吉村昭のレビュー一覧

  • 彰義隊

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    敗者の美学

    解説にも掲載されているように、この作品は吉村昭最後の歴史小説だ。
    作者の生誕地に伝わる彰義隊の言い伝えだけでは物語として物足りないので、皇族でありながら朝廷でなく幕府側についた輪王寺宮を主人公にその悲劇の生涯を描くことによって、幕末から明治の流れを描くことが出来たのだという。

    勝てば官軍という言葉があるように、歴史では敗者側の扱いが偏っていることが多い。
    しかし日本では吉村昭や中村彰彦などの作家だけでなく、白虎隊の悲劇のように敗者側の物語が長い間愛されている。
    これこそが他国との国民性の大きな違いであると私は思う。
    この作品もそんな良作の一つである。

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    2013年01月27日
  • 彰義隊

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    激動の時代に巻き込まれた輪王寺宮の後半生に迫る作品でした。心理描写や過剰な演出を極力排した硬派な構成なので、輪王寺宮の人柄が今ひとつ把握できず淡々としているので盛り上がりに欠けるところもあり、ヒロイズムを欲する人には物足りないのでしょうが、幕末史のあまり知られていない面を丁寧に扱っていますので特に幕府側に思い入れのある人なら一読の価値は大きいかと思います。ただ戊辰戦争後の宮の処遇は脱藩大名・林忠崇の話を知っているとかなり好待遇な気がしてなりません。このあたりはやはり皇族と小藩の大名の違いなのでしょうか。

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    2013年01月22日
  • 桜田門外ノ変(下)

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    桜田門外の変については、井伊直弼が暗殺された事件。ぐらいの認識しかなかったが、事件に至る過程や関わった人達の気持ち、その後の動向が忠実に書かれていてとても勉強になりました。

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    2012年12月22日
  • 島抜け

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    「島抜け」少し時期がずれていたら遠島という重罪にならなかったのに。人間の運命を感じさせられる。12.11.3

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    2012年11月03日
  • 冷い夏、熱い夏

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    肉親が亡くなることよりも癌細胞の増殖によってヒトの臓器が破壊されていく様子がすごかった
    しかしやはり癌は本人に告知すべきだと思う

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    2012年09月30日
  • ふぉん・しいほるとの娘(上)

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    シーボルトの娘・イネの生涯。
    司馬遼太郎『花神』に出てくるような村田蔵六との関係はほとんどありません。
    日本で初めての女性医師になるために、シーボルトの娘として生まれてきたのですね。

    上巻はイネの父シーボルトや母オタキの内容が多いです。

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    2012年09月05日
  • 新装版 白い航跡(上)

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    中学の先生に勧められた一冊、私が歴史小説を好きのなったきっかけの本(あと司馬遼太郎『竜馬がゆく』)。医者の覚悟というものを時代は違いながらも感じ取ることができた。

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    2012年09月02日
  • 冷い夏、熱い夏

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    今とはガンの告知に対する認識が違うのか。徹底的に弟に嘘を突き通す主人公の態度に、ある種の自分勝手さや独善を感じてしまう。本当に隠すのが良いことなのか、告知が患者にとって本当に悪いことなのか。深くて重いテーマの作品でゆっくり考える必要がある。

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    2012年08月02日
  • 逃亡

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    2012/07/31-09/04 アメリカのテレビ映画逃亡者のリチャード・キンブルのようなハラハラ感はない。幸司郎が自ら選んで人生を破綻させていく、自堕落感さえ漂ってくる。構想に筆がついていかないまどろっこさを感じる。

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    2012年08月04日
  • 虹の翼

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    ライト兄弟が飛行機を飛ばす前に日本で真剣に飛ぶことを考えていた二宮忠八。その人生を描いた小説だが、後半にかけての医薬品会社に入社してからの物語に感情移入する。明治-大正期のビジネスマンが企業を立ち上げる様は今の世の中にないバイタリティーを感じる。

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    2012年07月22日
  • 吉村昭の平家物語

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    平家物語の現代語訳。小説風のものは前に読んだが、おそらくほぼ原典を忠実にしつつ、シンプルにわかりやすく落とし込んだ印象。
    平清盛が想像以上に悪逆非道に描かれ、後白河法皇もそれほどの人物ではない感じ。頼朝は嫉妬深く、義経はひたすらの猪突猛進型。平家側はまったくの軟弱かと思いきや、所々は頑張る。やはり基本平家に同情的な形なのかな。 通史としてさくっと読むにはいい本かも。涙を流してばかりの記述は多い。

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    2012年07月20日
  • 虹の翼

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    二宮さん凄すぎ。烏からヒントを得て飛行理論を自分の手で作ってしまうとは。商売の才能もあるし。
    ただ、変人扱いされていたのが残念だった。人と違ったことをする者を排除する風潮は昔からの日本人の性質なのかな。

    あとは、世の中はここ100年で随分と狭くなったんだなと思った。

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    2012年07月03日
  • 桜田門外ノ変(上)

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    全2巻。
    映画になってた桜田門外の変。

    史実を忠実に、歴史小説をきちんと描く著者。
    その分物語性は弱く、個人的にあまり好きではなかったけど
    今回もやっぱり。

    淡々と史実が積み重ねてあって、
    その上澄みのような物語を拾っていく感じ。
    何があったかをちゃんと知れるけど、
    その分周辺の事柄についての記述も多く、
    本筋の物語にのめり込む感じは少ない。

    が、
    事件のシーンはすごかった。
    リアリティの追求された生々しいまでの襲撃シーン。
    すごく映像的で、ここだけ時間が引き伸されるような感覚。
    ここはすごい。

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    2012年07月02日
  • 生麦事件(下)

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    生麦事件から薩英戦争、倒幕へと流れていった。
    とすると、薩長をのさばらせることになったこの事件の意味は大きい。というか腹立たしい。

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    2012年06月24日
  • 生麦事件(上)

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    島津久光の大名行列に、イギリス人が乱入し、1名が殺害された生麦事件。

    はるか昔の知識を引っ張り出しながら読み進めたけれど、やっぱりイギリスおかしいよ!
    現地法に従うのが第一で、治外法権とかで結んでくる諸外国の方がずっと野蛮だと思うのです。

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    2012年06月24日
  • ニコライ遭難

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    明治24年に起こった大津事件の前後を描いた歴史小説。

    史実が淡々と積み上げられていくので、どこまでが本当のことで、どこに作者の想像が入っているのか全く分かりません。非常に細部にまで史実にこだわった作品です。

    日本のロシア皇太子の歓迎ぶりは現代に生きる自分が読んでいると、滑稽にまで感じてしまうのですが、それだけ当時のロシアの力の強さ、開国から間もない日本の苦慮の部分が見えます。ロシア皇太子のはしゃっぎぷりはなんだかかわいらしく思えたのですが(笑)

    事件が起こってからの司法と内閣の犯人の量刑をめぐっての軋轢は描写は決して多くないのにそれでも引き込まれます。司法側が頑なに法律を守ろうとしただけ

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    2014年02月16日
  • ふぉん・しいほるとの娘(上)

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    シーボルトの妾であった其扇ことお滝、二人の娘であるお稲、お稲の娘であるタカ。女三代に渡る物語。
    日本が鎖国を経て、ペリー来航ののち開国していく激動の時代に、異人との間に産まれ、また、女性でありながら産科医として名を馳せていくお稲。数々の苦労を経験しながらも、彼女の一つひとつの行動が、そのまま時代の進化に繋がっていることに気づかされる。

    改めて、私は良い時代に女性として産まれてきたのだと思う。

    日本初の女医さんは、荻野ぎんさんでは?と思っていたら、最後の方で彼女の話も紹介された。荻野ぎんさんの生涯を描いた渡辺淳一さんの「花埋み」もおすすめ。

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    2012年04月30日
  • 暁の旅人

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    幕末から明治に掛けて医学の分野で活躍した松本良順の一生を描いた作。佐藤泰然の次男として生まれた良順は泰然が洋方医であったこともあり蘭語は少しはやれた。若かりし頃長崎でオランダの医官のポンペに師事し医学を習得する。やがて幕府の奥医者となり幕府の医者の最高位までなる。明治になると会津・庄内の新政府徹底抗戦藩の支援にまわる。それも敗色濃厚となり、蝦夷の支援依頼を榎本武揚から受けるがこれを断り新政府に捕われる。その後長崎での外国知人らの支援で洋方病院を設立し、これを認められて軍医の取り纏め役となる。公では成功するが、私では長男・次男共に若くて喪いあまり幸せな人生とは言えなかった。
    吉村氏の表現が淡々、

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    2012年03月31日
  • 関東大震災

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    前半の実際の地震の被害のドキュメントは一読に値する。◆トタン屋根で首がちょん切れるエピソードなど生々しい。◆恥ずかしながら、被服工廠跡のエピソードも甘粕大尉による大杉栄一家惨殺も知らなかった。◆今読むと、当時でも大杉栄の甥っ子を口封じのために殺すことは、世間でも厳しい目で見ていたのか。また、震災によって、新聞が段々と御用メディアに成り下がっていく契機になったようにも思える。

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    2020年07月27日
  • 桜田門外ノ変(下)

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    桜田門外の変から明治維新までの8年。激動ですね。お殿様やお家のために家来は躊躇いもなく命を投げ出す。そんな古の時代から8年で近代国家。
    幕府大老暗殺なんて日本史上の大事件を起こしながら、維新まで生き延びてよりによって警視庁勤務した奴までいるとは。英国公使館を焼き討ちした初代内閣総理大臣伊藤博文といい凄い時代です。

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    2012年03月11日