吉村昭のレビュー一覧

  • 関東大震災

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    大正12年9月1日に起こった関東大震災について詳細に描かれており、天災の恐ろしさを改めて感じた。地震による被害よりもその後の火災による被害の方が大きかったんだな。当時は木造建築がひしめき合っていて、上下水道も十分に発達しておらず火災が起こった後の消火能力が低いのが原因だけど、家財道具を多量に持って行ったり一つのところに被災者が集まりすぎたりと人災の側面もあったのが意外。地震後の社会不安もどの時代でも変わらないのか。この時代に限っていえば社会主義者に対する弾圧、朝鮮併合に伴う朝鮮人からの報復に怯える社会がとてもわかりやすかった。自警団による朝鮮人虐殺、大杉栄事件など混乱に陥った人たちの精神不安が

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    2025年05月13日
  • 星への旅

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    ネタバレ

    平穏な日々の内に次第に瀰漫する倦怠と無力感。そこから脱け出ようとしながら、ふと呟かれた死という言葉の奇妙な熱っぽさの中で、集団自殺を企てる少年たち。その無動機の遊戯性に裏づけられた死を、冷徹かつ即物的手法で、詩的美に昇華した太宰賞受賞の表題作。他に『鉄橋』『少女架刑』など、しなやかなロマンティシズムとそれを突き破る堅固な現実との出会いに結実した佳品全6編。(背表紙)。

    いずれの短編も面白く、平易かつ奇麗な文章は読みやすい。
    が、それからの作品を主に読んでいる身としては、やはり後年の歴史小説の方が好みに合っているようだ。

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    2025年04月24日
  • 戦艦武蔵

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    戦艦の専門用語と軍役職と名前が詳細に書かれており、固い文面で読むスピードが落ちる。
    これだけ莫大な人員、材料を投入し数年の月日を費やして建造した巨艦武蔵、その甲斐もなく人を巻き込んで沈没した運命は、やりきれない悲しさと虚しさがある。

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    2025年04月11日
  • 少女架刑 吉村昭自選初期短篇集I

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    濃厚に死の空気を纏う、死にまつわる短編集。

    当時は結核とか肺炎とかで死が近い存在だったのだろう。

    死にまつわる作品のため、読んでいて楽しいものではなく、「小山さんノート」をの読んでいた時期でもあったことから、なんでこんなの読んでいるんだろうと思いながら読んだ。

    ただ、文章は美しく、文章が巧い様に感じた。
    ただ、私の好みだっただけかも知れないが。

    星は3つ。3.4としたい。

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    2025年04月10日
  • 闇を裂く道

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    吉村昭さんの著作は「ポーツマスの旗)以来かな。
    もの凄い調査の末に書かれているだけに、内容がものすごく濃い。小説というよりもノンフィクション、ドキュメンタリーに近いと思う。
    丹那トンネルが難関工事であることは何となく知っていたが、ここまで大変だったとは。
    今では長いトンネルは当たり前のようにあるが、戦前は多くの犠牲を伴って完成している。新幹線しか乗らないけど、いつかは東海道線で丹那トンネルを通ってみたい。

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    2025年04月06日
  • 大黒屋光太夫(上)

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    大黒屋光太夫は、天明2年1782件に伊勢白子浦を出帆し、遠州灘で暴風雨に遭遇し、漂流してしまう。
    光太夫一行は、アリューシャン列島の小島に漂着する。そこから、ロシア国内を移動し、僅かな望みをかけて、日本への帰国願いをロシア皇帝に願い出ようとしていた。

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    2025年04月01日
  • 三陸海岸大津波

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    地震無しの津波到来とか、怖すぎる…。厳密にいえば、地球の反対側では地震が起こっている訳だけど、それにしても…。地震以外にも色んな前兆があり、『ひょっとして…』という感覚は多く共有されていたっぽいけど、それ以上に、『いや、まさかね』っていう思い込みのバイアスが上回る訳ですね。我が事として見ておかないと。

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    2025年03月31日
  • 雪の花

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    天然痘の話。時代のことも相まって苦労の連続。
    この町医師の強固な意志がすごい。
    いくら無駄なことだといわれても頑張れて結果を出せたのがよかったかな。

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    2025年03月07日
  • 破獄

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    物語の大半は刑務所という閉鎖的空間を舞台としており、戦前戦中の混乱や統制を潜り抜けた情報は僅かであっただろう。これらの時代を緻密に描写する吉村昭の取材力、表現力は畏れ多いと感じる。
    彼の文章は滑らかに頭の中を駆け巡る類のものではないが、本書は章立てがされているので途中で区切って読み易い。

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    2025年02月26日
  • 海の祭礼

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    幕末、ペリー来航の5年前に漂流民を装って日本に入国したアメリカ人がいた。ラナルド・マクドナルドは、乗っていた捕鯨船を自ら降り、日本の北端利尻島に上陸したのである。教科書には乗っていない事件ではあるが、その後に日本が鎖国から開国へと向かうにあたって体外交渉の最前線で矢面に立つ通使達の育成に大きな影響を及ぼしたと言える。

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    2025年02月23日
  • 破船

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    生きるために必要だけど、公にはできない、こと。
    共同体の中での秘密。
    寒い中、なんのために、っていう気持ちでの火おこし、から理由を聞いてから、さらに体験してからの気持ちの違いが同じ作業に対しても違って。
    喜びと厄災と。
    この後少人数の村人が気持ちを抱えつつも、結局同じような生活を繰り返すんだろうなと思うと、不思議。

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    2025年02月22日
  • 雪の花

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    先日(2025年1月)見た松阪桃李主演の映画の原作。小説と云うよりもノンフィクションとかルポルタージュに近く、淡々と書かれているので、映画に比べると思足りない感はある。しかし、こういった知られてないけど、社会に大きな影響を与えた方を取り上げたことが素晴らしい

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    2025年02月03日
  • 敵討

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    一作目「仇討」
    天保九年からの幕末期。叔父と父親を殺害された熊倉伝十郎。藩に許可を得ての作法通りに臨んだ仇討。
    二作目「最後の仇討」
    慶應四年から明治十三年という幕末から維新年間。周囲の反対を避け少年期から惨殺された父母のために密かに抱いた臼井六郎の仇討の道程。

    約35年間の違いのある二件の仇討。
    社会や法が変化しても葛藤や挫折を繰り返し仇討というものに臨む日本人の変わらない姿があった。日本人が長い江戸期に積んできた美徳というものは、一瞬一瞬に訪れる社会や法の変化では変えられない根強いもののように感じた。

    さすが吉村昭と感服させられるような、歴史的事実をまざまざと感じられ、考えさせられる一

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    2025年01月30日
  • 夜明けの雷鳴 医師 高松凌雲

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    高松凌雲の伝記。久留米に生まれた凌雲は医師となり徳川昭武らと共にパリの万国博覧会へ参加する。そこでパリにある神の館と呼ばれる病院を見学し、貧富に関わらず治療を行っていることに感銘を受ける。フランスで西洋医学を学ぶ中、日本では慶喜が大政奉還し変革の時期を迎える。凌雲は帰国後幕臣として戊辰戦争に参加し、榎本武揚らと共に箱館へ行き官軍と戦をする。凌雲はフランスで培った医術で多くの戦病者を治療することとなる。官軍が勝利したことで病院内に官軍が侵入し敵側であった傷病者を殺そうとするが凌雲は戦争において傷ついた兵士は敵味方関係なく手厚く扱うという西欧の考えに基づき患者の殺生を止めるよう説得する。官軍である

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    2024年12月27日
  • 高熱隧道

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    ネタバレ

    死体の描写が生々しいですが、過酷な工事を語るには、必要な描写なのだと思いました。

    人夫たちがどんなに頑張っても1日1mしか進めないということがお話の途中でわかり、気が遠くなる思いでした。

    実際に起こったことに基づいて書かれたお話だということで、真剣に受け止めて読み進めなければならないと思いながら読みました。

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    2024年12月05日
  • 戦艦武蔵

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    その当時の日本における造船技術の叡智を集めて、秘匿の内に産み落とされた戦艦「武蔵」の生涯の記録です。かの有名な戦艦「大和」の2番艦、いわば次男坊にあたります。
    「武蔵」の生い立ちとその後の運命に見る光と影は、世界の潮流にもがく戦時中の日本の姿そのものであり、単なる戦記とは違う凄みを感じる作品です。また、飾り気のない文章で綴られる惨烈を極めた戦闘の描写と乗組員のその後には、心がえぐられます。
    否が応でも戦争について考えさせられる、とても悲しい話です。

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    2024年10月03日
  • 三陸海岸大津波

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    過去400年の間に南アメリカ大陸での地震に起因する津波が九例もあるとは。驚きである。地震もなく突然襲う津波なんて。

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    2024年09月26日
  • 大黒屋光太夫(上)

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     江戸時代にロシアへと漂着した日本人が、初めて帰国できたという魅力的な史実を題材にした、井上靖さんの『おろしや国酔夢譚』との違いを知りたくて、こちらはフォローしている方に教えていただきました。改めまして、ありがとうございます。


     まず読み始めて気付いたのが、井上さんの作品では「大黒屋光太夫」ら総勢17名を乗せた神昌丸が出帆したという表記のみで、出帆前の彼らについては全く触れていなかったところを、吉村昭さんの本書ではじっくりと描写している点で、白子浦の繁栄は家康のお陰といった歴史的繋がりも興味深い中、沖先頭の光太夫の半生について、幼い頃から知識欲が旺盛であり、神昌丸に自身の手荷物として浄瑠璃

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    2024年09月14日
  • 新装版 赤い人

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    河崎秋子 愚か者の石の参考文献にあったため読みました。
    小説というより、記録を読んでいるようでした。
    ただ、この北海道が、赤い人の命により発展したことを強く感じる本でした。

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    2024年08月30日
  • 星への旅

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    重厚な歴史小説や記録文学の印象が強い著者だが、こちらは昭和30年代から40年代の初期の作品集で、短編6編を収める。表題作は第2回太宰治賞を受賞している。
    緻密さよりはロマンティシズムが勝る。少年期から青年期のどこか透明な空気感。しかし、そこに「死」の影が色濃く映し出されている。
    戦後しばらく経っているとはいえ、これは戦争の影響なのではないだろうか。あるいは、戦時中に少年期を過ごし、戦中・戦後に若くして両親を亡くし、自身も大病を患ったことがある、著者の心象風景から来るものか。

    1作目、「鉄橋」は、若きボクサーの謎の死。前途洋々に見えた彼は、列車に轢かれ死亡する。果たしてそれは自殺なのか事故なの

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    2024年08月26日