吉村昭のレビュー一覧

  • 星への旅

    Posted by ブクログ

    やたら轢死の描写が多くて、毎日通勤電車に揺られている身としては苦しいところもあった。
    若さゆえの死の儚さと美しさみたいなものを感じた作品。

    0
    2020年03月09日
  • 闇を裂く道

    Posted by ブクログ

    少し冗漫な感じもする。同じ作者の「高熱隧道」の方がまとまりよく一気に読ませる力があったように思う。

    工事としては、旧丹那トンネルの方が期間も長くかかっているので当然大変だったのでしょうが、それを克明に記すのはある意味マンネリにもなる。
    また、渇水による函南村の村民の苦難や怒りにも筆を向けているので、単なるプロジェクトX的な工事が大変でしたねだけではない、社会的な読み物になっている。

    今の日本にこれだけ、住民の事を真剣に考えてくれるお役所・官僚はいるのでしょうか。

    0
    2020年01月04日
  • 漂流記の魅力

    Posted by ブクログ

    記録文学・小説ではなく新書として著者の作品を読むのは新鮮。同じ島国であるにも関わらず、イギリスに多く日本にはない海洋小説の背景分析と、自らの力ではないが日本最古の世界一周録を紹介する内容。漂流に至るプロセスやその対処法、その後の顛末などに触れており、海や異国の地の過酷さを追体験できる。他の漂流小説を読んでから手に取るべき作品。

    0
    2020年01月01日
  • 生麦事件(上)

    Posted by ブクログ

    神奈川県を舞台とした小説の一つとして。
    タイトルの通り、幕末の大きな事件の一つである「生麦事件」を扱った歴史小説です。
    作者の吉村昭は『羆嵐』などで有名ですが、史実に基づいた精緻な描写がこの作品でも展開されています。

    幕府や薩摩藩の対応を批判するのでもなく、かといって賛美するのでもなく、冷静な視点から描かれており、戦闘描写・外交交渉の様子などもとてもリアルに感じます。
    特に、事件についての久光の主張「生麦村の事件については、家臣が外国人に斬りつけたのはやむを得ぬことと久光はその行為を是認していた。大名行列は、班の威信をしめすもので、藩士たちは身なりを整え、定められた順序に従って整然とした列を組んで進む。それは儀式に似たもので、その行列を乱したものは打果たしてもよいという公法がある。日本に居住する外国人たちは、日本で生活するかぎり、その公法を十分に知っているべきであるが、殺傷された外国人たちは下馬することもなく、馬を行列の中に踏み込ませるという非礼を働いた。それは断じて許されるべきではなく、斬りつけたことは当然といえる。▼しかし、国情のちがいからニール(英国代理公使)が憤激し、強硬な態度で激しい抗議をしているのも無理はなく…」もわかりやすくまとめられていましたし、生麦での事件そのものの描写も、殺傷された外国人の前には「礼儀」を守った外国人がいたことなども描かれているほか、「無礼」な4人の外国人たちにも悪意が無かった(意図的に行列を軽視して列を乱したわけではなかった)ことなども描かれていて、興味深く読むことができました。

    一方で、やや、長州藩に対しては少し批判的な印象も受けました。

    事件勃発から。薩英戦争前夜までが上巻では描かれています。
    【下巻に続く】

    0
    2019年10月21日
  • わたしの普段着

    Posted by ブクログ

    著作の裏話が興味深い。締切は必ず守る、身体が原因で大学中退、史実は正確を期する。語り部が加齢で減ってきて、戦争小説は見限り歴史小説に目を移した。真面目で几帳面な人だったのだろう。2019.9.3

    0
    2019年09月03日
  • 新装版 赤い人

    Posted by ブクログ

    ゴールデンカムイという漫画に影響され、網走旅行中に購入。

    明治維新後、国事犯や民権運動により囚人が牢獄に収まらなくなった。またソ連南下の脅威を感じている日本政府。そこで囚人たちに北海道開拓をさせることに。「苦役に絶えず死ねば国の出費も減る」とのこと積極的に囚人が送られた。

    現地の労働は超極寒の中、履物や手袋、食料までもが十分に支給されず命を落としていく。北海道に囚人が送られることは死と同義と言っても過言ではなく、自暴自棄になり脱獄を試みる囚人も多数。

    旭川から網走に道を一本作るのが一番過酷だったよう。交通網が国力に直結するのは理解できるが、国のために命を落としていく囚人を思うとやるせなくなる。

    この本は有吉が網走監獄博物館で買った。網走から旭川への帰路、この道は囚人無くして存在し得なかったと考えると囚人といえど頭が下がる思いである。

    0
    2019年08月17日
  • 死顔

    Posted by ブクログ

    吉村昭、遺作短編集。
    吉村昭の死を見つめる、真摯な姿勢がよく分かる作品。
    自らの死期を悟っても、うろたえない姿が目に浮かぶ。
    作家で、夫人の津村節子による「遺作について」も、吉村昭のひととなりがよく分かった。

    0
    2019年05月24日
  • 逃亡

    Posted by ブクログ

    少年兵の脱走をテーマにした小説。逃亡劇をドラマチックに描いた作品。太平洋戦争下の日本で自ら起こした数々の事件を主人公目線で描いている。

    0
    2019年03月21日
  • 星への旅

    Posted by ブクログ

    戦艦武蔵とは全く異なる死をテーマにした短編小説。不思議かつ不気味な作品が多い。細かなディテールの描写や独特の視点、詩的な表現はさすが。文学的価値は高いかもしれないが、好みで言うと好きな小説ではない。完全に好き嫌いの問題。

    0
    2019年01月27日
  • 星への旅

    Posted by ブクログ

    標題作以外にも秀逸な短編が収められた納得の一冊。
    特に「少女架刑」での死者の視点で語られる物質的な死と存在価値(霊的苦痛)、対となる「透明標本」での生きがいを持ちながらも無能となっていく人としての社会的な死への道程に立ち会うがごとき感覚に陥った。
    この時代の文章(というか著者の特徴)は安心して読むことができる...。別の意味でハラハラしなくて良い。

    0
    2018年12月30日
  • 脱出

    Posted by ブクログ

    太平洋戦争末期の日本を、少年の目を通じて描いた5篇からなる短篇集。舞台となっているのは、樺太、瀬戸内海、沖縄、サイパンなど、辺境の地である。これまで戦争とは縁がなかった地域が突然、最前線となり、日常と戦争との境目が極めて曖昧で紙一重である状況が描かれている。普通の生活を送っていて、突然戦争の影がそこに忍び寄っても誰もがそれを目の前に迫る来る現実的な危機とは捉えることが出来ずにいる様がそこにはあった。そして、自分や家族がどのようにするかという判断のほんの少しの些細な差が、生と死を分ける無情な結果がその先に待っているのである。戦争と日常が背中合わせである中、誰もがそれを現実として受け止められないままいつの間にか戦場のど真ん中に引きずり込まれた様子を通じて、作者は当時の日本中の空気感を描きたかったのかと思う。

    0
    2018年10月08日
  • 天に遊ぶ

    Posted by ブクログ

    原稿用紙10枚(4000字?)以内の珠玉の短編集。
    ここまで短いのに、物語が成立していて、うならされたりちょっとほろ苦かったり。
    名人芸ですね。

    0
    2018年09月18日
  • 総員起シ

    Posted by ブクログ

    「海の柩」は次々と流されてくる兵隊の水死体、という状況からして恐ろしいのですが、それらに共通するある特徴の理由がわかった時、あまりの殺生ぶりに戦慄せずにはいられませんでした。「総員起シ」は潜水艦サルベージのドキュメントとして非常に興味深い話でした。せっかく戦争を生き残ったのに、9年後に引き揚げられた潜水艦のメタンガスで死んでしまった三名の元海軍技術士官が不憫でならない。

    0
    2018年09月16日
  • 闇を裂く道

    Posted by ブクログ

    大正七年四月一日起工。
    昭和九年三月十日完成。
    十五年十一ヵ月、延べ二百五十万人の作業員によって完成した丹那トンネル。
    当初の甘い予測を遥かに上回る難工事。
    付近の住民の非難。
    自然災害。
    それらを乗り越えて作り上げた大傑作”丹那トンネル”
    著者の『高熱隧道』と共に読むと熱いトンネル屋の魂が感じられる。

    0
    2018年05月27日
  • 星への旅

    Posted by ブクログ

    死を題材にした短編集。
    吉村昭の記録小説以外の物語を読むのは初めてだった。
    記録小説で見せる重厚感無く、ひたすらに儚げでロマンティシズム。
    少し、肩透かしを食らったような感じがした。

    0
    2018年04月11日
  • 熊撃ち

    Posted by ブクログ

    色んな人間がいるように、色んな熊撃ちがある。それぞれの熊撃ち。背景は勿論、心理状態も違う。よく描写されており、読者としておそるおそる参加してみた。それぞれのケースに熊撃ちという言葉に括ることが出来ない独自性と共通性を見出すことができた。

    0
    2018年03月23日
  • 生麦事件(下)

    Posted by ブクログ

    生麦事件が冒頭に始まり、その余波を描いていくストーリー。
    途中タイトルは薩英戦争のほうがいいのではと思ったが、発端は生麦事件にあるだろうなと。
    教科書では字面しか出てこないが、重要であった。
    薩摩の徹底的な抵抗姿勢がなければ日本は中国のようになり、植民地になっていたのはたしか。
    賛否両論はあるが、日本に薩摩のような藩があってよかった。

    0
    2018年03月17日
  • 彰義隊

    Posted by ブクログ

    黒船の来航してからというもの、どうも弱腰を隠せない徳川幕府は
    鎖国にこだわる朝廷をなだめるのでずっと手一杯だった
    その間
    新しい日本の主導権を握ろうと、野望を燃やす薩摩・長州は
    勝手にイギリスと組み、近代的な軍事力を得て
    大政奉還・王政復古を成し遂げたあとにも飽きたらず
    旧幕府殲滅計画を着々とすすめていた
    そんな薩長を、朝廷も支持したというのは要するに
    強いものになびいただけの話
    …というのでもなくて
    婚約者を将軍に奪われた人の私怨が大きく絡んでいたらしいのだが
    いずれにせよ朝廷が
    現実の武力に対してなすすべのなかったことに変わりはなかった
    しかしそれでも…いや、だからこそ
    旧幕府派の志士たちはあくまで尊皇の立場を重んじ
    賊臣薩長を打ち倒すという大義名分のもとに結集したのである
    それが彰義隊の誕生だった

    その頃、徳川家の墓所を守る寛永寺では
    皇族出身の、輪王寺宮が山主を勤めていた
    徳川と関係が深く、江戸が戦火に包まれることを望まない輪王寺宮は
    進入した薩摩武士から治安を守っている彰義隊を
    非常に好ましく思っていた
    しかし、あくまで江戸の完全支配を目指す新政府は
    大村益次郎を擁し、彰義隊壊滅のための戦をしかけた
    彰義隊は、寛永寺のある上野東叡山を拠点に抵抗したが
    あえなく敗走した
    輪王寺宮も、そこを脱出するしかなかった
    その際、人目につくことを避けるため
    彰義隊隊士からの警護の申し出はすべて断った

    例えば、最後まで兵たちと運命を共にした西郷隆盛に比べ
    それは冷たい対応だったかもしれない
    …などと思う読者がいてもおかしくはないが
    貴人だからそういうもの
    輪王寺宮に西郷のようなロマンチシズムはなかった
    ただ、宮の場合は
    私情混じりの動機で他者をひたすら排除しようとする者たちへの怒りが
    抵抗の理由になった
    その怒りによって彼は武士階級と結びついていた
    同じく私情を振り回していることに変わりないとはいえ

    0
    2018年02月11日
  • 海軍乙事件

    Posted by ブクログ

    太平洋戦争などにまつわる事件や逸話を作者が丹念に取材し、まるで論文のように書いていく作品。
    海軍Z作品が米軍の手に渡り、そのことをさとられないように、潜水艦で日本軍に返し・・・というところで、もしやと思ったが、この話が栄光なき凱旋の元ネタかと繋がった。
    さらっと書いてあるが史実としては実際にあの日系人二人が返したのだろうか。ちょっと調べてみる必要がありそうである。
    読書は続けているとぱっと繋がる瞬間がたまに訪れるのである。

    0
    2017年11月26日
  • 東京の戦争

    Posted by ブクログ

    戦時戦後の人々の様子がわかる。作者は比較的裕福な家庭だったからか本人の性格もあるのか戦争というものにをどこか達観しているように思う。それは彼の兄弟、親が次々に亡くなっていき死が生きるなかで自然なこととして受け入れていたからなのだろうか。

    0
    2017年11月24日