航海中のバルチック艦隊内部や日本海海戦の様子が書かれている。日本側の情勢、二百三高地攻略、ポーツマス講和の内幕など詳しく書かれている。読みやすく読者を退屈させない。
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日露戦争の事は全く無知であったが、この本で旅順戦での乃木将軍の稚拙な作戦行動、バルチック艦隊が喜望峰を迂回して壮絶な大航海の後に日本海に来た事、日本海海戦が僅か2日で決着がついた事などが吉村昭氏の淡々とした書法で書かれており、とても楽しく興味深く、面白く読むことができた。
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日本海海戦を中心にその前後に起きた様々な出来事も詳らかに...。意思決定、群集心理、傲慢、侮り、悲哀、憐憫...。
太平洋戦争に突入してしまう下地を作ってしまった圧倒的な勝利が歴史的な転換点であったことを改めて実感...。示唆に富んだ秀逸な作品である。脱帽。
海の史劇について
私は戦史 軍艦 艦船模型が好きで、もう長いことやっています。この本は吉村昭の代表作の1冊です。「戦艦武蔵」も読みました。
吉村さんの知識には脱帽です。まだ半分も読んでいませんが、楽しく読んでいます。日本海海戦での日露の戦い、内容は知ってるが読みやすいです。
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日本海海戦を描いた吉村昭の記録文学の傑作。
日本海海戦と言えば司馬遼太郎の傑作小説「坂の上の雲」のクライマックスシーンとして有名である。
私も手に汗握りながらあのシーンを読んだものである。
それ以来日本海海戦には関心を抱いていたが、他にも同じテーマを扱った作品で良いものがあると聞いて本書にたどり着いた。
非常に緻密な調査の上に成り立っている作品と感じた。
これを読んでしまうと司馬さんの作品は、彼の評価している人物とそうでない人物の書き分けが極端で、小説としては面白くなるのだろうが、現実とは乖離してしまうの
だろうなと思ってしまう。
日本海海戦とは日本史だけではなく世界の海戦史においても類例を見ないほどの圧倒的な勝利であった事が理解できた。
戦力的に不利な日本が損害において水雷艇3隻と引き換えにロシア海軍をほぼ壊滅させるという信じがたいものであったという。
本書を読んでいるとロシア艦隊は、その長大な航海の途中、自分たちの空想の中で膨れ上がる日本海軍の脅威に終始おびえていたように思われる。
その為に味方艦艇や他国の商船にみだりに誤射を行ってしまっている。
いかに強大な戦力を持っていてもそれを充分に発揮できるかは扱う人間によるということが実感された。
後、戦後日本人と言えば礼儀正しく、国難があっても暴動などが起らない自制のきいた国民性という評価が定着しているが、この本を読んでいると日露戦争の講和内容に
不満の持った国民が暴動を起こしたりしている描写があり、戦前の日本人の気質と戦後のそれの違いが判り興味深かった。
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日露戦争の、その始まりと終わって講和を結び、その後の日本の行く先が見えるようなところまでが描かれていた。
もう途中、ロシア艦隊がつらすぎてつらすぎて、暑さに喘ぐロシアの兵と同じようにして、私も帰りたくなりました。イギリスや日本の外交、怖い。文章が淡白だから、想像が膨らんで余計に寒気がする。
でも一番鳥肌ものだったのは、小村寿太郎の講和を結ぶまでの場面。
この悲壮感。教科書にこの背景くらい書いた方がいいんじゃないのと思う。急に日比谷焼き討ち来るから単純すぎて。書かないのはあれかな、戦争は軍部が仕込んだものだと言いたいからなのかな。
吉村昭は大衆の熱量と戦争のつながりを特に注視しているのだけれど、その考えが端々に出てくる。特に最後の小村の嘆きが読んでいてつらい。(語彙力!)
今も同じだよなぁ、と、選挙の騒ぎを見ていて思う。
憲法だなんだじゃない、大衆の未熟性、ではないのかねぇ…。それがマスコミの姿勢に出ているだけなんだよってね。
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祖国の興廃をこの一戦に賭けて、世界注視のうち に歴史が決定される。ロジェストヴェンスキー提 督が、ロシアの大艦隊をひきいて長征に向う圧倒 的な場面に始まり、連合艦隊司令長官東郷平八郎 の死で終る、名高い「日本海海戦」の劇的な全 貌。ロシア側の秘匿資料を初めて採り入れ、七カ 月に及ぶ大回航の苦心と、迎え撃つ日本側の態 度、海戦の詳細等々を克明に描いた空前の記録文 学。
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本書は、同時代を書いた、司馬遼太郎「坂の上の雲」と対比されるが、同書が、坂の上の雲を仰ぎ見ながらひたすら上り続けた、明治人の意気軒高さと心意気を、書いているのにくらべて、書き出しがバルチック艦隊の出航の模様から始まり、敗軍の将となった、ロゼストヴェンスキー総督の末路にまでおよぶ壮大な史劇となっている。
私がここで留意したいのは、当時の国民の熱狂とは裏腹に、当時の政府や軍のトップの人たちが、国力の限界を正確に把握していて、積極的に
米国大統領に仲介を依頼したことである。
それから40年後の、政府や軍のトップたちが、戦況の劣勢をひたすら隠し本土決戦や一億玉砕を呼号して、いたずらに国土を疲弊させ犠牲者を増やしたことを思い起こしてもらいたい。
国のトップの劣化は、結局国民を不幸にするものである。
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上司に勧められて読んだ。歴史小説を読むきっかけになった本。史実が元となっているため結末は既にわかっているはずだが、淡々とした記述の積み重ねが重厚な世界観を作り出している。
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原作者の遺志に背いて映像化された「坂の上の雲」。同時期に連載されていた本作。日ロ戦争。歴史文学と記録文学。事実が淡々と記述されてるだけのようでいて、引き込まれる。その作風にはいつも感心させられる。ロシア側の立場での描述も長い。両者の視点で考えられる。勝利したのは日本。負けていれば独立国としての存続はなかっただろう。一方、得た者は乏しい。そして、失ったものも大きい。夥しい数の戦死者、戦傷者。政情不安。米国の警戒。そしてあの大戦につながっていく。TVドラマは美しく作られる。だが、現実の戦争はきれい事ではない。
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面白かったです。 映画で203高地とか日本海海戦とか観ていますがこの本を読むと又印象が変わりました。 特に変わったところは①乃木大将の駄目さ。 自分や部下の士官を可愛がる?のか臆病なのか前線に出ていないから現状認識が出来ない結果有効な手を打てず兵力を無駄に消耗させてしまった。(戦死した兵隊さんは犬死と言わざるを得ない。)児玉源太郎が戦地に来てその光景を目の当たりにしたら激怒するのも無理はない。②ロシア海軍の航海能力の凄さ。日本海海戦であっけなく負けたように思ったいたが、遥々ロシアからアフリカ大陸を回って日本海まで航海したのは素晴らしい。今の時代では原子力を使えば燃料に不安はないがあの時代は食料、水、石炭を補給しつつ7ヶ月掛けての大航海は凄い。公開中の乗組員の不満や夜間の奇襲、エアコンなんてない気象条件が悪い中での航海。
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日露戦争におけるバルチック艦隊と東郷艦隊の大戦を描く。
艦隊の大戦のみならず、旅順港攻略、バルチック艦隊が日本に到着するまでの苦難に満ちた道のり、日本勝利後のロシア捕虜の扱い、ロシア将官の祖国帰還まで周辺情報が、綿密な調査に基づき、整理されて記載されているのは、さすが吉村氏である。
あとがきで書かれているとおり、戦争終結後の日本国民の反応は、戦争と平和に対する意識の未熟さを露呈するものであり、それは、後の戦争への失敗へと繋がっていく。
読み応えのある一冊だった。
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ここまで調べ上げるのは物凄い労力だと思うが、この著者ならではとも思う。この本を読むと「坂の上の雲」「ポーツマスの旗」あたりを読み返したくなる。
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ロシア側の視点を軸に、バルチック艦隊の進発から敗戦後のロジェストヴェンスキー提督のロシア側 帰還までが、筆者の入念なリサーチに基づいて丁寧に描かれている。(もちろん、古い作品なので、その後の新事実などは割り引いて考える必要はあるが)
立ち位置だけではなく作風も含めて、『坂の上の雲』と対になる作品として、前後して読むと視野が広がると思う。
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日本海海戦を舞台とした小説では、司馬さんの「坂の上の雲」が有名だが、その視点が日本側からなのに対し、この小説はロシア艦隊側からの視点で展開する。7ヶ月に及ぶ航海、戦争、そして敗戦後の祖国への帰路。よく資料を集め、事実に基づいたストーリーとして価値を感じる。そして、作中にもあるように戦争が日露ともに大きな犠牲と負担を残した虚しさに共感を得る。以降さらに殺傷能力の高まる大きな戦争が続くのである。2019.10.28
読むほどに先に、先にと心が。
今は読んでる途中です。一気に読めない性分なので。
数年前に、司馬遼太郎の「坂の上の雲」全巻読みました。全6冊でとても時間が、かかりました。日本海海戦のところは後半にでてきます。
同じ日本海海戦でも作者が違うと、どう変わるのだろうと興味が湧きこの本を買いました。難しい表現はありません。とても読みやすいです。
日本海海戦のことを知りたければ、この一冊で充分でしょう。
バルッチック艦隊が出港から各地の港に寄港しながらの様子は、つい世界地図で見てしまうほどの興味がわきます。歴史上、強大国のロシアとアメリカと正面きって戦った国は日本以外にありません。日本史を知る上でも、ぜひ中学生や高校生にも読んでもらいたい本です。
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日本海海戦(日露戦争)を描いた歴史小説。「坂の上の雲」とは歴史の描写方法、スコープが異なるので重複感は全くないし、比較をしながら読むと却って興味深い。
吉村昭のアプローチは史実を淡々と描写する手法であり、それ故に生々しさがより迫ってくる。また、登場人物への私情もないので、より客観的な人物像を知ることができる。
日本海海戦がメインではあるが、それに深く関係することとして203高地攻略も登場する。
「坂の上の雲」と比較すると、
・秋山兄弟が殆ど(全く?)登場しない!
・ポーツマス条約の小村寿太郎等の交渉状況も含まれている。ただ、これは「ポーツマスの旗」(吉村昭著)を読むと更によい。
・捕虜となったロシア兵が日本で厚遇される状況がより具体的に描かれている。
・ロジェストビンスキーなどロシア将校の敗戦後のロシアでの処遇に関することも含まれている。
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・坂の上の雲の日本海海戦よりも本作の方が描写としてわかりやすい。
・バルチック艦隊の航海は大事業であることを認識させられた。
・ロ提督が「坂の上・・・」よりもしっかりした人物として描かれれている。
・実際の戦闘は悲惨なものだが、この時代は、まだ武士道・騎士道が生きていた。
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私にとっては非常に長くて、一ヶ月ぐらい読んでましたw
日露戦争時の、日本海海戦を、どちらかというとロシア側からまとめた史劇。
最初はロシア人ばかり出てきて、早く日本軍出して欲しいなあとじれったく思って読んでいたのですが・・・
だんだんとロシア側に感情移入していったのがまさに吉村マジックです。
しかし、当たり前だけど本当に知らなかったことばかり。
バルチック艦隊が日本に来るまでもなかなか壮絶で、死者が何名も出ていて、なかなか大変なものだったんですねー。
メインの海戦そのものは、息を呑むような展開で、ぐいぐい引き込まれました!東郷平八郎の丁字戦法からの、巧みな砲撃戦。あっという間にロシア艦隊はばらばらに。
船が爆撃を受けて破損して、沈没していくときの何とも言えない刹那さ。そして切なさ。
ロジェストヴェンスキーと長い間旅をともにしてきたクニャージ・スヴォーロフが、命ある戦艦から、ただの鉄塊に成り下がるシーンは日本にとって敵国ながら切ない思いでした。やっぱり命吹き込まれた人工物や、その乗組員が亡くなっていくのは、どんな立場であれ悲哀を感じます。
戦いの面の迫力もさることながら、客観的データも非常に興味深かったです。日本とロシアの損害の差は、海戦の中では歴史に残るようなものだったとか。
捕虜の扱いも、この頃はまだちゃんと国際規定を守って、しっかりしていたんだなーと。第二次大戦時の捕虜の扱いとは結構違うんですね。
そしてロシア兵をこんなに手厚くもてなした日本が・・・国際規定ガン無視のシベリア抑留強制労働orzとか思ってしまいました。ロシアが日本に対して臥薪嘗胆の思いでいたのもわかりますが。
とにかく長かったですが、色々と勉強になりました。本当にガッツリと日露戦争の日本海海戦について知れました。
Posted by ブクログ
日本海海戦までのロシア・バルティック艦隊の大遠征と圧倒的な日本の勝利、勿論痛快な勝利ではありますが、この時代の紳士的な双方の態度、ロシア兵捕虜への人道的な日本の対応、また敗軍の将ロジェストベンスキー、ステッセル・・・への暖かい日露両国の対応など、しかし寂しい晩年。明治の成長期の輝かしい日本人の希望を描いた司馬遼太郎の「坂の上の雲」とはまた違った、より更に客観的な史実として説得力も感じさせ、なおかつ著者によって素晴らしい心温まる叙事詩になりました。
Posted by ブクログ
丹念に史料を読み解き忠実に日露戦争を描き出した労力には感服します。が、あくまで読み手側の問題なのでしょうか?話としての面白さは別物と感じてしまいました。氏の作品は好きなのに…。
Posted by ブクログ
吉村昭という作家を始めて知った。これだけの作家を今まで知らなかったなんて、恥ずかしい限り。
日露戦争の日本海海戦を描いている。
ロシア側、日本側の両側を丁寧に、史実を確実に積み上げた、読み応えのある、面白い小説だった。
当然、これを読みながら司馬遼太郎の「坂の上の雲」と比べていた。
同じ舞台を描きながら、全く異なるアプローチ、記述。
「坂の上の雲」と「海の史劇」というタイトルだけで、2人の違いが良く分かる。
明治の日本人が坂の上にある何かを求める姿勢とか想いを描いたのが前者なら、後者は淡々とあった歴史を積み重ねている。
小説家によってこんなにも違う作品になる。
もちろんどちらも素晴らしい。