吉村昭のレビュー一覧

  • 新装版 落日の宴 勘定奉行川路聖謨(下)

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    川路の最期には、人間の悲哀を感じる。
    また、江戸時代の武士の忠義の盲目さにも、ここまで徹底していると、これもまたいまに生きる僕には、悲哀と滑稽さを感じる。

    彼の知識(西洋知識)を得る目的は、使うため。行動するため。

    それにしても、交通機関が徒歩というのは、想像を絶しますね。
    この描写をみてそういうのがまざまざと想像できる。

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    2017年07月01日
  • 新装版 落日の宴 勘定奉行川路聖謨(上)

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    幕末のロシア使節プチャーチンとの交渉記録を丹念に。
    そんな交渉の場、下田で大地震・大津波があったことを知る。
    いつか下田に行って見たいし、ここに出てきた町を自転車で巡って見たい。

    交渉の詳細、外交官気質(当時はそういうものはなかったでしょうが)みたいなものが克明に記述されていて、自分とはまったく違うので、ひたすら感服。

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    2017年07月01日
  • 新装版 白い航跡(上)

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    複数巻の長編を平行に読破しよう月間再開。

    慈恵医大を作った高木兼寛の生涯のドキュメンタリー。倒幕から明治維新の動乱期に、戦火をくぐり抜けながら、西洋医学の重要性に目覚め、留学するまでの波乱万丈を描いた上巻。

    吉村昭らしいパワフルな文体で、グイグイと押し進めるストーリーは、日本の混乱期、特に薩摩藩の動きと相まって、否応なく引き込まれる。

    そこに、兼寛の生活や医学授業の詳細は、マクロとミクロの文章のメリハリにつながっている。

    歴史小説やドキュメンタリーを読んでいて辛いと思うのが、登場人物がたくさん出てきて、それらがきっと伏線やストーリーの展開に絡むと思い込んでいると、単に歴史の一事件の関係

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    2017年06月15日
  • 破獄

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    逃げては捕まりまた逃げて。

    吉村氏らしく、1人の脱獄犯を中心とし、それを取り巻く看守達の心情や戦時戦後の社会情勢を詳細に描写している作品。

    逃げる捕まるの繰り返しになるので、地味ではある。
    しかし、男達の執念にはただ熱くなるし、当時の貧しい社会には今を生きる有難さを感じる。

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    2025年12月28日
  • 桜田門外ノ変(下)

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    熊嵐とか漂流とか、以前に読んだ作品の方が、より好きでした。もちろん、これがつまらないってことではなく。先日読んだ「四十七人の刺客」でも感じたことだけど、比較的史実に忠実に則って、かつマイナーな登場人物もかなり網羅してっていう風だと、免疫がないとどうしてもとっつきづらさを感じてしまいます。まあ素養のなさがそもそもの問題なんだけど、入門編としては最適ではない、っていうくらいの意味です。桜田門外の変は歴史の教科書で読んだくらい、ってレベルだと、なかなかついていくのが大変でした。ただ、事変がメインなんだけどクライマックスではなく、その後日談がかなりの紙面を使って書き込まれているのは読み応え大でした。む

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    2017年06月13日
  • 新装版 間宮林蔵

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    この人の人生を左右したのは間宮海峡を発見したことというより、むしろシーボルド事件だったのかもしれない。いろんな意味で幕末の日本のカギを握っていたといえよう。

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    2017年04月30日
  • 桜田門外ノ変(上)

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    それこそ、事件名と井伊直弼その人の名前に関しては、小学生の頃から知っていた割りに、実際の事件のあらましとか背景に関しては殆ど知らず。で、安心ブランドの吉村昭作品ってことで、今回読むことにしました。忘れただけかもしらんけど、実行犯の名前とか全く思い浮かばず、そのせいもあり、ひたすら聞き慣れない名称が出てくる序盤、正直ちょっとしんどさあり。でもある程度人物関係とかが見えてくると、あとはさすがの表現力でもって、どんどん物語に引き込まれていきます。いよいよ安政の大獄がなされて、ここから討伐に向けて動き出す気配で、後半の展開が楽しみです。

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    2017年04月13日
  • 遠い日の戦争

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    海と毒薬のB面というか(亜流という意味ではなく)、戦争犯罪人のひとつの形。
    海と毒薬ほどテーマに奥深さが無いことが、逆に作品を何故書かれなくてはならなかったのか?を感じる。

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    2017年04月03日
  • 闇を裂く道

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    世界大戦前の大正から昭和にかけて工事が行われた丹那トンネルにかかわった人々の記録文学(といっていいのか)。吉村昭は「小説」と言っている。
    工事の進捗が、ノミで岩盤を穿つような文体で、語られる。歴代の工事所長、主任技師、労働災害、被害を受けた地元の群像で進む。

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    2018年10月20日
  • 零式戦闘機

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    優れた技術者とその傑作零式戦闘機の華々しいストーリーは日本人として読んでいて誇らしかった。
    緻密さや真面目さは日本人が得意とするところだと本気で思う。(口に出してはいけない)

    敗戦が続き出した頃、資源が足りなくなってきた頃からの軍の判断と意識は異常。まさに盲目。人命さえも爆弾保持装置くらいにしか考えられなくなる恐ろしさ。一般市民もそれが当たり前と思っていたとは。

    全員気がおかしくなっていたんだろう。生涯この感覚を理解できないであろうが理解したくもない。

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    2017年02月27日
  • 脱出

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    はじめの「脱出」を読んで、素晴らしく良いとは感じなかったので表題作がこれくらいでは、他もそんなに大したことないのかも…と思いつつ読み進めると、この本のコンセプトが「脱出」というタイトルに象徴されていることがわかり、様々な人々を描きながら、一本の太い棒のようなものが貫かれていることに感心する。バラバラに読むよりまとめて読んだ方が、作者の言わんとすることがよくわかる。そういう意味で良い短編集である。
     戦中戦後に、直接戦闘にはかかわらなかった子どもや僧がたとえ命は失わなかったにしてもどのように心身に傷を負ったかが、情緒を排した文章で描かれる。
     特に児童労働と、労働させる人々を描いた「鯛の島」、生

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    2017年02月26日
  • 海の祭礼

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    鎖国中の日本に憧れ捕鯨船の乗組み員になり、日本に上陸したラナルド・マクドナルドから英語を学ぶ守山栄之助。オランダ語の通訳(長崎通司)である彼は英語の必要性を痛感し、貪欲に英語を学んでゆく。ペリーやハリスの来航時にも通訳を務め、アメリカのみならず、イギリス、ロシア、フランス等との通商条約締結の矢面に立つ。尊王攘夷の嵐が吹き荒れる幕末に、通訳としての正確さのみならず、最後は外交官として役割も果たす。鎖国が崩壊してゆく過程が垣間見える。

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    2017年02月21日
  • 新装版 海も暮れきる

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    自由律俳句で有名な尾崎放哉の伝記小説。晩年の8ヶ月を描く。
    尾崎放哉の俳句は、高校の授業で習った事がある。種田山頭火や高浜虚子、萩原井泉水などと共に明治大正の俳句について勉強したが30年経った今でも覚えているのは、山頭火の句と彼の「せきをしてもひとり」という哀愁漂う句くらいだ。
    俳人の句は覚えていても、彼らの句がどのような背景で詠まれたのかは知らない。彼がどんな人物だったのか興味があって読んでみた。
    彼は、東大卒で一流企業の重役を勤めながら、酒癖の悪さで身を崩し、妻には愛想を尽かされ、仏門に入るが酒のせいで上手く行かず、結核を患って死に場所を求めて小豆島に渡る。歌人としての才能は誰もが認めるの

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    2017年02月12日
  • 新装版 落日の宴 勘定奉行川路聖謨(下)

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    ネタバレ

    ・久々に読んだ吉村昭さんの作品

    ・名前しか知らない人だったので、新鮮だった

    ・幕末というと、安政の大獄などの弾圧のイメージがあり
     幕府は基本は無能で、開国したのも弱腰だったからという
     なんとなくの先入観があったが、
     いろいろな考えの人が実際に活躍しており
     開国のために様々な努力もしていたことを知って
     少し見方がかわった

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    2017年02月05日
  • ニコライ遭難

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    明治24年にロシア皇太子ニコライが来日し、長崎、鹿児島、京都、滋賀と回る中で大津で警備を担当していた津田三蔵巡査に襲われた事件、いわゆる大津事件について描かれた小説。小説というか、吉村昭の作品は(というほど多くの作品を読んだわけではないが)、事実関係を丹念に取材して周辺情報まで含めて細かく書かれている一方で、小説が小説たる感情のもりあがりだとか登場人物の内面描写がないため、まるで解説記事を読んでいるような気分になる。それはそれでとても勉強になるのだが、ハマって一気に読破!みたいなことはない。
    長崎でのニコライのお忍びに対する長崎県庁の苦慮や、津田三蔵の処分に対する政府対裁判官の戦いなど、なるほ

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    2017年01月25日
  • 桜田門外ノ変(下)

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    忠臣蔵については、周到な準備があった経緯がよく知られている。桜田門外の変については、あまり知られていないと思う。この小説を読んで、経緯がよくわかった。毎度ながら、作者の調査の深さに驚く。

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    2017年01月15日
  • 脱出

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    ネタバレ

    吉村昭の3冊目。

    硬質な文章であると思うのだけれど、自然の描写が美しく……、その美しさ故に、描かれている時代の悲惨が、より際立ってくる・・・。

    「鯛の島」
    ・・・なんともやるせない。敗色濃厚な戦況が国民には隠されていたということ自体は、歴史に疎い自分にも周知の知識ではあったけれど、その隠蔽のためにあんなことが・・・。

    「他人の城」
    ・・・巻末解説文で「神の名によって許されさえする」と描かれた、極限状態での選択……。
    生き残った後に心を保てるのかどうか?
    ・・・自分だったら?・・・
    平成日本に生きる我々には、想像すらできないな。

    「珊瑚礁」
    ・・・その“地獄”を生き延びた人達が実在したの

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    2018年02月23日
  • 吉村昭の平家物語

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    「講談社少年少女古典文学館」シリーズに収録された『平家物語』のダイジェスト版です。

    著者自身が初めて『平家物語』を読んだのは中学3年生の夏のことで、同じ年代の読者に向けて書かれたものでしょうか。平明でありながら端正な日本語で、『平家物語』のあらすじをたどることができます。

    『平家物語』には多くの入門書や解説書、現代語訳やダイジェスト版などがありますが、個人的には『平家物語』の世界に触れるための最初の一冊として、優れた道案内になってくれるように思います。

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    2016年12月25日
  • わたしの流儀

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    エッセイ集。温厚な人柄がにじみ出ており、観察眼が鋭い。ユーモラスな話あり、胸にグッとくる話もあり、私にとっては非常に面白く一気読みした。著者のように歳を重ねたいものだと思う。

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    2016年12月20日
  • 星への旅

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    初期短編集
    表題作で太宰治賞をとっている

    「鉄橋」
    傲慢かつ臆病、ゆえに意味なく自分を試そうとしてしまう
    それも無駄に危険なシチュエーションで

    「少女架刑」
    人体標本としてボロボロに使いたおされながら
    誰にも感謝されない女の子

    「透明標本」
    人骨標本に美を追求する老人と
    永遠の架刑にのぞむ娘

    「石の微笑」
    意味のないものにだって美術的価値を見いだすことはできる
    しかし人間は

    「星への旅」
    集団自殺の旅になんとなくついてきてしまう少年
    臆病者と思われたくないがためだけに

    「白い道」
    空襲で街が焼けるなか
    人々は絆の空虚さに直面する

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    2016年11月15日