吉村昭のレビュー一覧

  • 白い遠景

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    日暮里生まれ。戦時に育つ。空襲を受け、自宅が焼失。仮宿に住み、隅田川に架かる橋を渡る。欄干にもたれ遺体を見下ろす。戦争が罪悪に思えなかったその頃。庶民こそが権力化した怪物。…作家となり読む側から書く側になる。実在感のない読者。本当に自分の著作を求める人がいるのか?小説を書くとは密室で贋金を造っているようなもの。集団自殺を題材にした作品を書いていても、自分の命は大事にする。記録文学というより戦史小説。証言者の語る事実の方を重くみる。…数々の名作を残した著者の原点を浮き彫りにする。少しだけ近づけた感じがする。

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    2026年05月01日
  • 破船

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    ネタバレ

    地理的に厳しい条件にある村の信じられないほど貧しい、歯を食いしばるような生活の記述で吉村昭に叶うものはないな。

    大人の仲間入りをしたばかりの伊作のイノセントな目線を通して描写される生老病死の厳しさに一気に引き込まれる。
    金がない、物がない故に連綿と続き無罪化される略奪行為。
    情報がない、知識がない故に一気に崩れる共同体。

    派手な描写は何一つ無いのに、吉村作品を読むたびに(疫病含む)自然の前に無力すぎる人間の業を強烈に感じてたまらなくなる。

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    2026年04月30日
  • 破獄

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    脱獄を繰り返す男の脱獄劇です。
    強靭な身体と高い頭脳を持つ男が、各刑務所で脱走を繰り返すという話で、実際存在した人物をモデルにしています。
    とにかく看守たちは意地でも脱獄を防ごうと試行錯誤するのですが、その上で脱獄してしまうというスーパー脱獄犯です。
    文章はカチカチのお硬い系なので、若干読むのに苦戦しますが、読み続けて慣れてくれば気にならなくなりました。

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    2026年04月28日
  • 羆嵐

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    Wikipediaに事件の詳細が載っている。以前、事前情報まったくなく読んでしまい…とても衝撃を受けたことがある。
    事件を元にした小説ではあるけれど、こちらには人の心情なども書かれているので…重い気持ちになりつつも、読み進める。女の肉、という表現が怖すぎる。

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    2026年04月26日
  • 冬の道 吉村昭自選中期短篇集

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    ネタバレ

    ・あらすじ
    吉村昭の中期短編集10篇。

    ・感想
    どれも面白かった!
    「鳳仙花」「休暇」「苺」「鋏」はどれも刑務官や篤志家(と言っていいのかな?服役中の受刑者を社会的に支える人たち)の話。
    この中だと特に「休暇」が重たかったかも…。
    鋏に出てくる片桐も不気味な印象があったな。
    なにあいつ、慇懃無礼なのかよくわからん。
    「無期刑を受けた犯罪者」という事実が余計に不気味さを醸し出してた。
    あんなやつ一刻も早く追い出したくなるよw

    「同情心を持たず一線引きつつも冷徹な視線で物事を観察する語り手」は読んでてストレスなくていい。

    吉村先生のお父さん三部作は時代を感じたw
    明治〜昭和初期の人間だもんな

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    2026年04月24日
  • 漂流

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    ネットでこの本のモデルになった人物のことを知る。
    長平。江戸中期の土佐のひと。
    漂着した孤島の鳥島でサバイバル生活を13年間。
    後年、さらに漂着した二つのグループも合流して、船を作り、ぶじに生還したという。
    その際、彼は島に生活道具や生活方法を記した書置きを残して、それがのちにジョン万次郎を救うことになったという。(←ジョン万次郎の部分は本書にはなく、史実なのかあやしいが)
    凄すぎる。
    漂流もの、島もの大好きの私が、この人物のことは全然知らなかったので、まずは、こんな人がいたんだ!と思った。
    怖すぎて面白すぎて、半日で一気読みでした。

    吉村は冒頭で、太平洋戦争の終結を知らぬまま、ジャングルに

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    2026年04月24日
  • ふぉん・しいほるとの娘(下)

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    ネタバレ

    読み応えのある長編歴史小説

    シーボルトとその娘に興味があり
    読み進めていった。
    シーボルトが日本に与えた影響は
    非常に大きく
    お滝との子供が成長していく姿が
    精細に描写されていく。

    一気に読める歴史小説である。

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    2026年04月19日
  • 破船

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    面白かったです。
    今よりだいぶ倫理観・価値観・理不尽さが違っていてやるせなかったです。
    自分が住んでいるのは山間部ですが、ご先祖さまはどんな暮らしをして、命を繋いでいったのか興味を持ちました。

    この作品は人間のエゴや業の話に括られるのでしょうか。
    個人的には命や命を繋いでいく使命の話のような気がしました。
    この作者の他の作品も読んでみようと思います。

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    2026年04月15日
  • 高熱隧道

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    ノンフィクションというのが信じられないくらい壮絶な仕事内容。現代では考えられない忍耐力と根性と主従関係とお金の力。いや、考えられなくないのかもしれないけど。残業なし、有給、フレックス、〇〇ハラスメント。ホワイト企業とブラック企業。間違いなくこの建設会社は現代ではブラックであるが、そんなことを言っていたら発電所が作れないとなると、ブラックであればあるほど、意義のある仕事のような矛盾がある。当時スコップを手に瓦礫をかき集めていた彼らもやりがいとか、これが社会のためとか、国が豊かになるためとか、全く思ってないのではないか。単に生きたいくため。家族を食わせていくため。この想いだけでここまで過酷な仕事が

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    2026年04月15日
  • 天に遊ぶ

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    時代や場所が移り変わる中での人間心理の不変さに気付かされた。本当に読みやすい。著者曰く『超短編』らしい。

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    2026年04月12日
  • 羆嵐

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    昔の作品のため、少々文章が難しい。
    銃をもって意気揚々に熊を仕留めようと集まる大勢の大人たちが、実際の熊の恐ろしさを間近にして絶望するのがリアルだった。

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    2026年04月11日
  • ふぉん・しいほるとの娘(上)

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    シーボルト事件の全容を知った。かれの好奇心の大きさと当時の日本の国禁に対する無頓着さを感じた。罪とは知りつつ殺されることはないと知っていた方かもしれない。お滝との間に生まれたイネは女性としてかつ混血児としての宿命を背負い生きていかねばならないことを自覚して、故郷の長崎から遠くシーボルトの弟子だった二宮敬作の住む伊予まで旅に出るが、周囲の人々の親切で山越え海越え無事辿り着く。2026.4.7

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    2026年04月07日
  • 羆嵐

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     三毛別羆事件の全貌が語られています。人を襲うとは思いもしなかった羆が人間を食み襲う!しかも女性と子供の味を覚え、其ればかりを狙う。胎児を掻き出して襲撃する羆の描写は何度見てもきついです。
     最終的には伝説のマタギにより、その羆は狩られることで人間側に軍配が上がることになります。

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    2026年04月04日
  • 冬の鷹

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    元々歴史物はあんまり好きじゃない.
    特に,武将モノや戦記ものなど,権力とか戦争を物語化したものがコンセプト的に既に大嫌いで,そう言ったものは読んだことが無いと言っても過言ではない.

    しかし,こう言った作品は例外.
    勿論,時代背景として,鎖国であったり,それに伴う幕府の姿勢であるだとか,権力が学問に及ぼす影響であったりは出てくるのだけど,それはあくまでも市井の人々——医師や蘭学者まで含めた「非権力」側の人間の視点で描かれている.
    だからこそ,我々一般市民が推し量れる,推し量るべき「時代の空気感」として認識出来る.

    本書を手に取ったきっかけは,小学2年生の娘の公文の課題だった.
    ほんの短い引用

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    2026年04月04日
  • 逃亡

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    これは面白かったわ。ハードボイルドではあるけれど、そこまでグロい箇所は全くなく、不快さは無い。ストーリーの展開が秀逸なのと、実際の調査の上であったかもしれないフィクションが絡んでいる。戦時下の状況は考えられないほどこのような場面の過酷な日々、状況が日本国内にあっただろうことを感じた。

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    2026年04月02日
  • 大本営が震えた日

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    極秘の作戦命令書。運搬を任された少佐。移動中に起きた事故。航空機が不時着。場所は敵の領土。機密発覚の恐れ。生存者が存在するかもしれないところへの爆撃。…中立国を通過する進軍作戦。開戦前夜。先に攻撃された方と戦うというその国の首相を抱き込むために催された晩餐会。そこに首相は現れない。…北の海を出発した艦隊。存在を隠すために行われた工作。狙いは東南の海と思わせる偽装。天候が味方する。…不器用な戦争突入の下準備。数々の幸運がもたらした奇襲成功。悲惨な結末へのプロローグ。平和が脅かされ始めた今、その時を思う。

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    2026年04月01日
  • 雪の花

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    ネタバレ

    幕末の福井藩。天然痘の蔓延を防ぐことに生涯をかけた町医者の話。蘭学の知識を蓄え、牛痘の摂取により発症を防ぐ余地があることを知り、決死の思いで牛痘の種を手に入れ、福井藩に持ち帰る。漢方医学がメインストリームの時代、藩医などからの妨害を受けながらも必死に種を繋いでいく。

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    2026年03月30日
  • 羆嵐

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    (息子へ)
    部長おすすめの本。

    くまが集落をおそう話。
    マンガ「銀牙」の実写版といったところ。
    おそらくは「銀牙」がこの本を参考にしている。。。

    実話をもとにしているため、くまに襲われた人は、6名。
    くまを倒すその場面も、壮絶に戦い争うという訳ではない。

    下手な脚色がない分、その生々しさから、実際の感じただろう恐怖が伝わってくる。

    生身の人間は貧弱で、生きるか死ぬかの場面というのは、本当に恐怖を感じるのだ。ということを、この本は痛烈に教えてくれた。

    かなり古い本だが、この本は、未来永劫、色あせることはないだろう。

    いろんな意味で「生」なところを感じる本。
    ぜひ、読んでおいて欲しい。

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    2026年03月29日
  • 漂流

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    絶望的な無人島で、人はどう「神」を生み出すのか。

    舟材の漂着を天に乞い、偶然に命を託す。拾い集めた七福神の像を、混沌とした島の中に祀る。それは単なる神頼みじゃない。壊れそうな精神を繋ぎ止めるための「秩序」の再構築。

    仲間の骨を拾い、形なき存在に語りかけ続ける12年。

    その淡々とした積み重ねの中に、宗教が生まれる根源的な瞬間を見た。「信じる」ことは、生き抜くための技術。

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    2026年03月20日
  • 羆嵐

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    「破船」がおもしろかったので、吉村昭2冊目。本作もおもしろかったー。
    読みやすい文章なのに、圧倒的にわかりやすい。自然の厳しさと恐ろしさ、官憲と村民、熊撃ちの心境や人間関係がありありと浮かんでくる。
    藁葺きみたいな粗末作りの家に居て、熊がくるかもしれないという状況…本当に怖すぎる。

    Wikipediaで後日談を読むと、本件を目の当たりにした村の子どもがその後熊撃ちになったとか。

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    2026年03月18日