吉村昭のレビュー一覧

  • 海の祭礼

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    鎖国中の日本に憧れ捕鯨船の乗組み員になり、日本に上陸したラナルド・マクドナルドから英語を学ぶ守山栄之助。オランダ語の通訳(長崎通司)である彼は英語の必要性を痛感し、貪欲に英語を学んでゆく。ペリーやハリスの来航時にも通訳を務め、アメリカのみならず、イギリス、ロシア、フランス等との通商条約締結の矢面に立つ。尊王攘夷の嵐が吹き荒れる幕末に、通訳としての正確さのみならず、最後は外交官として役割も果たす。鎖国が崩壊してゆく過程が垣間見える。

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    2017年02月21日
  • 新装版 海も暮れきる

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    自由律俳句で有名な尾崎放哉の伝記小説。晩年の8ヶ月を描く。
    尾崎放哉の俳句は、高校の授業で習った事がある。種田山頭火や高浜虚子、萩原井泉水などと共に明治大正の俳句について勉強したが30年経った今でも覚えているのは、山頭火の句と彼の「せきをしてもひとり」という哀愁漂う句くらいだ。
    俳人の句は覚えていても、彼らの句がどのような背景で詠まれたのかは知らない。彼がどんな人物だったのか興味があって読んでみた。
    彼は、東大卒で一流企業の重役を勤めながら、酒癖の悪さで身を崩し、妻には愛想を尽かされ、仏門に入るが酒のせいで上手く行かず、結核を患って死に場所を求めて小豆島に渡る。歌人としての才能は誰もが認めるの

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    2017年02月12日
  • 新装版 落日の宴 勘定奉行川路聖謨(下)

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    ネタバレ

    ・久々に読んだ吉村昭さんの作品

    ・名前しか知らない人だったので、新鮮だった

    ・幕末というと、安政の大獄などの弾圧のイメージがあり
     幕府は基本は無能で、開国したのも弱腰だったからという
     なんとなくの先入観があったが、
     いろいろな考えの人が実際に活躍しており
     開国のために様々な努力もしていたことを知って
     少し見方がかわった

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    2017年02月05日
  • ニコライ遭難

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    明治24年にロシア皇太子ニコライが来日し、長崎、鹿児島、京都、滋賀と回る中で大津で警備を担当していた津田三蔵巡査に襲われた事件、いわゆる大津事件について描かれた小説。小説というか、吉村昭の作品は(というほど多くの作品を読んだわけではないが)、事実関係を丹念に取材して周辺情報まで含めて細かく書かれている一方で、小説が小説たる感情のもりあがりだとか登場人物の内面描写がないため、まるで解説記事を読んでいるような気分になる。それはそれでとても勉強になるのだが、ハマって一気に読破!みたいなことはない。
    長崎でのニコライのお忍びに対する長崎県庁の苦慮や、津田三蔵の処分に対する政府対裁判官の戦いなど、なるほ

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    2017年01月25日
  • 桜田門外ノ変(下)

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    忠臣蔵については、周到な準備があった経緯がよく知られている。桜田門外の変については、あまり知られていないと思う。この小説を読んで、経緯がよくわかった。毎度ながら、作者の調査の深さに驚く。

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    2017年01月15日
  • 脱出

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    ネタバレ

    吉村昭の3冊目。

    硬質な文章であると思うのだけれど、自然の描写が美しく……、その美しさ故に、描かれている時代の悲惨が、より際立ってくる・・・。

    「鯛の島」
    ・・・なんともやるせない。敗色濃厚な戦況が国民には隠されていたということ自体は、歴史に疎い自分にも周知の知識ではあったけれど、その隠蔽のためにあんなことが・・・。

    「他人の城」
    ・・・巻末解説文で「神の名によって許されさえする」と描かれた、極限状態での選択……。
    生き残った後に心を保てるのかどうか?
    ・・・自分だったら?・・・
    平成日本に生きる我々には、想像すらできないな。

    「珊瑚礁」
    ・・・その“地獄”を生き延びた人達が実在したの

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    2018年02月23日
  • 吉村昭の平家物語

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    「講談社少年少女古典文学館」シリーズに収録された『平家物語』のダイジェスト版です。

    著者自身が初めて『平家物語』を読んだのは中学3年生の夏のことで、同じ年代の読者に向けて書かれたものでしょうか。平明でありながら端正な日本語で、『平家物語』のあらすじをたどることができます。

    『平家物語』には多くの入門書や解説書、現代語訳やダイジェスト版などがありますが、個人的には『平家物語』の世界に触れるための最初の一冊として、優れた道案内になってくれるように思います。

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    2016年12月25日
  • わたしの流儀

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    エッセイ集。温厚な人柄がにじみ出ており、観察眼が鋭い。ユーモラスな話あり、胸にグッとくる話もあり、私にとっては非常に面白く一気読みした。著者のように歳を重ねたいものだと思う。

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    2016年12月20日
  • 星への旅

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    初期短編集
    表題作で太宰治賞をとっている

    「鉄橋」
    傲慢かつ臆病、ゆえに意味なく自分を試そうとしてしまう
    それも無駄に危険なシチュエーションで

    「少女架刑」
    人体標本としてボロボロに使いたおされながら
    誰にも感謝されない女の子

    「透明標本」
    人骨標本に美を追求する老人と
    永遠の架刑にのぞむ娘

    「石の微笑」
    意味のないものにだって美術的価値を見いだすことはできる
    しかし人間は

    「星への旅」
    集団自殺の旅になんとなくついてきてしまう少年
    臆病者と思われたくないがためだけに

    「白い道」
    空襲で街が焼けるなか
    人々は絆の空虚さに直面する

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    2016年11月15日
  • 漂流記の魅力

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    1793年、仙台から江戸へ向かった帆船、若宮号は途中で暴風雨により遭難。オホーツク海を北へ流され、たどり着いたのはロシアの東端。船員たちは極寒地で凍傷に倒れる者もいれば、ロシアへの永住を決意する者もいたが、それでも4人が帰国を訴え、ロシア皇帝と面会する。

    そして、彼らは陸路で西へ向かう。モスクワを経由し、ロシア西端から船で地中海、大西洋、太平洋を横断して、日本の長崎へ到着。その間10年。おそらく、初めて世界を1周した日本人だろう。

    そんな奇跡のような冒険を4人の帰国者から聞き取った文書が残されていたことを著者は紹介。日本にも「ロビンソン・クルーソー」に匹敵する漂流記があったのだ。

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    2016年10月31日
  • 冬の鷹

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    解体新書の訳に携わった人たちの物語。こういう風に翻訳していったのかと初めて知った。てっきり杉田玄白だけで翻訳したのかと。職人の脳みそだけだと生きづらいのが人生だけど、そちらのほうが尊いのかもしれないな。

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    2016年10月30日
  • 零式戦闘機

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    戦艦武蔵と並ぶ吉村昭の戦争文学の傑作。零戦の開発から重慶爆撃・パールハーバーでの活躍、ソロモン・レイテでの苦闘、そして生産もままならない戦争末期の名古屋工場が地震と空襲で学徒の命と共にほぼ壊滅する終戦までを、零戦を軸に描く。
    冒頭と掉尾を飾る零戦運搬用の牛馬の姿が、戦前の歪な工業国家としての日本の姿を鮮明に浮かび上がらせており、つくづくと上手い。

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    2016年10月19日
  • 彰義隊

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    幕末の江戸城明け渡し、彰義隊、奥羽越列藩同盟に関わった輪王寺宮を主人公にし、その生涯を綴った小説。
    幕末の人物とその関係とその時代の人々の想いが分かり、おもしろい。

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    2016年08月13日
  • 漂流記の魅力

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    吉村昭氏は、子どもの頃から、漂流記に興味を持っていたとあとがきに記している。私も、これまでに、漂流、破船、大黒屋光太夫、アメリカ彦蔵などの小説を読んできた。そして今回、漂流記の魅力を読むことができた。漂流記の魅力は、日本に限らず、ロビンソンクルーや白鯨など欧米の海洋小説はベストセラーとなって、人々に読まれてきた。その魅力は、ほとんど助かることがない境遇のなかで、いかに人間が闘い、生き抜ける力を持っているかが試される世界が描かれるからなのだと思う。そこには、不屈の精神や体力が大きくものを言うが、それだけでなく、鎖国政策にあった日本にとって、心の支えとなる宗教(キリスト教)に委ねることは、2度と故

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    2016年06月12日
  • 熊撃ち

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    最近秋田県で山菜採りに行った人が熊に襲われ、すでに3人が亡くなっているというニュースを見て、未読のままになっていたこの本を手に取り読み始めた。
    熊にまつわる実際の事件を題材に、熊撃ち猟師の名前をそれぞれのタイトルにした7編からなる短編集。
    熊に襲われた被害者の家族にとって熊撃ち猟師は仇討ちを託する刺客であり、猟師にとって熊は現金収入と名誉の対象であり、熊にとって人間は単なる獲物のひとつに過ぎない、そういう三者の関係を背景にして、それぞれの事情や葛藤を有する猟師と熊との命を懸けたドラマが展開する。人を襲った後の熊の生態や、襲われた人間の無惨な姿など、ニュースでは知ることのできない現実が描かれてい

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    2016年06月01日
  • 新装版 落日の宴 勘定奉行川路聖謨(下)

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    この作品を読み進む中で、この時代にも、3.11や熊本地震にも勝るとも劣らない地震、津波、火事が頻発したこと、そしてロシア使節の艦船が被害を受けて沈没し、長期にわたって下田の地に滞在せざるを得なかった歴史があったことを改めて知った。
    作品の中で、主人公川路聖謨が、精力を維持するため(もちろん彼の仕事を怠りなく遂行するために)、風呂に入るたびに睾丸を塩で揉み洗うという行為には、謹厳実直な人柄(妻以外の女性を相手にせず、家の存続のためと妻から説得されやっと側女を持つような)を想像すると、何となく可笑しみを禁じ得ない。

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    2016年05月13日
  • 新装版 落日の宴 勘定奉行川路聖謨(上)

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    記録文学とは、こういうものかとの思いで読み進んだ。
    幕末時代は、とかく倒幕側の人物ばかりに焦点が当たりがちだが、幕府側にも、その崩れかかる屋台骨を何とか支えたいと必死の思いで誠心努力する、優秀な幕吏がおり、もっと光を当てるべき人材がいるのではないか。
    本作品の主人公川路聖謨は、その筆頭たる人物と言っていい。
    著者吉村昭が、彼を取り上げたのは、そのその豊かな人間性とともに、彼の中に、著者自身とも相照らす資質を見出したからではないか。
    条約交渉をめぐる談判。この交渉経過を詳細に記した著者の取材の綿密さに、改めて畏敬の念を抱いた。
    このような歴史上の偉大な人物に巡り会えることが、読書の喜びであり、醍

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    2016年05月13日
  • 冷い夏、熱い夏

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     母を癌で亡くしたわたしとしては、当時を思い出し共感するとともに、いたたまれない気持ちにさせる内容であった。身内の死は必ず訪れるのだが、亡くなったことに整理をつけなければ、残された者たちは不幸である。人生折り返しを過ぎ、自身の死生観をあらためて問われた作品である。

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    2016年03月11日
  • プリズンの満月

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     刑務官を退職し、悠々自適の生活を送ろうと思っていた鶴岡。そんな彼の元にかつての上司から、ビル建設の警備の責任者の依頼が舞い込む。ビルが建設されるのは、鶴岡がかつて勤務していた、戦犯が収監された巣鴨プリズン跡地。鶴岡は警備責任者から退職する日に、かつての日々を回想する。

    「正義は勝つって!? そりゃあそうだろ 勝者だけが正義だ!」

    『ONE PIECE』というマンガで出てきた言葉ですが、巣鴨プリズンというのは、まさにその言葉通りの場所だったのだな、と読んでいて感じました。

     戦勝国のアメリカによる一方的な裁判で、罪を問われ収監された囚人たち。もちろん、彼らが戦争を指揮し、あるいは人を殺し

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    2016年03月02日
  • 脱出

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    第二次大戦において民間人の生と死の修羅場を描いた5つの短編。屍体を物としか感じず、他人のことをお構いなく般若となる。取材による事実なのだろう。後世に残すべき小説。2016.1.31

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    2016年01月31日