あらすじ
その時、沖合から不気味な大轟音が鳴り響いた――「ヨダだ!」大海嘯ともヨダとも呼ばれる大津波は、明治29年、昭和8年、昭和35年の3度にわたって三陸沿岸を襲った。平成23年、東日本大震災で東北を襲った巨大津波は「未曾有」ではなかったのだ。津波の前兆、海面から50メートルの高さまで上り家々をなぎ倒す海水、家族を亡くした嘆き、地方自治体の必死の闘い…生き延びた人々の貴重なインタビューや子どもたちの作文が伝える、忘れてはいけない歴史の真実。
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教訓
「天災は忘れた頃にやって来る」という言葉がありますが、私も含めて今住んでいる場所にかつてどのような災害が有ったのかを調べて準備していた方は多くなかったのでは無いかと思います。自らの身に降りかからなければ、実感することは出来なかった多くの事。幾度となく繰り返される災害に対し先人は伝えようと石碑等を残していましたが、時が立つにつれてそれを意識する人は少なくなりまた多くの人が同じ様に被害を被る。とても残念なことです。現代は過去よりも映像等も含めて伝えていくことが容易になっているかと思いますが、それをどの様に受け止めて備え、起こった時にどの様な行動をするかで運命が分かれるのではないかと。
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昭和45年に、明治以降の、三陸海岸で起きた3回の津波について調査、聞き取りをした記録。
実際の津波はもっと多く発生しているが、大きかったものが3回らしい。
犠牲者は明治29年は26360、昭和8年は2995、昭和35年は105名。いろいろ対策をして、犠牲を減らせるようになっている、今後は亡くなる人もいなくなるのではないか、というセリフがある。
2023年3月に読んでいるので、その予測が裏切られていることがらわかる。
被害のたびに対策しても、それでも被害があるという事実を忘れずに、自分も準備しようと改めて思った。
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すごい記録!
この本が出版されたのは、2004年。2011年6月に12刷。
津波がどんなふうに襲ってくるのか、映像も写真もない、文章だけの表現は本当にこわい。当時の教職員が熱い思いで児童生徒に記録させているのも、それを紹介してるのも、凄いとしかいいようがない!
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事実が淡々と書かれているところがいい。三陸海岸の自然やそこに住む人々の暮らしが好きって著者が話しているところも好感が持てる。
チリ地震津波について被害があったことは知っていたけど実際の様子は初めて知った。私自身は自分の地域にも他の地域にも知り合いの古老となる人はいないので、たとえ悲惨なものだったとしても過去にあった体験を教えてもらえる話は有り難い。明治、昭和の三陸地震の住民の声を基に短かめにまとめられていて被害の様相を比べながら読んでいくのにも分かりやすくてよかった。
嫌な予感がして起きるんだけど「冬の日や晴れてる日は津波はこない」という迷信を信じて、それで安心してもう一度眠りにつく部分もとても気持ちが解る。
真夜中だし暗いし寒いし明日もあるし、と思うと実際やりかねない。そして普通にありそうな行動一つで生死が決まってしまう。
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本書で特に私の心を掴んだのは昭和8年の津波で家族の全てを失った牧野アイさん(当時尋常6年)の作文である。
無駄な表現を取り払い、目の前で起きた現象を淡々と描写するその文章は一見すると子供っぽくて単純にうつるかもしれない。だが私はこれこそが本当に美しい文章だと思う。大袈裟なことを言わずとも、牧野さんのような真っ直ぐな言葉で、彼女の悲しさや絶望は十分すぎるほど伝わった。
私たちは大人になるまでに多くの言葉に触れ、覚え、使う。そしてその過程で何故か必然性のない比喩や誇張をよく用いるようになる。しかし目の前で何が起きているか正確に掴み取り、ありのままに表現することも大切だ。
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この地の古今の資料、関連する海外の災害記録、生き残った方々の生の声。
丁寧に集められ誠実に書いた本書からは、長い間隔をとりながらも繰り返し襲う津波と人知との攻防の様子が迫ってくる。
本書が世に出たのは、東日本大震災発生の40年も前。これほどの経験をしてきた三陸海岸に、なぜ住み続けるのか?という傍観者の疑問にも、一定の答えを提示してくれている。
官民一体となって懸命に施してきた対策を易々と凌駕し、数々の漁村を壊滅させた、あの大津波。その後引き起こされた、ある意味人災とも言われている大きな事故。今後も三陸海岸に生きていく人々はどうすれば良いのか?同じ国土に生きる我々は何をしたらよいのか?
いつ来るか分からない恐怖に備えるためにも、読みつがれるべき一冊だと思う。
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知らなければならない。知って正しく恐れなければならないことがある。
南三陸海岸大津波。
この言葉ですぐに思い出すのは衝撃的な3.11の圧倒的な自然の猛威とそれによってもたらされた甚大な被害。
あれだけでなく、過去に幾度となく襲ってきた津波。そしてその度に壊され失われる家や船やひと。人間関係や仕事。
自然の激しさと人間の無力さを痛感しながら、それでも生きる、その土地を選び生き抜く人々の覚悟に言葉を無くす。
記録文学の持つ力をまざまざと感じた。
昭和の桃の節句に襲った津波を生き抜いた子どもたちの作文が胸を打つ。
日本人として必読の書のリストがあるとしたら、必ず入れなくてはならない一冊だと思う。
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吉村昭氏の作品にはまっている。たまたま手にとったものだが衝撃的だった。貴重な資料であった。こんなものがあったことをしらなかった自分が恥ずかしいほどだ。東日本大震災の津波の記憶がまだ生々しく残っているが、三陸地方は明治29年、昭和8年、35年と津波に遭っている。大漁、干潮、井戸水が干上がる、沖での閃光と爆弾のような音がその前兆だと。泥に埋まっている行方不明者を探す時に死体から脂がでるので水を撒くと脂が浮き出たところで見つける、とか。衝撃的な文が続く。東海沖での地震の不安が増す今、絶対読んでおくべき本だ。これだけの資料をまとめられた吉村氏に感謝しかない。
祈り届かず
筆者は祈りにも似た気持ちで、連綿と続いてきた防災意識が人々を守ってくれると信じていたのだろう。しかし現実には、その象徴である田老町の防潮堤をあざ笑うかのように、津波は遙か上を越えていった。期せずして、筆者の詳細な記録が平成の大震災の恐ろしさを際立たせる結果となっていることが、唯々つらい。
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否応なく、押し寄せてくる自然の恐怖。
人は、自然災害に対して、どう向かい合わなければならないのか。
圧倒的な筆力、綿密な取材により、まざまざと見せられた大自然の恐怖。
体験した者でなければ、分からない恐怖が、脳内で迫ってくる。
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先の震災後にも新たに注目されている三陸海岸を襲った大津波の記録です。書かれたのは昭和45年とあります。明治29年、昭和8年、昭和35年のチリ地震の津波について、丹念に地元を回り、生存者を訪ね歩いて書かれたものです。
大津波の前兆があちこちで聞かれたようですが、今回の地震のときにはなかったのかとネットで検索してみました。やはり結果論が多いのかな、中には「私は予知夢をよく見ます」という怪しげなのもたくさんありました。
それにしても三陸海岸というのはこの短い間に何度も壊滅的な打撃を受けて、人口のほとんどを失っていたとは驚きです。それでも海岸近くに家を建てるということは、それだけ魅力的な場所だということなのでしょうね。
まだ復興は遅々として進んでいないようですが、それでも昔の津波の後、立派に復興してきた土地です。きっと未来は明るいだろうと思えてきます。
これを読んで元気を出してほしいです。
吉村氏の文章はたいへん読みやすく、分かりやすいです。それは事実をしっかり調べた上できちんと整理して書かれているからでしょう。優れた教師の授業を聞いているようです。
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過去の三陸津波を簡潔に、臨場感をもってまとめている。津波(災害)に対する心構えが重要と感じるとともに、文庫という形で資料化した筆者の活動に感謝したい。
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明治29年(1896年)、昭和8年(1933年)、そして平成23年(2011年)。
改めて巨大津波の恐怖を感じるとともに、巨大津波は数十年~百数十年と日本列島を割かし頻繁に襲っていることに気づかされた。
(後でネットで調べると、平安、室町、江戸時代等、過去にも巨大津波が日本を襲っていることが分かった。)
自然の予兆(急に豊漁になったり井戸水が枯れたり)ってゆうのは、大事なメッセージだなあって本当に思った。
そういった過去の貴重な証言がとてつもなく貴重な情報だということに気づいて、自分の足で津々浦々足を運んで情報を集めてしっかりとまとめ上げた吉村昭、流石!信頼できるなあ!
(なんせ東日本大震災の前にこの本を書き上げている。本当にすごいと思う。)
一方で、では海から離れた高台住居と巨大な防潮堤が津波の解決策なのか、というと必ずしもそうではなく、多様な意見があると思うので、時間は遅れるだろうけど、短期間での決断は分断を生むだろう..............、と思い、色々大変な問題だなあと考えさせられた。
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三陸大津波の文献を丁寧に紐解いた文書。311前に発刊されているため、これには触れられていない。
昔から三陸は大津波に見舞われたことは知っていましたが、実際見ると重くなりますね。小学生に津波発生前後の作文を書かせたのは貴重な証言になっているけど記憶が鮮明なうちに書くのもきつかっただろうな、とも思えます。
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昭和45年発刊。明治29年、昭和8年の三陸海岸沖地震、昭和35年のチリ沖地震の大津波について書かれている。大津波の特徴、当時の発生や被害状況、三陸海岸に住む人々の作文などを紹介している。ただ回数を重ねるごとに被害は小さくなっているという記述があるので、大津波に対する恐怖心、警戒心を持たせる説得力を失ってしまうのが惜しい。
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明治から昭和にかけ三陸海岸を襲った三度の大津波の記録小説。
著者の綿密な取材力が伺え、淡々とした描写が史実の有り様を際立たせているように感じました。
初版が1970年とのこと。3.11を知る今、「自然は人間の想像をはるかに超える姿をみせる」という一文は痛切でした。
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明治29年、昭和8年の三陸沖地震に起因する津波と、昭和35年のチリ地震に起因する遠地津波について、学術論文のように時系列で系統だった記述ではないが、現地のフィールドワークに基づいた著者の文章は心に響くものがある。津波で被災しても、先祖伝来の住み慣れた土地を離れられない人情。海岸付近の土地の嵩上げは賛否両論あるが、それも津波から守るという意味ではありだったのだろう。1970年に上梓された著作の文庫版は、14年後の文庫化あとがき、H16(2004)年の再文庫化あとがきが収録されている。
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読むことをためらっていたけど、読んで良かった。決して感傷的ではなく、あくまで記録に忠実に被害の様相を記した「記録文学」。いまなら正常化バイアスという言葉で表される行動が、被害を大きく広げていた。髙山文彦氏が解説に書かれた「迷信は人を怠惰にする」の言葉が重い。
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明治29年の大津波体験者にもインタビューを試みている貴重な記録本。執筆当時(1970年)は心強く思われたであろう宮古市田老地区(旧田老町)の大防潮堤も、2011年には津波を防ぎきれなかったのを見るにつけ、人間の想像力をはるかに越える自然の力を改めて思い知る。筆者が最後に警鐘を鳴らしていた通り、再び同じ悲劇が繰り返されてしまった…。夫が知ることのなかった東日本大震災の後、遺志を継いで執筆された津村節子さんの「三陸の海」も読んでみようと思う。
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日本でもこれだけ大きな津波を度々経験しているにも関わらず、何と無知だったのかと痛感します。三陸海岸の方言では「よだ」が明治29年(死者26,360人)、昭和8年(死者2,995人)と僅か37年の間の2回も襲った悲惨な経験は驚きでした。そして昭和35年のチリ大地震による津波(死者105人)の損害の大きさにも吃驚です。著者はあくまでも客観的に淡々と前兆から始まる時系列の経過、そして甚大な被害の様子を描いています。そして古文書だけではなく地元のお年寄りへのヒアリング調査の成果です。まるで昨年のニュースをもう一度文章だけで生々しく再現してくれたように思います。チリ地震との関連では過去の南米の地震・津波の記録と日本の記録を比較し、何度も日本を襲った南米地震による津波を立証しています。その符合に驚くと共に、チリ地震津波の被害も気象庁の甘い認識の結果による人災だと思わざるを得ませんでした。約30年前の著者の作品が文庫本として昨年復活し、その年末に大津波がインド洋を襲ったその皮肉は残念なことです。
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明治29年、昭和8年、昭和35年の三陸海岸大津波の記録。
生存者の話、資料、絵画などを用いてありありと表現している。
大津波が来るたびに、人々はさまざまな工夫をしてきた、が、それでも東日本大震災では甚大な被害が生じた。
今後、どのように生きていくのか。その指針となると思う。
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地震無しの津波到来とか、怖すぎる…。厳密にいえば、地球の反対側では地震が起こっている訳だけど、それにしても…。地震以外にも色んな前兆があり、『ひょっとして…』という感覚は多く共有されていたっぽいけど、それ以上に、『いや、まさかね』っていう思い込みのバイアスが上回る訳ですね。我が事として見ておかないと。
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もともと1970年の本だが、私が読んだのは2004年の再文庫化版。
東日本大震災により津波の恐ろしさに対する認識は一挙に改まったが、別に過去に恐ろしい津波の被害がなかったわけではまったくない。1896年の津波は死者約2万6千名、1933年の津波は死者約3千名、1960年のチリ地震津波は死者約100名。チリ地震津波は規模が小さいとはいえ、警報や堤防などの対策により津波の被害を軽減できているようにも見えたのかもしれない。しかし2011年の津波は1896年に匹敵する犠牲者を出した。それを踏まえて読むとあらためて慄然とする。
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短いが、明治・昭和と数回起こった津波の暴威を克明に纏めた一冊。
作者の無感情な書き方が、津波を前にした人間の圧倒的な無力さを伝える。
もう少し表情のあるドキュメンタリーが好みだが、3.11以降の日本にとってこの入りやすいボリューム感は大事かもしれない。
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津波は単なる自然現象でそこまでの勢力はないと思い込んでいたが、この本を読み凄まじい津波の恐ろしさは体験をしてない今の若い人々に伝えていかなくつはならないと思った。
ぜひ、多くの人に読んで自然災害に備えて欲しいと思った。
本書は、体験者の話も書かれていて戦争時と同じくらいの筆舌に尽くしがたい悲惨な状況が目に浮かんだ。
リアルに津波の様子を描写していて読んでいるときに身震いをした。地震の後の津波が来る前の怪奇現象は真相を突き詰めていくことにより未来のわたしたちを守ることが出来るのではないか?
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元々知っている内容ばかりだったので新たに知ることのできるものはほとんどなかったが、私が既にいろいろな媒体で知ることができたのは、そもそもこのルポルタージュを元にしてできた記事なり映像だったりするのではないだろうかと思った。それほど詳細に調べてあるということだろう。ルポルタージュということで社会情勢や被害数字もかなり分量的に多くて、新聞を読んでいるような感覚だった。
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田老地区の話が出てきた。
結局、東日本では防波堤を超えてきてしまった
いま、さらに高い防波堤を作ってる
厳しい自然にどこまで力勝負するのか、、、と思った。いや、でも、実際生活してるひとはそうするしかないのだけど
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明治、昭和と三陸海岸には幾度となく津波が襲っている。地震が起こらないケースもあるそうで、津波警報のない昔は、いきなり襲ってきた津波にのまれた被害者が少なくない。
本自体のボリュームは少ないが、中身は濃かった。
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明治29年、昭和8年の大津波と、昭和35年チリ地震による津波が三陸沿岸にもたらした被害の記録と体験者の証言。
特に明治29年は大災害だったんだなあ…と言葉もない。
東日本大震災まで吉村さんが存命だったら、どんな言葉を残してくれたんだろう、と思わずにはいられなかった。
津波をあらわす方言の「よだ」の意味に、地域差が出たり時代を経て異なってくるのも興味深い。
Posted by ブクログ
明治二十九年、昭和八年、そして昭和三十五年のチリ地震津波と三つの津波による三陸海岸の被害を生き残った人々へのインタビューをもとにつづったルポ。
2011年3月の東日本大震災以前にも三陸海岸はたびたび大津波の被害を受けていた。その度に人々は対策を施し、毎回被害は少なくなっていたのだが、今回の甚大な被害から予想を上回る津波だったことがわかる。
津波被害は何十年に一度なので、住民の意識が薄れてしまう。だからといって住民の意識を高め、地震のたびに高台に避難するといったことは社会生活に影響を及ぼす。地震をともなわない大津波もあるのだ。
潮位の監視など、システムを構築することが重要と感じた。
巻末に明治二十九年の大津波含め四つの大津波を経験した早野幸太郎氏の言葉「津波は、時世が変わってもなくならない、必ず今後も襲ってくる。しかし、今の人たちは色々な方法で十分警戒しているから、死ぬ人はめったにいないと思う」という言葉を読むと、今回の事があるだけに、やりきれない思いに襲われる。次の津波の時は早野さんの言葉通りであって欲しい。