吉村昭のレビュー一覧

  • 深海の使者

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    またまた自分の不勉強が発覚。同盟国であるドイツと潜水艦で行き来していたとは・・・!事実を淡々と書いてあるのだが、なぜか引き込まれていく作品です。

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    2011年04月22日
  • 敵討

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    個人的と思われる敵討ちも社会の動きに左右されていくという2編。
    「敵討」は伯父を闇討ちにされ、父も返り討ちにあった熊倉伝十郎が七年後、牢獄から放たれた敵を討つ物語だ。闇討ちの背後に老中水野忠邦の膝下で鳥居の陰謀があった。

     当時敵討ちは1%も成功しないことで、成功しないとお家断絶で大変な作業だったらしい。病死などしていてもダメである。あてどない放浪の旅になる。その様子を吉村さんらしい資料に裏づけされた描写が興味深い。

    相手が、遠島の罪に処せられていることがわかる。しかし、それでは敵討ちはできず、失敗になるのだけど、火事で帰牢したことで罪一等減で、所払いくらいになる。それでようやくはたせる。背景に倹約令を巡る権力争いがあり、こうした社会の動きに個人的な敵討ちも左右されていく様子が面白いところ。

    「最後の仇討」は明治の近代化の過程で禁止された敵討が背景。臼井六郎は11歳と時、藩の争いに巻き込まれ父と母を惨殺される。12年に及ぶ苦難を経て、明治13年に敵を討つ。ところが、それより七年前すでに「仇討禁止令」が公布されていた、結果、禁獄終身刑となる。

    敵討は法律では禁止されても「美しい行為」と称える風潮もあって彼は幸せな晩年をすごす。
    あいかわらずのたたみかけるような吉村節が堪能できる。中篇二つというのが少し中途半端。

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    2011年03月27日
  • 桜田門外ノ変(下)

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    桜田門外ノ変自体は数時間のものだろうからそれだけでこれだけの小説のテーマになるのかと思っていたら圧倒されました。
    あとがきを読むと資料を丹念に読み砕き、現地に行き、そこでまた人と会い資料を得て、それを骨格として作り上げてその間を想像で補い紡いでいくという作業をしていることがよく分る。
    著者は当日の雪がいつ止んだのか色々な文献をあたるが不明で、不明ではあるが気持ちが入っいくと想像できるというようなことを言っていた。本の中では午後2時に止んだとしている。

    尊皇攘夷派は今になると分の悪い立場だが、安政の大獄の件を読むと事件を起こすのもやむなしかと思う。井伊直弼の弾圧は過酷を極めている。

    襲撃の描写は息を呑む。剣の修行なんて関係ない。怖いので刀のつばぜり合いとなり、刀同士がぶつかったとこで刀を振るので鼻とか耳とか指が散乱していたなんてリアルだ。

    井伊直弼は合図も兼ねていたピストルが腰にあたっていてその段階で襲撃は成功だったわけである。雪も幸いした。敵は刀が濡れないようにカバーをしているし、刀にサビがこないようにボロな刀を持っていた人もいて、結果、曲がった刀があちこちに落ちていたとある。

    話はこれで終りかと思ったら、主人公の関鉄之介のその後の足取り、最後は逃走に移っていく。このタッチは大好きな「長英逃亡」に似ていて緊張感を呼ぶ。ここまで資料が残っているものかと思ったらあるんですね。

    あまりの労作に圧倒されてページを閉じた。

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    2011年03月11日
  • 仮釈放

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    浮気をした妻を殺害した、元教師。
    まじめに服役し、晴れて仮釈放。

    前半の、服役中の閉塞感、恐怖感に息が詰まる。
    罪を犯したとはいえ、塀の中の暮らしは辛すぎる。
    しかし、それでこそ、自分の罪と向かい合うことができるのかもしれない。

    そうやって、向かい合ったにもかかわらず、やっぱり自分が悪かったと思えなかったら。
    ただひっそりと、まじめに生きていこうと思っていたのに、

    目の前が赤い・・・あの時と同じ・・・
    それほどの怒りにかられた時、実行してしまうか、踏みとどまるか、
    何が違うんだろう?
    もしかすると、踏みとどまれる方が、実は異常な心情なのかもしれないな・・・・

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    2011年03月03日
  • 桜田門外ノ変(下)

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    学校で習った桜田門外の変や安政の大獄。
    ただただ丸暗記してただけの歴史的事件が、複雑な人間関係を絡ませながら起こっていたことにびっくり。
    読みながら何度も「そうやったんかー…。」の連続でした。

    ほんとは映画を観に行く前に原作を…だったんだけど、原作で十分堪能できてしまった。

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    2011年02月24日
  • 暁の旅人

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     史伝であるため事実が淡々と述べられていくだけなのだけどおもしろい。松本良順という人の医家としての生き方や当時の人の考え方がおもしろい。歴史の事実が分かっていくのが面白い。

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    2011年02月21日
  • 生麦事件(上)

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    この本は、生麦事件だけを捉えるのではなく、当時の複雑な薩摩藩の政治的な動きを克明に描いているもの。会津についたり、長州についたり、薩摩の政治力は幕府のそれを凌駕し、生麦事件をきっかけとしたイギリスとの接触が大きな影響を与えている。

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    2011年02月06日
  • 桜田門外ノ変(上)

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    水戸藩は、幕末の導火線に火をつけたが、内ゲバにより、薩長のようにコトを成し遂げることができなかった。
    吉村昭の「逃げる」描写が冴えわたる。
    幕府側の拷問の様子を読んでいると、水戸藩士の怒りが自らのものとして響いてくる。
    映画化されたが、この小説の方が断然面白い。

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    2011年02月05日
  • 彰義隊

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    輪王寺宮の伝記です。上野戦争だけでなく、東北戦争についても知識を得ることができる。吉村昭が得意の「逃げる」描写が映画を見ているような。
    一読の価値アリ。

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    2017年03月02日
  • 桜田門外ノ変(上)

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    幕末の水戸藩における門閥派と改革派の主導権争い、安政の大獄での異常に執拗な水戸藩士への処分など、政治的な闘争が克明に記されている、と思う。武力衝突中心の戦国時代は、政略結婚など複雑なお家関係こそあるが、弱肉強食という比較的分かりやすいルールの下で歴史が展開しており、興味が持ちやすい(事実、私は小学校・中学校程度で高い関心を持った)と感じる。一方、幕末は尊皇攘夷と体制維持の両派、とくに前者の歴史的経緯が語られない中での学習が多かったこと、政治的な闘争が多く複雑に感じたことから、個人的にはあまり関心が持てないでいた。本書は、尊皇攘夷論の起源を水戸学にあるとして、勃興から諸国への広がりまで書かれており、幕末の歴史を学ぶ上で読んでおくと、幕末の政治的混乱や闘争がなぜ起きて現在知られているように展開したのかがよく理解できる。当然の結果として、幕末に対しても小中学校程度の学習で、戦国時代同様、関心が持てると感じた。小説としても、教科書の補助的な書物としても価値のある作品だと感じる。

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    2011年01月23日
  • 桜田門外ノ変(上)

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    ネタバレ

    2011.1.19~2.14
    著者が言う"江戸幕府崩壊と大東亜戦争敗戦はそこに至る経緯が似ている、とりわけ桜田門外の変(1860年)と二・二六事件(1936年)は極めて類似している"との指摘はなるほどと感じた。確かに事件によって前者は(尊王はともかく)攘夷派が敗れて開国に導き、後者は軍国主義の暴発と悲惨な敗戦に導いた。しかし暴力によって事態を打開しようとする野蛮な行いが76年後に繰り返されたとうことは歴史に学んでいない訳で、その代償は余りにも大きかったと思う。「長英逃亡」と同様、幕府側の捜査網の鋭さに驚く。

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    2012年01月27日
  • 逃亡

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    逃げた先で、また追われる。
    まるで悪夢のような物語。
    最悪の状況でも、決して諦めることのなかった主人公の精神力に脱帽。

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    2010年10月31日
  • 漂流記の魅力

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    漂流記と言っても外国文学のそれではなく、江戸時代に意図せず難破し漂流して艱難辛苦を乗り越えて日本に帰国してきた人たちからの聞き取りの記録についての本。

    石巻(宮城県)から出航して遭難した若宮丸の帰還者たちの記録「環海異聞」中心に記載している。同じ船で遭難して、シベリアに到着後も、語学習得力の差から仲間割れが起こったり、ロシア永住を決意したり、必ずしも同じ船の乗組員が一枚岩ではなかったことがわかる。
    現地に残った人のその後などは現在は判明しているのだろうか・・。空想のふくらむ本。

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    2010年10月31日
  • 天に遊ぶ

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    少なめなエッセイと短編小説の薄い本
    実家に犬がいるだけ私としては、「飼い犬が癌になった話」が印象深いかったです。
    コンパクトながら、リアリティのある作品でした。

    但し、初めて吉村昭を読む人に対しては、短編だけの吉村昭じゃないよ。本当の良さは、緻密な資料に基づく小説です。といいたくなる程の良い作品。

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    2010年10月26日
  • 敵討

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    敵討ち、これは侍の時代のれっきとした制度で、この時代、敵討ちという私刑制度の下、合法的に殺人が許されていた。私刑の禁止されている現代においては考えられない制度である。
    主人公は敵討ちの使命を負い、敵を探す旅に出る。出たくなくても、世間体というものがそれを許さない。その道のりは果てしなく、終わりがなかなか見えることはない。この制度の下、敵にめぐりあうことなく、無念に朽ちていった者も数多くいる。まさに、自分との戦いである。
    小泉元総理大臣も本書を読んだとか。

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    2010年09月21日
  • ふぉん・しいほるとの娘(下)

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    江戸鎖国時代の長崎にオランダ船でやってきた医学者シーボルト。出島に出入りする遊女其扇(お滝)との間に生まれたお稲は、偉大な父と同じ医学、産科医として自立していく。職業を持った女などいない時代に医者としての道を志し、教えをうけた石井宗謙に犯され女児を生みながらも幕末、明治維新を生き抜いていく。

    開国ってすごかったんだ。武力を見せしめにして開国を迫って中国を植民地化したイギリスを筆頭にアメリカ・ロシア・フランス。開国か鎖国を続けるかで日本国内も争いが激しいし、暗殺、切り捨て、切腹、投獄、拷問も日常茶飯事。男が妾をもつのは当たり前、女がてごめにされても仕方がない。すごい時代。シーボルトが最初に来た時は経験、知識豊かで相当に尊敬もされたみたいだけど、日本地図を国外に持ち出そうとして永久追放された後、何十年後に再来日した時はうとまれたみたい。

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    2010年08月15日
  • ふぉん・しいほるとの娘(上)

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    江戸鎖国時代の長崎にオランダ船でやってきた医学者シーボルト。出島に出入りする遊女其扇(お滝)との間に生まれたお稲は、偉大な父と同じ医学、産科医として自立していく。職業を持った女などいない時代に医者としての道を志し、教えをうけた石井宗謙に犯され女児を生みながらも幕末、明治維新を生き抜いていく。

    開国ってすごかったんだ。武力を見せしめにして開国を迫って中国を植民地化したイギリスを筆頭にアメリカ・ロシア・フランス。開国か鎖国を続けるかで日本国内も争いが激しいし、暗殺、切り捨て、切腹、投獄、拷問も日常茶飯事。男が妾をもつのは当たり前、女がてごめにされても仕方がない。すごい時代。シーボルトが最初に来た時は経験、知識豊かで相当に尊敬もされたみたいだけど、日本地図を国外に持ち出そうとして永久追放された後、何十年後に再来日した時はうとまれたみたい。

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    2010年08月15日
  • 冷い夏、熱い夏

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    弟の壮絶な闘病と、取りまく家族の葛藤。
    医療技術、インフォームドコンセント、緩和ケア、QOLの考え方などが、作品が描かれた1980年代と現在とでは大きく異なる。その違いに戸惑いをおぼえるが、死に向き合うそれぞれの立場の苦悩が圧倒的な迫力でリアルに伝わってくる。

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    2010年07月06日
  • プリズンの満月

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    ひとりの元刑務官による巣鴨プリズンの回想。
    羆嵐が無茶苦茶良かったので読んでみた吉村昭2冊目。
    徹底した調査と取材を元に構成したフィクションというのは羆嵐と同じ。
    一見硬質な飾り気のない文体が実はとても読みやすく、逆に主人公に感情移入しやすかった。
    羆嵐読んだ時にこの作家好きになるかも、と感じたのは間違いじゃなかった。

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    2010年08月29日
  • 事物はじまりの物語

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    [ 内容 ]
    江戸から明治、人々は苦労して新しいものを取り入れ、初めてのものを作りだした。
    歴史小説家が豊富な史料を駆使して書いたパイオニアたちのとっておきの物語。

    [ 目次 ]
    解剖
    スキー
    石鹸
    洋食
    アイスクリーム
    傘
    国旗
    幼稚園
    マッチ
    電話
    蚊帳・蚊取り線香
    胃カメラ
    万年筆

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

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    2010年05月29日