吉村昭のレビュー一覧

  • 羆嵐

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     三毛別羆事件の全貌が語られています。人を襲うとは思いもしなかった羆が人間を食み襲う!しかも女性と子供の味を覚え、其ればかりを狙う。胎児を掻き出して襲撃する羆の描写は何度見てもきついです。
     最終的には伝説のマタギにより、その羆は狩られることで人間側に軍配が上がることになります。

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    2026年04月04日
  • 冬の鷹

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    元々歴史物はあんまり好きじゃない.
    特に,武将モノや戦記ものなど,権力とか戦争を物語化したものがコンセプト的に既に大嫌いで,そう言ったものは読んだことが無いと言っても過言ではない.

    しかし,こう言った作品は例外.
    勿論,時代背景として,鎖国であったり,それに伴う幕府の姿勢であるだとか,権力が学問に及ぼす影響であったりは出てくるのだけど,それはあくまでも市井の人々——医師や蘭学者まで含めた「非権力」側の人間の視点で描かれている.
    だからこそ,我々一般市民が推し量れる,推し量るべき「時代の空気感」として認識出来る.

    本書を手に取ったきっかけは,小学2年生の娘の公文の課題だった.
    ほんの短い引用

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    2026年04月04日
  • 逃亡

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    これは面白かったわ。ハードボイルドではあるけれど、そこまでグロい箇所は全くなく、不快さは無い。ストーリーの展開が秀逸なのと、実際の調査の上であったかもしれないフィクションが絡んでいる。戦時下の状況は考えられないほどこのような場面の過酷な日々、状況が日本国内にあっただろうことを感じた。

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    2026年04月02日
  • 大本営が震えた日

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    極秘の作戦命令書。運搬を任された少佐。移動中に起きた事故。航空機が不時着。場所は敵の領土。機密発覚の恐れ。生存者が存在するかもしれないところへの爆撃。…中立国を通過する進軍作戦。開戦前夜。先に攻撃された方と戦うというその国の首相を抱き込むために催された晩餐会。そこに首相は現れない。…北の海を出発した艦隊。存在を隠すために行われた工作。狙いは東南の海と思わせる偽装。天候が味方する。…不器用な戦争突入の下準備。数々の幸運がもたらした奇襲成功。悲惨な結末へのプロローグ。平和が脅かされ始めた今、その時を思う。

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    2026年04月01日
  • 雪の花

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    ネタバレ

    幕末の福井藩。天然痘の蔓延を防ぐことに生涯をかけた町医者の話。蘭学の知識を蓄え、牛痘の摂取により発症を防ぐ余地があることを知り、決死の思いで牛痘の種を手に入れ、福井藩に持ち帰る。漢方医学がメインストリームの時代、藩医などからの妨害を受けながらも必死に種を繋いでいく。

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    2026年03月30日
  • 羆嵐

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    (息子へ)
    部長おすすめの本。

    くまが集落をおそう話。
    マンガ「銀牙」の実写版といったところ。
    おそらくは「銀牙」がこの本を参考にしている。。。

    実話をもとにしているため、くまに襲われた人は、6名。
    くまを倒すその場面も、壮絶に戦い争うという訳ではない。

    下手な脚色がない分、その生々しさから、実際の感じただろう恐怖が伝わってくる。

    生身の人間は貧弱で、生きるか死ぬかの場面というのは、本当に恐怖を感じるのだ。ということを、この本は痛烈に教えてくれた。

    かなり古い本だが、この本は、未来永劫、色あせることはないだろう。

    いろんな意味で「生」なところを感じる本。
    ぜひ、読んでおいて欲しい。

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    2026年03月29日
  • 漂流

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    絶望的な無人島で、人はどう「神」を生み出すのか。

    舟材の漂着を天に乞い、偶然に命を託す。拾い集めた七福神の像を、混沌とした島の中に祀る。それは単なる神頼みじゃない。壊れそうな精神を繋ぎ止めるための「秩序」の再構築。

    仲間の骨を拾い、形なき存在に語りかけ続ける12年。

    その淡々とした積み重ねの中に、宗教が生まれる根源的な瞬間を見た。「信じる」ことは、生き抜くための技術。

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    2026年03月20日
  • 羆嵐

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    「破船」がおもしろかったので、吉村昭2冊目。本作もおもしろかったー。
    読みやすい文章なのに、圧倒的にわかりやすい。自然の厳しさと恐ろしさ、官憲と村民、熊撃ちの心境や人間関係がありありと浮かんでくる。
    藁葺きみたいな粗末作りの家に居て、熊がくるかもしれないという状況…本当に怖すぎる。

    Wikipediaで後日談を読むと、本件を目の当たりにした村の子どもがその後熊撃ちになったとか。

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    2026年03月18日
  • 三陸海岸大津波

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    実地に赴き足で稼いだ取材内容が淡々と綴られている。
    映像や科学的な記録がないに等しい時代。当時を知る人がいない今となってはとてつもない資料的価値があるだろう。
    可能な限りのデータ情報と人々の体験談の両面から浮かび上がる津波の実態。
    取材により導き出された考察がいかに真実に迫っていたか、3.11を経験したからこそよくわかる。
    多角的、立体的な視点が素晴らしい。

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    2026年03月10日
  • 新装版 海も暮れきる

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    「咳をしても一人」が代表句の自由律俳人の尾崎放哉の最晩年を描いた伝記文学。

    彼の詠の自由さ、滑稽さから気になって本作を手にしましたが最期までを知ってしまうと、彼の詠んだ歌に深みが滲んでくるというか

    どう仕様もないくらい酒狂わされたダメ人間でしたが、永く愛される理由の一端を知ることができました

    今年は尾崎放哉が亡くなって丁度没後100年らしく、知らずにそのタイミングで本作を読んだことも勝手ながら運命めいたものも感じました

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    2026年03月09日
  • 破船

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    淡々とした文章の中に、貧しく厳しい村の生活と、お船様が来た後の高揚した村の変化が目に浮かぶ。悲惨な最後も…。
    お船様という話に元ネタがあるのかは知らないけれど、かつての日本にはこういうことがあったのだろう、こうしなければ生きて行けない所もあったのだろうと思わせられた。
    文庫本の解説が的確に本書を表していた。吉村昭は初めて読んだけど、他の本も読んでみたい。

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    2026年03月05日
  • 漂流

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    タイトルから想像できるようにサバイバルもの。
    不毛の火山島が舞台なので、よくあるサバイバルものの大衆映画とは全く違って、できることが限られてて、無人島生活を謳歌するような内容では全くない。

    干し肉作ったり、池作ったり、果てには船まで作ってしまう。
    厳しい環境の中、少しの諍いはあっても協力して生活して、生きることを諦めない忍耐力に脱帽。

    念仏を唱えて精神の安定をはかったり、船の材料になるものを発見するたびに「神仏のおさずけものだ」と感謝したり、病に臥せってしまった仲間を甲斐甲斐しく世話し、亡くなった後も埋葬しお墓を作って丁重に弔う姿勢は、宗教関係なく尊く、こういう人達だったからこそ報われたの

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    2026年03月04日
  • 雪の火祭り 吉村昭初期中篇・短篇集

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     二〇二五年十月に河出文庫から出た『死まで』の陰鬱さは相当なものだった。その二ヶ月後に出たこの文庫も無茶苦茶暗い。中心となっているテーマは今回も家族の崩壊。その崩壊しかけた家族が新たな形をみつけていくような「星の夜の会話」(pp117-138)や、崩壊した家族を捨てて上京し自分なりの生き方を見つけていく表題作(pp149-287)にはわずかながら希望がのぞく。でも一番印象に残ったのは巻頭に置かれている主人公の自分勝手さが本当に酷い「緑雨」(pp7-39)。

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    2026年03月29日
  • 零式戦闘機

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    ジブリ映画『風立ちぬ』を経て、堀越二郎著『零戦』を読んだ記憶と記録(読メ)あり。ゼロファイターとして連合国軍に恐れられた零式艦上戦闘機が、大日本帝国海軍の無理難題を、堀越二郎を始めとした三菱の技術陣が克服して誕生する筆致はさすが吉村氏だ。それだけではなく、本書は零戦を軸に日中戦争から太平洋戦争を見る戦史にもなっている。防御を度外視した構造だけでもダメなのに、戦争末期にまで零戦を製造しなければならなかった日本の軍事・産業力が悲しい。

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    2026年03月02日
  • 三陸海岸大津波

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    出身地では、子供の頃から30年おきに津波は来ると言われていた。えー、本当?と友達と言い合っていた。東日本大震災が起きて、未曾有の大津波が起きたとき、いや本当だったんだ…とそれを教えてくれた塾の先生の顔が浮かんだ。
    本書では明治、昭和8年とチリ沖地震の3つの記録が書かれている。懐かしい地名がたくさん出てくるし、淡々とした表現なのだが、津波の威力がこれでもかと伝わってくる。
    チリ沖地震が、本書では一番最近の津波で被害も他の2回と比べて小さかっただけに、充分な対策で津波の被害は減っていくだろうというような締めくくり方だったが、後書にある講演会からわずか数年後にまた凄まじい津波が襲ったことを吉村昭先生

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    2026年02月28日
  • 天に遊ぶ

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    ネタバレ

    ・あらすじ
    全二十一編の短編集。
    登場人物たちの人生の一部を描いた短編、作者の取材旅行を題材にした短編、幼少期の思い出を綴った短編など。

    ・感想
    さまざまな人間がいた。
    好きだったのは香典袋、読経、サーベル、居間にて(ちょっと怖い)、鯉のぼり(辛い)、カフェー(クソ野郎)、観覧車(クソ野郎2)

    読んでいてちょっとよく分からないなと思ったのは西瓜。
    吉村先生、あの作品は一体どう解釈したらいいんでしょうか?
    私にはわかりませんでした…!

    吉村先生は入念に取材をした記録作品を書かれるけども、ただ記録なだけじゃなくそこで「生きていた人間」を真摯に描いてる。
    吉村先生はどこまでも「人間」を書きたい

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    2026年02月15日
  • 雪の火祭り 吉村昭初期中篇・短篇集

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    ネタバレ

    著者の初期である昭和29年から46年にかけて書かれた中短編集。

    結核を患った著者の心情や独自の健康法も組み入れられている。

    これまで読んできた「破獄」、「漂流」、「三陸海岸大津波」、「桜田門外ノ変」などから、硬質な文体で男の世界を描いたり、静謐なタッチで淡々と綴るのが著者の作風であるという概念を持っていた。

    しかし、この作品集には、そういった要素はなく、ストーリー性が豊かで読みやすく、分かりやすいものばかりだ。

    ラストに出てくるタイトル作の中編が特に面白く、あっという間に読んでしまった。
    義母とうまくいっていない女子高生がシャンソン歌手を目指して上京、苦労しながら演歌歌手になるが、受刑

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    2026年02月12日
  • 羆嵐

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    ネタバレ

    満足な明かりがない中、一瞬だけ見えた羆の姿…恐怖でしかないですね。
    衣食住の問題を乗り越えた後に、羆と邂逅したというのも辛い。
    為す術もなく身近な人が食べられる瞬間に立ち会うだなんて、想像出来ません。
    知識がない中避難するため、村民がひたすら雪の上を裸足で歩いていた描写に、当時のなりふり構っていられなさが伝わります。
    羆という脅威とは別に、夜や物音への恐怖や集団に対して失望していくリアルな人間模様も印象的でした。
    今でこそ熊は危険という意識が広まっていますが、いざ遭遇したら絶対恐怖で動けないだろうな…。

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    2026年02月08日
  • 雪の花

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    ほぼ伝記と言っても良いような話しっぷり。まぁそれはそれとして、天然痘のワクチンの話は色んな話があるけど、今回は福井藩。という以外はある意味いつもの偏見による妨害と迫害の物語なんだけど、しかし現代でもワクチンに対する偏見は根強いわけで、江戸の昔から変わらんのよなぁ、と感慨深い。
    この不作為バイアスに対して人は変われるものだろうか。仕事をやってても感じるところで、さてはて永遠のテーマよの。

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    2026年02月07日
  • 桜田門外ノ変(下)

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    本書を読み終わってまず感じたのは、なだらかで高い山を登って降りた、という印象だった。
    主人公は水戸藩士関鉄之介。本書の前半では、水戸の一藩士に過ぎない彼がなぜ最高権力者を暗殺する首謀者の一人になったのかが語られる。水戸藩への弾圧。安政の大獄。鉄之介の怒りが読みながら伝わってくる。そして大事件。教科書ではここだけが語られ、我々はここだけ知っている。だが本書はここから長い長い後半に入る。暗殺は成功したにもかかわらず、関はわずかな仲間と過酷な逃避行を続けることになる。吉村昭ファンの私としては、待ってました!である。高野長英でもあった「日本全国を逃げ回る」話。これを書かせたら吉村昭の右に出る人はいな

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    2026年01月31日