吉村昭のレビュー一覧

  • 羆嵐

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    本日は、吉村昭文学忌、悠遠忌(ゆうえんき)。
    “はるか遠く果てしない”そんな壮大な言葉は、吉村氏が自ら選び、墓石に刻まれたものだそうです。

    『羆嵐』は1976年、『小説新潮』に一年間連載され、翌年単行本として刊行されました。

    舞台は大正4年、北海道・天塩山地の麓にある開拓村。実際に起きた熊による村人殺傷事件をもとに、吉村昭が取材を重ねて描き上げた記録文学です。

    日本各地で熊による被害が相次いだ昨今。人と自然が衝突したその時を、再び読もうという選書でしょうか。

    貧しい開拓村へ、冬眠をし損ねた一頭の羆が突然現れました。

    子どもと女性が襲われ、女の味を覚えた羆は、その匂いを求めるように村々

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    2026年07月31日
  • 冷い夏、熱い夏

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    最初の10ページを読んだ時点で、読み進めるのがつらくなった。
    弟が体の痛みを訴えたり、呼吸が苦しくなっていく様子がとてもリアルに描かれていて、「死ぬ前にこんなにつらい思いをするのは嫌だ」と感じた。
    自分が同じ立場だったら、一刻も早く楽になりたいと願ってしまうだろうな。
    自分が癌になって余命が短い場合、告知して欲しいか悩む。でも人生の最後に、家族にずっと嘘つかれるのは嫌かもしれない。

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    2026年07月29日
  • 天狗争乱

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    初の吉村昭。詳細かつ丁寧な描写に圧倒された。自身がこの渦中に居たらと、あれこれ想像しながらとても興味深く読んだ。

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    2026年07月22日
  • 星への旅

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    災難に遭い、見捨てた形になった妻子に会いに行く。石仏を拾得し、売り捌き、女を心中に誘い、自らは生き残る。広い邸で放置され、日常を変えるイベントとして集団自殺の旅に出る。死の直前の恐怖。引き返せない。走り込む鉄橋。自殺とみられた轢死。物語は違う真相を明かす。お金のため、研究用に差し出される遺体。自らの体が切り刻まれていく過程を眺める。人目を憚る役割が育む歪んだ美意識。透明標本にしたい骨への執着。…事が起きる前と後。死の全周を一冊で味わう。タイトルからイメージするロマンはない。ただ只管、深淵へと引き込まれる。

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    2026年07月12日
  • 高熱隧道

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    本作は、日中戦争の遂行に必要な電力を賄うという軍需目的のもと、黒部第三発電所の建設に挑んだ人々を描いたノンフィクションである。

    最初、私は『高熱隧道』というタイトルだけでは一体何が高熱なのか分からなかった。「隧道(ずいどう)」という漢字自体、何と読めばよいのかさえ知らなかった。それが「トンネル」を意味すると知っても、なお「高熱のトンネル」という存在が結びつかず、想像すらできなかった。しかし、読み進めるうちに驚かされた。わが国には、岩盤温度が160℃を超える「高熱断層」なるものが存在していたのだ。本作は、世界でも稀有な温泉湧出地帯にトンネルを穿(うが)つ、壮絶な記録である。

    万が一の非常事態

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    2026年07月11日
  • 羆嵐

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    ただただ羆の圧倒的な力を思い知った。
    描写が現実的で淡々としているのが、却って恐ろしさを感じさせられる。

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    2026年07月08日
  • 破獄

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    文章は濃厚だけどサラサラ読める。
    戦争中〜戦後の刑務所事情なんて想像したこともなかったからかなり興味深かった!

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    2026年07月03日
  • ポーツマスの旗

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    小村寿太郎の生涯が描かれている。宮崎の飫肥出身の小村は外交官として活躍。一番はやはり全権大使として挑んだポーツマス条約締結か。日露戦争で大国ロシアを奉天会戦、日本海海戦で破りルーズベルトの斡旋もあり条約を結ぶこととなった日本を代表してポーツマスへと向かう。日本はロシアに勝っているため国民としては領土、賠償金が得られると望みその期待もあり小村が旅立つ時には多くの日本国国旗が振られることとなる。ロシアに連勝した事実はあるが多くの負債、戦死傷者のため戦争継続は事実上不可能であることは国の上層部はわかっており早急の和平条約締結が小村の任務となる。ロシアの全権大使はウィッテ、狡猾かつ経験もある人物でアメ

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    2026年07月02日
  • 羆嵐

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    ネタバレ

    事実に基づいた小説で、最初はノンフィクションだと思って読んでいた。
    熊の襲撃は恐ろしく、人間を食べる様子も残酷を極めるが、襲撃回数は意外に少なかった。
    それにしても、あのように生活に難儀する場所にまで集落を作らなくてもいいのではないかと思う。他に場所はなかったのか。
    あそこは完全に熊の領域だったと思う。

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    2026年07月01日
  • 羆嵐

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    『三毛別羆事件』については情報としては知っていたが詳細は不明瞭だったため、夏の文庫フェアを機に手に取ってみた。

    数日間の出来事が、まるで一瞬のように感じた。
    心理描写や情景描写が巧みで、呼んでいる私までヒヤッとしたり、恐怖を覚えるシーンがあった。

    この事件が本当に起こったと思うと…

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    2026年06月29日
  • 漂流

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    あほう鳥が島に戻ってくることと島から飛びだっていく描写が何度もでてくるたびに、また一年が経過したのか、と苦しさを感じた。島から脱出することができたことはもちろんよかったのだが、なんとなく悲しい読後感となった。

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    2026年06月19日
  • 羆嵐

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    北海道の苫前三毛別六線沢で起こった獣害史最大の惨劇羆事件。「クマ嵐だ。クマを仕とめた後には強い風が吹き荒れるという」。とても凄惨な話だった。

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    2026年06月16日
  • 漂流

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    漂流本はいろいろ読んだけど、ノンフィクションは初めてかも。悲嘆にくれる時も、念仏を唱えて諦めない姿に感動した。日本人は無宗教だと言うけれど、結局何か拠り所がある人が1番強いと思った。

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    2026年06月03日
  • 高熱隧道

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    黒部ダムに行って読もうと思った本。人間業とは思えないほどの僻地に大規模なダム、それを繋ぐ隧道、あの時代だからこその話。面白かった。

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    2026年05月24日
  • 戦艦武蔵

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    戦艦武蔵の製造から沈没まで。
    想像ベースとはいえとてもありありと書かれた記述に映像がくっきりと浮かんでくる。
    集団幻想というか、誰も理由も分からないしそれを尋ねることもできない状況で恐ろしさが全体的に漂っている。住民の様子はほとんど描かれていないが、あとがきにあるように証言した人が怯えていたとおり、戦後も続くトラウマになっていたのだろう。

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    2026年05月23日
  • 仮釈放

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    幼稚で臆病なオッサン主人公が哀れで、そしてこんなしょーもない男にも周囲が一生懸命妻帯を勧め女を充てがおうとする時代が恐ろしいね。

    松本清張みたいな硬くスッキリした読み味が気持ちよかった。

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    2026年05月18日
  • 羆嵐

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    ネタバレ

    ヒグマの被害に対する「人間の心の動き」の本である。
    個人的にはヒグマもクマも似たようなものだと思っていたが、圧倒的に違うことが この書を読むことでわかる。

    もっと恐ろしいヒグマに対して、人間がどのように挑み立ち向かうのか?ということを期待していたが、予想に反して、ヒグマの記述はそれほど多くはない。
    圧倒的力を示す残虐性と、それを餌として処理するヒグマの動きに、人間性の醜さや、 今まで口だけで大きな態度をしていた男が小さくなっていくところも、実に深みがある。
    昔はすごかったと威張っていた猟師が、圧倒的暴力の前に何の役にも立たず、女子供から信頼を失い、軽蔑の目で見られるところも実に描写がうまい。

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    2026年05月14日
  • 大本営が震えた日

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    戦争とは形のない歯車が噛み合いながら進んでいくようなもの。
    作戦や戦略ももちろんあるが、偶然、運が重なりながら結果が導かれる。

    大東亜戦争開戦に向けて日本陸海軍が入念な計画と準備を進める中で、綱渡りのように作戦遂行する様子が描かれている。

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    2026年05月12日
  • 破船

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    2022年の本屋大賞掘り出し部門で推薦されていた作品。なんとなく気になっていた作品だった。
    戸数17戸の寒村ではどの家も貧困でその日暮らし、主人公伊作の父は3年の年季奉公で廻船問屋に売られ、母と弟の磯吉、妹のかねとてると暮らしている。村は一つの共同体て村おさと老人指図役が知恵者として村を率いる。
    この貧しい漁村は冬に浜で火を焚き、近づく商船を座礁させ、その積荷を奪うことを村の秘め事として行っている。現代を生きる我々の感覚からすれば明らかに犯罪だけれど、火を焚き船を引き寄せる行為はまるで花や昆虫が擬態などで獲物を引き寄せる行為によく似ていて、実は動物的な生きようとする本能の行為なのでは?なんて思

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    2026年05月09日
  • 桜田門外ノ変(下)

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    水戸藩士の関鉄之介が主人公で、時代が変わるきっかけを作った桜田門外ノ変について書かれています。
    歴史的小説でありながら、非常に読みやすかったです。
    実行までの入念な計画を立てるますが、計画通りにいかなかったことや、事件後の逃亡生活など、授業では教えてくれなかった事柄を多々知ることができました。
    著者の主観も入っていますが、それでも史実を淡々と書いているように思えるので、ある程度は真実に沿っているのかなと思いました。
    井伊直弼の暗殺の場面は、文面からも緊張感が伝わってきて、結末は分かっていても、ドキドキしながら読みました。

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    2026年05月08日