吉村昭のレビュー一覧

  • 羆嵐

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    北海道で起きた、熊による襲撃事件を題材にした小説。情景描写や慣れない地区名などが多く、読み進めづらいところもあったけど、熊狩の名人・銀四郎が現れてからの展開がすごく面白かった。

    土地を開墾したはいいけど自然災害に見舞われたりという様子をみて、村、町ってこういう風にできていくんだなぁと今までなかった視点から考えられた。

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    2025年11月23日
  • 新装版 間宮林蔵

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    樺太が島であることを、初めて確認した人物。
    間宮林蔵が、類まれなる探検家だということは、知識にあった。
    しかし、その後、隠密として暗躍していたことは知らなかった。
    己の探究心、プライドのために生涯を捧げた林蔵。
    日本各地、そして、己の人生を颯爽と渡り歩いた。

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    2019年08月23日
  • ポーツマスの旗

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    講和条約締結に臨んでの日露それぞれの国情、駆け引きがリアルに伝わってきた。日清戦争と並べることが多いが後世への位置付けが大きく異なることも改めて認識できた。2019.8.2

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    2019年08月02日
  • 長英逃亡(下)

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    ネタバレ

    各所への逃亡を経て、江戸へ身を隠した長英は、自らの顔を焼き、ひとりの町医者として暮らすことを選ぶ。しかし逃げ続けることはついにできず、彼の家へ捕吏が踏み込み、殴殺されてしまうまでを描き切る下巻。
    様々な史料、伝説を勘案し、取捨選択することで生まれている説得力と、抑制的な筆致によって、全編に緊張感が漲っている。読み終えた後は、充実感とともに、空を見つめるしかないような大きな虚脱感も覚える。

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    2019年07月26日
  • 冷い夏、熱い夏

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    ネタバレ

    夜中に読み始めて、一気に読み終わった本
    お陰で目が腫れぼったい
    私たちの親に対する考え方は、はるかに城戸的なもので、人体が決して物体ではなく、主は安らぎを意味する
    50歳で死んだ弟の一年ほどの闘病過程を私吉村昭の視点から実のまま描いているのだが、それ自体は特に凄絶と言うほかない内容だ。苦痛にのたうち回る弟の姿にはいたたまれない思いがする

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    2019年08月17日
  • 海軍乙事件

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    海軍乙事件、甲事件、8人の戦犯、木口小平のシンデモラッパヲ、の4中編。
    全てが佳作良作。軍部の愚かさと戦犯の影と陰。

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    2019年06月23日
  • 新装版 赤い人

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    北海道樺戸集治監を舞台に労働力として押送された囚人達と看守達のドラマ、明治という時代にさまざまな思いが交錯する背景、細かな取材、さすが吉村昭
    ゴールデンカムイのモデルとなった人物も多数あり

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    2019年06月02日
  • 死顔

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    歴史小説とは異なった著者の短編集。「ク号遭難」がここに含まれてるのがよくわからないが、一貫して死生観をテーマにしたもの。近い人の死を間近に見てきた著者の想いがよくわかる。家族は強い共同体で例え兄弟であっても一線を画すもの。死顔は家族以外に覗かれたくないもの。2019.6.1

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    2019年06月01日
  • 新装版 海も暮れきる

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    尾崎放哉の人間として最低な後半生を描く。いや前半生も最低な人間だったことも、章内のところどころで描かれており、典型的な才能のある禄でもない人間の人生と末期の苦しみがこれでもかと描写される。

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    2019年05月24日
  • 新装版 消えた鼓動 ――心臓移植を追って

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    和田移植について以前読んだ『凍れる心臓』。他の人が書くとどんなことになるの?という興味から読んでみた。
    同著者の小説『神々の沈黙』の取材余話といった位置づけ。
    新聞記者のレアを求める目線と、小説家の人によりそう目線の違いが垣間見られる。

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    2019年02月11日
  • 透明標本 吉村昭自選初期短篇集II

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    吉村昭『透明標本 吉村昭自選初期短篇集II』中公文庫。

    全二巻からなる吉村昭の自選短編集の第二巻。後に記録文学の名手となる吉村昭の文学的出発点となった1961年から1966年に発表された初期短編7編を収録した短編集。

    第一巻では全面的に『死』をテーマに描かれていたが、第二巻では『死』から『生』へと傾き、『苦痛』というテーマに変貌しているようだ。作品全体に漂う重苦しい雰囲気はこの時代背景故なのか。

    『墓地の賑い』『透明標本』『電気機関車』『背中の鉄道』『煉瓦塀』『キトク』『星への旅』を収録。

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    2019年01月30日
  • 少女架刑 吉村昭自選初期短篇集I

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    吉村昭『少女架刑 吉村昭自選初期短篇集I 』中公文庫。

    全二巻からなる吉村昭の自選短編集の第一巻。後に記録文学の名手となる吉村昭の文学的出発点となった1952年から1960年に発表された初期短編7編を収録した短編集。表題作の『少女架刑』をはじめ幾つかの短編は既読であるが、それは遠い昔のこと。

    7つの短編を通して様々な『死』の姿が描かれているが、いずれの短編に描かれた『死』は現代よりも身近で敬虔な存在であり、著者にとって願わくは対峙したくない畏怖の対象となっているように感じる。

    『死体』『青い骨』『さよと僕たち』『鉄橋』『服喪の夏』『少女架刑』『星と葬礼』を収録。また、巻末にエッセイ『遠い

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    2019年01月29日
  • 長英逃亡(下)

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    綿密な調査で史実に基づいた作品。生涯のうちの僅か6年の短い期間の逃亡生活をスリルに満ちた長編に仕立てた。長英の強い意志はもとより、周囲の人が命懸けで支援する。友人はありがたい存在だ。追われる身で妻子と過ごせたのは信じ難いが、娘が吉原に売られる話は真実味があって暗澹たる気持ちになった。2019.1.22

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    2019年01月22日
  • 脱出

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    戦争に関する記録文学。
    戦争という現代の我々からすると非日常なできごとについて、描き方が上手い。死体などの「死」との対面については、丁寧な描き方がされており、ぐいぐいと引き込まれてしまう。

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    2019年01月19日
  • 総員起シ

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    ネタバレ

    終戦前後に起きた悲劇を題材とした5篇を収めた短篇集。
    残念なことにいずれも、現代では風化し、
    忘れ去られた事件になり下がっているようだが、
    それだけに衝撃的だった。
    とりわけ『海の柩』、『手首の記憶』、『総員起シ』の読後感は重かった。
    戦争とは、軍隊とは理不尽の塊であり、
    戦争に負けるとはこういう事なのだなあ。
    目頭が熱くなった。

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    2018年12月20日
  • 少女架刑 吉村昭自選初期短篇集I

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    吉村昭さんといえば、膨大な資料を基に綿密な背景と共にストーリーが進んでいくイメージが強かったけれど、初期短編集では死と隣り合わせた小品が七編。
    氏が肺の病で病床にいたことから、身体についての描写が細かい事に気付いた。この傾向は後々にも引き継がれていて、興味深い。

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    2019年01月12日
  • 陸奥爆沈

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    陸奥の爆沈原因の探求よりも、それを探るうちにドンドン出てくる明治から昭和にかけて海軍軍艦が起こした数々の爆発事件。その発生状況や原因および海軍内での処理方法が興味深い。

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    2018年11月28日
  • ニコライ遭難

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    超大国ロシアへの恐れと疑心暗鬼も相まって、その対応に四苦八苦する明治政府。欧米列強に対しても、国内世論に対しても、対応に四苦八苦するできたて政府の姿が哀れでもあり滑稽でもある。再演で観た、三谷幸喜脚本+東京ヴォードヴィルショー公演の「その場しのぎの男たち」は、まさにこの政府要人達の滑稽なまでの慌てふためきを描いている。
    芝居とは異なり、実際の当事者たちは日々蒼白だったに違いないことが本書を読むとよく分かる。それにしても登場人物がなんと多いことか。事件に関わった或いは関わらざるを得なかった人たちのその後が気になる。彼らは日露戦争中やその後の時代をどう生きたのだろう。

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    2018年11月22日
  • 東京の戦争

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    14歳から19歳にかけて戦争と終戦直後の混乱を体験した著者の個人的な回想記。

    作風は違うが色川武大の「怪しい来客簿」を思い出す。戦争をバックにして、虚無主義的な感覚が通底しているのだろう。

    空襲の焼け跡から電柱を掘り出して木材にする逞しさは、たぶん今の日本人だとないよなあ。電柱が木じゃないことを別にしても。

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    2018年11月05日
  • 冷い夏、熱い夏

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    癌に侵された弟が死に至るまでを見つめた「私」。余命一年の肺がんだと診断された後も弟には癌ではないと突き通す。兄弟が多い中幼少期からずっと親しく過ごしてきた弟への愛情が伝わり、彼が弱っていく姿を見るのはとてもつらかった。今や3人に1人が癌になる時代だ。広志のような境遇は珍しくないのだろう。人は皆死ぬ。しかし親しい家族がなくなること、それまで共に過ごしてきた思い出があることを考えると、やはり胸が苦しくなる。

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    2018年10月31日