吉村昭のレビュー一覧
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吉村昭『少女架刑 吉村昭自選初期短篇集I 』中公文庫。
全二巻からなる吉村昭の自選短編集の第一巻。後に記録文学の名手となる吉村昭の文学的出発点となった1952年から1960年に発表された初期短編7編を収録した短編集。表題作の『少女架刑』をはじめ幾つかの短編は既読であるが、それは遠い昔のこと。
7つの短編を通して様々な『死』の姿が描かれているが、いずれの短編に描かれた『死』は現代よりも身近で敬虔な存在であり、著者にとって願わくは対峙したくない畏怖の対象となっているように感じる。
『死体』『青い骨』『さよと僕たち』『鉄橋』『服喪の夏』『少女架刑』『星と葬礼』を収録。また、巻末にエッセイ『遠い -
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超大国ロシアへの恐れと疑心暗鬼も相まって、その対応に四苦八苦する明治政府。欧米列強に対しても、国内世論に対しても、対応に四苦八苦するできたて政府の姿が哀れでもあり滑稽でもある。再演で観た、三谷幸喜脚本+東京ヴォードヴィルショー公演の「その場しのぎの男たち」は、まさにこの政府要人達の滑稽なまでの慌てふためきを描いている。
芝居とは異なり、実際の当事者たちは日々蒼白だったに違いないことが本書を読むとよく分かる。それにしても登場人物がなんと多いことか。事件に関わった或いは関わらざるを得なかった人たちのその後が気になる。彼らは日露戦争中やその後の時代をどう生きたのだろう。