吉村昭のレビュー一覧
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天一号作戦の大和乗組員の生存率が8%だとすると、陸奥爆沈での生存率10%が如何に異常な数字なのかがわかります。
戦ってもいないのに爆沈した陸奥は哀しいですが、その事実を隠そうとした海軍は昭和18年の時点でそれほどまでにすでに狂っていたのかと感じました。
そして意外なほどに戦艦事故の原因は人為的なものだということに驚き、あっけないほどにもろく潰え去った陸奥はその後の海軍を象徴していると思いました。
この小説は戦後26年経って書かれたもので当時はまだまだ生存者が残っており、吉村氏の丁寧な取材により徐々に真相が明らかになっていきます。
馴染みのない用語が多量にあり途中飛ばしながら読みました。 -
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終戦と後のいわゆる戦争犯罪(人)に対して考えさせられる小説。
主人公は終戦後、B29の搭乗員を処刑することに加わり、その事で戦後追われる身になる。B29の搭乗員は当時の国際条約に違反して民間人を大量虐殺した事で、日本軍部は処刑を決定し、国際社会にも宣言していた。戦後それらが戦争犯罪となるが、勝者が敗者を裁くことを見せつけられた思いがした。また裁く側の都合で量刑が斟酌され、減軽される政治的な流れについても人間の行いの空しさを覚えた。主人公が最後の場面でかつて働いていたマッチ工場のマッチを擦り、その質の変化を眺める様は時代の流れを思わせられてしんみりした。
考えさせられる小説であったが、生きる勇 -
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父にプレゼントした本。
面白かったから読めとわたしのところに舞い戻ってきた(笑)
読んでみると…
品川、大森など、ちょうど通勤経路にあたる場所がバンバン出てきて、電車の中で読みながら、このあたりでこんな事件が…と臨場感ありまくり、かつ非常に不思議な気持ちになった。
最初は英国人たちが斬られる場面描写に驚いた。
「生麦事件」という名前しか知らなかった事件が、実際にはどんな人たちがどんな状況下で、どんなふうに殺傷されたのか…
自分の生活圏で起きた事件であることも手伝って、何百年前の出来事が蘇ってくるように感じた。
絵空事でも何でもなく、本当に人が血を流し、叫んだのだ…と胸に迫るものがあったのだ。 -
Posted by ブクログ
作家冥利に尽きる体験、日常の小さな発見、ユーモアに富んだ 日々の暮し、そしてあの小説の執筆秘話を綴る。作家・吉村昭の文章を紡ぐさまをかいま見る芳醇な随筆集。
高名な作家である吉村昭であるが、案外とその著書を読んだ事が無い。(「ポーツマスの旗」を苦心して読んだだけである。)
本書は随筆集であるが、緻密な小説とは違い、著者の人柄が偲ばれ面白い。
個人的に気に入ったのは「毛がに」というお話。
北海道の医師の話が出てくる。その医師は、類のないほどの読書家で、毎月かなりの量の書物を買い、それを一つの建物の中に並べ、町の人にも公開している。かれの夢は、その書籍を建物とともに町に寄附することだと -
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二宮忠八の生涯を描いた歴史小説。彼は、明治時代、ライト兄弟よりも早く飛行機の原理を発見した人物として知られている。
昭和初期の軍国主義時代に二宮忠八は国定教科書でも取り上げられ、村田銃やゼロ戦と同様に日本独自の技術力の高さを以って賞賛されていたのだろうが、昨今ではあまり知られていない。(私自身も、この小説を知るまで彼のことを知らなかった)
歴史の表舞台には必ずしも出てこない人物を、このような形で知り、学ぶことができることが歴史小説の醍醐味であり、一期一会的な人物との出会いが嬉しい。
忠八が子供の頃に新型の凧を造る際に手助けをする竹籠職人など、日本人が、永らく手先が器用で技術力に才能を有して