吉村昭のレビュー一覧
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明治24年に起こった大津事件の前後を描いた歴史小説。
史実が淡々と積み上げられていくので、どこまでが本当のことで、どこに作者の想像が入っているのか全く分かりません。非常に細部にまで史実にこだわった作品です。
日本のロシア皇太子の歓迎ぶりは現代に生きる自分が読んでいると、滑稽にまで感じてしまうのですが、それだけ当時のロシアの力の強さ、開国から間もない日本の苦慮の部分が見えます。ロシア皇太子のはしゃっぎぷりはなんだかかわいらしく思えたのですが(笑)
事件が起こってからの司法と内閣の犯人の量刑をめぐっての軋轢は描写は決して多くないのにそれでも引き込まれます。司法側が頑なに法律を守ろうとしただけ -
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シーボルトの妾であった其扇ことお滝、二人の娘であるお稲、お稲の娘であるタカ。女三代に渡る物語。
日本が鎖国を経て、ペリー来航ののち開国していく激動の時代に、異人との間に産まれ、また、女性でありながら産科医として名を馳せていくお稲。数々の苦労を経験しながらも、彼女の一つひとつの行動が、そのまま時代の進化に繋がっていることに気づかされる。
改めて、私は良い時代に女性として産まれてきたのだと思う。
日本初の女医さんは、荻野ぎんさんでは?と思っていたら、最後の方で彼女の話も紹介された。荻野ぎんさんの生涯を描いた渡辺淳一さんの「花埋み」もおすすめ。 -
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幕末から明治に掛けて医学の分野で活躍した松本良順の一生を描いた作。佐藤泰然の次男として生まれた良順は泰然が洋方医であったこともあり蘭語は少しはやれた。若かりし頃長崎でオランダの医官のポンペに師事し医学を習得する。やがて幕府の奥医者となり幕府の医者の最高位までなる。明治になると会津・庄内の新政府徹底抗戦藩の支援にまわる。それも敗色濃厚となり、蝦夷の支援依頼を榎本武揚から受けるがこれを断り新政府に捕われる。その後長崎での外国知人らの支援で洋方病院を設立し、これを認められて軍医の取り纏め役となる。公では成功するが、私では長男・次男共に若くて喪いあまり幸せな人生とは言えなかった。
吉村氏の表現が淡々、 -
Posted by ブクログ
ネタバレ肺癌になり、五十歳で死んだ弟の一年ほどの闘病過程を「私」=吉村昭の視点から「事実そのまま」描い(───引用:解説)た長編小説。
医療技術や、告知の概念など今とは違う常識が興味深かった。
ノンフィクションとは知らずただ小説として読んだが、壮絶。
弟が衰弱し幻覚に囚われ苦しみ死へ向かう過程は胸が苦しくなるようなものだった。だが、「私」と双生児のようなといわれるほどの弟本人に癌であることをひた隠し、兄弟達にも妻にも隠し、悪化を隠し、嘘を言い連ね死の前に自分ひとりで葬儀を手配し、まんじりとしていてもどうにもならぬと仕事に出、弟が病状を悟らぬよう子供達に見舞いを禁じ、弟の友人が会いに来たのを病室に入れ