吉村昭のレビュー一覧
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作家冥利に尽きる体験、日常の小さな発見、ユーモアに富んだ 日々の暮し、そしてあの小説の執筆秘話を綴る。作家・吉村昭の文章を紡ぐさまをかいま見る芳醇な随筆集。
高名な作家である吉村昭であるが、案外とその著書を読んだ事が無い。(「ポーツマスの旗」を苦心して読んだだけである。)
本書は随筆集であるが、緻密な小説とは違い、著者の人柄が偲ばれ面白い。
個人的に気に入ったのは「毛がに」というお話。
北海道の医師の話が出てくる。その医師は、類のないほどの読書家で、毎月かなりの量の書物を買い、それを一つの建物の中に並べ、町の人にも公開している。かれの夢は、その書籍を建物とともに町に寄附することだと -
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二宮忠八の生涯を描いた歴史小説。彼は、明治時代、ライト兄弟よりも早く飛行機の原理を発見した人物として知られている。
昭和初期の軍国主義時代に二宮忠八は国定教科書でも取り上げられ、村田銃やゼロ戦と同様に日本独自の技術力の高さを以って賞賛されていたのだろうが、昨今ではあまり知られていない。(私自身も、この小説を知るまで彼のことを知らなかった)
歴史の表舞台には必ずしも出てこない人物を、このような形で知り、学ぶことができることが歴史小説の醍醐味であり、一期一会的な人物との出会いが嬉しい。
忠八が子供の頃に新型の凧を造る際に手助けをする竹籠職人など、日本人が、永らく手先が器用で技術力に才能を有して -
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小説の枠にしてますが、フィクションとしてしまっても好いんだと思う。それぐらい、史実を緻密に描き、その中で登場人物たちがどのような生を送っていったのかが生き生きと描写されてます。
幕末をちょっと勉強すれば出てくる戦争や策謀、日本人なら誰でも知っているような超有名人たちの躍動の背後には、この小説に書かれているようなごくごく平凡な、一般的な人々の人生が織り成されていたんだということに、改めて気づかされます。
この本を読んでも学校の歴史の点数は大して上がらないとは思いますし、その意味で勉強目的で読む必要はまったく感じません。が、この時代に生きた人々の空気感、息遣いを感じられるという意味で、学校の勉強 -
Posted by ブクログ
てっきり「フィクション」だと思って不勉強なままで読み始めたんですが、基本はノンフィクション。随所に著書の創作も盛り込まれているんだと思いますが、登場人物はほぼ100%、Wikipediaで検索したら出てきます。幕末の動乱期における歴史を追いつつ、シーボルトの私生児であった「お稲」の人生を辿る、というのが、この作品への正しい接し方なんだと思います。
上巻は、シーボルトが出島でお稲の母であるお滝(遊女としての名前は其扇)に出会って子を成し、一方で鳴滝塾で蘭学を教えて多くの門下生を育て、その後いわゆるシーボルト事件で彼が国外追放される…といった場面を中心に展開していきます。娘であるお稲の活躍はほと -
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間宮海峡を発見した人として有名であるが、その発見の旅中の状況が克明に描かれており、まさに命がけの発見であったことがよくわかる。
志を高く、何かを成し遂げようとする偉人伝は時代を超えて学ぶことが多い。
(間宮林蔵は、世界地図の地名に、日本人として唯一人名が刻まれている)
当時は、地図を作るに際して足で稼ぐことが基本にあるわけだが、その測量方法、技術も興味深い。
本著を通じ、当時の蝦夷(北海道)北方における国際情勢を理解することができる。
また、自分自身、知らなかったことであるが、間宮林蔵は後年、幕府の隠密として働いていた。
本著の後段は、その活動について触れられ、当時の幕府の対外方針や各藩の実 -
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城山三郎・平岩外四対談集「人生に二度読む本」に掲げられている一冊、興味を持って読んでみた。世界地図で、唯一日本人名が登録されている間宮海峡を発見した冒険家として知ってはいたが、本書によって幕府老中の信認によって隠密活動をしていたことを改めて知った。前半は、樺太調査に挑んだ林蔵の過酷な探検行、史料と作者の想像力の融合により、血沸き肉踊る冒険譚。後半は、その成功により幕府の信頼を得て、諸国を巡る隠密行。シーボルト事件を筆頭に幕末のさまざまな人物との邂逅があり、対談集の城山氏の言葉では、幕末のオールスターキャストが登場する。確かに、人生で少なくとも一度は読むべき名著である。