あらすじ
安政七年(1860)三月三日、雪にけむる江戸城桜田門外に轟いた一発の銃声と激しい斬りあいが、幕末の日本に大きな転機をもたらした。安政の大獄、無勅許の開国等で独断専行する井伊大老を暗殺したこの事件を機に、水戸藩におこって幕政改革をめざした尊王攘夷思想は、倒幕運動へと変わっていく。襲撃現場の指揮者・関鉄之介を主人公に、桜田事変の全貌を描ききった歴史小説の大作。
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この作品は、何度読んでも、リアリティ迫る描写で手に汗握り読んでしまう。
この頃の日本や水戸藩の情勢、政治的背景など、綿密に分かりやすく描かれているので、頭の中で整理しやすい。
名作中の名作だと思う。
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☆☆☆2020年5月レビュー☆☆☆
桜田門外の変にいたる時代背景や、政治力学に焦点をあてた上巻。圧巻の下巻へとつながる足掛かりだ。
水戸藩の守旧派である谷田部兄弟の捕縛から物語は始まる。
急進派、関鉄之助を中心にこの物語は描かれる。
藩主・斉昭の盛衰から、ペリー来航、井伊直弼の登場と、この巻は歴史を知るうえで欠かせない。
吉村氏の作品は『生麦事件』も面白かったが、この作品も負けず劣らず。何度でも読みたい。
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弾圧に反発した尊皇攘夷志士が井伊直弼大老を殺害するという有名な事変の成り行きを詳細に描いた記録小説。
井伊率いる「開国=幕府側」のネチネチとした弾圧に「尊皇攘夷=水戸藩」の怒りは爆発寸前。
そして、井伊暗殺の桜田門外ノ変へ・・・と、なる前に上巻終了。安政の大獄の熾烈さはハンパない。
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授業で習った程度で、漠然としか知らなかったですのですが、出来事の流れがよく分かり、勉強になりました。幕末の緊迫した状況が伝わってくるようで、この時代のことに興味がわきました。
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桜田門外の変が起こって150年なんですねー><
日本を変えようと必死だったんですね…
いまと比べてみたら感慨深いものが。
映画にも興味が出てきました!
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登場人物が多く読むのに苦労したが、歴史はそれほど多くの人間が関わって動くものという表れだと思った。
揺らがない信念を持つのは難しい。自分が水戸藩士だったらきっと大人しく幕府に従っていたと思う。
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同じ筆者の生麦事件と合わせて読むのが良いです。桜田門外の変では、尊王攘夷に燃える水戸藩の熱量を、生麦事件では尊王攘夷が不可能と知った薩摩藩や長州藩の視点が描かれてます。
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桜田門外の変の指揮役 関鉄之助を主役にした歴史小説。登場人物が多すぎて混乱するが、井伊直弼暗殺への流れがリアルに描写されていて非常に面白かった。
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タイトルの通り、桜田門外の変を描く。時勢の流れや井伊の幕政に対する憤りなど、心理描写が秀逸。読みながら、共に悲憤し、不安になり、動揺する。
(上)は、変が終わった辺りまで。
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黒船来航、迫られる開国、国の存亡の危機!非常事態を受けて就任した井伊大老。甚だしい専制政治。雄藩の大名の意見も無視。御三家ですら弾圧する。彦根藩としての私怨も手伝い窮地に立たされる水戸藩。続きは下巻へ。・・複数名の老中が大名の意見を聞きながら執政する。江戸時代も合議制が機能していた。民主主義に移行し易い土壌があった。早急な判断が迫られる緊急時、意見を集約する時間がない?だから独断専行?反対意見に耳を傾けずに正しい判断ができるのか。コロナ禍、緊急事態条項の必要性が叫ばれる中、よく考えておく必要がある。
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教科書の中では
ゴシックの太字にすぎない
「桜田門外の変」
を こんなにも
興味深く、子細に読み解かせてもらえる
その喜びを つくづく感じます
他の人がどういおうと
いゃあ これは 読み応えあり!
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歴史の教科書にも必ず載っている「桜田門外の変」という事件は、年号や事実だけが知られているが意外に、その背景までは理解されていないように思う。その背景とは、水戸藩による尊皇攘夷思想、そして当時の藩主であった水戸斉昭による幕政改革に対する反感という伏線があり、さらに将軍家定の世継問題の動きに対して、彦根藩主井伊直弼を筆頭とする紀州派と斉昭を中心とした一橋派の対立という構図である。
しかし、著者はそうした政治的背景のみならず、彦根藩と水戸藩の間で起きた水上港運における積年のいさかいなどの描写も含め、特に水戸藩側からみた視点での怨恨が、読者にとってのそれであるような錯覚を覚えさせるかの如く描いている。そして安政の大獄が実施され水戸藩関係者がことごとく弾圧、処刑されるに至ると、読者はもう我慢ならぬと思わざるを得ない感情を、客観的ながらも共有するのである。
上巻は、そしていよいよ井伊直弼襲撃の実行を決意するところで終わる。
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感情移入を拒否するような淡々とした文章がちょっと退屈に感じる部分もあるが、価値観が全く異なる江戸時代の人間の感情を、現代の人に響くように描く事は無理なのかもしれなくて、そこに拘る事でわざとらしさが付きまとうのであれば、このような距離感のある文章だっていいのではないか、と思って読み進めた。
この距離感のせいか、全体に対する記述内容の割合にも表れていると思うけど、主人公の考えや気持ちという事よりも、場所を移動する事に対する重みが今と全然違うなと思った。目的を達成するための移動に時間と体力がかかっている。私だったら耐えられない。そんな通信手段・移動手段が存在しない中で、しかも蟄居させられている主犯格が、急進派の水戸藩士をコントロールして、天皇の勅書を幕府に返却する事を阻止するくだりは、本当にすごいなと思った。
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それこそ、事件名と井伊直弼その人の名前に関しては、小学生の頃から知っていた割りに、実際の事件のあらましとか背景に関しては殆ど知らず。で、安心ブランドの吉村昭作品ってことで、今回読むことにしました。忘れただけかもしらんけど、実行犯の名前とか全く思い浮かばず、そのせいもあり、ひたすら聞き慣れない名称が出てくる序盤、正直ちょっとしんどさあり。でもある程度人物関係とかが見えてくると、あとはさすがの表現力でもって、どんどん物語に引き込まれていきます。いよいよ安政の大獄がなされて、ここから討伐に向けて動き出す気配で、後半の展開が楽しみです。
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水戸藩をメインに描いた小説は初めて読んだかも。
幕末モノはどうしても薩摩贔屓になってしまうので新鮮でした。
同じ徳川同士でこうも憎しみが深まるとは。
水戸藩の有為の人材は全て死んだとは読んだことあるけど、今作を読むと理解できた。
色々な業の深さを考えさせられました。
桜田門外の襲撃の描写が秀逸。
見事に想像できる。
ちょっと小説としてはバランスが悪い気もするけど、読んで損がない作品でした。
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偕楽園に梅を見に行ったとき、ロケセットを訪ねた。資料を見ながら、原作を読みたいと思いリクエストした本 安政の大獄を起こした伊井直弼を襲撃した水戸脱藩士の関鉄之助を中心に描いた本 桜田門外の変から明治維新までわずかに8年であることに驚きを感じた
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幕末の時間の流れを加速させた「桜田門外の変」を実行犯の水戸藩士の目線で描いた記録小説。
水戸藩の体制の変化から事件前までを饒舌すぎるほど丁寧に記している。
国を憂うエネルギーに溢れてるが都合の悪いことには一切目を瞑り耳も貸さない。危ない、危ない。
こういう人達の情熱が時代を動かしたのは確かだが、恐ろしくもあります。
その後の歴史はこの時点で決まってたんじゃないのかとか思ってしまいます。
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水戸藩は、幕末の導火線に火をつけたが、内ゲバにより、薩長のようにコトを成し遂げることができなかった。
吉村昭の「逃げる」描写が冴えわたる。
幕府側の拷問の様子を読んでいると、水戸藩士の怒りが自らのものとして響いてくる。
映画化されたが、この小説の方が断然面白い。
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幕末の水戸藩における門閥派と改革派の主導権争い、安政の大獄での異常に執拗な水戸藩士への処分など、政治的な闘争が克明に記されている、と思う。武力衝突中心の戦国時代は、政略結婚など複雑なお家関係こそあるが、弱肉強食という比較的分かりやすいルールの下で歴史が展開しており、興味が持ちやすい(事実、私は小学校・中学校程度で高い関心を持った)と感じる。一方、幕末は尊皇攘夷と体制維持の両派、とくに前者の歴史的経緯が語られない中での学習が多かったこと、政治的な闘争が多く複雑に感じたことから、個人的にはあまり関心が持てないでいた。本書は、尊皇攘夷論の起源を水戸学にあるとして、勃興から諸国への広がりまで書かれており、幕末の歴史を学ぶ上で読んでおくと、幕末の政治的混乱や闘争がなぜ起きて現在知られているように展開したのかがよく理解できる。当然の結果として、幕末に対しても小中学校程度の学習で、戦国時代同様、関心が持てると感じた。小説としても、教科書の補助的な書物としても価値のある作品だと感じる。
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2011.1.19~2.14
著者が言う"江戸幕府崩壊と大東亜戦争敗戦はそこに至る経緯が似ている、とりわけ桜田門外の変(1860年)と二・二六事件(1936年)は極めて類似している"との指摘はなるほどと感じた。確かに事件によって前者は(尊王はともかく)攘夷派が敗れて開国に導き、後者は軍国主義の暴発と悲惨な敗戦に導いた。しかし暴力によって事態を打開しようとする野蛮な行いが76年後に繰り返されたとうことは歴史に学んでいない訳で、その代償は余りにも大きかったと思う。「長英逃亡」と同様、幕府側の捜査網の鋭さに驚く。
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限りなく実話・・・時代小説なのかもしれませんが、歴史カテゴリに
水戸という海岸線が長い地理、その近くまで捕鯨にくる多くの外国船
水戸が水戸学を独自に発展させ、御三家にも関わらず、多くの急進派
としての行動を起こした事情が伺えました
もともと、外圧に対する危機感が、水戸斉昭をして、時代の先端と
なしたのだが、その性格の頑迷固陋さが、支持者の離反を招き、孤立
を生むのでした
水戸で生まれ勃興した尊皇攘夷の影響を受けた諸藩の攘夷活動で、
外国の脅威と武力に圧倒された・・・尊皇攘夷から尊王倒幕の動き
がでてきた
混迷する幕府を見て、幕政に参与できるかもから幕府に代わり治世
できるかもと
何をするか分からないとまで恐れられた「水戸一派」
幕府は厳しく追及するおうになり、藩としての活動は維新の未明に
弱くなり、明治の舵取りの場には参加できませんでした
しかし、水戸浪士の決死の「桜田門外」「東禅寺」「坂下門外」などの
変や、島津久光の出兵など、時代の凶器がなかったら、明治維新など
無し得なかったろうな
さて、本編はこの桜田門外の変を士気した「関鉄之介」にスポットを
あて、事変が起きた必然などを、主人公の心情から描き出した作品
です。
周辺事情を確認しながら読まないと大変ですね
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作者のいつもの作品らしく、時系列で淡々と進んでいくが、それでも水戸藩の差し迫った状況が浮かんでくる。
幕末は何度も何度も小説で読んでいますが、意外と水戸藩の状況って知らなかったのだなぁとの感想です。
Posted by ブクログ
全2巻。
映画になってた桜田門外の変。
史実を忠実に、歴史小説をきちんと描く著者。
その分物語性は弱く、個人的にあまり好きではなかったけど
今回もやっぱり。
淡々と史実が積み重ねてあって、
その上澄みのような物語を拾っていく感じ。
何があったかをちゃんと知れるけど、
その分周辺の事柄についての記述も多く、
本筋の物語にのめり込む感じは少ない。
が、
事件のシーンはすごかった。
リアリティの追求された生々しいまでの襲撃シーン。
すごく映像的で、ここだけ時間が引き伸されるような感覚。
ここはすごい。
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史実に基づいた小説。 でも若干冗長にも思える。
昼食後品川を出て、翌日夜明けに小田原宿に到着という記述。
17.8時間で73キロを移動とある。
以前、酔っ払って5駅乗り過ごして歩いて帰った際で約16キロを4時間ほど。
それもたいがいしんどかったが、それ以上のペースで17,8時間歩き続けは想像の範囲外。 幕末の井伊大老を討ち取った志士と酔っ払いの比較で申し訳ないが、そのような比較しか持ちえず、その上ですごいと。
Posted by ブクログ
水戸藩脱藩浪士が中心となり江戸幕府の大老「井伊直弼」を暗殺した事件を通過点に、関鉄之介という現場で総指揮をとった者の最期までを丁寧に描く。
会話を減らして状況を忠実に記述する書き方は最初は戸惑ったが、読み進めていくほど、彼らをとりまく苛烈な歴史的情勢や思想が浮かび上がる。
作者の徹底した事実の追求姿勢に頭が下がる。
Posted by ブクログ
淡々とした筆致で桜田門外の変が描かれていく。
主人公は関鉄之介なのだが、どうして主人公なのか。
あくまでも史実を丹念に紐解いていっているので、
そこからの膨らみがないような気がする。
Posted by ブクログ
安政七年(1860)三月三日、雪にけむる江戸城桜田門外に轟いた一発の銃声と激しい斬りあいが、幕末の日本に大きな転機をもたらした。安政の大獄、無勅許の開国等で独断専行する井伊大老を暗殺したこの事件を機に、水戸藩におこって幕政改革をめざした尊王攘夷思想は、倒幕運動へと変わっていく。襲撃現場の指揮者・関鉄之介を主人公に、桜田事変の全貌を描ききった歴史小説の大作。
1997年6月29日購入