吉村昭のレビュー一覧

  • 桜田門外ノ変(下)

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    名作には違いないが、下巻は関鉄之助を中心とする生き残りメンバーの逃避行だけなので、途中でちょっと飽きてきた。ただ、緊張感が伝わってくる描写はさすが。

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    2022年07月13日
  • 雪の花

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    ネタバレ

    種痘の普及に努めた福井の町医者。
    京都から福井へ接種済みの幼児を連れて、家族も連れて1日35キロの強行移動。2メートルの積雪の中でも休まず、相当な信念を感じた。
    米原長浜を越えて木之本にはいると急に北国という印象を受ける。好きな土地。雪中の峠越えの恐ろしさをやたらおどろおどろしく描写していないところが気に入った。しかしそれでも十分に恐怖は伝わってき、好きな文体。

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    2022年06月26日
  • 新装版 赤い人

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    小説であるが吉村昭先生の取材が緻密で、明治史を北海道監獄視線で読み解くことが出来る
    囚人達は常に脱獄を虎視眈々と狙うが、時代状況に合わせて動機や心情の描き方を変えてくるのはさすが
    英照皇太后崩御の時の恩赦が監獄囚人の希望で連綿と語り継がれ、明治大帝御不例の噂を耳にした囚人が外役の時に住民に聞いたり、崩御後は『脱獄』がハタと止むのがリアルだった

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    2022年06月10日
  • 暁の旅人

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    幕末の医師・松本良順。
    司馬遼太郎の『胡蝶の夢』が好きで、吉村昭氏の小説も好きで読んだ。
    司馬氏の場合、言わずもがな、長編なので、様々な主人公が奮起しどのように近代医療を輸入したか、激動のこの時代をどのように生きたのかが具に表現されていた。
    一方、吉村氏のこの作品は、淡々とではあるが、松本良順が、その仲間や親族たちとどの時期の時点でどう行動し活躍したのかをくまなく述べている。

    どちらも読んだからこそ、どちらの良さも実感。

    だからこそ、感銘を受けた小説こそ解説までも楽しみなのに、解説には少々ガッカリ。
    本作とあとがきだけで十分。

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    2022年05月30日
  • ポーツマスの旗

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    日露戦争の講和条約締結に尽力した小村寿太郎の話。
    日露戦争の海戦を描いた海の史劇の後に読んだ。

    前半は出来事の羅列が多く、若干読みづらいが、後半のロシア全権ウィッテとの緊迫した交渉は、息詰まるものがあった。

    また、当時のロシアのマスコミ(新聞)操作も印象的で、時代は違えど、戦争におけるマスコミ、民衆の印象操作が重要なのは、今も昔も変わらないことが分かる。

    日露戦争後の民衆の暴動、軍部の権力拡大など、このあたりから日本の外交はおかしな方向へと進んでいくことになり、あとがきにあるように、小村の行った外交は、全然日本の最後の英知といえるそうだ。

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    2022年05月01日
  • 桜田門外ノ変(上)

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    ネタバレ

    作者のいつもの作品らしく、時系列で淡々と進んでいくが、それでも水戸藩の差し迫った状況が浮かんでくる。
    幕末は何度も何度も小説で読んでいますが、意外と水戸藩の状況って知らなかったのだなぁとの感想です。

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    2022年04月10日
  • 破獄

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    ネタバレ

    監獄の話は「海峡の光」に続き、2作目
    食糧難で囚人の生活を羨む看守、囚人よりも少ない人数で絶えず緊張感を持って立つ看守など、看守と囚人の立場の逆転していく様は震える

    戦後、好景気へ移りゆく社会の中ころりと死ぬ佐久間。仮出所してからの姿は涙が出そうになる

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    2022年03月19日
  • 大黒屋光太夫(下)

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    井上靖のおろしや国酔夢譚では、帰国後の光太夫と磯吉は良い扱いがされていないように書かれていた。しかし、新史料をもとに書かれた本書は全く違う。とても恵まれた余生を送っていたらしい。少しほっとした。それよりも気になるのがイルクーツクに残された庄蔵と新蔵だ。どんな思いで極寒の異国で生きていたのだろう。

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    2022年03月08日
  • 冬の鷹

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    ★★★
    今月1冊目
    解体新書を出した、杉田玄白と前野良沢の本。
    世の中では杉田玄白がという感じだが実際は前野良沢が翻訳。杉田玄白は弟子。
    が、人生の明暗を分けたのは考え方。
    おもろかった

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    2022年03月01日
  • 大黒屋光太夫(上)

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    1985年にTBSのシベリア大紀行と言う番組で椎名誠が大黒屋光太夫の足跡を辿ってるのを観た。その番組が印象深く、その影響で井上靖のおろしや国酔夢譚を読み、後に映画化されたものも観た。でもなぜか椎名誠のシベリア追跡やTBS取材班のシベリア大紀行は読んでいない。その後、2003年に吉村昭の大黒屋光太夫が発行されたので読みたいと思っていたのだが、ようやく読み始めた。

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    2022年02月22日
  • 吉村昭の平家物語

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    読んだことがなかった平家物語。1冊にまとまっているので読みやすい。その分、ダイジェスト感が強くていまいちのめり込めないところがあるけれど、終盤に向けて平家の人びとが大人はもちろん子どもも罪人としてはりつけになったり河原に首がさらされたりする様子はなかなか凄惨。そういう風習が明治初期まで続いていたかと思うと日本もなかなか野蛮だったなと思う。

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    2022年01月27日
  • 三陸海岸大津波

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    ネタバレ

    明治29年、昭和8年の大津波と、昭和35年チリ地震による津波が三陸沿岸にもたらした被害の記録と体験者の証言。
    特に明治29年は大災害だったんだなあ…と言葉もない。
    東日本大震災まで吉村さんが存命だったら、どんな言葉を残してくれたんだろう、と思わずにはいられなかった。
    津波をあらわす方言の「よだ」の意味に、地域差が出たり時代を経て異なってくるのも興味深い。

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    2022年01月20日
  • アメリカ彦蔵

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    ネタバレ

    嵐にあって漂流し、アメリカで数年過ごしたが、キリスト教に改宗していたため、日本国籍での帰国が叶わず、アメリカ国籍を取って帰国した男の話。

    英語と日本語を話す優秀な人材であったが、帰国してから、幕末、明治の時代に翻弄され、職や立場、住む場所は目まぐるしく変わる。

    自分の居場所を見つけることがてきず、仕事を辞め、病気がちになって過ごした晩年の過ごし方も印象的。
    大黒屋光太夫もそうであったが、漂流民は帰国が人生最大の目標になり、それが叶ってからは何を成し遂げるともなく過ごすということも多いのかもしれない。

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    2022年01月09日
  • 戦艦武蔵

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    武蔵の造船、進水が長崎造船所を舞台にしており、長崎を最近旅した事もあるので、この本はとても身近に感じました。事実を淡々と描く作風で「熊嵐」「漂流」「破獄」がかなり好きな作品、戦争について読みたいので、他の戦争について書かれた作品も今後読みたいです。

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    2022年01月08日
  • 島抜け

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    ★3.5

    短編集
    『島抜け』
     天保改革の波に巻き込まれ、詠んだ講釈のために
     島流しにされた講釈士・瑞龍。
    『欠けた腕』
     救いようのない飢饉に見舞われた甲斐国。
     飢えと悲しみから逃れようとする夫婦の物語。
    『梅の刺青』
     幕末から明治にかけ医学進歩のため『腑分け』に
     邁進する医師たちの物語。

    相変わらず、吉村昭氏の作品は壮絶で過酷だ。
    そしていつも、こうした史実に基づく物語の続きが嘆かれがちな今のこの世の中であり、それでもありがたいと思う事が出来る作品。
    氏の作品に出会えた事にもいつも幸せだと思わせられる。

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    2021年11月24日
  • 陸奥爆沈

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    太平洋戦争開戦時、日本は12隻の戦艦を保有し、その大半は戦場で沈没しました。最大級の「大和級」に次ぐ「長門級」の2番艦「陸奥」は戦場以外で失われた数少ない戦艦で、「陸奥」は広島県柱島泊地(基地のこと)における爆発事故によって沈没しました。
    本書はその爆発事故の原因究明にあたった当時の海軍関係者への取材をもとに、「陸奥」以前にも同じような爆発事故で沈没した艦船のケースにも言及しています。
    日本海軍にとって、戦時中に国内基地で主力艦を失うというのは大変ショックな事件でした。発生当時、米軍(潜水艦や航空機)による攻撃、設計上のミス(漏電による火薬引火など)、人為的な問題(規律違反によるミスや、放火)

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    2021年11月17日
  • 雪の花

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    ★3.5

    幕末、日本に於いて初めて種痘の『普及』に努めた医師たちの物語。

    身分や組織、平民たちの価値観との闘いが様々に繰り広げられる分、リアルな苦悩を感じられた作品。

    ありがとう
    という一言につきる。

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    2021年11月26日
  • 少女架刑 吉村昭自選初期短篇集I

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    吉村昭の初期の作品。歴史小説やノンフィクションといったイメージが強い筆者だが、この短編集は文学作品と言える。全七話に共通するのは、濃い死の匂い。なまじのホラー小説より恐ろしいかもしれない。

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    2021年11月04日
  • 脱出

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    戦中,戦後の混乱期における脱出に関する5つの短編.
    「脱出」は終戦直後の樺太からの脱出,
    「焔髪」は東大寺の仏像の疎開,
    「鯛の島」は瀬戸内の島で長年行なわれていた漁船での丁稚奉公制度がGHQが持ち込んだ民主主義に翻弄される話,
    「他人の城」は沖縄からの疎開民を満載した対馬丸が撃沈されたことによって起こる悲劇,
    「珊瑚礁」はサイパン陥落と島民の逃避行.

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    2021年10月30日
  • 夜明けの雷鳴 医師 高松凌雲

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    江戸幕府の残党の最後の戦い、箱館戦争の裏で野戦病院の頭取をつとめ、負傷した兵の治療にあたった高松凌雲の話。

    歴史の表舞台には出てこない人ではあるが、パリで学んだ近代医療を用いて、敵味方分け隔てなく治療にあたる人道的な姿勢は、もっと評価されてもよいものであると思う。

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    2021年10月23日