吉村昭のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
物語の半分(か、それ以上)は放哉のお酒の失敗エピソードなわけですが、“酒”というよりは“病”というものが、あるいは、“金が無い”ということがどれだけ人を卑屈にさせ、孤立させるものなのかと恐ろしくなった。
最初に放哉の心に巣食った病はなんだったのか。
物語が始まる頃には既に終わりが始まっていて、知る由もない。
妻にも見捨てられ、彼には小豆島の寂しい庵しか、行くアテがない。
徐々に衰えていく身体から削り出されたかのような言葉は、どれも骨のように白く軽い。
放哉の句を読むことは、彼の骨を拾うような行為だと思う。
圧巻は放哉絶命のシーン。
ワンカット長回しのような臨場感、緊張感。
これは吉村昭に -
購入済み
共生というテーマ
筆者のテーマ選びにはいつも感嘆させられる。物語はミツバチを通して、一貫して共に生きることを見つめているように思う。人もミツバチも一人で生きられはしない。そのことをミツバチの克明な生態を軸に、見事に浮かび上がらせている。
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Posted by ブクログ
吉村昭『天に遊ぶ』新潮文庫。
吉村昭の21編を収録した掌編集。今どき文庫本で490円という価格はかなり珍しい。
普通に生きる市井の人びとの様々な人生の場面を切り取り、背後にある過去と後悔をも描写してみせた味わい深い掌編が並ぶ。
『鰭紙』。南部藩の庄屋だった家で見付かった古文書にはかつての飢饉の様子が描かれていた。明らかにしなくともよい歴史もある。
『同居』。上手く行くと思われた縁談だったが、まさかの理由で破談に終わりそう。
『頭蓋骨』。取材で北海道の漁師町を訪れた小説家は帰り道に思わぬ雨に途方に暮れる……
『香奠袋』。頻繁に文壇の著名人の葬儀に姿を現す老女は香奠婆さんと呼ばれ、香典