吉村昭のレビュー一覧

  • 仮釈放

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    主人公のわかりそうでわからない人物像がすごい。
    殺人を犯し無期刑にもなったが、罪を悔いておらず、そのことを周囲に気づかれてもいない。主人公は生真面目な性格で、何も駆け引きを打たないが、それ故に垣間見える恐ろしさがある。
    怒涛の畳み掛けとなるラストは、誰の状況も一瞬で変わり得ることを感じさせられた。

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    2022年12月29日
  • 背中の勲章

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    太平洋戦争で米国の捕虜となった様子がコンパクトにまとめられて記述されていて読みやすい。

    捉えられた日本兵は捕虜となることを恥じるが、意外と人道的な扱いを受けていることが分かる。

    生き残ったことに後悔する、国のため戦死することに何の疑いもない当時の考えに、人生とは、命とはという意味をかんごえさせられる。

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    2022年12月25日
  • 戦艦武蔵

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     初版は1971年9月、新潮社より刊行。
     綿密な聞き取り取材と資料調査にもとづき執筆された記録文学作品。戦争小説というよりは、当時の技術の限界に立ち向かった巨大プロジェクトの記録という体裁で、いかにも高度経済成長期の作品という感じである。解説の磯田光一が、この作は「一つの巨大な軍艦をめぐる日本人の“集団自殺”の物語である」と看破したのは慧眼という他にない。この小説には、「なぜこの巨大戦艦を作るのか?」「戦艦建造をめぐる過程で、どうしてそこまでやらなければならないのか?」という問いが根本的に欠けているからである。つまり、戦争や軍事をめぐる価値判断が停止されている。

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    2022年11月26日
  • 桜田門外ノ変(下)

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    桜田門外の変は、幕府と水戸藩の対立、諸外国どの向き合い方をめぐる立場の違いを背景としている。この作品は、水戸藩士の関鉄之介を主人公に事件の詳細を描く。明治維新のたった8年前。歴史のネジを巻くことになった事件。

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    2022年11月23日
  • 桜田門外ノ変(上)

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    同じ筆者の生麦事件と合わせて読むのが良いです。桜田門外の変では、尊王攘夷に燃える水戸藩の熱量を、生麦事件では尊王攘夷が不可能と知った薩摩藩や長州藩の視点が描かれてます。

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    2022年11月17日
  • 海軍乙事件

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    「吉村昭」のノンフィクション短篇集『海軍乙事件』を読みました。

    『戦艦武蔵』、『高熱隧道』に続き「吉村昭」作品です。

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    昭和19年3月、パラオ島からフィリピンに向かった2機の大型飛行艇が、荒天のため洋上に墜落した。
    機内には「古賀連合艦隊司令長官」と「福留参謀長」が分乗していた。
    参謀長以下9名は一命をとりとめたが敵ゲリラの捕虜に。
    そして参謀長の所持する最重要機密書類の行方は…。

    戦史の大きな謎に挑戦する極上の記録文学。
    太平洋戦争をたどる上でも、第一級の資料として、貴重な文献といえる。
    表題作ほか、『海軍甲事件』 『八人の戦犯』 『シンデ

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    2022年11月11日
  • 戦艦武蔵

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    「吉村昭」のノンフィクション作品『戦艦武蔵』を読みました。

    「吉村昭」作品は昨年7月に読んだ『零式戦闘機』以来なので約1年振りですね。

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    日本帝国海軍の夢と野望を賭けた不沈の戦艦「武蔵」――。

    厖大な人命と物資をただ浪費するために、人間が狂気的なエネルギーを注いだ戦争の本質とは何か? 
    非論理的“愚行”に驀進した“人間”の内部にひそむ奇怪さとはどういうものか? 
    本書は戦争の神話的象徴である「武蔵」の極秘の建造から壮絶な終焉までを克明に綴り、壮大な劇の全貌を明らかにした記録文学の大作である。
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    2022年11月11日
  • 生麦事件(上)

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    かなり早い段階で事件が起こって、これからどうするん?と思ったけど、その後のほうが大事なのね………。攘夷と外国協調路線、薩摩藩、幕府、朝廷それぞれの思惑とパワーバランス。激動期をダイナミックに描く。

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    2022年11月05日
  • 私の好きな悪い癖

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    昭和2年に生まれた著者の書籍で既読のものは、『羆嵐』のみだった。本書は、表題が気になり購入したが、『羆嵐』の著者と意識はしていなかった。
    この随筆では、子供時代から順をおって、印象に残る出来事が綴られていく。ご自身の体調のことや、小説創作のために訪れた取材先での出来事や、戦時中の話など、縦横無尽である。最後に掲載されている講演を収録したものも、興味深い。「尾崎放哉と小豆島」というテーマで語られる。いつか現地に行ってみたくなった。
    本書は、寝る前のひとときの楽しみで、毎日少しずつ読み進めた作品。

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    2022年11月05日
  • 羆嵐

    匿名

    購入済み

    ヒグマ怖い

    あの有名な日本最大の獣害事件をモチーフとした本作。描写が非常にリアルでヒグマに襲われる人間の恐怖をしっかり感じさせてくれる傑作。

    #ダーク #ドロドロ #怖い

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    2022年11月05日
  • 大黒屋光太夫(下)

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    日露戦争に東西冷戦、北方領土問題にウクライナ危機。残念ながら両者が友好であった期間は短い。お互いをよく知らない時代。日本側の恐れとは裏腹にロシア側には憧憬の念があった。自国に流れ着いた漂流民。相手を知るための教師から自分たちを理解させる特使として使う。政策の道具である一方、本物の誠意も感じさせる。寒さ故か、その情は”熱い”。死にもつながる凍傷。順応しなければ住めない国。ナポレオン、ヒトラーが敗れた冬将軍。決して攻めてはいけない国。悪い感情ばかり抱いてはいけない。遠くて近い国。糸口をつかむヒントをもらう。

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    2022年10月10日
  • 蚤と爆弾

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    太平洋戦争の際に日本軍部が取り組んでいた細菌兵器を開発していた「731部隊」に関する歴史小説。
    吉村昭の作風らしく、事実を淡々と伝えるアプローチで、却って迫ってくる恐怖を感じる。
    ナチスの残忍な行為もそうだが、人間が人間性を失っていく、これが「戦争」の狂気、そして愚かなところ。この部隊を率いる石井四郎は、自分の任務、科学の発展のため、という錦の御旗に疑いをもたない。

    今を生きる我々にとっては、このような悲劇を風化させない努力が必要なのだろう。

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    2022年10月09日
  • 大黒屋光太夫(上)

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    急死に一生の目など遭ったことのない身としては、漂流の絶望感は想像を絶する。生き延びることのみが目的となる日々。陸の姿に恋焦がれる。いざ、たどり着いた島。そこはロシア領。命あることだけに感謝する。たとえ定住となってでも・・・とは、ならない。今度は、再び故郷の土地を踏むことを希う。東端の島から「シベリアのパリ」への流転。国の思惑があるとしても、出会う人々の親切さと情の深さには感心する。ロシアは近くて遠い国。過酷な旅に次々と命を落とす乗組者たち。生き残っている人の名前を確認し、下巻へと進める。

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    2022年10月08日
  • 生麦事件(下)

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    薩英戦争に下関砲撃。雄藩と列強。勝ったものと負けたもの。けんかして仲直りして、親交を深める。思想と武器。古いものを捨て、新しいものを取り入れる。変化を受け入れるもの、拒否するもの。物語は倒幕まで続く。記録を掘り起こすような淡々とした文体の中に臨場感を見出す。西郷隆盛、大久保利通、大村益次郎、木戸孝允、高杉晋作、そして、坂本龍馬。ヒーローたちが登場するが長くは叙述されない。歴史の主役は一人ではない。愚かさあり、英断ありで時代は明治へと移り変わる。そして今へと続く。ありがちな歴史ドラマとは違う世界観を味わう。

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    2022年10月05日
  • 生麦事件(上)

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    「法に従ったとはいえ、殺すのはよくない」「事に付け込んで列強が攻めにくる」。倫理面、政治面から薩摩側を責めたくなりがちだ。当の藩も嘘の言い訳をし、暗に非を認めている。ただ、当時の国際世論はあながち一方的でもない。NYタイムズは被害者側の無礼さこそを断罪している。攘夷は無謀だ。しかし、その後の歴史が証すように抵抗することで独立が保てた。生麦事件、下関戦争。どんな争いにも多面性がある。幕府、薩摩、長州、列強。今のところでどこにも肩入れして読んでいない。後編、薩英戦争。新たな視点が得られることを期待する。

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    2022年10月02日
  • 新装版 落日の宴 勘定奉行川路聖謨(下)

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    地震による船の破壊。帰れないロシア人。紆余曲折。結果的には信頼が深まった。粘り強い交渉で勝ち取った条件「択捉は日本領、樺太に国境を定めない」。交換条約、日露戦争、二度の大戦‥。その後の変遷を思う。過激な攘夷思想、安政の大獄、桜田門外の変…時代は一度壊れた。再興できたのは維新の功労によるものだけではない。政変にも災害にも、滅入らず、粛々と仕事を進める。日本社会はそんな人々に支えられてきた。農を離し、設備を棄却し、情報を奪う。グローバル化の名の下にルールを壊し国を売る勢力が蔓延る現代。求められる人材を考える

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    2022年09月28日
  • 零式戦闘機

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    「吉村昭」のノンフィクション作品『零式戦闘機』を読みました。

    『東京の下町』、『歴史の影絵』に続き「吉村昭」作品です。

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    日本が誇った名機を通して戦争の本質を抉り出した記録文学の大傑作。

    昭和十五年=紀元二六〇〇年を記念し、その末尾の「0」をとって、零式艦上戦闘機と命名され、ゼロ戦とも通称される精鋭機が誕生した。
    だが、当時の航空機の概念を越えた画期的な戦闘機も、太平洋戦争の盛衰と軌を一にするように、外国機に対して性能の限界をみせてゆき……。
    機体開発から戦場での悲運までを、設計者、技師、操縦者の奮闘と哀歓とともに綴った記録文学の大巨編。
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    2022年09月27日
  • 逃亡

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    ストーリーの面白さから、あっという間に読み切れる作品である。
    戦時中の混沌とした時代背景の中、主人公は謎の人物に操られるように、犯罪を犯していく。そして逃げ続ける。最後まで、謎の人物の具体的な正体は掴めないが、主人公を操ったまま、小説は終える。

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    2022年09月26日
  • 新装版 落日の宴 勘定奉行川路聖謨(上)

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    尊王攘夷の志士が主役の幕末。不甲斐ないと言われた幕府の官吏に焦点が当たる。長崎、下田でのロシアとの交渉。頑固過ぎるほどに法に固執し、とことんまで国益を主張する。一つ誤っていれば、間違いなく現代の国勢、そして世界地図も変わっていただろう。その後の展開もあったが、結果として日本という国は残り、植民地にもならなかった。脱法して、私腹を肥やし、国を売る、現代の「政商」達に届けたい。一方、美徳とされた倹約思想。受け継がれてしまった緊縮は今この国に牙を向いている。安政大地震。自然は歴史をどう変えたのか。下巻へ続く。

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    2022年09月24日
  • 島抜け

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    3つ作品の入った短編集であるが、標題の島抜けが分量的にもメイン。

    吉村氏の得意分野である漂流もの、脱獄ものがミックスされたような内容で、短いながらも、とてもハラハラさられる話だった。
    島流しされた人の生活は、わりと自由だったということを初めて知った。

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    2022年09月11日