吉村昭のレビュー一覧
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ネタバレ大正4年、北海道の開拓村を襲った国内史上最悪の獣害事件――「三毛別羆事件」。
『羆嵐』は、その凄惨な実話をもとに描かれたドキュメンタリーホラー小説です。
まず圧倒されるのは、熊の存在感と忍び寄る恐怖です。3メートルに迫る巨体でありながら、闇に紛れ、気づいたときにはすでに家の中に侵入している。雪の白に、血の赤がじわじわと広がっていく描写は、ただの獣害を超えた自然の猛威として読者に迫ります。
特に、「寝ていると思っていた家族が、すでに喉を食い破られていた」という場面は、虚を突かれたような衝撃と絶望感がありました。
物語は、登場人物の感情に過度に踏み込むことなく、冷徹な三人称視点で進みます。その -
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ネタバレ「鉄橋」生死を天秤にかけただけの男と、まるで違う理由で男の死を考える話
「少女架刑」死の後も静寂ではなかった話
「透明標本」骨標本に取り憑かれた男の話。「少女架刑」と繋がりあり。
「石の微笑」引き込まれていった話。なのだけれど「ここで終わるのか!」という話。その後の姉と曽根がとても気になる。曽根と共に行ったのだろう。人の(というより生きること・死ぬことを意識している女性の?)心をつかむ曽根の力を知りたい。
「星への旅」前の「石の微笑」と同じく引き込まれていった話。死に向かう前の興奮、死の直前の恐怖・緊迫。それらの向こうに圭一の安らぎがあったのか?
「白い道」???
重たい話が多かった。一つの -
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幕末、天然痘対策として種痘を行うことを決意し、生涯を捧げた福井藩の町医者・笠原良策の物語。
何らかの脅威に対して新たな技で立ち向かおうとする際に、必ず現れる障害となる存在。無知からくる恐怖だったり、既得権益にしがみつくものだったり、と時代は変われど同じ事が起こり続けます。
コロナ禍になるまでは、それは言っても過去の出来事で、自分の生きている今ではそんな事起きないだろう、と思っていましたね。
いや、時代が進んでも、科学技術が発達しても、人間の本質というものは変わらないのだな、という結論を得るとは思いもしませんでした。
ワクチンの危険性の是非を云々ではなく、全てワクチンの存在自体を否定するよう -
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ネタバレ・あらすじ
吉村昭先生の短編6篇が収録された短編集。
うっっすらと何となく繋がりがありそうでなさそうな作品たち。
単なる現実としての生と死と、超越した視点から描かれる生と死。
・感想
星3.8くらいかな。
鉄橋の轢死したプロボクサーは自殺なのか事件なのか、ミステリー風に周囲の人間の客観的視点を書いた後に本人視点での動機と背景。
周囲の人間はあーだこーだと己との関係性から彼の死に「理由」付けしてるけど、実際は今でいう迷惑系な動機だったんだ…。
己の限界を追い求めた結果ってことなのかな。
少女架刑は死んだ少女の自意識からの一人称視点の話。
解剖される様子、家族との関係。
死後の身体が単に「物体