吉村昭のレビュー一覧

  • 冷い夏、熱い夏

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    弟の癌発見から死に至る1年弱の間の病状の変化と、それによる作者自身の心の揺らぎを、冷酷とも思える醒めた筆致でただ綴る。
    肉親の病気による変化と死が、残される者にどのような想いを呼び起こすのかを、自らの経験を書き記すことで形にしようという意図で生まれた作品であろうか。
    石原慎太郎にも似たような作品があるし、誰が書いても同じような雰囲気になるのかもしれないが、死と生が作家の究極のテーマであることは共通。
    それにしても、この作品を読むと癌はやはり告知しないほうがいいのかもしれない、と感じる。

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    2018年10月14日
  • ポーツマスの旗

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    ポーツマス条約にいたる交渉にのぞむ小村寿太郎をはじめ、日本外交団の軌跡と苦闘をドキュメンタリー風に描く。淡々と時間を追って経緯を描写しており、そんな感じだったのかと思う以上のことはないが、記録小説という意味でわかりやすく、不思議と頭に残っている。
    昔、NHKがドラマ化して、小村=石坂浩二、金子=児玉清、明石大佐=原田芳雄のキャストだったと記憶している。割と面白かったように憶えているので再放送してくれないかな。(笑)

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    2020年05月11日
  • 海軍乙事件

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    10/02/01 連合艦隊の参謀長という地位には、それなりの責任がと     もなう。
         どの時代、どの組織でも同じこと。

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    2010年02月01日
  • 死顔

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    【目的】読書会に向けて
    【感想】おどろくほどシンプルな文章。平安時代の和歌を詠んだあとに万葉集を詠むよんだとき感じるような、そんなに愚直に表現していいものかと一瞬とまどうった。でも、その感覚は、慣れきった技巧的な文章との違いに違和感を感じただけであって、ただシンプルな文章は、それで良い。シンプルな文章は、比喩などで読み方の筋道が立てていられていない分、読者に感情が委ねられる。「兄弟の死に目を見届けなくては可哀相、死顔に手をふれたい、それが愛情を伝えることになる」という固定観念に一石投じられたように感じた。

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    2009年11月17日
  • 仮釈放

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    【本文より】おれの神経を最も刺激するような余計な物を勝手に持ち込んだから、このようなことになったのだ、おれを憤らせたおまえがいけないのだ。

    この本はこの記述に尽きる。
    世の中には「刺激」に弱い人がいるのだ。

    他人のお節介で、主人公は二度も罪を犯す。
    他人はよかれと思って主人公に働きかけたが、
    最悪の結果を招いた。

    本人が気がついて、なんとかしようと行動するまで放っておく。
    人は人を変えることはできない。
    だから、他人のお節介はほどほどに。

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    2009年10月07日
  • プリズンの満月

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    ・巣鴨プリズンを含めて40年間刑務官を務めた鶴岡って主人公の半生を描く小説。
    ・と、いう体裁を取ってはいるが、実は巣鴨プリズンに関するノンフィクション、と言った方が正しい。鶴岡の回想ですら無い部分も多い。
    ・GHQから日本に管理が移った後の巣鴨プリズンが、どんどんグダグダになっていく様子がとても意外だった。まさか入所者たちが内職をしたり自由に(じゃないけど)故郷に帰ったり外部に就職して酒を飲んで帰ったり、などと言うことが起きていたとは全く知らなかった。
    ・「戦争受刑者の即時釈放要請に関する決議」が昭和30年にあって、その翌年に講和条約第11条の手続きをして、そして釈放となったと理解していたんだけど、実際は五月雨式に釈放が行われていて最後の釈放者は昭和33年だったということ。世の中には知らないことが多い。
    ・上述のような事が起こり得たのは、やっぱり「戦犯」っていう存在のあいまいさ、インチキさ、立脚点の無さ、それに尽きる。そもそも意味の無い裁判の結果であり、そこにすがっていつまでも厳しく拘禁していく事は日本は当然として連合国側だってできなかったと言うことだ。それともう一点、朝鮮戦争から冷戦を迎える時局であり日本の存在が無視できないものになっていたからというのもある。
    ・フィリピンからの帰国のくだりは泣けた。
    ・吉村昭の書いた本は始めて読んだけど、これはなんだか章立ても無くて回想と現在がメリハリ無くつながった妙な本だったなあ。
    ・古本屋で100円にて購入。

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    2009年10月04日
  • 長英逃亡(上)

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    夫のふるさと岩手県水沢市の誇る文化人。生家を訪れたことがあり、墓も義母の家と同じお寺にあるので何故か親近感が沸く人物。
    興味があってこの本を読み始めたけど、その生きた時代の厳しさと人間くささが印象に残る。長編小説だけど、一気に読める魅力ある一冊です。

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    2009年10月04日
  • 海の祭礼

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    ちょっと早かった、残念なアメリカ青年の話。開国前夜〜初期の奮闘する通詞の姿に働きマンとして感動。タイトルのみ、あまりしっくりこないが。

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    2010年04月13日
  • 冷い夏、熱い夏

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    悲しい物語である。
    悲しくて、こういう状況下でいたときにはとても読めない小説だろう。

    肺ガンの手術後、1年間にわたって死んでいく弟を見つめる兄を主人公とした小説。

    吉村氏の告知、延命に対する考えが述べられている。

    が、それは人それぞれである。

    自分としては、他人に病名を隠されたくないし、自分の意向が無い延命は徹底拒否である。

    「自分の意志」で延命を伝えたい。
    伝えられない状況下に置かれていたとしても、今のうちから、妻に言っておく。

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    2009年10月04日
  • 遠い日の戦争

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    太平洋戦争終了間際に捕虜となったアメリカ兵を処刑した主人公。

    主人公は、空襲や原爆で大勢の日本人を殺されたうらみ、それを晴らす代表者としての気持ちで捕虜を殺害した。

    しかし、待っていたのは戦後の日本人の意識の変換であり、警察からの厳しい逃亡生活だった…。

    こうも意識の変化が行われるものか。

    生きるためとはいえ、処刑を実行した主人公のむなしさが良く伝わる。

    逃亡の事細かな主人公の心の描写が切ない。

    特に逮捕のシーン、東京裁判のシーンが印象的だった。

    東京裁判は、真実を学びなおしたい。

    遠藤周作の「海と毒薬」にも事件的(捕虜処刑)にはつながる作品。

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    2009年10月04日
  • 海軍乙事件

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    吉村昭かなり過去作品新装版。
    乙事件だけじゃナクて甲事件も入ってマス。当時の戦況、価値観。この人の取材力は凄い。目の付け所が鋭い。派手さはナイけど淡々と書かれるリアルなストーリーに惹きつけられマス。
    時代の違い、それでも替わらない人間くささが書かれてマス。

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    2009年10月07日
  • 事物はじまりの物語

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    江戸から明治、人々は苦労して新しいものを取り入れ、初めてのものを作り
    だした。歴史小説家が豊富な史料を駆使して書いたパイオニアたちのとって
    おきの物語

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    2009年10月07日
  • ふぉん・しいほるとの娘(下)

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    この一家は絶世つーほど美しいのにもかかわらず男運がなかったですね・・・産科を学んでいた師に無理矢理犯され女児を出産。一度はやる気を失ったものの、再び産科医をめざし、ついに独立。バリバリ働きだした稲。この人の熱心さ、すごい。

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    2009年10月04日
  • ふぉん・しいほるとの娘(上)

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    「間宮林蔵」でも出てきたシーボルトと、遊女其扇の出会いから物語は始まる。やがて二人の間にはハーフの女の子が生まれるが、シーボルトは国外追放を受けることに。彼女はどのように成長するのでしょうか・・・??なんかすごい不安。この時代でハーフ。しかも美女。大丈夫か??どきどき

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    2009年10月04日
  • 空白の戦記

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    タイトルのとおり、正史から抹殺、あるいは無視された人々の物語。
    どうやら著者のノンフィクション系の作品が好きなようだと思うようになった。いくらでも読めるし、読みたい。純文学系の方の作品はちょっと取っ付きにくいが。

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    2009年10月04日
  • プリズンの満月

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    巣鴨プリズンという日本人が日本人の戦犯に刑の執行をする場所があった、そういうことを忘れてはならないと思った。

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    2009年10月04日
  • 海の祭礼

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    今こうして日本という国で暮らしていられるのも、歴史に埋もれたこの本の主人公たちのおかげなのだということは知っておくべきだと思った。森山栄之助の人生を通してみる日本開国史。

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    2009年10月04日
  • 冷い夏、熱い夏

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    相変わらず骨太。壮絶な弟の闘病姿を極めて冷静に描写しながら、兄としての熱い思いにも触れ、静かに胸打たれる。

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    2009年10月07日
  • 死まで 吉村昭初期短篇集

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    全体として(少し前の頃の)人の営みが生々しく語られている。
    しかも漢字で表すと「陰・湿・欲・病・汚」なんかの負の面が丁寧に描写されているので、読み手の気分が良くないと読めなかったり、本に引っ張られて鬱々としてしまう。
    そういう意味では、読み手を選ぶ一冊なのかもしれない。

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    2026年10月22日
  • 歴史の街を歩く

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    記録文学の巨匠が全国各地を歩き、その風土や歴史、人々との出会いを語る。

    過去に様々な雑誌、情報誌、新聞に掲載されたエッセイを集めている。

    戦争の記憶を呼び起こす沖縄、江田島への旅、起動車から目にする黒部渓谷の秋、北海道の原野でのキツネの生態観察、“浮かぶ箱庭”に相応しい小豆島の風景などが著者ならではの知性や感性によって、立体的に浮かび上がる。

    著者の代表作である「熊嵐」、「高熱隧道」、「桜田門外の変」、「戦艦武蔵」、「破獄」などの原点となる場所の紹介も随所に出てきて興味深かった。

    小学校6年生の時、沼津の海水浴場で大きな波に巻き込まれ「死」を実感し、海に怖れを抱くようになったこと、20歳で肋骨を切断する結核手術を受け、すさまじい激痛と苦しみを味わったこと、飛行機恐怖症でもあることなど、自身を振り返る箇所もあり、人間的な側面も垣間見れた。

    また、著者の創作の背景に、各地での熱心な取材はもちろん、第三章「物語の生まれる場所」で、触れられているように県、市、町、村史調査を不可欠と位置づけるなど、徹底的な史料収集があったことを改めて認識し、真摯な姿勢や誠実な人柄を感じ取った。

    第二章「土地の記憶」で語られている「旅の楽しみは風光をながめると同時に旅先に住む人の情けにふれること」に関しては、全く共感するところであるが、今のご時世、それがなかなか、その通りにいかない歯がゆさも感じた。

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    2026年10月15日