吉村昭のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
初の吉村作品。こう言った記録小説自体を初めて読み、読み進めるのには時間がかかったが、通常の小説と同じく、或いはそれ以上に世界に入り込むことができたのは不思議な感覚だった。
舞台はポーツマス講和会議、日本全権の小村寿太郎。小村は私も多少縁のある宮崎・飫肥出身ということもあり、読前から思い入れがあった。ただ、ポーツマス条約という日露戦争の輝かしい成果の話と思っていたが、実際は当時も今も色々な見方ができる結果だったのだということを知った。
小村はメディアを使った印象操作を行わなかった。積極的に利用していたロシアとは対照的な姿勢に私は非常に小村らしいと誇らしく感じた。昔からメディアの力で世論は動く -
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Posted by ブクログ
「解体新書」を著した前野良沢と杉田玄白に関する歴史小説。
オランダ語を習得する執念とその努力は、語学を学ぶ全ての人にとって、大いに刺激になると思う。
(当時の苦学を知れば、現代人が英語学習で苦労するなんて言ってられないだろう)
同じ吉村昭著の高野長英の歴史小説も思い出した。(これも名著)
蘭学を通じて、西洋近代の知識を吸収し、延いては、それが幕末の政治的な動きにまで繋がってくる。
そう考えると、解体新書を世に出した二人の存在の意義の大きさを、改めて認識させられる。
(当時、鎖国の方針を緩めた徳川吉宗の見識の高さでもある)
この小説の面白いところは、今でも、前野良沢的生き方と杉田玄白的生き方