江戸時代末期から明治にかけて福井で天然痘と戦った町医の話。
現代の人間である私には想像できな事だが、天然痘の惨禍は凄まじいものであったらしい。
感染した人間の1/3は死に、生き残った者にも生涯消えない痘痕を残す恐ろしい病で、種痘が広まるまでは対処方法がなかったという。
西洋では広まりつつあり効果
...続きを読むを上げ始めていた種痘を日本に導入することに尽力し、日本の天然痘の治療の先駆けとなった福井藩の医者笠原良策。
人の命を救うために自分の財産もなげうって、それだけではなく命の危険すら冒す。
そこまでの壮絶な努力をしてすら役人や医者たちの非協力的な態度、迷信に満ちた庶民たちの悪意によって思うように種痘が進まない。
そこに至るまでの道のりは想像を絶する困難に満ちていたが、彼の志は最後に実を結ぶ。
クライマックスのシーンはやはり種痘を施した子供とその親と共に雪中の山道を越えるシーンであろう。
あと一歩で遭難してしまうところまで行きながら奇跡的に全員無事で生還する。
これがフィクションでなく実際にあった事なのだと認識するたびに深い感動が沸き起こってくる。