吉村昭のレビュー一覧

  • 零式戦闘機

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    神がかった性能を誇った零式戦闘機を通して、第二次世界大戦を描いた話。

    零戦を使い、最初は優勢に見えた米国との戦争だったが、その工業力にかなうはずもなく、どんどんつんでいく日本の様子が淡々と描かれている。

    最終的に零戦は特攻機として使われ、製造工場は地震と空襲でボロボロになり、その運命は哀れに思える。

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    2021年06月22日
  • 戦艦武蔵

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    詳細な下調べに基づく事実を順を追って記載しているのみであるが、だからこそ感じさせる異常性と虚無感がすごい。解説が絶妙に言い表している。

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    2021年06月10日
  • 関東大震災

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    大震災の記録が克明に書かれています。
    被害の詳細な数字、混乱の生々しい記憶などあまりにも具体的で身に迫る物を感じました。
    時代は変われど、受け継いでいかなければならない内容だと思いました。

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    2021年06月05日
  • 磔

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    著者の歴史小説の原点となる作品群。中でも「コロリ」がコロナ禍で起こりうる世相を予見していたかのよう。沼野玄昌、知りませんでした...。
    天狗党の悲哀を描いた「動く牙」もいい。時代を経ても人の本質は変わらないことを突きつける一冊。

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    2021年06月05日
  • 総員起シ

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    戦中戦後の恐怖、理不尽、悲哀を綴った短編5編。
    「海の柩」が一番刺さったが、他にも三船殉難事件を扱った「烏の浜」、伊号第三十三潜水艦を扱った標題作など良作が鎮座。戦争という不気味な怪物が生み出した事象は、極限下での状況を踏まえた意思決定の在り様について考えさせられた。

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    2021年05月04日
  • 海の史劇

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    ここまで調べ上げるのは物凄い労力だと思うが、この著者ならではとも思う。この本を読むと「坂の上の雲」「ポーツマスの旗」あたりを読み返したくなる。

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    2021年05月03日
  • 蜜蜂乱舞

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    共生というテーマ

    筆者のテーマ選びにはいつも感嘆させられる。物語はミツバチを通して、一貫して共に生きることを見つめているように思う。人もミツバチも一人で生きられはしない。そのことをミツバチの克明な生態を軸に、見事に浮かび上がらせている。

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    2021年05月01日
  • 零式戦闘機

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    零式戦闘機、いわゆるゼロ戦がその名を轟かせている理由がこのドキュメンタリーにより理解できる。その十数年前までは、欧米に学ぶしかなかった航空技術は、戦闘機を世界一の座に4年余りも君臨させた。戦争は技術を過激なまでに進歩させる。もちろん戦争に利用するものではないことは言うまでもない。特攻機の描写には戦慄が走った。戦争の愚かさ、事実を忘れてはならない。2021.4.30

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    2021年04月30日
  • 天に遊ぶ

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    吉村昭『天に遊ぶ』新潮文庫。

    吉村昭の21編を収録した掌編集。今どき文庫本で490円という価格はかなり珍しい。

    普通に生きる市井の人びとの様々な人生の場面を切り取り、背後にある過去と後悔をも描写してみせた味わい深い掌編が並ぶ。

    『鰭紙』。南部藩の庄屋だった家で見付かった古文書にはかつての飢饉の様子が描かれていた。明らかにしなくともよい歴史もある。

    『同居』。上手く行くと思われた縁談だったが、まさかの理由で破談に終わりそう。

    『頭蓋骨』。取材で北海道の漁師町を訪れた小説家は帰り道に思わぬ雨に途方に暮れる……

    『香奠袋』。頻繁に文壇の著名人の葬儀に姿を現す老女は香奠婆さんと呼ばれ、香典泥棒を疑われる。

    『お妾さん』。空襲の夜に見た孤独さを滲ませるお妾さんの姿。ひと昔前はお妾さんというのは当たり前のように居たように思う。

    『梅毒』。梅毒を患っていたと思われた水戸脱藩士の関鉄之介の日記を読み解くと……

    『西瓜』。離婚した元妻に突然呼び出された男の罪と戸惑い。

    『読経』。父親の葬儀で三十数年ぶりに再会した親戚の男に過去の記憶が甦る。

    『サーベル』。明治二十四年の大津事件でロシア皇太子をサーベルで斬り付け、国賊と呼ばれた津田巡査の末裔の百年に及ぶ苦悩。

    『居間』。伯父の訃報を知らされた伯母の反応に自らの夫婦生活を重ね合わせ、振り返る主人公。ちょっとしたイヤミスだ。

    『刑事部屋』。友人宅の強盗事件で、警察に呼ばれた主人公は……

    『自殺 ー獣医 (その一)』。肺癌を患い、余命幾ばくもない犬が……

    『心中 ー獣医 (その二)』。珍しい連作掌編。老女が犬と共に心中するが……

    『鯉のぼり』。戦時中。紺屋を営む祖父と二人で暮らす少年が交通事故で死亡する。空襲の最中にも空に翻る鯉のぼり。

    『芸術家』。温泉地でスナックを営む四十歳過ぎの女性は街に現れた小説家を名乗る男と財産を全て処分し、失踪する。やがて、岩手県の温泉地で女性は見付かるが……

    『カフェー』。友人が勧めてくれた敷島という煙草で思い出した過去の記憶。

    『鶴』。かつての同人誌仲間の死に際し……

    『紅葉』。山中の温泉宿で長期逗留していた友人の話。友人の隣部屋に泊まった男女の正体に……

    『偽刑事』。八丈島を取材で訪れた小説家は刑事と間違われるが……

    『観覧車』。束の間の父娘の時間。浮気を繰り返す男に愛想を尽かし、実家に帰った母娘。余りに酷い男の身勝手さ。

    『聖歌』。教会葬となった姉の葬儀にかつての姉の恋人が現れるが……

    本体価格490円
    ★★★★

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    2021年04月18日
  • 破獄

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    切り取り

    歴史って、人生って、こんな角度からも切り取れるんだ。筆者の作品は読むたびに気付かせてくれる。戦時下の状況を刑務所から眺めるという発想はこの本を読まなければ一生持たなかったと思う。

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    2021年04月11日
  • 少女架刑 吉村昭自選初期短篇集I

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    淡々と、出来事と人々を観察するように描かれていました。
    表題作と「死体」「喪服の夏」が好きです。
    逃れられない貧しさや家の柵。逃げ出してる女性もいたけれど、我慢して虐げられているのが、時代といえば時代だったのかな。読んでいて辛かったです。
    「喪服の夏」のおばあちゃんの最期の決意、胸にくるものがありました。それまでやってきたことから、この人物は好きではないけれど。
    「少女架刑」で、献体の料金(?)が安かったからと母親が遺骨を引き取らないのも酷い話だけど、その後の納骨堂の描写で、ああこういう家庭多かったのかな…って感じるのも悲惨です。亡くなって死体になってる女の子の目線で物語が語られるの、乙一さんでもあったけどこっちも凄まじかったです。

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    2021年04月04日
  • 冬の道 吉村昭自選中期短篇集

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    吉村昭『冬の道 吉村昭自選中期短篇集』中公文庫。

    吉村昭が中期に描いた短編の中から選りすぐりの10編の短編を収録。

    吉村昭と言えば、過去に埋もれ行く歴史の断片を描いた記録文学作品の他に、日本人の心を描いた一連の短編にも定評がある。『三陸海大岸津波』『関東大震災』『破獄』『羆嵐』『漂流』は前者で、後者の代表作は岩手県田野畑村を舞台にした『梅の蕾』だろう。『梅の蕾』は何度読んでも泣けてしまう。

    本作では刑務所の看守を題材にした短編と戦争に翻弄される家族の姿を描いた短編が収録されている。『梅の蕾』同様、極めて淡々とした洗練された文章が読み手の心を揺さぶる。

    『鳳仙花』。四季のうつろいと共に平穏に過ぎていく日常も普通の人には当たり前のこと。儚さと物悲しさが同居する吉村昭ならではの短編。刑務所の死刑囚たちを集めた句会。閉鎖された環境の中で僅かに感じる自然と四季のうつろい。櫛の歯が欠けるように少しずつ居なくなる句会の仲間。いつの間にか桜の季節は鳳仙花の季節に……

    『休暇』。主人公の男のアイロニー的な心の内を描いた短編。子持ちの女性と結婚した刑務所の看守の男。結婚式の前日に死刑執行の支え役を勝って出て一週間の特別休暇を得た男は新妻と子供と3人で新婚旅行を楽しむ。しかし、心の中を過るのは……

    他に『苺』『破魔矢』『黄水仙』『欠けた月』『冬の道』『飛行機雲』『鋏』『月下美人』を収録。

    本体価格840円
    ★★★★

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    2021年04月04日
  • 星への旅

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    タイトルからファンタジー的要素があるかと期待したのがバカだった。これまでの吉村昭だったことを読後に痛感した。なぜここまで詳細に深く描写するのか。その意図は多分実行に至るまでの気持ちの動きを追うことなのだろう。死んで星になるなんて甘いものではない。しかし、主人公のその瞬間の描写には痛みや苦痛かなく、淡々と客観的な心情が語られるのみ。思いとどまるきっかけを期待したが、思いとどまる理由がなかった。最後はそんなものかもしれないと納得するしかなかった。

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    2021年04月03日
  • 新装版 赤い人

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    ネタバレ

    囚人を通した北海道開拓史、いや、日本近代史。解説もすばらしい。ここまでひたすら事実に忠実に、そしてあまりリアルで残酷なストーリーな裏側に、冷徹な歴史を語る切り口は、読んでいて鳥肌もの。

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    2021年04月04日
  • 彰義隊

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    輪王寺宮の生涯を通して、明治維新を見る。
    徳川方という敗者の視点から見た歴史は、今までの話しとちょっと違って新鮮。
    40代で台湾で従軍中に病死というのも切ないものがあるが、その理由は理解できる。

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    2021年03月18日
  • 三陸海岸大津波

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    読むことをためらっていたけど、読んで良かった。決して感傷的ではなく、あくまで記録に忠実に被害の様相を記した「記録文学」。いまなら正常化バイアスという言葉で表される行動が、被害を大きく広げていた。髙山文彦氏が解説に書かれた「迷信は人を怠惰にする」の言葉が重い。

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    2021年03月06日
  • 陸奥爆沈

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    ドキュメントタッチの作品で、著者自身が取材を進めていく様が描かれている。旺盛な取材力で、この時期に後世に残してくれたのはありがたい。戦艦が、多種多様な人間を詰め込んだ容器と形容したのは慧眼。2021.3.6

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    2021年03月06日
  • 三陸海岸大津波

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    明治29年の大津波体験者にもインタビューを試みている貴重な記録本。執筆当時(1970年)は心強く思われたであろう宮古市田老地区(旧田老町)の大防潮堤も、2011年には津波を防ぎきれなかったのを見るにつけ、人間の想像力をはるかに越える自然の力を改めて思い知る。筆者が最後に警鐘を鳴らしていた通り、再び同じ悲劇が繰り返されてしまった…。夫が知ることのなかった東日本大震災の後、遺志を継いで執筆された津村節子さんの「三陸の海」も読んでみようと思う。

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    2021年03月05日
  • 関東大震災

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    震災の類型では、関東大震災は火災だと教えられる。また、「井戸に朝鮮人が毒を入れた」などといった流言から虐殺が行われたことも知識としては知っていた。しかし、本書を読むとそれ以上の酷いことが行われていた。また、震災直後の避難民が過ごした過酷な環境も想像を絶していた。読むのが辛い部分もあった。軍、警察、消防の通信インフラは脆弱で、東京が孤立することになった一因と思われた。現代では、通信インフラが完全にダウンすることはなくなった。しかし、SNSなどによるデマの拡散という悪い面も看過できなくなったのは皮肉なものだ。

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    2021年02月02日
  • 深海の使者

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    いつもながら著者の綿密な調査と淡々特にした筆致に、戦争体験者の執念と気迫を感じる。深海に没した潜水艦乗組員の過酷且つ惨憺たる状況を、活字を追いながら想像し艦員の心情に思いを馳せた。ドイツとの密なる関係も、歴史の小片だったが本書により実感を伴うものに上書きされた。日本国のために死力を尽くした英霊に心より敬意を表す。

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    2020年12月28日