あらすじ
終戦の詔勅が下った昭和20年8月15日、福岡の西部軍司令部の防空情報主任・清原琢也は、米兵捕虜を処刑した。無差別空襲により家族を失った日本人すべての意志の代行であるとも彼には思えた。だが、敗戦はすべての価値観を逆転させた。戦犯として断罪され、日本人の恥と罵られる中、暗く怯えに満ちた戦後の逃亡の日々が始まる――。戦争犯罪を問い、戦後日本の歪みを抉る力作長編。
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Posted by ブクログ
戦前ばかりを特別視する人がいる。
でも、「正義」の顔が代わっただけで、結局同じなんじゃないか、と思う。
そうそう人間の性質など変わらないのだ。
もし私が戦直後を経験したら、何も信じないと思う。
世の中すべてを斜めに見て、綺麗なことも汚いことも、「ばかじゃないの」と笑っているような気がする。
Posted by ブクログ
毎年、この時期には先の大戦に関する書籍を意識して手にするようにしていますが、そんな中で終戦記念日に読み終えた一冊です。
今までは戦争中の悲惨な出来事を描いた作品を手にしてきましたが、本作は戦争終盤から始まり、主に描かれるのは戦後の戦争裁判。
主人公の琢也はまさに終戦となったその日、B29に搭乗していたアメリカ兵(捕虜)を斬首により処刑した。
本土決戦が現実味を帯びた戦争末期、本土に降り注ぐ爆弾、焼夷弾により国土は焼かれ、多くの人々が命を落とし、傷を負い、住むところも失った。
まさに民間人を狙った無差別な空襲。
実際にそれを行なっていたアメリカ兵に対し、敵討ちともいえる処刑は残念ながらその当時ある意味で当然のことのように思われることであろう。
そして迎えた終戦。
GHQによる統治と共に始まった戦争裁判。
そこから始まる琢也の逃亡劇。
私が生まれ育った街も舞台に登場し、息詰まる緊張感、人々の心の変化をリアルに感じることが出来ました。
本作で描かれた全てが史実ではないかも知れませんが、今までとは違った意味で私の心に刻まれる一冊になるでしょう。
今もウクライナをはじめ、戦争が行われている事実。
哀しき歴史が今も刻まれ続けていることから目を背けずに改めて戦争と平和について考えたいと思います。
説明
終戦の詔勅が下った昭和20年8月15日、福岡の西部軍司令部の防空情報主任・清原琢也は、米兵捕虜を処刑した。無差別空襲により家族を失った日本人すべての意志の代行であるとも彼には思えた。だが、敗戦はすべての価値観を逆転させた。戦犯として断罪され、日本人の恥と罵られる中、暗く怯えに満ちた戦後の逃亡の日々が始まる――。戦争犯罪を問い、戦後日本の歪みを抉る力作長編。