吉村昭のレビュー一覧

  • 破船

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    淡々とした文章の中に、貧しく厳しい村の生活と、お船様が来た後の高揚した村の変化が目に浮かぶ。悲惨な最後も…。
    お船様という話に元ネタがあるのかは知らないけれど、かつての日本にはこういうことがあったのだろう、こうしなければ生きて行けない所もあったのだろうと思わせられた。
    文庫本の解説が的確に本書を表していた。吉村昭は初めて読んだけど、他の本も読んでみたい。

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    2026年03月05日
  • 漂流

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    タイトルから想像できるようにサバイバルもの。
    不毛の火山島が舞台なので、よくあるサバイバルものの大衆映画とは全く違って、できることが限られてて、無人島生活を謳歌するような内容では全くない。
    干し肉作ったり、池作ったり、果てには船まで作ってしまう。
    厳しい環境の中、少しの諍いはあっても協力して生活して、生きることを諦めない忍耐力に脱帽。
    念仏を唱えて精神の安定をはかったり、船の材料になるものを発見するたびに「神仏のおさずけものだ」と感謝したり、病に臥せってしまった仲間を甲斐甲斐しく世話し、亡くなった後も埋葬しお墓を作って丁重に弔う姿勢は、宗教関係なく尊く、こういう人達だったからこそ報われたのだな

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    2026年03月04日
  • 零式戦闘機

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    ジブリ映画『風立ちぬ』を経て、堀越二郎著『零戦』を読んだ記憶と記録(読メ)あり。ゼロファイターとして連合国軍に恐れられた零式艦上戦闘機が、大日本帝国海軍の無理難題を、堀越二郎を始めとした三菱の技術陣が克服して誕生する筆致はさすが吉村氏だ。それだけではなく、本書は零戦を軸に日中戦争から太平洋戦争を見る戦史にもなっている。防御を度外視した構造だけでもダメなのに、戦争末期にまで零戦を製造しなければならなかった日本の軍事・産業力が悲しい。

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    2026年03月02日
  • 三陸海岸大津波

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    出身地では、子供の頃から30年おきに津波は来ると言われていた。えー、本当?と友達と言い合っていた。東日本大震災が起きて、未曾有の大津波が起きたとき、いや本当だったんだ…とそれを教えてくれた塾の先生の顔が浮かんだ。
    本書では明治、昭和8年とチリ沖地震の3つの記録が書かれている。懐かしい地名がたくさん出てくるし、淡々とした表現なのだが、津波の威力がこれでもかと伝わってくる。
    チリ沖地震が、本書では一番最近の津波で被害も他の2回と比べて小さかっただけに、充分な対策で津波の被害は減っていくだろうというような締めくくり方だったが、後書にある講演会からわずか数年後にまた凄まじい津波が襲ったことを吉村昭先生

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    2026年02月28日
  • 天に遊ぶ

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    ネタバレ

    ・あらすじ
    全二十一編の短編集。
    登場人物たちの人生の一部を描いた短編、作者の取材旅行を題材にした短編、幼少期の思い出を綴った短編など。

    ・感想
    さまざまな人間がいた。
    好きだったのは香典袋、読経、サーベル、居間にて(ちょっと怖い)、鯉のぼり(辛い)、カフェー(クソ野郎)、観覧車(クソ野郎2)

    読んでいてちょっとよく分からないなと思ったのは西瓜。
    吉村先生、あの作品は一体どう解釈したらいいんでしょうか?
    私にはわかりませんでした…!

    吉村先生は入念に取材をした記録作品を書かれるけども、ただ記録なだけじゃなくそこで「生きていた人間」を真摯に描いてる。
    吉村先生はどこまでも「人間」を書きたい

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    2026年02月15日
  • 羆嵐

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    ネタバレ

    満足な明かりがない中、一瞬だけ見えた羆の姿…恐怖でしかないですね。
    衣食住の問題を乗り越えた後に、羆と邂逅したというのも辛い。
    為す術もなく身近な人が食べられる瞬間に立ち会うだなんて、想像出来ません。
    知識がない中避難するため、村民がひたすら雪の上を裸足で歩いていた描写に、当時のなりふり構っていられなさが伝わります。
    羆という脅威とは別に、夜や物音への恐怖や集団に対して失望していくリアルな人間模様も印象的でした。
    今でこそ熊は危険という意識が広まっていますが、いざ遭遇したら絶対恐怖で動けないだろうな…。

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    2026年02月08日
  • 雪の花

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    ほぼ伝記と言っても良いような話しっぷり。まぁそれはそれとして、天然痘のワクチンの話は色んな話があるけど、今回は福井藩。という以外はある意味いつもの偏見による妨害と迫害の物語なんだけど、しかし現代でもワクチンに対する偏見は根強いわけで、江戸の昔から変わらんのよなぁ、と感慨深い。
    この不作為バイアスに対して人は変われるものだろうか。仕事をやってても感じるところで、さてはて永遠のテーマよの。

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    2026年02月07日
  • 桜田門外ノ変(下)

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    本書を読み終わってまず感じたのは、なだらかで高い山を登って降りた、という印象だった。
    主人公は水戸藩士関鉄之介。本書の前半では、水戸の一藩士に過ぎない彼がなぜ最高権力者を暗殺する首謀者の一人になったのかが語られる。水戸藩への弾圧。安政の大獄。鉄之介の怒りが読みながら伝わってくる。そして大事件。教科書ではここだけが語られ、我々はここだけ知っている。だが本書はここから長い長い後半に入る。暗殺は成功したにもかかわらず、関はわずかな仲間と過酷な逃避行を続けることになる。吉村昭ファンの私としては、待ってました!である。高野長英でもあった「日本全国を逃げ回る」話。これを書かせたら吉村昭の右に出る人はいな

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    2026年01月31日
  • 新装版 海も暮れきる

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    ネタバレ

    尾崎放哉の死の8ヶ月前からの話。すでに金もなく体も弱っているのに金があれば酒を飲み、助けてくれる人たちを逆恨みしたりと、兎に角放哉が駄目で弱い。それでも死が近づいてくる後半になってくると、自分勝手な放哉の行動も悲しく感じてくる。一二や井和泉、シゲさんなど厳しくしたり助けてくれたりする人たちの存在が有りがたい。死後に放哉の庵を訪れた妻の話なども心に残る。吉村昭はやはり良い。

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    2026年01月28日
  • 羆嵐

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    2015年に初めて読んだが、いまだにその時の衝撃と恐怖が忘れられない。
    熊の本はいろいろ読んでるが、吉村昭さんの文章は迫力と臨場感が違う。
    熊をより深く知るために、全ての人に読んでもらいたい一冊。

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    2026年01月16日
  • 羆嵐

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    本当に背筋が凍る描写が続く、、人間の里に羆が出たのではなく、羆の巣に人間が放り込まれた感覚、人間が羆を狩にいくところから、羆の餌になった瞬間が克明に描写され、静けさが逆に恐ろしさを増幅する、そんな恐怖を味わえる

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    2026年01月14日
  • 羆嵐

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    令和現在、クマ被害が深刻な社会問題になっている。東北に住む身としては切迫した危機で、マジでまったく人ごとではない。ネット上では「日本三大Wikipedia文学」の題材の一つとしても有名な、大正時代に実際にあった熊害事件「三毛別羆事件」を扱う本書を手に取る。

    語り口は小説というよりもドキュメンタリーに近く、過度に恐怖を煽る演出やパニックホラー的な脚色がない。淡々と事実を積み重ねていく構成により恐怖や緊張感、残酷さがより際立ち、引き込まれる。弱く愚かな人間に立ちはだかる大自然へ畏敬の念を抱く。

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    2026年01月13日
  • 漂流

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    語り口が淡々としていることで、却って長平の心境を想像してしまう。彼が島で過ごした月日を思うと呆然とする。

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    2026年01月11日
  • 漂流

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    ポインティがおすすめしていたため拝読
    最初は厳しいかもと思っていたが、島に漂着してからはおもしろく読み進められた。

    長平の自分を律する心とリーダーシップすごい
    諦めない気持ちは大事だと学ぶ一方で、自分は自殺しちゃうんだろうなとも思う。

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    2026年01月10日
  • 新装版 海も暮れきる

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    尾崎放哉の俳句に関心を持つうちに、吉村昭が伝記的小説を書いていると知り、読んでみた。
    あまり調べずに読んだので、てっきり人生が書かれているのだろうと思っていたら、死ぬまで過ごした小豆島での8か月間の記録であった。
    「死に際文学」とでも呼ぼうか。そういえば、あまりそういうものを読んだことがなかった。「イワン・イリッチの死」とか、少し毛色が違うかもしれないが「ラーゲリから来た遺書」くらいだろうか。
    アラフォーなので、そろそろ、こういうのを読んでいくのも必要なのかなと思った。

    放哉は、アルコール依存症だったのかと思った。惜しい才能をなくした。亡くなったとき、わずか41歳であった。私より少し年上なだ

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    2026年01月10日
  • 星への旅

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    死にまつわる短編集。登場人物が皆一癖ある人ばかりだし、死体の話や死ぬ直前までの話が並んでいて、救いがない。それに吉村氏の描写がとても美しいがため頭の中で勝手に映像化されてしまって、読んでいてさらに鬱々としてしまった。
    でも、小説だからこそこんなブルーになる話を世に生み出せるんだろうなあ。星への旅、という美しいタイトルで勘違いして手に取る人も居そう…
    死の空虚さをひたすら感じた作品。あまり再読したくないけど、こういう話を一度読んでおいて良かったと思う。しかしホントに読みながら鬱々したので、星5を付けたくない。4にしとこ…

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    2026年01月05日
  • 漂流

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    ネタバレ

    実話だと知っていて読んだが、それでも驚いた。
    ただ脱出を目指すだけでない、みんなで酒を造るなどの生活感あふれる描写が良かった。
    この作者さんのほかの作品も…と思わせてくれる1冊。

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    2026年01月02日
  • 彰義隊

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    破獄や羆嵐等で有名な吉村昭の本。彰義隊というタイトルではあるが、上野戦争で隊士が籠った寛永寺の山主であった輪王寺親王にフォーカスした小説である。幕末もので皇族にフォーカスしたものは少なく、新たな視点を得ることができた。今後、彰義隊そのものにフォーカスした小説があれば合わせて読んでみたい。

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    2025年12月31日
  • 羆嵐

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    熊による被害が多く猟師によって射殺する、熊が可哀想、などと言う人がいる。これを読んでもそんな事が言えますか。人を喰う熊は害でしかないでしょう。人間を守るためには殺すしかないでしょう。闇雲に撃つ訳ではなく、熊の賢さ、強さへの敬意は忘れてはいけない。

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    2025年12月31日
  • 逃亡

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    面白くて一気に読んでしまいました。
    主人公の後ろめたさに感情移入して、私も何かから逃亡しているような心地がしました。下腹部がゾワゾワするような感覚がいまも残っています。

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    2025年12月30日