吉村昭のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
個人的と思われる敵討ちも社会の動きに左右されていくという2編。
「敵討」は伯父を闇討ちにされ、父も返り討ちにあった熊倉伝十郎が七年後、牢獄から放たれた敵を討つ物語だ。闇討ちの背後に老中水野忠邦の膝下で鳥居の陰謀があった。
当時敵討ちは1%も成功しないことで、成功しないとお家断絶で大変な作業だったらしい。病死などしていてもダメである。あてどない放浪の旅になる。その様子を吉村さんらしい資料に裏づけされた描写が興味深い。
相手が、遠島の罪に処せられていることがわかる。しかし、それでは敵討ちはできず、失敗になるのだけど、火事で帰牢したことで罪一等減で、所払いくらいになる。それでようやくはたせる。背景に倹約令を巡る権力争いがあり、こうした社会の動きに個人的な敵討ちも左右されていく様子が面白いところ。
「最後の仇討」は明治の近代化の過程で禁止された敵討が背景。臼井六郎は11歳と時、藩の争いに巻き込まれ父と母を惨殺される。12年に及ぶ苦難を経て、明治13年に敵を討つ。ところが、それより七年前すでに「仇討禁止令」が公布されていた、結果、禁獄終身刑となる。
敵討は法律では禁止されても「美しい行為」と称える風潮もあって彼は幸せな晩年をすごす。
あいかわらずのたたみかけるような吉村節が堪能できる。中篇二つというのが少し中途半端。 -
Posted by ブクログ
桜田門外ノ変自体は数時間のものだろうからそれだけでこれだけの小説のテーマになるのかと思っていたら圧倒されました。
あとがきを読むと資料を丹念に読み砕き、現地に行き、そこでまた人と会い資料を得て、それを骨格として作り上げてその間を想像で補い紡いでいくという作業をしていることがよく分る。
著者は当日の雪がいつ止んだのか色々な文献をあたるが不明で、不明ではあるが気持ちが入っいくと想像できるというようなことを言っていた。本の中では午後2時に止んだとしている。
尊皇攘夷派は今になると分の悪い立場だが、安政の大獄の件を読むと事件を起こすのもやむなしかと思う。井伊直弼の弾圧は過酷を極めている。
襲撃の描写は息を呑む。剣の修行なんて関係ない。怖いので刀のつばぜり合いとなり、刀同士がぶつかったとこで刀を振るので鼻とか耳とか指が散乱していたなんてリアルだ。
井伊直弼は合図も兼ねていたピストルが腰にあたっていてその段階で襲撃は成功だったわけである。雪も幸いした。敵は刀が濡れないようにカバーをしているし、刀にサビがこないようにボロな刀を持っていた人もいて、結果、曲がった刀があちこちに落ちていたとある。
話はこれで終りかと思ったら、主人公の関鉄之介のその後の足取り、最後は逃走に移っていく。このタッチは大好きな「長英逃亡」に似ていて緊張感を呼ぶ。ここまで資料が残っているものかと思ったらあるんですね。
あまりの労作に圧倒されてページを閉じた。 -
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浮気をした妻を殺害した、元教師。
まじめに服役し、晴れて仮釈放。
前半の、服役中の閉塞感、恐怖感に息が詰まる。
罪を犯したとはいえ、塀の中の暮らしは辛すぎる。
しかし、それでこそ、自分の罪と向かい合うことができるのかもしれない。
そうやって、向かい合ったにもかかわらず、やっぱり自分が悪かったと思えなかったら。
ただひっそりと、まじめに生きていこうと思っていたのに、
目の前が赤い・・・あの時と同じ・・・
それほどの怒りにかられた時、実行してしまうか、踏みとどまるか、
何が違うんだろう?
もしかすると、踏みとどまれる方が、実は異常な心情なのかもしれないな・・・・ -
Posted by ブクログ
幕末の水戸藩における門閥派と改革派の主導権争い、安政の大獄での異常に執拗な水戸藩士への処分など、政治的な闘争が克明に記されている、と思う。武力衝突中心の戦国時代は、政略結婚など複雑なお家関係こそあるが、弱肉強食という比較的分かりやすいルールの下で歴史が展開しており、興味が持ちやすい(事実、私は小学校・中学校程度で高い関心を持った)と感じる。一方、幕末は尊皇攘夷と体制維持の両派、とくに前者の歴史的経緯が語られない中での学習が多かったこと、政治的な闘争が多く複雑に感じたことから、個人的にはあまり関心が持てないでいた。本書は、尊皇攘夷論の起源を水戸学にあるとして、勃興から諸国への広がりまで書かれており、幕末の歴史を学ぶ上で読んでおくと、幕末の政治的混乱や闘争がなぜ起きて現在知られているように展開したのかがよく理解できる。当然の結果として、幕末に対しても小中学校程度の学習で、戦国時代同様、関心が持てると感じた。小説としても、教科書の補助的な書物としても価値のある作品だと感じる。
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江戸鎖国時代の長崎にオランダ船でやってきた医学者シーボルト。出島に出入りする遊女其扇(お滝)との間に生まれたお稲は、偉大な父と同じ医学、産科医として自立していく。職業を持った女などいない時代に医者としての道を志し、教えをうけた石井宗謙に犯され女児を生みながらも幕末、明治維新を生き抜いていく。
開国ってすごかったんだ。武力を見せしめにして開国を迫って中国を植民地化したイギリスを筆頭にアメリカ・ロシア・フランス。開国か鎖国を続けるかで日本国内も争いが激しいし、暗殺、切り捨て、切腹、投獄、拷問も日常茶飯事。男が妾をもつのは当たり前、女がてごめにされても仕方がない。すごい時代。シーボルトが最初に来た時は経験、知識豊かで相当に尊敬もされたみたいだけど、日本地図を国外に持ち出そうとして永久追放された後、何十年後に再来日した時はうとまれたみたい。 -
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江戸鎖国時代の長崎にオランダ船でやってきた医学者シーボルト。出島に出入りする遊女其扇(お滝)との間に生まれたお稲は、偉大な父と同じ医学、産科医として自立していく。職業を持った女などいない時代に医者としての道を志し、教えをうけた石井宗謙に犯され女児を生みながらも幕末、明治維新を生き抜いていく。
開国ってすごかったんだ。武力を見せしめにして開国を迫って中国を植民地化したイギリスを筆頭にアメリカ・ロシア・フランス。開国か鎖国を続けるかで日本国内も争いが激しいし、暗殺、切り捨て、切腹、投獄、拷問も日常茶飯事。男が妾をもつのは当たり前、女がてごめにされても仕方がない。すごい時代。シーボルトが最初に来た時は経験、知識豊かで相当に尊敬もされたみたいだけど、日本地図を国外に持ち出そうとして永久追放された後、何十年後に再来日した時はうとまれたみたい。 -
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
江戸から明治、人々は苦労して新しいものを取り入れ、初めてのものを作りだした。
歴史小説家が豊富な史料を駆使して書いたパイオニアたちのとっておきの物語。
[ 目次 ]
解剖
スキー
石鹸
洋食
アイスクリーム
傘
国旗
幼稚園
マッチ
電話
蚊帳・蚊取り線香
胃カメラ
万年筆
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]