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Posted by ブクログ
吉村昭の作品は色々と読んでいるのだが、本作は「異色作」と言えるのかもしれない。が、なかなかに興味深く読んだ。
本作は「古典文学を現代語訳というようにすることで、少年少女向けとして世に問う」という企画で登場しているのだという。言わば「現代語訳『平家物語』 吉村昭 訳」というような一冊なのだ。
吉村昭は熱心に取材を重ね、そういう成果を踏まえた、作中世界で流れる時間や景色が強く感じられるような、濃厚で精緻な描写で知られていると思う。本作は必ずしもその「本来のスタイル」ということでもない。「翻訳」なのだ。同時に、伝えられている『平家物語』を詳細に訳出しようというのでもない。好いテンポで、「普通の小説」として読み易いように整理して綴っているのだ。そういうことで、作品の起りは「少年少女向け」ながらも、自身も含めて「嘗ての少年少女」、「少年少女と呼ばれた時期も在った筈」という人が読んでも、「有名な『平家物語』はこういう感じ」と興味深く愉しむことが叶う。
『平家物語』は、通読したことがなくて―と言うより、個人的には「通読した」という方に出遭った記憶が無い…―も、題名は多くの人に知られ、作中に登場する史上の人物達の一部、描かれる挿話の一部も意外に知られていると思う。そういう訳で、『平家物語』にも言及が在る人物や挿話に題材を求めたような小説も色々と在るとは思う。が、本作はそういうモノとも違う。
巻末の解説によれば、吉村昭は随分と悩みながら本作を完成させたようである。各作品で吉村昭が示した流儀を半ば封印して綴り続けたのだから、「産みの苦しみ」は大きかったのかもしれない。が、それだけに「『平家物語』とは?」に判り易い回答例を示してくれる一冊に仕上がっている。
『平家物語』で取上げられる所謂「源平合戦」に関しては、物語と史実との違いが指摘されている事項も色々と見受けられる様子である。が、所謂“琵琶法師”の「弾き語り」という芸能の題材となって伝播し、継承され、時代が下って読物となって伝わっている『平家物語』の内容は、「俗にこういうように信じられている歴史」という観方が出来るかもしれない。それが判り易く整理された本書のようなモノに触れるのは、それ自体に価値が在るかもしれない。
本作を読んでいて思った。「源平合戦」の時代は「遠い昔」である。が、実に「不透明な時代」で、当時の色々な人達の葛藤のようなモノが渦巻いている。そういう「時代の不透明さ」というような要素は、多分この『平家物語』の「源平合戦」のもっと以前から、現代に至る迄、「各々の時代なりに…」という具合に存在し続けているのではないだろうか。
『平家物語』の原本のような、所謂“古文”を読むのは敷居が高過ぎるかもしれない。が、本作はその内容を「普通の小説」という感じで知ることが叶う。なかなかに好いと思う。
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