感情タグBEST3
Posted by ブクログ
明治維新の時期の面白さの1つは、身分や家柄とは関係なく、能力や資質のある人間が世に出る機会を得て活躍するケースが多かったことだと思う。本書の高木兼寛しかり、同じ著者の「ポーツマスの旗」の小村寿太郎しかり。九州の豊かとも言えない村の大工で終わる可能性もあった兼寛の活躍の舞台が、本人の才能、実直さに加えて周囲の人間のサポートもあり鹿児島、横浜、そしてイギリスへと広がっていく様はすがすがしい。努力すること、いつ来るかわからない人生の分かれ道の前に準備をしておくことの大切さを教えられる。
Posted by ブクログ
登場人物も背景も予備知識なしで入る。薩摩藩の大工の家。主人公は幕末に生まれ西洋医学を志す。努力と実力。人格も手伝い偶然も呼び込む。次から次へ、膨らむ立場。責任も重い。下巻の展開が楽しみになる。…明治の日本。「坂の上の雲」を目指して歩く。その先に何があるかはわからない。ただ、ひたむきに登る。その答えを知るのは後世に生まれた我々。脱亜入欧。3度の戦争の勝利。日本は先進国の一員になる。さらにその先に起きる戦争の結末。この物語の登場人物には知る術もない。…学ぶことは多い。失われた30年。その先は我々も知らない。
Posted by ブクログ
複数巻の長編を平行に読破しよう月間再開。
慈恵医大を作った高木兼寛の生涯のドキュメンタリー。倒幕から明治維新の動乱期に、戦火をくぐり抜けながら、西洋医学の重要性に目覚め、留学するまでの波乱万丈を描いた上巻。
吉村昭らしいパワフルな文体で、グイグイと押し進めるストーリーは、日本の混乱期、特に薩摩藩の動きと相まって、否応なく引き込まれる。
そこに、兼寛の生活や医学授業の詳細は、マクロとミクロの文章のメリハリにつながっている。
歴史小説やドキュメンタリーを読んでいて辛いと思うのが、登場人物がたくさん出てきて、それらがきっと伏線やストーリーの展開に絡むと思い込んでいると、単に歴史の一事件の関係者で、以後出てこないというものがある。この作品もそうであって、最初なかなか読み進められなくて困った。そういう部分は読み流せばよいのだ。
この手の歴史やドキュメンタリー小説で往々にて読み手が困るのは、昔っぽい表現に固執することと、現地の方言などに固執することだ。吉村昭の作においては、ほとんどそれがなく、違和感も少ないのが、やはり魅力なのであろう。
ただ、英語でしゃべっている部分を、カタカナ日本語で書くのはどうかなと思うけど。
Posted by ブクログ
陸海軍を震撼させる脚気の予防法を確立せよ戊辰戦争で見聞した西洋医学に驚いた薩摩藩軍医の高木兼寛は、やがて海軍に入りイギリスに留学、近代医学を学ぶ。東京慈恵会医科大学を創立した男の生涯を描く。