吉村昭のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
元々歴史物はあんまり好きじゃない.
特に,武将モノや戦記ものなど,権力とか戦争を物語化したものがコンセプト的に既に大嫌いで,そう言ったものは読んだことが無いと言っても過言ではない.
しかし,こう言った作品は例外.
勿論,時代背景として,鎖国であったり,それに伴う幕府の姿勢であるだとか,権力が学問に及ぼす影響であったりは出てくるのだけど,それはあくまでも市井の人々——医師や蘭学者まで含めた「非権力」側の人間の視点で描かれている.
だからこそ,我々一般市民が推し量れる,推し量るべき「時代の空気感」として認識出来る.
本書を手に取ったきっかけは,小学2年生の娘の公文の課題だった.
ほんの短い引用 -
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(息子へ)
部長おすすめの本。
くまが集落をおそう話。
マンガ「銀牙」の実写版といったところ。
おそらくは「銀牙」がこの本を参考にしている。。。
実話をもとにしているため、くまに襲われた人は、6名。
くまを倒すその場面も、壮絶に戦い争うという訳ではない。
下手な脚色がない分、その生々しさから、実際の感じただろう恐怖が伝わってくる。
生身の人間は貧弱で、生きるか死ぬかの場面というのは、本当に恐怖を感じるのだ。ということを、この本は痛烈に教えてくれた。
かなり古い本だが、この本は、未来永劫、色あせることはないだろう。
いろんな意味で「生」なところを感じる本。
ぜひ、読んでおいて欲しい。 -
Posted by ブクログ
タイトルから想像できるようにサバイバルもの。
不毛の火山島が舞台なので、よくあるサバイバルものの大衆映画とは全く違って、できることが限られてて、無人島生活を謳歌するような内容では全くない。
干し肉作ったり、池作ったり、果てには船まで作ってしまう。
厳しい環境の中、少しの諍いはあっても協力して生活して、生きることを諦めない忍耐力に脱帽。
念仏を唱えて精神の安定をはかったり、船の材料になるものを発見するたびに「神仏のおさずけものだ」と感謝したり、病に臥せってしまった仲間を甲斐甲斐しく世話し、亡くなった後も埋葬しお墓を作って丁重に弔う姿勢は、宗教関係なく尊く、こういう人達だったからこそ報われたの -
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出身地では、子供の頃から30年おきに津波は来ると言われていた。えー、本当?と友達と言い合っていた。東日本大震災が起きて、未曾有の大津波が起きたとき、いや本当だったんだ…とそれを教えてくれた塾の先生の顔が浮かんだ。
本書では明治、昭和8年とチリ沖地震の3つの記録が書かれている。懐かしい地名がたくさん出てくるし、淡々とした表現なのだが、津波の威力がこれでもかと伝わってくる。
チリ沖地震が、本書では一番最近の津波で被害も他の2回と比べて小さかっただけに、充分な対策で津波の被害は減っていくだろうというような締めくくり方だったが、後書にある講演会からわずか数年後にまた凄まじい津波が襲ったことを吉村昭先生 -
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ネタバレ・あらすじ
全二十一編の短編集。
登場人物たちの人生の一部を描いた短編、作者の取材旅行を題材にした短編、幼少期の思い出を綴った短編など。
・感想
さまざまな人間がいた。
好きだったのは香典袋、読経、サーベル、居間にて(ちょっと怖い)、鯉のぼり(辛い)、カフェー(クソ野郎)、観覧車(クソ野郎2)
読んでいてちょっとよく分からないなと思ったのは西瓜。
吉村先生、あの作品は一体どう解釈したらいいんでしょうか?
私にはわかりませんでした…!
吉村先生は入念に取材をした記録作品を書かれるけども、ただ記録なだけじゃなくそこで「生きていた人間」を真摯に描いてる。
吉村先生はどこまでも「人間」を書きたい -
Posted by ブクログ
ネタバレ著者の初期である昭和29年から46年にかけて書かれた中短編集。
結核を患った著者の心情や独自の健康法も組み入れられている。
これまで読んできた「破獄」、「漂流」、「三陸海岸大津波」、「桜田門外ノ変」などから、硬質な文体で男の世界を描いたり、静謐なタッチで淡々と綴るのが著者の作風であるという概念を持っていた。
しかし、この作品集には、そういった要素はなく、ストーリー性が豊かで読みやすく、分かりやすいものばかりだ。
ラストに出てくるタイトル作の中編が特に面白く、あっという間に読んでしまった。
義母とうまくいっていない女子高生がシャンソン歌手を目指して上京、苦労しながら演歌歌手になるが、受刑 -
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本書を読み終わってまず感じたのは、なだらかで高い山を登って降りた、という印象だった。
主人公は水戸藩士関鉄之介。本書の前半では、水戸の一藩士に過ぎない彼がなぜ最高権力者を暗殺する首謀者の一人になったのかが語られる。水戸藩への弾圧。安政の大獄。鉄之介の怒りが読みながら伝わってくる。そして大事件。教科書ではここだけが語られ、我々はここだけ知っている。だが本書はここから長い長い後半に入る。暗殺は成功したにもかかわらず、関はわずかな仲間と過酷な逃避行を続けることになる。吉村昭ファンの私としては、待ってました!である。高野長英でもあった「日本全国を逃げ回る」話。これを書かせたら吉村昭の右に出る人はいな