吉村昭のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ・あらすじ
吉村昭初期短編集。
・感想
冒頭の「鋏」と最後の「雪」が特によかったなー。
特に「鋏」はこの作品を読めただけでこの本買ってよかったって思ったレベル。
太宰治の女子独白作品を踏襲したと思われる表彰状には意外性があった。
吉村先生もこういう作品書かれてたんだなー。
でも正直やはりこの分野?では太宰には敵わないな、と思ったり。
あの年頃の女子の過剰で「肥大した自意識と傲慢さ、そして繊細さの描写はやっぱ太宰がずば抜けてるもんね。
勘違いして入水なんてやりきれない最期だ。
雪は、執筆時に20代だったとは思えない作品。
最後が微笑ましくてとてもよかった。
表題作の「死まで」は養母の汚ら -
Posted by ブクログ
【2026年96冊目】
北海道の開拓民を襲った悲劇の実話を小説化。1915年、北海道苫前郡苫前村三毛別六線沢に住む開拓民を襲った一頭の羆。体長2mを越えたそれは、延べ6名の開拓民を死に至らしめ、3名に重症を負わせた。わずか二夜にして起こった悲劇に、開拓民たちは恐れ慄き、一人の熊撃ちに命運を託すことになるが…。
友人に勧められていたので、読もう読もうと思いつつ先延ばしして、ようやく手に取った一冊でした。熊騒動、最近は収まってきたように思いますが、こっわいですねぇ。羆の生態についても書かれてるんですが、想像しているよりもずっと知能が高いことがわかります。「戻り足」なんか使われたら勝てないでしょ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ記録文学という分野は珍しく、私も初めてで。事実に基づいて客観的に綴るから読みやすいけれど、ここにいちいち登場人物の心理が描写されていたら辛くて読めなかったかも知れないと思った作品でした。
藤平目線で書かれているけれど、神目線を勘違いしてしまいそうなほどに淡々と、様々な現場トラブルが語られ、バラバラになった遺体を血まみれになって運ぶ根津の姿、下山後、繋ぎ合わせる様子は藤平同様、胸にぐっと来ました。
最高温度166度という高熱地帯で行う過酷な工事。
熱と疲労感に抗いながら隧道を掘るその情熱と執念は一体どこから滲み出るのか。
更には大自然の脅威に翻弄され続け、中止を言い渡されながらも、真っ直ぐに -
Posted by ブクログ
本日は、吉村昭文学忌、悠遠忌(ゆうえんき)。
“はるか遠く果てしない”そんな壮大な言葉は、吉村氏が自ら選び、墓石に刻まれたものだそうです。
『羆嵐』は1976年、『小説新潮』に一年間連載され、翌年単行本として刊行されました。
舞台は大正4年、北海道・天塩山地の麓にある開拓村。実際に起きた熊による村人殺傷事件をもとに、吉村昭が取材を重ねて描き上げた記録文学です。
日本各地で熊による被害が相次いだ昨今。人と自然が衝突したその時を、再び読もうという選書でしょうか。
貧しい開拓村へ、冬眠をし損ねた一頭の羆が突然現れました。
子どもと女性が襲われ、女の味を覚えた羆は、その匂いを求めるように村々 -
Posted by ブクログ
本作は、日中戦争の遂行に必要な電力を賄うという軍需目的のもと、黒部第三発電所の建設に挑んだ人々を描いたノンフィクションである。
最初、私は『高熱隧道』というタイトルだけでは一体何が高熱なのか分からなかった。「隧道(ずいどう)」という漢字自体、何と読めばよいのかさえ知らなかった。それが「トンネル」を意味すると知っても、なお「高熱のトンネル」という存在が結びつかず、想像すらできなかった。しかし、読み進めるうちに驚かされた。わが国には、岩盤温度が160℃を超える「高熱断層」なるものが存在していたのだ。本作は、世界でも稀有な温泉湧出地帯にトンネルを穿(うが)つ、壮絶な記録である。
万が一の非常事態