吉村昭のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
・巣鴨プリズンを含めて40年間刑務官を務めた鶴岡って主人公の半生を描く小説。
・と、いう体裁を取ってはいるが、実は巣鴨プリズンに関するノンフィクション、と言った方が正しい。鶴岡の回想ですら無い部分も多い。
・GHQから日本に管理が移った後の巣鴨プリズンが、どんどんグダグダになっていく様子がとても意外だった。まさか入所者たちが内職をしたり自由に(じゃないけど)故郷に帰ったり外部に就職して酒を飲んで帰ったり、などと言うことが起きていたとは全く知らなかった。
・「戦争受刑者の即時釈放要請に関する決議」が昭和30年にあって、その翌年に講和条約第11条の手続きをして、そして釈放となったと理解していたんだけど、実際は五月雨式に釈放が行われていて最後の釈放者は昭和33年だったということ。世の中には知らないことが多い。
・上述のような事が起こり得たのは、やっぱり「戦犯」っていう存在のあいまいさ、インチキさ、立脚点の無さ、それに尽きる。そもそも意味の無い裁判の結果であり、そこにすがっていつまでも厳しく拘禁していく事は日本は当然として連合国側だってできなかったと言うことだ。それともう一点、朝鮮戦争から冷戦を迎える時局であり日本の存在が無視できないものになっていたからというのもある。
・フィリピンからの帰国のくだりは泣けた。
・吉村昭の書いた本は始めて読んだけど、これはなんだか章立ても無くて回想と現在がメリハリ無くつながった妙な本だったなあ。
・古本屋で100円にて購入。 -
Posted by ブクログ
太平洋戦争終了間際に捕虜となったアメリカ兵を処刑した主人公。
主人公は、空襲や原爆で大勢の日本人を殺されたうらみ、それを晴らす代表者としての気持ちで捕虜を殺害した。
しかし、待っていたのは戦後の日本人の意識の変換であり、警察からの厳しい逃亡生活だった…。
こうも意識の変化が行われるものか。
生きるためとはいえ、処刑を実行した主人公のむなしさが良く伝わる。
逃亡の事細かな主人公の心の描写が切ない。
特に逮捕のシーン、東京裁判のシーンが印象的だった。
東京裁判は、真実を学びなおしたい。
遠藤周作の「海と毒薬」にも事件的(捕虜処刑)にはつながる作品。 -
Posted by ブクログ
記録文学の巨匠が全国各地を歩き、その風土や歴史、人々との出会いを語る。
過去に様々な雑誌、情報誌、新聞に掲載されたエッセイを集めている。
戦争の記憶を呼び起こす沖縄、江田島への旅、起動車から目にする黒部渓谷の秋、北海道の原野でのキツネの生態観察、“浮かぶ箱庭”に相応しい小豆島の風景などが著者ならではの知性や感性によって、立体的に浮かび上がる。
著者の代表作である「熊嵐」、「高熱隧道」、「桜田門外の変」、「戦艦武蔵」、「破獄」などの原点となる場所の紹介も随所に出てきて興味深かった。
小学校6年生の時、沼津の海水浴場で大きな波に巻き込まれ「死」を実感し、海に怖れを抱くようになったこと、20歳で肋骨を切断する結核手術を受け、すさまじい激痛と苦しみを味わったこと、飛行機恐怖症でもあることなど、自身を振り返る箇所もあり、人間的な側面も垣間見れた。
また、著者の創作の背景に、各地での熱心な取材はもちろん、第三章「物語の生まれる場所」で、触れられているように県、市、町、村史調査を不可欠と位置づけるなど、徹底的な史料収集があったことを改めて認識し、真摯な姿勢や誠実な人柄を感じ取った。
第二章「土地の記憶」で語られている「旅の楽しみは風光をながめると同時に旅先に住む人の情けにふれること」に関しては、全く共感するところであるが、今のご時世、それがなかなか、その通りにいかない歯がゆさも感じた。