吉村昭のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
沖縄戦の生々しい戦闘。
生に向かう戦闘なのか、死への序章なのか、向かうべき先を見失う。
吉村昭のノンフィクションはスゴイ。そう思わせてくれる作品ばかりだが、この作品もその一つ。
戦争には、エゴや本能としての生、そして腐乱する死というものがある。
極端過ぎれば例えノンフィクションと言えエグすぎて読めないとなる人もいる。
この作品にも本当にあった火炎放射や戦車で馬乗りされるシーンもあるのだけど、その惨さは読んだ後になってありありとわかる…読んだ後だから読めてしまう、でも書いてあることは本当にスゴイ事実。
沖縄戦がいかに酷かったかはしらない人はいないと思うけれど、少年が急拵えの兵隊にされ移ろい行く心情が少年と背伸びの兵隊の両側面からしっかりと描かれている。
鎮魂の意味も込めて、そして今起こっているウクライナの戦争に、思いを馳せている。 -
Posted by ブクログ
初の吉村作品。こう言った記録小説自体を初めて読み、読み進めるのには時間がかかったが、通常の小説と同じく、或いはそれ以上に世界に入り込むことができたのは不思議な感覚だった。
舞台はポーツマス講和会議、日本全権の小村寿太郎。小村は私も多少縁のある宮崎・飫肥出身ということもあり、読前から思い入れがあった。ただ、ポーツマス条約という日露戦争の輝かしい成果の話と思っていたが、実際は当時も今も色々な見方ができる結果だったのだということを知った。
小村はメディアを使った印象操作を行わなかった。積極的に利用していたロシアとは対照的な姿勢に私は非常に小村らしいと誇らしく感じた。昔からメディアの力で世論は動くし、たった一つの記事が大きく戦争を左右するのだなと改めて実感した。ウィッテは日本目線で見ると嫌な外交官であるが、終盤ロシア皇帝の勅命に対して決死の抵抗をする姿は素晴らしく、彼も平和と自国の利の狭間で苦悩し続けた人なのだなと感じた。
本作で衝撃だったのは外交官以外の小村の印象だった。一言で言えばクズ人間。家庭は顧みず、借財は平気で踏み倒す。小説としては小村という人物にどういう感情を抱けば良いのか分からなくなるが、ありのままの人物を描くのが吉村流なのかなと思った。そして私は自堕落な私生活を踏まえてもなお小村を憎めない。一生を外交官という職務に捧げた人物なのだと思う。 -
Posted by ブクログ
「解体新書」を著した前野良沢と杉田玄白に関する歴史小説。
オランダ語を習得する執念とその努力は、語学を学ぶ全ての人にとって、大いに刺激になると思う。
(当時の苦学を知れば、現代人が英語学習で苦労するなんて言ってられないだろう)
同じ吉村昭著の高野長英の歴史小説も思い出した。(これも名著)
蘭学を通じて、西洋近代の知識を吸収し、延いては、それが幕末の政治的な動きにまで繋がってくる。
そう考えると、解体新書を世に出した二人の存在の意義の大きさを、改めて認識させられる。
(当時、鎖国の方針を緩めた徳川吉宗の見識の高さでもある)
この小説の面白いところは、今でも、前野良沢的生き方と杉田玄白的生き方があるからだろう。
自分の場合は、世の中をうまく生きていくよりも、前野良沢のような、頑固で、不器用で、妥協を許さないプロ意識に高い人物の方が好感が持てる。