吉村昭のレビュー一覧
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「吉村昭」のノンフィクション作品『零式戦闘機』を読みました。
『東京の下町』、『歴史の影絵』に続き「吉村昭」作品です。
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日本が誇った名機を通して戦争の本質を抉り出した記録文学の大傑作。
昭和十五年=紀元二六〇〇年を記念し、その末尾の「0」をとって、零式艦上戦闘機と命名され、ゼロ戦とも通称される精鋭機が誕生した。
だが、当時の航空機の概念を越えた画期的な戦闘機も、太平洋戦争の盛衰と軌を一にするように、外国機に対して性能の限界をみせてゆき……。
機体開発から戦場での悲運までを、設計者、技師、操縦者の奮闘と哀歓とともに綴った記録文学の大巨編。
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ネタバレ面白かったです。 映画で203高地とか日本海海戦とか観ていますがこの本を読むと又印象が変わりました。 特に変わったところは①乃木大将の駄目さ。 自分や部下の士官を可愛がる?のか臆病なのか前線に出ていないから現状認識が出来ない結果有効な手を打てず兵力を無駄に消耗させてしまった。(戦死した兵隊さんは犬死と言わざるを得ない。)児玉源太郎が戦地に来てその光景を目の当たりにしたら激怒するのも無理はない。②ロシア海軍の航海能力の凄さ。日本海海戦であっけなく負けたように思ったいたが、遥々ロシアからアフリカ大陸を回って日本海まで航海したのは素晴らしい。今の時代では原子力を使えば燃料に不安はないがあの時代は食料
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米村万里さんの書評がきっかけで読んでみた一冊。
恥ずかしながら、小村寿太郎という名前もポーツマス条約という名詞も「教科書に載ってたなぁ」くらいの記憶しかなかったけれど、こんなにも熾烈な駆け引きがあったとことが授業で教えられていたら興味の持ち方が違ったと思いました。
当時の外交、戦争、政治がどのようなものだったのか、垣間見ることができる良作。
果たして現代日本の政治家に、これほどの熱量があるのだろうかと改めて疑問を抱いてみたりもしました。
ポーツマス条約における小村氏の功績だけでなく、家庭人としてのダメっぷりも記されているのが本作の面白さ。
決して教科書っぽくならず、小説として楽しめる理由 -
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江戸末期に長崎の出島にやってきたドイツ人医師シーボルト。当時の鎖国政策を掻い潜るため、オランダ人と偽って入国活動する。医師として、日本の医術の発展に貢献する一方で、オランダからの指示で日本の国情、地理、経済などを報告するいわば産業スパイのような一面もあった。これが元で日本を追放になる。出島に出入りさせていた遊女を妊娠させ、女児をもうけるわけだが、本書は妻となった女性と、その娘の物語。当時、外国人の子を産んだ女性やハーフの女子がどんな目で見られていたかを想像するととても切ない。男尊女卑の時勢であったとはいえ、この二人の女性のたどった運命を読み進めると、男の身勝手な行動に憤りを感じる。いつの世も、
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「吉村昭」が太平洋戦争開戦前夜を描いたドキュメント作品『大本営が震えた日』を読みました。
『戦史の証言者たち』に続き「吉村昭」作品です。
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開戦を指令した極秘命令書の敵中紛失、南下輸送船団の隠密作戦。
太平洋戦争開戦前夜に大本営を震撼させた恐るべき事件の全容――。
昭和16年12月1日午後5時すぎ、大本営はDC3型旅客機「上海号」が行方不明になったとの報告を受けて、大恐慌に陥った。
機内には12月8日開戦を指令した極秘命令書が積まれており、空路から判断して敵地中国に不時着遭難した可能性が強い。
もし、その命令書が敵軍に渡れば、国運を賭した一大 -
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ネタバレ昭和十六年十二月一日皇居内東一の間で開かれた御前会議において、十二月八日対英米蘭開戦の断を天皇が下してから戦端を開くに至るまでの一週間、陸海空軍第一線部隊の極秘行動のすべてを、事実に基づいて再現してみせた作品。
8月は意識して先の大戦に関する書籍を手にしてきましたが、そんな私の開戦のイメージは真珠湾への奇襲攻撃。
それはあくまでも日本が戦争を始めた瞬間であって、奇襲攻撃を仕掛けるにあたり作戦や準備も含め入念に計画され、準備を行なってきたという事実を改めて痛感させられました。
ハルノートによって開戦一択となったようなイメージをぼんやりと持っていましたが、それはまさに最後通牒でしか無く、軍部 -
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ネタバレ毎年、この時期には先の大戦に関する書籍を意識して手にするようにしていますが、そんな中で終戦記念日に読み終えた一冊です。
今までは戦争中の悲惨な出来事を描いた作品を手にしてきましたが、本作は戦争終盤から始まり、主に描かれるのは戦後の戦争裁判。
主人公の琢也はまさに終戦となったその日、B29に搭乗していたアメリカ兵(捕虜)を斬首により処刑した。
本土決戦が現実味を帯びた戦争末期、本土に降り注ぐ爆弾、焼夷弾により国土は焼かれ、多くの人々が命を落とし、傷を負い、住むところも失った。
まさに民間人を狙った無差別な空襲。
実際にそれを行なっていたアメリカ兵に対し、敵討ちともいえる処刑は残念ながら -
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舞台は明治初頭、ほぼ開拓の進んでいない北海道に送り込まれた囚人らが、あまりに過酷な環境で土地を開拓していく様子が、ひたすらリアルに残酷に記された一冊。
当初は「赤い人」というタイトルから共産党員系の話かと思ったら、そんなことはなかった。
とにかくこの本を読むと、西欧列強に追いつこうと奮起していた当時の日本が、いかに基本的人権に対する意識が薄かったかが伺える。
特に鉱山に送られた囚人たちの末路が酷く、文字で目にするだけでも恐ろしい。
明治中期〜後期にかけての大罪人の多くは北海道の監獄に送られているので、「あいつも北海道にいたのか!」という発見も楽しめた。
内容の4割が脱走関連、3割が劣悪すぎ -
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沖縄戦の生々しい戦闘。
生に向かう戦闘なのか、死への序章なのか、向かうべき先を見失う。
吉村昭のノンフィクションはスゴイ。そう思わせてくれる作品ばかりだが、この作品もその一つ。
戦争には、エゴや本能としての生、そして腐乱する死というものがある。
極端過ぎれば例えノンフィクションと言えエグすぎて読めないとなる人もいる。
この作品にも本当にあった火炎放射や戦車で馬乗りされるシーンもあるのだけど、その惨さは読んだ後になってありありとわかる…読んだ後だから読めてしまう、でも書いてあることは本当にスゴイ事実。
沖縄戦がいかに酷かったかはしらない人はいないと思うけれど、少年が急拵えの兵隊にされ移ろい行