吉村昭のレビュー一覧
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太平洋戦争末期の日本を、少年の目を通じて描いた5篇からなる短篇集。舞台となっているのは、樺太、瀬戸内海、沖縄、サイパンなど、辺境の地である。これまで戦争とは縁がなかった地域が突然、最前線となり、日常と戦争との境目が極めて曖昧で紙一重である状況が描かれている。普通の生活を送っていて、突然戦争の影がそこに忍び寄っても誰もがそれを目の前に迫る来る現実的な危機とは捉えることが出来ずにいる様がそこにはあった。そして、自分や家族がどのようにするかという判断のほんの少しの些細な差が、生と死を分ける無情な結果がその先に待っているのである。戦争と日常が背中合わせである中、誰もがそれを現実として受け止められないま
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Posted by ブクログ
黒船の来航してからというもの、どうも弱腰を隠せない徳川幕府は
鎖国にこだわる朝廷をなだめるのでずっと手一杯だった
その間
新しい日本の主導権を握ろうと、野望を燃やす薩摩・長州は
勝手にイギリスと組み、近代的な軍事力を得て
大政奉還・王政復古を成し遂げたあとにも飽きたらず
旧幕府殲滅計画を着々とすすめていた
そんな薩長を、朝廷も支持したというのは要するに
強いものになびいただけの話
…というのでもなくて
婚約者を将軍に奪われた人の私怨が大きく絡んでいたらしいのだが
いずれにせよ朝廷が
現実の武力に対してなすすべのなかったことに変わりはなかった
しかしそれでも…いや、だからこそ
旧幕府派の志士たち -
Posted by ブクログ
「咳をしてもひとり」「いれものがない両手でうける」が中学校の国語の教科書(三省堂)に掲載されている。それらは自由律俳句の代表作として所収されているが、そを作った俳人尾崎放哉(おざきほうさい)の晩年を、吉村昭が描いた伝記文学。
放哉は、東京大学を卒業したエリートで、俳人としても認められている存在だった。しかし、酒癖の悪さが原因で仕事を追われ、妻とも別れて、俳句同人の、井上を頼って小豆島に渡る。そこで、 寺の離れの庵守りとして暮らし始める。
放哉は、生活力がないので、島の名士の井上や寺の住職、島の外の俳句仲間に無心をする。相手のちょっとした態度にすぐに怒ったり、同じ相手にちょっと親切にされると、感