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水戸の下級藩士の家に生まれた関鉄之介は、水戸学の薫陶を受け尊王攘夷思想にめざめた。時あたかも日米通商条約締結等をめぐって幕府に対立する水戸藩と尊王の志士に、幕府は苛烈な処分を加えた。鉄之介ら水戸・薩摩の脱藩士18人はあい謀って、桜田門外に井伊直弼をたおす。が、大老暗殺に呼応して薩摩藩が兵を進め朝廷を守護する計画は頓挫し、鉄之介は潜行逃亡の日々を重ねる……。
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Posted by ブクログ
下巻はようやく桜田門外ノ変が起こり、関鉄之介の逃亡に焦点を当てられる。何度か、襲撃シーンが出てきたが、どれも映画のように美しくはなく、同志で斬り合いをしたり、耳や鼻、指が切り落とされる、というような現実的な描写。時代劇のようには、きれいにはいかないのだ。そこはやはり、平和に江戸時代を過ごして、実践は初めての集団。敵も味方も分からなくなるほどの斬り合い。
なんというか、虚しさを感じる。優秀な水戸藩士はこうやって皆、死んでいき、いつまでも尊皇攘夷論にこだわり、井の中の蛙、広い世界を知らず、本当の外国を知らずに、中途半端な武士道と心意気だけで事を成そうとする。
関鉄之介の逃亡でも、武士としての礼儀を果たすために危険な目に遭ったり、読んでいて歯痒くなる箇所もあった。そして、どうしてこんなに多くの水戸藩士が死なねばならなかったのか。水戸っぽ、という言葉だけで片付けるにはあまりにも多くの死がある。幕末には水戸藩士だけでなく、多くの藩士が亡くなっているのだろうけど、みんなが日本を思い、故郷を思い、死んでいくという何とも言えぬ気持ちになる。平和な現代の私には想像しかねる、熱い想いと希望、信念がみなぎっている。そういう人たちが作ってきた、今なのだと思う。
どうして、という気持ちと同時に感謝の気持ちも湧き上がる。教科書では1行、太文字で終わる桜田門外ノ変。小説とはいえ、しっかり読めて良かった。
Posted by ブクログ
吉村昭氏の書き方の物悲しさはなんだろう。
高野長英、この本の主人公関鉄之助然りあまりにも切ない。
しかし、世に無名の人が歴史を動かした張本人であったことを、ひしひしと感じさせるその綿密な調査のあとにはただ脱帽である。
世の中を変化させているのは、歴史的功績からすれば極一部の人かも知れない。
しかし、世の中を維持させる役割は、歴史にも残らない一般人である。
我々は、ついつい目立つ人々に目を囚われがちだが、世の中には数多の民がいて、それらは互いに支え合って生きている。
良いことも、悪いことも、その時の情勢で刻一刻と変化する。
ただ、世話になった人にお返しをしようという気持ちは、そう簡単には変化しない。
歴史の転換点では、その人間同士の温もりが、様々な大事件を起こすきっかけとなる。
吉村昭さんの筆蹟を辿ることは、人間とは何かを訪ねる旅である。
私は、最近そんなことを思っている。
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