【感想・ネタバレ】遠い日の戦争のレビュー

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ 2016年09月15日

吉村昭の作品は本当に外れない。
こぎみ良いテンポとそれでいて非常に重苦しい雰囲気が絶妙に交わり独特の作風を際立たせている。
戦争を反省するための学びの本にもなれば、思想的な部分では、ある種の戦犯への同情的な心理を呼び起こすことで国家主義的な情念も駆り立てられうるため、読者側の心情もかなり複雑になり、...続きを読む動揺させられる。
吉村昭の得意分野である逃亡や漂流における主人公の孤独な内面性、葛藤をこの作品もまた緻密に描き出している。
正義とは何か、それは絶対的なものではなく、あくまで時代状況や国家間の関係性に左右される相対的なものでしかないことを断定する教育的利用価値のある作品である。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2013年07月16日

戦前ばかりを特別視する人がいる。

でも、「正義」の顔が代わっただけで、結局同じなんじゃないか、と思う。
そうそう人間の性質など変わらないのだ。

もし私が戦直後を経験したら、何も信じないと思う。
世の中すべてを斜めに見て、綺麗なことも汚いことも、「ばかじゃないの」と笑っているような気がする。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

戦後の日本の混乱がよくわかる。
主人公は戦犯の対象になってしまい、
絞首刑から逃れるために、逃亡生活をする。

それが長くなるにつれ、精神を消耗していき
はじめは何の迷いもなく選択したことだったが
これが本当に正しかったのか、と彼は自分に問い続けていく。

戦後のあまり語られない日本の様子に
驚くと...続きを読むともに納得し、これまで知らなかったことが
恥ずかしくなる。多くの人が読んで考えるべき内容。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

終戦を境に激変してゆく日本の歪みと矛盾。価値観の変わった現在においても日本人の深層には敗戦と、戦争犯罪へのさまざまな苦い思いが横たわるのだろう。大いに考えさせられた。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年08月15日

毎年、この時期には先の大戦に関する書籍を意識して手にするようにしていますが、そんな中で終戦記念日に読み終えた一冊です。

今までは戦争中の悲惨な出来事を描いた作品を手にしてきましたが、本作は戦争終盤から始まり、主に描かれるのは戦後の戦争裁判。

主人公の琢也はまさに終戦となったその日、B29に搭乗し...続きを読むていたアメリカ兵(捕虜)を斬首により処刑した。

本土決戦が現実味を帯びた戦争末期、本土に降り注ぐ爆弾、焼夷弾により国土は焼かれ、多くの人々が命を落とし、傷を負い、住むところも失った。

まさに民間人を狙った無差別な空襲。

実際にそれを行なっていたアメリカ兵に対し、敵討ちともいえる処刑は残念ながらその当時ある意味で当然のことのように思われることであろう。

そして迎えた終戦。

GHQによる統治と共に始まった戦争裁判。

そこから始まる琢也の逃亡劇。

私が生まれ育った街も舞台に登場し、息詰まる緊張感、人々の心の変化をリアルに感じることが出来ました。

本作で描かれた全てが史実ではないかも知れませんが、今までとは違った意味で私の心に刻まれる一冊になるでしょう。

今もウクライナをはじめ、戦争が行われている事実。

哀しき歴史が今も刻まれ続けていることから目を背けずに改めて戦争と平和について考えたいと思います。


説明
終戦の詔勅が下った昭和20年8月15日、福岡の西部軍司令部の防空情報主任・清原琢也は、米兵捕虜を処刑した。無差別空襲により家族を失った日本人すべての意志の代行であるとも彼には思えた。だが、敗戦はすべての価値観を逆転させた。戦犯として断罪され、日本人の恥と罵られる中、暗く怯えに満ちた戦後の逃亡の日々が始まる――。戦争犯罪を問い、戦後日本の歪みを抉る力作長編。

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Posted by ブクログ 2022年03月19日

戦犯者琢也の逃亡の様子、琢也の気持ちの変化の描写どれも吉村昭さんの作風にどんどん引き込まれて、一気に読み終わりました。まだまだ知らなかった戦争の事実が様々な小説に沢山あり、これからも少しずつ読んでいきたいです。

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Posted by ブクログ 2021年12月31日

終戦後の戦犯による罪を避けながらと逃避する琢也の葛藤を描いた作品。この難しい問いを淡々と詳らかにする著者の筆致は、相変わらずスゴイ...。戦勝者と敗北者の視点から綴られる記録文学。戦争を知らない世代は取り敢えず著者作品に触れてみよう。きっと気づけるものがあるはず。

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Posted by ブクログ 2021年08月04日

戦犯容疑者として追われる元将校の心の葛藤がとてもリアル。死罪に怯えながらの逃避行に息が詰まった。戦後処理を通して正義とは一体何かが問われる。価値観逆転による混乱の大きさは戦後生まれには想像もつかないが、トップの責任逃れやら、メディアの手のひら返しやらはいつの世も変わらないなと…。

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Posted by ブクログ 2018年05月04日

戦争に勝てば英雄。
負ければ戦争犯罪容疑者。
そして、敗戦後、数年して空気が一変して戦争被害者へ。
戦争とは、何なのか。
戦争の為に国民を洗脳し、戦わせる。
国と国が争って、負ければ個人へ責任を擦り付ける。
こんなことがまかり通っていいのだろうか。
こんなことに青春を奪われた若者が可哀想だ。

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Posted by ブクログ 2017年04月03日

海と毒薬のB面というか(亜流という意味ではなく)、戦争犯罪人のひとつの形。
海と毒薬ほどテーマに奥深さが無いことが、逆に作品を何故書かれなくてはならなかったのか?を感じる。

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Posted by ブクログ 2015年11月28日

無差別な空襲から怒りを覚え米捕虜を処刑。官憲から逃亡生活に入る。雰囲気で裁かれ、時の流れで変わる判決、運で転ぶ人生に冷めた境地に達する。2015.11.28

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Posted by ブクログ 2014年08月26日

戦犯を主人公にしたストーリー。正義に対する考え方が深くて面白い。人間の信念についても考えさせられる。特にラストがすごくよく、自分の腹に落ちる佳作だと思う。

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Posted by ブクログ 2013年07月17日

終戦と後のいわゆる戦争犯罪(人)に対して考えさせられる小説。
主人公は終戦後、B29の搭乗員を処刑することに加わり、その事で戦後追われる身になる。B29の搭乗員は当時の国際条約に違反して民間人を大量虐殺した事で、日本軍部は処刑を決定し、国際社会にも宣言していた。戦後それらが戦争犯罪となるが、勝者が敗...続きを読む者を裁くことを見せつけられた思いがした。また裁く側の都合で量刑が斟酌され、減軽される政治的な流れについても人間の行いの空しさを覚えた。主人公が最後の場面でかつて働いていたマッチ工場のマッチを擦り、その質の変化を眺める様は時代の流れを思わせられてしんみりした。

考えさせられる小説であったが、生きる勇気や感動を与えられるわけでは無かったので、私のテイスト的には星を一つ減らして四つとした。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

太平洋戦争終了間際に捕虜となったアメリカ兵を処刑した主人公。

主人公は、空襲や原爆で大勢の日本人を殺されたうらみ、それを晴らす代表者としての気持ちで捕虜を殺害した。

しかし、待っていたのは戦後の日本人の意識の変換であり、警察からの厳しい逃亡生活だった…。

こうも意識の変化が行われるものか...続きを読む

生きるためとはいえ、処刑を実行した主人公のむなしさが良く伝わる。

逃亡の事細かな主人公の心の描写が切ない。

特に逮捕のシーン、東京裁判のシーンが印象的だった。

東京裁判は、真実を学びなおしたい。

遠藤周作の「海と毒薬」にも事件的(捕虜処刑)にはつながる作品。

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