吉村昭のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
大戦中、杜絶した日独両国を結ぶ連絡路を求めて、連合国の封鎖下にあった大西洋に、数次にわたって潜入した日本潜水艦の決死の苦闘を描いた力作長編!
とのことです(裏表紙より)。
第二次大戦中、潜水艦で日本とドイツを行き来していたなんて知らなかったです・・・。
しかも、そのルートが凄い。日本から直通でどこにも寄港せずにはさすがに行けませんが、寄港できる場所も限られてるんで、数ヶ所寄港するだけでドイツまで行かなきゃいけない。
伊号第八潜水艦に至っては、日本を出発して、シンガポール、ペナンに寄港して、もうそこからノンストップでドイツへ。もちろん喜望峰を迂回。どえらいルートです。
さらに、その航海途中も、連合国の領海だったりすると、容赦なく攻撃されて常に危険に晒される。潜水艦なんて、攻撃を受けたらもう沈むしかない感じです。沈むようにできてますから。
かと言って、ずっと深海に沈んで進んでいると、速度も遅いし、空気も汚濁していくそうで・・・。どうしたって何度かは浮上しなければいけないみたいです。でも浮上したらしたで攻撃の危険に晒される・・・。
潜水艦に乗ること=死の覚悟、って感じみたいですね。
よくこんな危険な旅をしたなあとほとほと感心しましたが、この時はこれ以外の選択肢が無かったんでしょうがないですね。(航空機の場合、ソ連領空を侵害することができないため迂回ルートに→寄航地点が限られる→そこまでの長距離飛行に耐えうるものがなかったてな按配です)
以前、広島の呉市に行ったとき、海上自衛隊資料館で潜水艦の中に入ったのですが、結構狭かった記憶があります。
潜水艦自体はとても大きくて、おおおお!って感じなんですが、艦内は機械系の設備がいっぱいで、通路とか寝るところのスペースは限られてました。今でもこんな感じなんで、戦前の潜水艦はきっともうちょっと限られたスペースなんでしょうね。
こんな中に数ヶ月間・・・
しかも暑い地域を通るときには、艦内の温度が上がってサウナ状態になるし、お風呂も入れないので全身に垢がこびりついて異臭がするとか・・・潜水艦生活についても記述があり、当然のことかもしれませんが全然考えたことがなかったので驚きました。
(今の潜水艦には、シャワー施設やトイレもついてたんですが、真水の量とか限られているんでしょうね)
いやはや。潜水艦の存在自体、なんだか信じられない気分ですが(あんな鉄の塊が水の中を進むなんて!)潜水艦の死闘に驚かされました。
それにしても、どれほどの潜水艦・戦艦と人命が海に沈んでいるんだろう・・・。これを読むだけでも、戦時中、海の中へ沈んでいった人々はかなりの数にのぼることがわかりました・・・。合掌。 -
Posted by ブクログ
吉村昭という作家を始めて知った。これだけの作家を今まで知らなかったなんて、恥ずかしい限り。
日露戦争の日本海海戦を描いている。
ロシア側、日本側の両側を丁寧に、史実を確実に積み上げた、読み応えのある、面白い小説だった。
当然、これを読みながら司馬遼太郎の「坂の上の雲」と比べていた。
同じ舞台を描きながら、全く異なるアプローチ、記述。
「坂の上の雲」と「海の史劇」というタイトルだけで、2人の違いが良く分かる。
明治の日本人が坂の上にある何かを求める姿勢とか想いを描いたのが前者なら、後者は淡々とあった歴史を積み重ねている。
小説家によってこんなにも違う作品になる。
もちろんどちらも素晴らしい。 -
Posted by ブクログ
もっとも読みたかった本
この夏亡くなった作者。最期は妻が看取る前、自身で自身の命を絶ったと報道されれている。
それを聞いて読みたかったのがこの本だ。弟が自覚症状のない末期肺ガンになり、それをひたすら隠し通しながら弟の死を看取る兄の心模様を描く。私小説であり、主人公である兄は自分自身だそうだ。
凄絶という言葉がふさわしい弟の闘病の様子、それを見守る兄弟たちの葛藤、そして隠し通した主人公の心模様が赤裸々に小説として記録されている。
いつ電話が鳴るかわからない状態の中で小説は進行する。主人公が弟の急変を聞きつけて病院に駆け込むが、病室に入らず自身の心の準備をするという下りがある。
現在の世の中のように「もし携帯電話があったら?」と思うとおもしろい。情報はすぐに流れるだろうし、情報そのものの正確になっていることだと思う。
よって、判断もより正確だろう。しかし、人の行動はその速度と正確さについていけるだろうか。もっと遅く、もっと受け身で、もっとあいまいなものになるんだろうなぁ。人の死ってそんなものなんだろうなぁ。 -
Posted by ブクログ
『再婚』・・タイトルにひかれて読みました。
ある程度年齢のいった人ならば現在配偶者がいる、いないにかかわらず、
1度や2度は頭をよぎったことがあるのではないかと思います。
「老眼鏡」「男の家出」「再婚」「貸金庫」「湖のみえる風景」「青い絵」「月夜の炎」「夜の饗宴」の8編からなる短編集です。
時代背景は今より少し遡りますが
どの話も男の人生の岐路においてありえそうなことを、
全くの男性目線で描いています。気に入ったいくつかを紹介します。
「老眼鏡」
真面目すぎて見合いも断られ、やっと結婚相手がみつかって本当は嬉しいはずの結婚式を目前にして・・
またもや悩みが。
今まで女と寝たことがなく結婚相手と性交渉がちゃんとできないのではないかという不安を先輩に相談すると
意外な人、彼らが学生時代の下宿の「おかあさんに教えてもらえ」と・・
50才近い未亡人(まだまだ美しさを残している)に結婚の報告をして自分が女性と未経験だと伝えると教えてくれると・・何年も前の先輩からの言い伝えだと。
その人から条件は結婚式に招待することだけ・・
そして何事もなかったように静かに「おめでとう」と言って帰る。
そんな話です。後輩を思う先輩側からみて書いています。
*読んでいて^^そんなことって!って思いましたが、
不思議といやらしさはぜんぜん感じず、かえってその「おかあさん」には神々しささえ感じられました。
一昔二昔前とはいえ真面目な青年たちは大変だったのだと思いました。
愛情さえあれば、わざわざ練習しなくても・・(笑)
そんなもん自然に成っていくものだと思っていたのは何も知らなかった女性だけだったのでしょうか(笑)
そこが・・笑っちゃいけないけど^^笑えたところでした。
「男の家出」
定年退職を機に妻から去っていく男、その後、好きな女ができそして死んでゆく。男の最期は幸せだったのか・・
*まあ・・身勝手な行動を一方的な男目線から美化しているようにも思えるが、女性として妻として身につまされることも確かです。
「再婚」
妻を亡くした初老の男が、その愛する妻への思いにかられながらも、なんとなく再婚をしてもいいかと・・
昔、好きだった女と会うも、そのちょっとした所作に違和感を感じてしまうという話。
*へ~男性ってこんな風に思うんだ~って思いました。
でも、同じ状況なら女性のほうがもっと厳しいかなとも思いました。
その他の5編もなかなか面白かったです。