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惨殺された父母の仇を討つ――しかし、ときは明治時代。美風として賞賛された敵討は、一転して殺人罪とされるようになっていた……新時代を迎えた日本人の複雑な心情を描く「最後の仇討」。父と伯父を殺した男は、権勢を誇る幕臣の手先として暗躍していた……幕末の政争が交錯する探索行を緊迫した筆致で綴る「敵討」。歴史の流れに翻弄された敵討の人間模様を丹念に描く二篇を収録。
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作品自体に不服はないが
ふりがなが少ないので、なんて読むのかわからない人名がいっぱい出てきた。
Posted by ブクログ
表題の「敵討」及び「最後の敵討」を収録している。 どちらも大変印象深い作品であり、さすがドラマ化された作品だけある。 吉村作品のよいところは、全てが全てハッピーエンドではないということ。本2作品の中で敵討を果たした人物は、敵討を果たしたあと何事もなく人生を終えているわけでない。 例えば「最後の敵討」...続きを読むでは、主人公が監獄から出たあと出獄祝いの宴に参加するが、その時そこにいた大物が演舞を行った人物の師匠によって殺されてしまうという事件が起こる。一方「敵討」では、敵討の助太刀役をした人物は、他藩に召し抱えられることなく、吉原の商店の店主としてその生涯を終えている。 その時は一躍脚光を浴びるが、人々の興味関心が薄れると、あっという間にスポットライトは当たらなくなってしまう。元の通りごく普通の一般人に戻る。それはまるで真っ暗な舞台上でスポットライトを浴びながら演技をする役者のようである。そのような、役者にスポットライトがあたっていないところまでしっかりと目を当てている吉村作品は素晴らしい。特に本作は、そのような人生の深みを感じることができる作品である。
敵討ちは武士に許された特権だった。しかし、明治維新でそれは只の殺人になる。時代が変わるとはどういうことなのだろう。仇討ちを通して、国の形が変わることと、本当に時代が変わることとは何かについて考えてみたくなった。
▼久しぶりに吉村昭さんを読みました。相変わらず、地味で硬派でコリコリしていて、エンタメにイキきらない独特の語り口が一種オモシロイ。森鴎外を読んでいる気分にちょっとなります。 ▼確か、江戸時代の(明治大正もあった)、「かたきうち」の実話を歴史小説として描いていらっしゃる。そこではエンタメ性やヒロイズ...続きを読むムは徹底的に排除されています。実にハードボイルド。ひとをころす、というしんどい肉体作業。長年かけて敵討ちをする精神的疲弊感。などなどがビシビシと容赦なく描かれて。それでいて、ちゃんと小説になっている。面白く読ませる。独特の背筋の伸びる持ち味、悪くないです。
「ぜひ読んでもらいたい。」と貸してもらうが、時代ものは慣れていないので少し読めない気もしているが、チャレンジして読んでみよっと。 最初は、ただ慣れない時代小説に苦戦。 無になって読んでみようと、必要以上に理解することを諦めて読んでみた。 淡々と事実が書き込まれているのに、その事実が辛い。 敵討… ...続きを読むそのシステム?が侍魂が、恐ろしいとおもってしまう。 時代によって価値観ざにが全然違うんだなーと、読み終わってから、なんとも、いえない気持ちになった。
江戸時代には賞賛された仇打ちが、明治に法治国家になって禁じられていた。法に従い服役した後、平凡な生活を送り静かに死んだ主人公や彼の周りの人に罪の気配は感じられない。2015.6.20
「敵討」天保の改革の時代に協力者の浪人と父と伯父の敵を追って二人で十数年。漸く見つけた相手は獄中に。このままでは敵討ちが出来ない・・・。この時代に敵討ちがいかに永年、収入もなく、あてもなく捜し回る悲劇。運良く討ち果たした後の二人の叙述もまた悲劇の深さをもの語ります。そして天保時代の政治の影を感じます...続きを読む。「最後の仇討」は明治元年、秋月藩の両親の暗殺を見た10歳の少年がやはり十数年後に判事になった敵を討つまでの苦難の日々と、敵討ち禁止令の施行により殺人罪とされてしまうこれまた悲劇。しかし、明治13年当時は未だ美風とされ、世の中の共感を集めたとの実話。時代の大きな変革に飲みこまれた人々の運命を痛感しました。
吉村流仇討2編。何が面白かったかといって、幕末からの話なので、法律が変わったり、政局が変わったりと、取り巻く状況がいちいち詳しかったところ。2編とも一応はハッピーエンドというか、宿願達成で良かった良かった、なのだが、じわーっといやぁな気分がこみあげて、討つ方も討たれる方も、地獄だなあ。
個人的と思われる敵討ちも社会の動きに左右されていくという2編。 「敵討」は伯父を闇討ちにされ、父も返り討ちにあった熊倉伝十郎が七年後、牢獄から放たれた敵を討つ物語だ。闇討ちの背後に老中水野忠邦の膝下で鳥居の陰謀があった。 当時敵討ちは1%も成功しないことで、成功しないとお家断絶で大変な作業だった...続きを読むらしい。病死などしていてもダメである。あてどない放浪の旅になる。その様子を吉村さんらしい資料に裏づけされた描写が興味深い。 相手が、遠島の罪に処せられていることがわかる。しかし、それでは敵討ちはできず、失敗になるのだけど、火事で帰牢したことで罪一等減で、所払いくらいになる。それでようやくはたせる。背景に倹約令を巡る権力争いがあり、こうした社会の動きに個人的な敵討ちも左右されていく様子が面白いところ。 「最後の仇討」は明治の近代化の過程で禁止された敵討が背景。臼井六郎は11歳と時、藩の争いに巻き込まれ父と母を惨殺される。12年に及ぶ苦難を経て、明治13年に敵を討つ。ところが、それより七年前すでに「仇討禁止令」が公布されていた、結果、禁獄終身刑となる。 敵討は法律では禁止されても「美しい行為」と称える風潮もあって彼は幸せな晩年をすごす。 あいかわらずのたたみかけるような吉村節が堪能できる。中篇二つというのが少し中途半端。
敵討ち、これは侍の時代のれっきとした制度で、この時代、敵討ちという私刑制度の下、合法的に殺人が許されていた。私刑の禁止されている現代においては考えられない制度である。 主人公は敵討ちの使命を負い、敵を探す旅に出る。出たくなくても、世間体というものがそれを許さない。その道のりは果てしなく、終わりがなか...続きを読むなか見えることはない。この制度の下、敵にめぐりあうことなく、無念に朽ちていった者も数多くいる。まさに、自分との戦いである。 小泉元総理大臣も本書を読んだとか。
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吉村昭
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