あらすじ
江戸・天明年間、シケに遭って黒潮に乗ってしまった男たちは、不気味な沈黙をたもつ絶海の火山島に漂着した。水も湧かず、生活の手段とてない無人の島で、仲間の男たちは次次と倒れて行ったが、土佐の船乗り長平はただひとり生き残って、12年に及ぶ苦闘の末、ついに生還する。その生存の秘密と、壮絶な生きざまを巨細に描いて圧倒的感動を呼ぶ、長編ドキュメンタリー小説。
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Posted by ブクログ
凄かった…
人も住めないような無人島におよそ12年も生き抜いてとか自分には到底出来そうにないと思った。
気付いたらずっとページをめくっていたくらい気になってどんどん読むことを止められなかった。
それくらい面白かった!
主人公の精神力や行動力、周りを観察する力など学ぶべきところがたくさんあった。
衣食住が確立していることに感謝したくなる。
Posted by ブクログ
作品は素晴らしい!人間って、ここまでできるのか…と圧倒され、胸を打たれた。
ただし――おい、新潮文庫!事実に基づくドキュメンタリー小説とはいえ、背表紙のあらすじで全部ネタバレするのはやめてくれ。たしかに、生還したからこそ話が伝わってるわけだけど、そこは読者の想像に委ねてくれよ…
と言うわけで、これから読む人は、カバーでもつけて、背表紙は見ずに読み進めることをオススメします。
Posted by ブクログ
すごくよかった。
長平が冷静に自分を律して周りを見て考えているからこそ生き延びることができてと思う。
島と鳥をよく読み間違えてた自分に歳を感じた
Posted by ブクログ
感動です。驚きです。これが江戸時代に本当にあった話とは。物語りは漂流から無人島での苦闘、孤独、帰還と息をつかせません。没頭して一気読みでした。自然しかない中で人間は本当に無力。それなのに、私には無理でしょうが人間はここまで頑張れる。素晴らしい本でした。
Posted by ブクログ
非常に面白く惹きつけられた一冊。
ジョン万次郎も難破して辿り着いたのが、同じ「鳥島」だったのを思い出した。
個人差にもよるが、人間は志と体力、知恵でこごまで生き延びることが出来るのかと感慨深い。
鳥島でアホウドリが飛来しなくなったらどうなるか怖くなった、自然頼みの命だ。
長平は人間的に最高の人物、すごい人生だ。
Posted by ブクログ
実際に会った出来事として、信じられないと感じました。人間の生命力に感動しました。人は希望を捨ててはならないという事が、とても大事と感じました。
Posted by ブクログ
・あらすじ
1785年、土佐藩の船乗り長平は悪天候と黒潮の影響により3人の船乗り仲間とともに無人島にたどり着く。
そこは土佐から700km離れた鳥島という場所だった。
食物も育たない活火山の岩山で雨水をのみ、アホウドリを食べ心身ともに極限状態の中を生き抜き生還した長平の12年間。
・感想
さすが吉村先生、面白かった。
江戸時代の奉行所の公的文書でしか残されていない漂流者の記録から、壮絶なサバイバル生活を綿密な取材と想像力で描写してた。
淡々とした文章ながら、いや、だからこそ厳しく牙をむく自然が恐ろしく感じたし、絶望、孤独感、諦観などの人間の心理に納得させられた。
手に汗握る展開もありするする読めるからあっという間に読み切ってしまった。
後半は展開が気になって寝不足になりつつちょっと焦りながら読んじゃったかも。
いつかじっくり読み直したい。
これまで読んできた羆嵐、高熱隧道と同じく自然と相対した時の人間の無力さ。
でもその無力でちっぽけな人間が、だからこそ知恵を出し合い、助け合っていくことが大事なんだよな。
お互いに助け合うこともだけど自分で自分を投げ出さず、諦めない精神の強さも大事。
軟弱な現代人である私は多分3日で死ぬか発狂すると思うけども。
仲間の3人が死んでから2年ほどはたった1人であの環境を生き延びる決心をした長平の「なるようにしかならない。いつか助けがくることを祈念し、その時のために達者で生きるしかない」という境地にいたれる長平すごっ…。
後年に合流?してくる他の漂流民も船乗りという特性上ある程度協調性を持ってる人達ばかりでみんなで力合わせて帰郷できて本当に良かったよー。
ただ冒頭のアナタハン島みたいにここに1人でも女性がいたらまぁだいぶ環境は変わってたんだろうけど。
色んな意味で男だけで良かったな…!!
現代は自然科学やテクノロジーの発展により類稀に見るほど自然をコントロールできている時代だと思うんだけど、江戸時代なんて己の理解の範疇を超えた現象には神仏にすがるしか方法はなかった訳で、やっぱり信仰心というのは精神の支柱になるんだな、と思った。
読み終わったあとYouTubeで鳥島を検索したら絶滅危惧種であるアホウドリの保全活動団体の動画と昭和30年代の観測隊?の動画があったので視聴した。
本当に何もない環境だった…昔の漂流民の痕跡は今も残っているのだろうか。
Posted by ブクログ
一気読み、ドキドキ面白い。作者の調査と想像力がすごい。漂流し無人島での生活等が描かれる。無人島で何もすることもなく無気力に過ごし、仲間たちが精神や身体を病む様子は現代人への戒め様にも感じてしまう。主人公の長平は前向きかつ島暮らしを達観し修行僧のよう、他の漂流者とともに大自然相手に難しい仕事に取り組むことで生活にハリが出て長い時間をかけ未来を切り開く。これが実話に基づいていることが恐ろしい。
Posted by ブクログ
読みながらなにかに似てると思ってたんだけど、後半になって気づいた。これアンディ・ウィアー『火星の人』にそっくり。長平はマーク・ワトニーそのもの。
人間のちっぽけさと、偉大さ。
裏表紙を読まなかったので、長平が生き残るのかどうかを知らずに最後まで読めたのが最高にエキサイティングだった。
Posted by ブクログ
江戸時代の漁師の漂流サバイバル小説。この小説を読むと、次のような効能が得られると思う。
・困難な状況に置かれた時、どういうメンタルで過ごすのが自分にとっても他人にとっても最善なのか
・日々食事にありつけるありがたさ、運動の大事さ
・ものを大切にしようとする気持ちが深まる
・一方で、必要最低限のものでも生活することができるんだというミニマリスト思考にとっても参考になる
・サバイバルの知識つけといた方がいいなという危機感
冒頭に日本人のサバイバル例として戦後のアナタハン島の話や、横井庄一さん達のエピソードが紹介され、それも興味深く読み進めることができる。しかし本編はそれどころでない面白さで、江戸時代土佐の長平の話が始まり、漂流生活が始まるあたりから終幕まで一気読みしてしまうハラハラドキドキの展開の連続でした。
まず船が漂流する怖さが存分に伝わってきます。悪天候のため2km先の島に泳いで行くこともできない無力感や、漂流時間が経てば経つほどにどんどん離れていってしまう無力感が存分に伝わります。
漂流ものだと、例えば海外ドラマ「LOST」のように、漂流者同士のいざこざを描きがちですが、私はそういう人間の汚い部分を読まされるのは苦手です。この本ではそういった人間の汚い部分の描写が少ないので、読者として気持ちよく読み進めることができました。希望も見出しづらい極限の無人島生活なので、いざこざを起こしている場合ではないということもあるのですが、合計三度の漂着者が総じて「気持ちの良い男達」であり、困難な状況でも助けあい、思いやりがある日本人らしさが描かれているようで良かったです。
また、私自身は無宗教で、どちらかというと欧米の宗教感に懐疑的でさえありますが、無人島生活でのこの状況で信心深くなっていく長平や、当時の人達が仏にすがる宗教感は説得力があり、それによって心を支えている姿がとても真っ当でリアルに感じました。
これまでの読書歴ではサバイバルものだと、さいとうたかおの「サバイバル」が一番かなと思ってましたが、純粋なサバイバルの「過酷さ」「心理描写」「先行きのわからないドキドキさ」で考えるとこの小説の方が面白いと思います。
Posted by ブクログ
とても面白かった。江戸時代の船乗りが太平洋の鳥島に漂流した後、試行錯誤をしながら祖国に戻る話。土佐で米を運んでいた長平ら4人は時化にあいアホウドリしか住まない孤島に漂流する。長平以外の3人は栄養失調などで死んでしまい一人で過ごすこととなる。その後儀三郎ら率いる大坂船、栄右衛門ら率いる薩摩船が漂流しその人らと生活をする。孤島で死を待つだけの生活を捨て船を作り島から抜け出し祖国に帰ることを決断した漂流民は流木などから船を作り見事八丈島に辿り着く。一人になっても1年以上島で生活した長平の気力がすごい。アホウドリが渡り鳥で一年中いるわけではないことに気づいたり、肉だけ食べても死ぬことだったり、水のため方など洞察力が優れていてまた忍耐も人並み以上のものがあるから生き抜けたんだなと思う。
Posted by ブクログ
江戸時代中期に伊豆諸島最南端、絶海の孤島である鳥島に流れ着いた漂流船の物語。
寝泊りする洞窟を見つけ、アホウドリの肉と雨水を得る方法を体得してからは、仕事もしなくてよい、誰にも拘束されないため、堕落してしまい、毎日寝て暮らすようになる。栄養が偏り体に異変が現れる。そして希望の無い境遇を嘆き、卑屈になり、所有物(家屋や妻)への執着を見せるようになる。
そうやって仲間が次々と体調を崩し、絶望しながら生涯を終えていくなかで、主人公(長平)だけは自分の芯を強く保ちながら生きながらえる。
・毎朝日の出を眺めながら念仏を唱えるルーティン
・亡くなった仲間たちの墓参り
・体力増強と健康維持、規則正しい生活(漁と運動)
・「将来故郷に帰還できたら絶対に鶏肉を食べないという誓いのうえ」アホウドリを殺生
そして、後に流れ着いた漂流者達に食料を与え、生活の術を教えるだけでなく、毎日励まし続けた。もちろん、彼らは食料を消費したり、喧嘩をしたりと長平の足手まといになるのだが、長平にとっては「居てくれるだけで有難い、心の支え」という存在になっている。
長年の孤独な無人島暮らしの中で、モノへの執着や絶望を一通り味わった長平にとっては、漂流者の苦しみやトラブルなど酸いも甘いも知り尽くしていたのだろう。
そして、後に島を脱出するための造船作業において、その漂流仲間たちは、まさに頭脳であり労働力となった。長平1人の力ではなく、全員のチームプレーで数年かけて船をこしらえ、互いを鼓舞し、日本帰還という希望に向かう様子は感動的であった。
絶望的な極限状態においても一筋の希望を失わずにいること。孤独の中で、今現在に集中し、日々の生活を丁寧にすごしながら心身の健康を保ち続けること。人間として尊く生きるために、基本的ではあるが持続することはとても難しいことである。長平の成長とともに、人間の弱さと強さを徹底的に描いた一冊だと思う。
「創作する遺伝子」小島秀夫推薦
断崖絶壁の木も生えない火山島で12年余りを過ごし、無事生還した人の記録を掘り起こした素晴らしい作品です。火打ち石が無く、火も起こせない、穀物も植物も取れない、ナイナイづくしの中で生きるすべを編み出し、一人になっても生きる気力を保つ前半部と、後半の帰還への努力と苦悩が深く胸を打ちます。色々なものがありすぎて、すぐに手に入るこの時代にこそお勧めです。
Posted by ブクログ
文献を読み漁り、現地に赴き書き上げる吉村さんのノンフィクション小説は、細部にまでリアリティがあり、ゆえに没読してしまう。
この「漂流」でも、無人島で12年も生き抜いた男が感じる匂いや痛みまでも伝わってくる。
「熊嵐」にも感じた、この五感が牛耳られる感覚が私は好き。
タイトル買いの私だが、吉村著書は読破したい。
Posted by ブクログ
漂流した人の話などは、テレビやネットで見る事があったが、本で読むと想像も膨らみ過酷な状況下だと言うのが詳細に知れた。
目標を見つけた時の頑張る気持ちは、今の時代にも共感でき大事な事だと思った。
Posted by ブクログ
やめられなくて一気読み!
無線も海図もなかったころの遭難は
死と直結してたんですね。
普通の若者、長平が
いつの間にか遭難者たちのリーダーのような存在になる頼もしさも。
いつも念仏を唱えている姿が印象的でした。
高井有一さんの解説も読ませる。
吉村昭先生の作品、
やっぱり惹かれます。
Posted by ブクログ
自分だったら、長平のように心身の健康を保つことはできないとおもう。あんな状況になったら、とても正常ではいられない。
季節のめぐりに応じて、アホウドリが飛び去っては戻ってきたり、飛魚が飛んだり、嵐がきたりと、同じ描写が何度も繰り返される。もういいよと思うのだが、それが自然というものだと読んでいて気づく。読んでいるだけでこれなのだから、実際に12年も島で過ごした長平にとっては、さらにつらいものだっただろう。
Posted by ブクログ
江戸時代にシケにあい無人島に流れ着いた男が息抜き、島を脱出するまでの壮絶な生き様が描かれたドキュメンタリー小説。そう、これは事実であることに驚く。
長平の「なるようにしかならぬのだ、飢えるか生きながらえるか、また船が沖をよぎって助けてくれるか否かは、仏のみ心のままで、自分がどう願っても叶えられるものではない」「これからは、ただ念仏をとなえ、あらゆる欲望を捨て、日々達者に暮らしてゆこうと思った」は印象に残るセリフだった。
Posted by ブクログ
江戸時代の話かーと思ったものの、めちゃくちゃすんなりと読めてしまった。あらすじが完全にネタバレだけど、史実(?)ならいいのかな。
無人島でサバイバルする船員の絶望と希望が繰り返される記述が、地に足のついた表現で、ぜんぶ想像できる。気力をなくして洞穴で寝たきりになる者もいれば、生きていくために目標を作る者など人により生き方が異なるのも面白い。
これを書くための調査や時代考証は大変だっただろうなあ。
Posted by ブクログ
しばらく鳥肉が食べられなくなりそうでした…。
悪夢を見るほど場面を想起させる圧巻の描写力で、読後はどっと疲れました。思い出すと今でも波に揺られている気がします。
Posted by ブクログ
誠に壮絶な物語であった。
実際にはそのような漂流者がいたと言う記録のみが残っているだけで、本当は何があったのか? 当然ながら詳細は一切不明。本当の物語は更に壮絶で文章にはできないような事もあっただろう。
■健康であることの大切さ
■目標を持って生きる
と言う当たり前かも知れないが、基本的な事をあらためて教えてくれる小説てある。
序章の旧日本兵の話も非常に興味深い。有名な横井さん、小野田さん以前にアナタハン島からの帰還者(アナタハンの女王事件)と言う事件があった事は全く知らなかった。
Posted by ブクログ
映像で見たい!そんなお話でした。
私の知識不足か、なかなかイメージが湧かない部分があった。ストーリーとしては単純なのだが、映像として見たら、面白いだろうなぁと思ってしまった、というか映画あったのか!?
以前、テレビで刑務所か無人島を選ぶならどっち?みたいなのがあったけど、この小説読んだなら、刑務所一択かもしれない。
Posted by ブクログ
実話をもとにしていると聞くと、本当に想像がつかない。読んでいて大事だと思ったことは、生きている時に何か目指すべき目標が必要であるということ。何もない中では生きられない。短期的目標と長期的目標の2つが必要ではないかと思った。
Posted by ブクログ
日本は海に囲まれている。
ということを地理的な意味でも、意識的な意味でも、
強烈に感銘した重厚な一遍であった。
江戸時代、船がシケにあって船乗りが絶海の孤島に漂着。
火山島で水が湧かない、草木もわずかの実はアホウドリの生息地、
現代、鳥島と呼ばれているところにである。
そしてサバイバル、次々と遭難仲間も増え、12年ののち、故郷に帰れるのである。
定評のある吉村氏の筆力が、壮絶に書き尽くしているのは当然ことである。
鎖国の政策が江戸時代の船乗りたちにどんな危険を与えたか、に怒りを覚え、
主人公の「長平」という人物がサバイバルに打ち勝つその人間の成長に共感する。
克明で、淡々とした吉村氏のメッセージ、
海に囲まれ黒潮の流れる太平洋に面している日本の位置を強く意識させられた。
また
この主人公の読み書きもままならない若者が、人間として成長する強さは
やればできる!という希望を与えてくれる。
閑話休題
その鳥島のアホウドリを食べることが主人公たちの命を救うのだが、
たしか、今ではそのアホウドリも絶滅の危機で、
トキのように保護繫殖の労をとっている、とドキュメンタリーで見た。
その時に食べつくしたわけではあるまいが(笑