吉村昭のレビュー一覧

  • 総員起シ

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    「海の柩」は次々と流されてくる兵隊の水死体、という状況からして恐ろしいのですが、それらに共通するある特徴の理由がわかった時、あまりの殺生ぶりに戦慄せずにはいられませんでした。「総員起シ」は潜水艦サルベージのドキュメントとして非常に興味深い話でした。せっかく戦争を生き残ったのに、9年後に引き揚げられた潜水艦のメタンガスで死んでしまった三名の元海軍技術士官が不憫でならない。

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    2018年09月16日
  • 高熱隧道

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    ネタバレ

    昭和10年頃黒部渓谷上流の仙人谷から下流の阿曽原谷付近の水路・軌道トンネルの掘削について、工事過程をベースに描かれた物語。阿曽原谷側から掘削を進めるにつれて上昇する岩盤温度。熱気。冬季も作業を進めるために起こる、谷での雪崩。全工区での死者が300名超のところ、佐川組請負工区で230名。非常に厳しい環境でトンネル工事が進む様子が叙述的に描かれている。
    いっそトンネルなど開通してほしくなかった。

    とは言いつつ、いつか水平歩道と下ノ廊下を歩きたいと思う。

    三ノ輪の吉村昭記念館オススメ。

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    2024年05月29日
  • 闇を裂く道

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    大正七年四月一日起工。
    昭和九年三月十日完成。
    十五年十一ヵ月、延べ二百五十万人の作業員によって完成した丹那トンネル。
    当初の甘い予測を遥かに上回る難工事。
    付近の住民の非難。
    自然災害。
    それらを乗り越えて作り上げた大傑作”丹那トンネル”
    著者の『高熱隧道』と共に読むと熱いトンネル屋の魂が感じられる。

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    2018年05月27日
  • 星への旅

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    死を題材にした短編集。
    吉村昭の記録小説以外の物語を読むのは初めてだった。
    記録小説で見せる重厚感無く、ひたすらに儚げでロマンティシズム。
    少し、肩透かしを食らったような感じがした。

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    2018年04月11日
  • 熊撃ち

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    色んな人間がいるように、色んな熊撃ちがある。それぞれの熊撃ち。背景は勿論、心理状態も違う。よく描写されており、読者としておそるおそる参加してみた。それぞれのケースに熊撃ちという言葉に括ることが出来ない独自性と共通性を見出すことができた。

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    2018年03月23日
  • 生麦事件(下)

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    生麦事件が冒頭に始まり、その余波を描いていくストーリー。
    途中タイトルは薩英戦争のほうがいいのではと思ったが、発端は生麦事件にあるだろうなと。
    教科書では字面しか出てこないが、重要であった。
    薩摩の徹底的な抵抗姿勢がなければ日本は中国のようになり、植民地になっていたのはたしか。
    賛否両論はあるが、日本に薩摩のような藩があってよかった。

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    2018年03月17日
  • 彰義隊

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    黒船の来航してからというもの、どうも弱腰を隠せない徳川幕府は
    鎖国にこだわる朝廷をなだめるのでずっと手一杯だった
    その間
    新しい日本の主導権を握ろうと、野望を燃やす薩摩・長州は
    勝手にイギリスと組み、近代的な軍事力を得て
    大政奉還・王政復古を成し遂げたあとにも飽きたらず
    旧幕府殲滅計画を着々とすすめていた
    そんな薩長を、朝廷も支持したというのは要するに
    強いものになびいただけの話
    …というのでもなくて
    婚約者を将軍に奪われた人の私怨が大きく絡んでいたらしいのだが
    いずれにせよ朝廷が
    現実の武力に対してなすすべのなかったことに変わりはなかった
    しかしそれでも…いや、だからこそ
    旧幕府派の志士たち

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    2018年02月11日
  • 海軍乙事件

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    太平洋戦争などにまつわる事件や逸話を作者が丹念に取材し、まるで論文のように書いていく作品。
    海軍Z作品が米軍の手に渡り、そのことをさとられないように、潜水艦で日本軍に返し・・・というところで、もしやと思ったが、この話が栄光なき凱旋の元ネタかと繋がった。
    さらっと書いてあるが史実としては実際にあの日系人二人が返したのだろうか。ちょっと調べてみる必要がありそうである。
    読書は続けているとぱっと繋がる瞬間がたまに訪れるのである。

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    2017年11月26日
  • 東京の戦争

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    戦時戦後の人々の様子がわかる。作者は比較的裕福な家庭だったからか本人の性格もあるのか戦争というものにをどこか達観しているように思う。それは彼の兄弟、親が次々に亡くなっていき死が生きるなかで自然なこととして受け入れていたからなのだろうか。

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    2017年11月24日
  • 彰義隊

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    上野合戦をメインにおくと思いきや、彰義隊が出て来たのは冒頭及び中盤辺りまでで、ほとんどが輪王寺宮の話という予想外の展開になっていた。史実に基づいているため淡々としていて面白みはないが、勉強にはなる。

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    2017年11月24日
  • 新装版 海も暮れきる

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    「咳をしてもひとり」「いれものがない両手でうける」が中学校の国語の教科書(三省堂)に掲載されている。それらは自由律俳句の代表作として所収されているが、そを作った俳人尾崎放哉(おざきほうさい)の晩年を、吉村昭が描いた伝記文学。
    放哉は、東京大学を卒業したエリートで、俳人としても認められている存在だった。しかし、酒癖の悪さが原因で仕事を追われ、妻とも別れて、俳句同人の、井上を頼って小豆島に渡る。そこで、 寺の離れの庵守りとして暮らし始める。
    放哉は、生活力がないので、島の名士の井上や寺の住職、島の外の俳句仲間に無心をする。相手のちょっとした態度にすぐに怒ったり、同じ相手にちょっと親切にされると、感

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    2017年11月10日
  • 大本営が震えた日

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    太平洋戦争開戦に際する、マレー上陸、タイ通過、真珠湾などの奇襲作戦の裏側。様々な要因で何とか発覚しないまま奇襲は成功裏におわると。

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    2017年06月29日
  • アメリカ彦蔵

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    時代の変化に偶然にも最先端を生きた彦蔵から見た幕末の日本史が面白い。アメリカを良く描きすぎてませんか。

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    2017年05月28日
  • 深海の使者

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    第二次大戦下、遥かヨーロッパまでの航海に挑み続けた旧日本軍の潜水艦群の奮闘を、娯楽作品として盛り上げようなどという意図は皆無、ただただ状況説明に徹して綴り上げたほぼノンフィクション。
    決して読み易くはないが、自分の中で読み方が定まってくればグッと入り込むことができる。

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    2017年05月16日
  • 海の祭礼

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    幕末に英語通辞として活躍した蘭語通辞と、英語を教えた米国人漂流者の物語を通して、幕末の開国の騒乱を描き出す。

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    2017年04月12日
  • 海の祭礼

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    外国語を学習するモチベーションにつながる話。淡々と時系列で事実の羅列が続き、登場人物の心の描写はあまり多くない。感情を抑えた筆致。

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    2017年04月01日
  • 新装版 白い航跡(下)

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    ネタバレ

    若い時期の高木兼寛が本人の才能、実直さと周囲の人間のサポートとを得て活躍の場を広げていく様を描いた上巻とは異なり、下巻では、明治期の海軍、陸軍を襲った脚気の惨禍に対する関わりを中心に、兼寛の事績や関連する森林太郎(森鴎外)などの人物との葛藤などが話の中心となっている。記録が多く残る近代の実在人物を描くと読者が求めるような魅力あるストーリーにはならないことは仕方ないが、やや記録文学の側面に偏り過ぎていて面白みに欠けたため下巻は5段階中3の評価に。

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    2017年03月27日
  • プリズンの満月

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    へえー、巣鴨プリズンの話かあと思って読んでみたら、「羆嵐」の吉村昭さんでしたか。

    巣鴨プリズンって名前は聞いたことあるけど、どんなところだったのかとかは全く知らなかったので、とてもためになりました。
    サンシャインシティって、その跡地に建ったんだ……、それすら知りませんでした。
    後半はほとんど刑務所の用をなさない感じだったんだなあ。
    戦犯に対する思いは複雑。戦争になったのはお前のせいじゃ!と言いたくなるような人もいただろうし、罪もないのに一方的に犯罪者扱いされた人もいただろうし。
    勝った側が一方的に負けた方を裁くっていうのもねえ……。本文にもあったけど、原爆落とした国にお咎めなしってどうよ。

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    2017年03月21日
  • 星への旅

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    死が漂う6編の小説。雨に濡れた蜘蛛の巣など細部の描写がとても美しい。作品を通して何を言いたいのかはさっぱり掴めなかった。

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    2017年02月26日
  • 死顔

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    新潮文庫 吉村昭 「死顔」

    「理想の死」をテーマとした遺作短編集。実際の著者の死(点滴とカテーテルを自ら抜いた死)が、正常な意思の中で行われた「理想の死」だったことがわかる


    多くの家族や友人の死を看取り、多くの人間の生を描いてきた小説家の「理想の死」が、尊厳死と呼べるのか?生の放棄なのか ?考えさせられる


    死顔を家族以外に見せないよう すぐ焼骨せよ、という願いも、人の死を知りすぎたゆえの配慮なのだろうか


    著者にとって「理想の死」
    *限界ぎりぎりまで 生きても苦しいだけだが、生きる努力を放棄すべきではない
    *死期を自ら悟ったのなら、延命措置はせず、薬服用と食の拒否により自ら死を

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    2017年02月16日