吉村昭のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ肺癌になり、五十歳で死んだ弟の一年ほどの闘病過程を「私」=吉村昭の視点から「事実そのまま」描い(───引用:解説)た長編小説。
医療技術や、告知の概念など今とは違う常識が興味深かった。
ノンフィクションとは知らずただ小説として読んだが、壮絶。
弟が衰弱し幻覚に囚われ苦しみ死へ向かう過程は胸が苦しくなるようなものだった。だが、「私」と双生児のようなといわれるほどの弟本人に癌であることをひた隠し、兄弟達にも妻にも隠し、悪化を隠し、嘘を言い連ね死の前に自分ひとりで葬儀を手配し、まんじりとしていてもどうにもならぬと仕事に出、弟が病状を悟らぬよう子供達に見舞いを禁じ、弟の友人が会いに来たのを病室に入れ -
Posted by ブクログ
大戦中、杜絶した日独両国を結ぶ連絡路を求めて、連合国の封鎖下にあった大西洋に、数次にわたって潜入した日本潜水艦の決死の苦闘を描いた力作長編!
とのことです(裏表紙より)。
第二次大戦中、潜水艦で日本とドイツを行き来していたなんて知らなかったです・・・。
しかも、そのルートが凄い。日本から直通でどこにも寄港せずにはさすがに行けませんが、寄港できる場所も限られてるんで、数ヶ所寄港するだけでドイツまで行かなきゃいけない。
伊号第八潜水艦に至っては、日本を出発して、シンガポール、ペナンに寄港して、もうそこからノンストップでドイツへ。もちろん喜望峰を迂回。どえらいルートです。
さらに、その航海途中 -
Posted by ブクログ
吉村昭という作家を始めて知った。これだけの作家を今まで知らなかったなんて、恥ずかしい限り。
日露戦争の日本海海戦を描いている。
ロシア側、日本側の両側を丁寧に、史実を確実に積み上げた、読み応えのある、面白い小説だった。
当然、これを読みながら司馬遼太郎の「坂の上の雲」と比べていた。
同じ舞台を描きながら、全く異なるアプローチ、記述。
「坂の上の雲」と「海の史劇」というタイトルだけで、2人の違いが良く分かる。
明治の日本人が坂の上にある何かを求める姿勢とか想いを描いたのが前者なら、後者は淡々とあった歴史を積み重ねている。
小説家によってこんなにも違う作品になる。
もちろんどちらも素晴らしい。