吉村昭のレビュー一覧

  • 空白の戦記

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    ネタバレ

     戦争を題材にした、著者の短編集。
     友鶴事件や、第四艦隊事件など有名な題材を扱っているのもあれば、事実を元にしたフィクションの「敵前逃亡」などもある。
     それも臨場感や、情感に溢れ、戦争のいろいろな側面に触れる事が出来ると思う。
     武蔵に関わったある少年を描いた、「軍艦と少年」がなんとも物悲しい。

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    2011年09月22日
  • 冷い夏、熱い夏

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    もっとも読みたかった本

     この夏亡くなった作者。最期は妻が看取る前、自身で自身の命を絶ったと報道されれている。

     それを聞いて読みたかったのがこの本だ。弟が自覚症状のない末期肺ガンになり、それをひたすら隠し通しながら弟の死を看取る兄の心模様を描く。私小説であり、主人公である兄は自分自身だそうだ。

     凄絶という言葉がふさわしい弟の闘病の様子、それを見守る兄弟たちの葛藤、そして隠し通した主人公の心模様が赤裸々に小説として記録されている。

     いつ電話が鳴るかわからない状態の中で小説は進行する。主人公が弟の急変を聞きつけて病院に駆け込むが、病室に入らず自身の心の準備をするという下りがある。

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    2011年09月14日
  • 再婚

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    『再婚』・・タイトルにひかれて読みました。
    ある程度年齢のいった人ならば現在配偶者がいる、いないにかかわらず、
    1度や2度は頭をよぎったことがあるのではないかと思います。

    「老眼鏡」「男の家出」「再婚」「貸金庫」「湖のみえる風景」「青い絵」「月夜の炎」「夜の饗宴」の8編からなる短編集です。

    時代背景は今より少し遡りますが
    どの話も男の人生の岐路においてありえそうなことを、
    全くの男性目線で描いています。気に入ったいくつかを紹介します。

    「老眼鏡」
    真面目すぎて見合いも断られ、やっと結婚相手がみつかって本当は嬉しいはずの結婚式を目前にして・・
    またもや悩みが。
    今まで女と寝たことがなく結婚

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    2011年09月05日
  • 桜田門外ノ変(下)

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    歯医者さんの待ち時間・銀行・バス・寝る前・・・少しずつ読み続けていた吉村昭氏の桜田門外ノ変、やっと昨日読み終えました。2か月もかかってしまった。

    そうだなあ・・・僕にとってはきつい一冊でした。どちらかと云えば忠実な、それは多分気が遠くなるような調査の上に書きあげたものだと思いますが、所謂、事実を述べたものです。作者の思いは殆ど入れなかったのではないでしょうか、あとは読者が自分で感じなさいと云うものです。

    吉川英治の三国志がありますが、あの本は漢文から来ると思われる朗々とした流れが文から感じられます。そのことで状況描写や心理までをイメージする事が出来たような気が致します。

    この桜田門外ノ変

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    2011年06月19日
  • 桜田門外ノ変(上)

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    史実に基づいた小説。 でも若干冗長にも思える。
    昼食後品川を出て、翌日夜明けに小田原宿に到着という記述。
    17.8時間で73キロを移動とある。 
    以前、酔っ払って5駅乗り過ごして歩いて帰った際で約16キロを4時間ほど。
    それもたいがいしんどかったが、それ以上のペースで17,8時間歩き続けは想像の範囲外。 幕末の井伊大老を討ち取った志士と酔っ払いの比較で申し訳ないが、そのような比較しか持ちえず、その上ですごいと。

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    2011年05月23日
  • 吉村昭の平家物語

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    いろんな手段が時代と共に変化をしても人間が感じることが出来る情報量ってのは変わってない気がする。人間、昔っから開きっぱなし。

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    2011年05月09日
  • 深海の使者

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    第二次世界大戦時に数回にわたり実施された日本海軍潜水艦の日独往復。やぱり優秀だったんだ、日本の造船技術。う〜ん、もっと、(気持ちが)元気なときによむべきだった!久しぶりの吉村作品なのにこころここにあらずの感想になってしもうた。

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    2011年07月15日
  • 彰義隊

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    幕末史は倒幕側から読む事が多く彰義隊と言えば、ならず者の集まりのような印象を受けていた。
    立場が変われば当然見方も変わり、江戸を守る為に結成され江戸市民からもとても人気があったようでちょっと驚きました。

    話は彰義隊より、輪王寺宮の話が中心であり、宮様が左幕側に回った人達の盟主となり時代に翻弄された姿を描いている。

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    2011年03月25日
  • 三陸海岸大津波

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    明治二十九年、昭和八年、そして昭和三十五年のチリ地震津波と三つの津波による三陸海岸の被害を生き残った人々へのインタビューをもとにつづったルポ。
    2011年3月の東日本大震災以前にも三陸海岸はたびたび大津波の被害を受けていた。その度に人々は対策を施し、毎回被害は少なくなっていたのだが、今回の甚大な被害から予想を上回る津波だったことがわかる。

    津波被害は何十年に一度なので、住民の意識が薄れてしまう。だからといって住民の意識を高め、地震のたびに高台に避難するといったことは社会生活に影響を及ぼす。地震をともなわない大津波もあるのだ。
    潮位の監視など、システムを構築することが重要と感じた。
    巻末に明治

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    2025年06月07日
  • ふぉん・しいほるとの娘(上)

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    鎖国時代に出入りが許されたオランダの船に乗り、オランダ人医師と偽って来日し、日本の研究調査をしたシーボルト。
    外国にとって未知の国、日本の情報を貪欲に収集する一方で自分の持つ医学の知識を惜しみなく日本人蘭学者たちに与えた。
    そんなシーボルトが長崎で出会った丸山の遊女其扇と結ばれ、生まれたお稲が物心つく前にシーボルトは日本を追放されてしまう。

    お遍路で訪れる卯之町は、そのお稲が日本初の女医として学び暮らした土地。風情のあるいい土地だった。

    花神に描かれているお稲とは、少し印象が違っているが、史実は小説よりも奇なり。波乱万丈の彼女の生涯は、どこまでも日本人であり家族を愛した一生だったのではない

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    2011年02月23日
  • 光る壁画

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    ネタバレ

    胃カメラ開発の実話に基づいた小説。

    取材の前に「胃の病気とピロリ菌」を読んでいて、
    その中でこの本が紹介されていたので、早速読みました。

    全体的に、かなり淡々とした印象。
    物資も情報も少ない戦後に、世界で初めて、人間の体内を撮影する・・・
    そんなカメラが、あっさりできてしまったのか、とも感じられるのですが。
    ただ、実際に医師を取材してみると、
    お医者さんって、知識も体験も豊富なのに、
    本当に、起伏もなく、わかりやすくお話されるのだ、と
    最近になって、ようやくわかりました。

    医師は、たくさんの症例を経験した上で話をしているのだから
    もう、当たり前のことになっているし、
    研究結果が評価される

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    2011年02月21日
  • 生麦事件(下)

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    生麦事件を中心に、その後の薩英戦争~戊辰戦争までの流れを舞台にした小説。

    特にどの人物に主眼を置いた訳でもなく、特に後半は淡々と、主に薩長における事実を述べるだけに見えたのが若干残念。

    ただ、当時来日していた欧米列強の軍人・公使達の思惑や人物像を少し知ることが出来たのはためになったと思う。

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    2011年02月02日
  • 秋の街

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    「秋の街」吉村昭
    ヒューマンドラマ短編集。無彩色。

    昭和の時代の、職業人としての市井の人々の姿を描くオムニバス。
    切々と過ごす日常を、今風に言えば「リアルに」描き出しながら、
    全体に漂う退廃的な色合いに吉村昭の世界観を感じます。

    監察医助手の卵の短編が、若いにも関わらず、むしろ若いが故に“死”に淡々と向かう姿を鮮やかに描き、印象深かった。
    昭和の生活を感じられるという点でもおすすめ。(3)

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    2011年01月27日
  • 天狗争乱

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    ネタバレ

    「桜田門外の変」の続きとして、その後の水戸藩と天狗勢のお話。前半は田中の極悪非道ぶりが書かれており、後半でやっと京都へという明確な目的を持った行動が書かれている。その京都へ行くまでのお話が、あまり面白くなくて★3つ。後半は、面白し。幕末の各藩の内情、今の日本の政党の内部と同じように、混乱を極めています。自分たちの考えを通すのは、いつの時代も大変。TOPの人たちは自分の保身に走るし。「結局、日本って昔からこうなんだ」と思います。

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    2010年12月12日
  • 大本営が震えた日

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    親父から貰った本。
    「太平洋戦争のことって、よく知らないんだよな~。」という思いが、
    手に取った動機です。

    本書にて描かれている時期は、
    奇襲作戦等の機密情報を載せた日本民間機、「上海号」の失踪から、
    マレー半島上陸/真珠湾攻撃に至るまで。
    内容は、情報収集/作戦隠蔽に関わる人々の行動と事実、といったところでしょうか。

    作戦隠蔽に苦心した、大本営の苦慮がヒシヒシと伝わる作品です。

    「上海号」にて見つかった大量の中国政府の偽札。
    「タイ軍人に変装して奇襲する」といった作戦。
    それぞれのエピソードからは、なりふり構わず戦争に勝とうとする、
    日本軍の必死さが伝わってきます

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    2010年11月23日
  • 大黒屋光太夫(上)

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    江戸時代の18世紀末、伊勢の国から江戸へ向かう予定であった大黒屋光太夫一行は嵐にあり、アリューシャン列島のアムチトカ島に漂着。同島はアメリカが1960年代後半から 地下核実験を行った島である。
    当時鎖国下にあった日本に 帰るにも帰られず、また島をでるにもでられす、
    次々と仲間たちが死んでいく中 光太夫らはペテルブルグのエカテリーナ2世に謁見をゆるされ、約10年後に帰国する。
    同じ題材を取材した井上靖の「おろしや国酔夢譚」と比較して読みたい本である。
    吉村昭晩年の作だが漂流のほうが人間がよく描けていたと思う。

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    2010年11月21日
  • 桜田門外ノ変(上)

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    水戸藩脱藩浪士が中心となり江戸幕府の大老「井伊直弼」を暗殺した事件を通過点に、関鉄之介という現場で総指揮をとった者の最期までを丁寧に描く。
    会話を減らして状況を忠実に記述する書き方は最初は戸惑ったが、読み進めていくほど、彼らをとりまく苛烈な歴史的情勢や思想が浮かび上がる。
    作者の徹底した事実の追求姿勢に頭が下がる。

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    2010年11月20日
  • 桜田門外ノ変(下)

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    桜田門外の変について、劇的ではなく淡々と実行責任者関鉄之助の足跡をたどった内容。小説というよりもノンフィクションな感覚。
    ハイライトであるであろう桜田門外の襲撃のシーンすら数ページでそっけない。歴史というのはきっと何かの瞬間のイベントではなく淡々とした事柄の連続であとから振り返ると劇的な瞬間があったということか。

    あとがきにあった「桜田門外の変から明治政府樹立までわずか9年」、「226事件から太平洋戦争終結までも9年」。歴史的大転換はごく短期間に凝縮しておこる、というのに納得。いまはそういう時期なんだろうか?この2つに比べると、まだ凝縮して大事件が起きてる感じではないなあ。

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    2010年11月19日
  • 大黒屋光太夫(上)

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    主人公達が帝政時代のロシアに漂着する。
    仲間の病死やロシア女性との結婚しそうになったりする困難な中、日本への帰郷の念を改めてもつ主人公 光太夫に尊敬する。
    当時のロシアに、遭難した日本人を保護・集約し、教師として雇用し、日本人学校を開校している事に初めて知りました。
    アメリカほどの積極的でないにしても貿易開始を目指す一つの材料として、インフラ整備をしているロシアの先見の明に驚く。
    にしても仲間が凍傷により足を切断せざるを得ないぐらいのロシアの寒さは、想像を絶します。

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    2010年10月19日
  • 桜田門外ノ変(下)

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    桜田門外以後の逃避行についても随分と紙数が割かれている。
    薩摩藩の挙兵計画が頓挫してしまう失望ぶりは読むに値する。

    ただ、こんなことを書いてしまうのも問題だが、
    いちばん読んでよかったと思ったのは“あとがき”だった。
    著者の意図を窺い知ることができ、目を通すべきだろう。

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    2010年08月16日