【感想・ネタバレ】新装版 落日の宴 勘定奉行川路聖謨(上)のレビュー

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Posted by ブクログ 2017年09月07日

主人公は川路聖謨。川路は幕末の幕府官僚であり、最高の地位である勘定奉行に上り詰めた人物。高邁・清貧、知的でそのくせユーモアのセンスも抜群な有能な人物だった。その彼の大仕事が、ロシアとの和親条約及び修好通商条約の締結。ロシア大使プチャーチンを相手に一歩も引かぬ姿勢は、当時の鎖国情勢の中でも情報収集に努...続きを読むめていたこと、そして開明的な発想と、上記の人格故。厳しい交渉をしつつもプチャーチンに尊敬された。川路聖謨というと、私には、手塚の漫画「陽だまりの樹」で漢方医と激しく対立しつつ種痘所を江戸に作ろうという主人公たちの側に大きな支援をした人物という認識だった。こんな有能な人がいたのかというのが驚き。しかしほんとかよ?と思ってしまうのがロシア人たちの凶暴性で、ある日フランス捕鯨船が日本に来た時に、役人たちが鎖国故追い払うと、血相を変えて怒り出す。ロシア人は安政の大地震による津波で船が壊れていたのだが、フランス船を拿捕、乗組員を殺し、乗っ取ろうとしていたという。川路たちも得体がしれなかったことだろう。

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Posted by ブクログ 2016年01月19日

勘定奉行 川路聖謨の生涯にわたる話である。幕末に生を受け、半生を主に日露和親条約の取り交わしの命を完うするためにプチャーチンらと命を厭わずに懸命に交渉を重ね、幕政に尽くした人物である。その人格は高く、今の外交官の模範となる静謐さと沈着冷静な判断力と物事の先を見抜く力を持った役人であった。これまでの...続きを読む吉村昭の小説の中で最も影響を受けた人物の一人である。墓所は、上野池之端の大正寺にある。

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Posted by ブクログ 2014年06月25日

「吉村昭の流儀」というような、精密で臨場感溢れる「旅の描写」により、川路聖謨の活躍した時代や場所へ引き込まれてしまう…
ロシアとの国交が拓かれた頃の物語だ…

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Posted by ブクログ 2022年09月24日

尊王攘夷の志士が主役の幕末。不甲斐ないと言われた幕府の官吏に焦点が当たる。長崎、下田でのロシアとの交渉。頑固過ぎるほどに法に固執し、とことんまで国益を主張する。一つ誤っていれば、間違いなく現代の国勢、そして世界地図も変わっていただろう。その後の展開もあったが、結果として日本という国は残り、植民地にも...続きを読むならなかった。脱法して、私腹を肥やし、国を売る、現代の「政商」達に届けたい。一方、美徳とされた倹約思想。受け継がれてしまった緊縮は今この国に牙を向いている。安政大地震。自然は歴史をどう変えたのか。下巻へ続く。

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Posted by ブクログ 2017年07月01日

幕末のロシア使節プチャーチンとの交渉記録を丹念に。
そんな交渉の場、下田で大地震・大津波があったことを知る。
いつか下田に行って見たいし、ここに出てきた町を自転車で巡って見たい。

交渉の詳細、外交官気質(当時はそういうものはなかったでしょうが)みたいなものが克明に記述されていて、自分とはまったく違...続きを読むうので、ひたすら感服。

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Posted by ブクログ 2016年05月13日

記録文学とは、こういうものかとの思いで読み進んだ。
幕末時代は、とかく倒幕側の人物ばかりに焦点が当たりがちだが、幕府側にも、その崩れかかる屋台骨を何とか支えたいと必死の思いで誠心努力する、優秀な幕吏がおり、もっと光を当てるべき人材がいるのではないか。
本作品の主人公川路聖謨は、その筆頭たる人物と言っ...続きを読むていい。
著者吉村昭が、彼を取り上げたのは、そのその豊かな人間性とともに、彼の中に、著者自身とも相照らす資質を見出したからではないか。
条約交渉をめぐる談判。この交渉経過を詳細に記した著者の取材の綿密さに、改めて畏敬の念を抱いた。
このような歴史上の偉大な人物に巡り会えることが、読書の喜びであり、醍醐味ともいえる。

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Posted by ブクログ 2015年08月17日

江戸幕府に交易と北辺の国境策定を迫るロシア使節のプチャーチンに一歩も譲らず、領土問題にあたっても誠実な粘り強さで主張を貫いて欧米列強の植民地支配から日本を守り抜いた川路聖謨。軽輩の身ながら勘定奉行に登りつめて国の行く末を占う折衝を任された川路に、幕吏の高い見識と豊かな人間味が光る。(親本は1996年...続きを読む刊、1999年文庫化、2014年新装版)

本書は、勘定奉行としての川路聖謨の事績を小説化したものである。内容の大半を、プチャーチンとの交渉が占める。幕末にロシア使節、プチャーチンが来航した事は知っていたが、どの様な交渉が行われていたのか、イマイチわからなかった。
本書を読むと、幕臣たちが幕末の外交交渉に苦心したことがわかる。国力の著しく劣る日本が、ネゴシエートにより、言うべきことは言い、妥協点を見出していく様は、読んでいて外交官になった気分(爽快感は無いが達成感はある)になる。
当時の史料として、川路の日記(東洋文庫から刊)があるが、取っつきにくい。事前に、本書を読んで置くと、理解が深まるのではないか。そういった意味でもオススメの一冊である。

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Posted by ブクログ 2015年08月06日

 幕末、日本が諸外国から開国を迫られた頃、ロシアのプチャーチンと、開港・通商・領土についての交渉をした勘定奉行・川路聖謨(としあきら)の存在の大きさを知った。
 明らかに軍備、近代化の遅れを目にしながらも、屈せず、粘り強い交渉力、そして人柄が豊か。才能ある者は身分に関わりなく、埋もれず出てくる養子制...続きを読む度が、努力を絶え間なく続けていくような、偉人を生み出していったのだろう。通史と呼ばれている通訳の実力も凄い。
 長崎か交渉舞台が下田となり、この交渉中に起きた安政大地震の甚大な被害など、グングンと内容に引き込まれていく。世界遺産となった韮山反射炉はこの地震に耐え得ていたり、冬の強い海風、戸田村でのロシア船修復など、沼津出身の私にとって、情景が浮かんでくる作品だった。
 

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