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滅しゆく身体の変化。ほのかな生命のゆらぎ。若き日に死線を彷徨った作家は、生涯を通して生と死を見つめ続けた。円熟の晩年を迎え、その静謐な目は何をとらえたか。短篇小説の名手でもあった吉村昭が昭和後期から平成一八年までに著した、遺作「死顔」を含む一六篇。〈編者解説〉池上冬樹 ※収録作品 船長泣く 雲母の柵 花曇り 手 鏡 花 火 法師蟬 寒牡丹 桜まつり 観覧車 西 瓜 自 殺――獣医(その一) 心 中――獣医(その二) 遠い幻影 聖 歌 見えない橋 死 顔
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Posted by ブクログ
吉村昭『花火 吉村昭後期短篇集』中公文庫。 吉村昭が昭和後期から平成18年に没するまでの後期に発表した作品群より遺作『死顔』を含む16篇を収録した短編集。いずれも身近にある『死』を感じさせる短編ばかり。自らの死期を悟り、描いたのだろうか。 『船長泣く』。三崎から出港した太平洋を漂流するマグロ漁船...続きを読むの中で、飢餓と渇きの狭間に繰り広げられる船長と船員の葛藤を描いた秀作。史実に基づいた記録文学なのだろう。 『雲母の柵』。監察医務院に勤める新米検査員を主人公にしたサスペンスフルな香りのする短編。日々変死体と向き合う中、同期の3人の中の女性検査員が突如辞職する。彼女に僅かばかりの好意を抱いていた主人公だが、彼女の闇の部分を知ることに。 『花曇り』。恐らく小学校の低学年であろう少年の目を通じて、普通ではない両親の関係を炙り出す。大人の犠牲になるのはいつも子供なのだ。 『手鏡』。近所の公園で見付かった嬰児の死体、癌を患い苦しみの中で亡くなった友人と『死』を意識させる出来事の連鎖に主人公はかつて結核で療養していたことを思い出す。 『花火』。かつて結核を患った主人公が執刀医の死に思いを馳せる。もしかしたら、『手鏡』と同じ主人公だろうか。 『法師蝉』。友人の死と主人公の結核療養の記憶、そして、主人公の妻の死。『手鏡』『花火』、そして本作と次第に『死』が身近に迫って来るようだ。 『寒牡丹』。夫の定年を機に離婚を切り出す妻。娘の結婚式を目前に控え、妻は退職金の半額を手に家を出る。余りにも打算的で身勝手な妻。もしかしたら、かなり耐えていたのかも知れないが、哀しいね。 『桜まつり』。長兄の遺産相続で長兄の娘の相談に乗る主人公。問題は長兄の婚外子の相続だった。 『観覧車』。自らの浮気により離婚を余儀なくされた主人公が幼い娘との束の間の幸福を味わう。身勝手にも、よりを戻したいなど所詮無理からぬことなのだ。 『西瓜』。離婚した妻に呼び出され、突然告げられた知人との再婚。残酷だな。 『自殺-獣医(その一)』。次の『心中-獣医(その二)』との連作。肺癌を患った犬の突然の死は自殺だったのか。 『心中-獣医(その二)』。突然、主人公獣医の元に運び込まれた瀕死の犬。犬を道連れにした心中事件。 『遠い幻影』。戦時中に幼き主人公が記憶しち静岡で起きた特急富士の轢死事故の真実を明らかにするという内容の短編。事故は実際にあったのか。 『聖歌』。 教会で行われた姉の葬儀。聖歌が流れる中、姉の波乱の人生に思いを馳せる主人公。 『見えない橋』。36回も刑務所に入った69歳の累犯者の面倒を見ることになった保護会の主幹。刑務所の中で死ぬのは嫌だと真人間になろうとするが。 『死顔』。遺作。年老いた兄弟。次兄が亡くなったことから、遠い昔に亡くなった父母の記憶を思い出す。幸せな死などは無く、人は皆、幾ばくかの未練を抱えて天国に召されるのではないか。 本体価格860円 ★★★★★
吉村氏の後期短編集。 日常の中に淡々と描かれる死と別れ。 一切の無駄を削ぎ落とし、テーマは重いが構える事なくスッと入り込める。 「船長泣く」でグッと掴まれ「見えない橋」で救われる思いであった。
著者後期の短編16本を収めたもの。淡々とした筆致で死を扱ったものが多い。ストーリーに目新しさはないものの、場面の描写が冴えている。
長編も好きだけど短編や掌編もよい。 私小説のような著者周りの話も、淡々とした記述で読ませてくれる。
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花火 吉村昭後期短篇集
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