吉村昭のレビュー一覧

  • 新装版 赤い人

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    明治維新直後の日本。不平士族の反乱や政府部内での対立などで刑務所に収監される囚人が急増。その需要に応えるため、政府は新たな収監所として、北海道に目を向ける。厳寒の地での収監は刑罰としては適しているし、北海道開拓の労働者としても期待できる。囚人の人権なんて考える必要のない時代、政府は容赦なく囚人を北海道へ送り込む。

    囚人たちは番号のついた赤い服を着せられ、移送される。たどり着いた北海道で待ち受けるのは防寒対策が不十分な獄舎と粗末な食料、過酷な労働。使い捨ての開拓員としてこき使われた囚人のほとんどは凍傷に悩まされ、亡くなる者、脱獄する者が後を絶たない。

    第2次大戦後のソ連によるシベリア抑留に似

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    2019年05月19日
  • アメリカ彦蔵

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    襟を正される
    という言葉がしっくりくる

    吉村昭さんの「作品」を手に取るたびに
    思わせられる言葉です。

    播磨の地に暮らす者ですが
    ジョセフ・ヒコの名を出したときに
    おぉー その方は…
    と 話のやりとりができる機会は
    残念なことに あまりない

    だから
    はい! あの「新聞の父」と呼ばれた…
    の方と出逢ってしまったときの 歓び

    何回目かの再再読ですが
    読むたびに 新鮮な気持ちにさせられてしまう
    その筆力に脱帽です

    近いうちに 播磨町の郷土資料館の
    彦蔵氏の写真に逢ってこよう

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    2024年06月28日
  • 新装版 赤い人

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    北海度の発展と囚人たち。淡々と語られるその内容は初めて知るものばかり。歴史とは…学校では習わない歴史の存在を痛感した。

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    2019年04月19日
  • 大黒屋光太夫(上)

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    ネタバレ

    「凄まじい」の一言。江戸中期に紀州から江戸を目指した商船が暴風雨に巻き込まれ、アリューシャン列島まで漂流した後、ロシア人に助けられる。その後、帰国の願いを訴え続けるが、鎖国下の日本との交渉役に仕立てたいロシアとしてはなかなか許さない。時の女王エカテリナの許しを得てようやく帰国したのは、紀州を出発してから10年の歳月が経ち、17名の船員のうち、帰国できたのは3名だった。航海技術も海図も不十分、海外に出るなんて夢にも思わない、言語も慣習も何も情報がない、栄養状態も医療技術も現代とは全く異なる状況で、10年間も帰国の望みを持ち続け、ロシア人と日本人の双方から賞賛される態度をとり続けた主人公に大きな感

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    2019年04月14日
  • 仮釈放

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     殺人を犯し無期刑をいい渡された元高校教師が、服役成績が優秀であるとして仮釈放されるものの社会に溶け込めず、戸惑いと苦しみを抱えながら生きていく姿を描く。この小説はネタバレ厳禁だと思うので詳しく書きませんが、最後の数ページは驚くような苦い展開でした。小さなメダカの命を大事にする男が、どうしてこんなことになってしまうのだろうか。

     小説家というものは想像力が豊かで、なかには頭の中だけで組み立てたことを自由に書いていける人がいるのかもしれません。しかし、想像力だけで書かれた小説はどうしても薄っぺらなものになるような気がします。それに比べて吉村昭の作品は、どれもどっしりとしていて堅牢です。この小説

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    2019年04月18日
  • 東京の戦争

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    戦中戦後に、吉村昭氏が目にしたり聞いたりした、生死にかかわるものすごいことどもが、驚くほどたんたんと書かれている。氏の他の作品と同様、読み終わるのが惜しい。深く味わいたくて、何度も同じところを読んでいる。ゆっくりと、よく噛みしめたい。

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    2019年04月04日
  • 天に遊ぶ

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    一編がわずか8ページほど。10分で読める短いお話ばかり。どれもたいへん興味深く、強く胸に迫り、何とも言えない、しみじみとした気持ちが残る。

    明治時代の大津事件の犯人の子孫を取材したときの、こぼれ話。とても興味深く読み、さいごは涙がこぼれた。

    作家の葬式にあらわれる香典泥棒ばあさんの話。ちょっとホッとする。

    著者の遠い親戚を襲った過去の悲劇。哀れでしみじみ。

    下町の近所のひとびとの思い出。

    犬と人間の絆。生命の重さ。

    妻子を捨てて年上の女に走った、作家志望の男の末路。

    などなど、多種多様な人びとの、生々しい人生模様にお腹いっぱい、胸もいっぱいになった。

    フィクションの体裁だけれ

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    2019年03月05日
  • 新装版 赤い人

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    明治以降の北海道開発は囚人が担った歴史の事実を記録する
    明治14年月形に樺戸集治監を作り、北海道開拓の労役に囚人を利用 コストのかからない労働力確保と、北海道開拓の早期実現
    当初の農業開墾から始まり、基幹道路の開削、石炭・硫黄の鉱物資源を掘出しなど、人間扱いされない労働力として消耗
    囚人の絶望と多数の死、そして脱走・恩赦などのドラマが織りなされた
    国家が危機に有るとき、国家権力がどれだけ暴力的になるのか、吉村昭氏は丁寧に描いている
    一人一人の囚人のドラマで有るとともに、明治の時代における国家存亡の危機という歴史も見事に描いている
    司馬遼太郎氏の坂の上の雲とは異なる影の部分にスポットを当てており

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    2019年02月08日
  • 新装版 海も暮れきる

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    人生の最晩年、肺を病み、小豆島に辿り着いた俳人・尾崎放哉。
    五七五にとらわれず、自由な作風で知られた。
    放哉の人生も作風と同じく自由であった。
    むしろ自己中心的である。
    俳人としては有能かもしれない。
    しかし、人としては最低だ。
    日に日に痩せ衰えてゆく放哉を冷徹に克明に描き切った大名作。

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    2019年01月31日
  • 背中の勲章

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    ネタバレ

    大東亜戦争で米軍捕虜となった海軍人を描く。虜囚の辱めを受けずという当時の思想は根深い。そこからの生き抜く決意をするまでの内面の動きが、かの小説の面白さだと思う。

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    2019年01月05日
  • ニコライ遭難

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    1891年5月11日、来訪中のロシア帝国皇太子・ニコライが滋賀県大津市で、警備中の巡査である津田三蔵にサーベルで襲われた──
    当時の日本人のロシアに対する感情は、複雑であった。
    軍事大国ロシアに征服されるかもしれないという恐怖。
    その中でのニコライの訪日。
    『このようなことがあっても、日本人民の好意に対する私の喜びの感情には変わりない』
    ニコライのこの言葉は、襲われた後に、なかなか言えることではない。
    そして、当時の日本国政府の焦慮、ロシアに対する恐怖が手に取るように分かった。

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    2018年12月09日
  • 星への旅

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    往来堂書店「D坂文庫 2017夏」からの一冊。
    吉村昭の作品はこれまでに何冊か読んでいたけれど、短編小説は初めて。しかも、これは昭和33年から42年にかけて書かれた作品を集めた、実質的なデビュー作ということらしい。
    その筆致は、後に書かれる社会派作品群と同様、緊張感にあふれて鋭い。しかし、本書はそう評するだけでは不十分だろう。何しろ、収められた6編はいずれも生と死をテーマに書かれていて、鋭さに重さが加わっているからだ。
    表題作の「星への旅」は、そのメルヘンっぽいタイトルとは裏腹に、日常の倦怠感と無力感から集団自殺を企てる若者の話であるし、「鉄橋」ではボクサーが列車に轢かれて不可解な死を遂げる。

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    2019年01月26日
  • ポーツマスの旗

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    ・小村は部屋の重苦しい空気も気にならぬらしく、平然としていた。ルーズベルトの質問にも適切な言葉で答え、表情になんの感情も現れていない。随員の竹下中佐は、その折の小村の態度について、「露国一行ハ大ニ畏敬ノ念ヲ生ジタル如ク見ヘタリ」と日記に記し、ロシア側の主席随員コロストヴェッツもその日誌に、「日本側の態度は謙虚で、分別と節度があり、立派であった」と述べている
    ・(講和条約妥結後)コロストヴェッツの日誌には「日本側は、何も特別なことが起こったわけではないように、泰然自若としていた」と、その折の小村らの印象が記され、本会議ははじまってからも、ウイッテが興奮を抑えきれぬように紙をしきりにちぎっている前

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    2018年11月04日
  • 新装版 赤い人

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    明治十四年から大正八年まで開拓のために囚人が次々と北海道へ送られた。
    北の最果て。
    無報酬。
    過酷な労働。
    猛威を振るう自然。
    人体実験紛いの行為。
    人権なんてない。
    時代のなせる業。
    三十八年で死亡者、延べ千四十六人。
    この囚人たちの上に北海道がある。

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    2018年10月13日
  • 破船

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    世の中と隔絶した名も無き漁村を舞台に描かれる、江戸時代の極貧生活。わずか17戸の小さな貧村では、夜の岬で塩焼きという風習が行われていた。しかしその本当の目的は、遭難した船をおびき寄せ座礁させるためものであった。
    口減らし、年季奉公という名の身売り、死を意味する山追いなど、一般庶民がまともに食えない時代である。遭難船は「お舟様」と呼ばれ、村にとって恵みをもたらす一大慶事であった。前年に、大量のコメを積んだ「お舟様」によって潤った村が、2年連続で新たな「お舟様」を迎えた。しかし、船には積荷はなく、20数名の乗船者は皆一様に、謎の赤い布を身に付けて死に絶えていた。村長はその着衣を村民に分配する。しか

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    2023年10月07日
  • 戦艦武蔵

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    現実の事件・事象をめぐる事実をふまえ,文学的に
    構成した作品を記録文学という。吉村昭はその代表的
    書き手。記録文学を因数分解すると、ノンフィクション・ルポルタージュ・実録・裏話…になるかな。
    僕の中では吉村作品は「プロジェクト小説」である。
    「羆嵐」は巨大羆との壮絶な格闘記、
    「漂流」は無人島に流れ着いた男の生還記、
    「破獄」は11年間に4度も企図した脱獄記、
    「零式戦闘機」は設計者・技師・操縦者の哀歓の記録。
    善悪・良否という二元論では片付けられない目的を
    果たすために狂おしいほどの熱情と知恵を注ぎ
    プロジェクトを完遂させる様を丹念に描く。

    さて本書。戦略的都合上、徹底した機密保持の下、

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    2026年05月14日
  • 虹の翼

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    明治時代から日清・日露戦争の中、飛行〝器″を発明した天才 二宮忠八の苦難に満ちた人生の記録。そして、航空史も学べる。絶対に傑作です。

    名作「漂流」の心理描写、代表作「戦艦武蔵」の歴史記録小説の間をとったバランスが絶妙。

    貧乏ながら、企業家・ビジネスマンとしても一流で、画期的な発明家である、このような鬼才を登用できなかったこの国とは。

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    2018年09月11日
  • 魚影の群れ

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    「海の鼠」「蝸牛」「鵜」「魚影の群れ」の4篇の短篇集。

    実話に基づくらしい。
    筆者の綿密な取材により、ありありとその世界が伝わる。

    中でも、大量発生する鼠に苦慮する島の顛末を描いた「海の鼠」。自然現象にいかに人は無力か。島民の悲哀。そして、「鼠駆除」がもたらしたもの…。氏の筆致が秀逸。

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    2018年08月07日
  • 冬の鷹

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    『解体新書』といえば、杉田玄白。
    しかし、前野良沢という名前を聞いたことがある人は、少ないのではないか。
    自分もその1人だった。
    陽の杉田玄白と陰の前野良沢。
    このふたりがいたからこそ、『解体新書』が生まれた。
    それならば、何故、前野良沢は『解体新書』に名を残さなかったのか。
    頑固で潔癖なる性格ゆえか。
    頑固で潔癖。
    これが、良沢の人生を表している。
    オランダ語に人生を捧げた前野良沢と名声を得るために人生を捧げた杉田玄白の対比が如実に現れている。

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    2018年07月21日
  • 星への旅

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    「鉄橋」「少女架刑」「透明標本」「石の微笑」「星への旅」「白い道」の六篇。
    吉村昭氏の初期作品。「死」が色濃く表れている。
    表題作「星への旅」。名状しがたい読後感。

    個人的には、「少女架刑」「透明標本」が印象的。ある意味。対のようになっている。
    「少女架刑」は、吉村昭氏には珍しい、「私」という一人称の語り。また、物語る「少女」の視点も不思議で。そして、怖い。

    収録されている6つの短篇の登場人物たちは、“星への旅”になっていくのだろう。
    “星への旅”という言葉の響きは綺麗だが、表題作の「星への旅」は、テーマが重い。

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    2018年06月30日