吉村昭のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
幕末、天然痘対策として種痘を行うことを決意し、生涯を捧げた福井藩の町医者・笠原良策の物語。
何らかの脅威に対して新たな技で立ち向かおうとする際に、必ず現れる障害となる存在。無知からくる恐怖だったり、既得権益にしがみつくものだったり、と時代は変われど同じ事が起こり続けます。
コロナ禍になるまでは、それは言っても過去の出来事で、自分の生きている今ではそんな事起きないだろう、と思っていましたね。
いや、時代が進んでも、科学技術が発達しても、人間の本質というものは変わらないのだな、という結論を得るとは思いもしませんでした。
ワクチンの危険性の是非を云々ではなく、全てワクチンの存在自体を否定するよう -
Posted by ブクログ
ネタバレ・あらすじ
吉村昭先生の短編6篇が収録された短編集。
うっっすらと何となく繋がりがありそうでなさそうな作品たち。
単なる現実としての生と死と、超越した視点から描かれる生と死。
・感想
星3.8くらいかな。
鉄橋の轢死したプロボクサーは自殺なのか事件なのか、ミステリー風に周囲の人間の客観的視点を書いた後に本人視点での動機と背景。
周囲の人間はあーだこーだと己との関係性から彼の死に「理由」付けしてるけど、実際は今でいう迷惑系な動機だったんだ…。
己の限界を追い求めた結果ってことなのかな。
少女架刑は死んだ少女の自意識からの一人称視点の話。
解剖される様子、家族との関係。
死後の身体が単に「物体 -
Posted by ブクログ
大正12年9月1日に起こった関東大震災について詳細に描かれており、天災の恐ろしさを改めて感じた。地震による被害よりもその後の火災による被害の方が大きかったんだな。当時は木造建築がひしめき合っていて、上下水道も十分に発達しておらず火災が起こった後の消火能力が低いのが原因だけど、家財道具を多量に持って行ったり一つのところに被災者が集まりすぎたりと人災の側面もあったのが意外。地震後の社会不安もどの時代でも変わらないのか。この時代に限っていえば社会主義者に対する弾圧、朝鮮併合に伴う朝鮮人からの報復に怯える社会がとてもわかりやすかった。自警団による朝鮮人虐殺、大杉栄事件など混乱に陥った人たちの精神不安が