吉村昭のレビュー一覧

  • 海の史劇

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    ロシア側の視点を軸に、バルチック艦隊の進発から敗戦後のロジェストヴェンスキー提督のロシア側 帰還までが、筆者の入念なリサーチに基づいて丁寧に描かれている。(もちろん、古い作品なので、その後の新事実などは割り引いて考える必要はあるが)

    立ち位置だけではなく作風も含めて、『坂の上の雲』と対になる作品として、前後して読むと視野が広がると思う。

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    2020年11月23日
  • 冬の鷹

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    今から280年程前の江戸中期に刊行された「解体新書」に関わる人々の生涯と当時の社会情勢が記録映画ように綴られたお話し。

    原本であるオランダ語で書かれた「ターヘル・アナトミア」を翻訳した前野良沢とそれを刊行した杉田玄白のその後の両極的な人生の明暗が読み進めていく内にコントラストを強め、読み手の心を捕らえていく。

    個人が抱く矜持は人それぞれだが、前野良沢はそれに美しさを求め、杉田玄白は正しさを求めた。結果は歴史が証明したが、悔いのない人生であったのならば、それで良い。

    「解体新書」は、西洋科学(医学)書の日本最初の翻訳書と言われている。
    それまでは中国から伝わる文物が主流だったが、西洋科学の

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    2020年10月30日
  • 島抜け

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    恐ろしいほどのテンポの良さ、ぐいぐい読ませる展開、全く隙がない。司馬遼太郎なら途中で著者の感想が入るとこだね。

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    2020年10月18日
  • 空白の戦記

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    徹底した調査に基づく記録文学の短編。大自然との戦いを描いた「艦首切断」「顛覆」は圧巻! 「敵前逃亡」「太陽を見たい」でやるせない気持ちになり、「最後の特攻機」の不条理...。「軍艦と少年」は『戦艦武蔵』の後日譚。240頁ほどだが心にずんっとくるどれも素晴らしい作品。

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    2020年10月11日
  • 帽子

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    ままならない男女の仲、ふとした瞬間に生じる感情の揺れ、静かに広がる心中の波紋を、繊細に秘めやかに切り取ったような短編集です。
    吉村昭さんって骨太の歴史小説・記録文学のイメージが強かったのだけど、人間の感情の機微を、日常から瞬時に精巧に切り取る繊細な短編に、最近徐々に魅せられていっています。

    収録作品は全9編。表題作の「帽子」は珠玉の作品だと思います。
    癌に冒された妻を看病する夫。しかし、妻の死期は刻一刻と迫り、夫は妻のために帽子を買うが……

    死にゆく妻が夫と交わした二つの約束。そのいじらしさがたまらなく切なく、そしてクライマックスの運転のシーンの美しくも哀しい描写がまた素晴らしい。
    感情描

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    2020年09月29日
  • 新装版 赤い人

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    北海道開拓の歴史の片鱗を知ることができました。
    表舞台には出てこない美しくはない話ですが、事実としてそこにあったんだなと。
    そして、その人達が作った道を私達は今も通っているんだと畏怖の念をも抱きました。
    土地の厳しさ、囚人と看守につのる憎悪、またその個人の感情を動かす監獄の方針、それを動かす国、世の中の流れが連動して書かれていて面白かったです。

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    2020年09月21日
  • 総員起シ

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    前から気になってはいたものの、読んだことのなかった吉村昭。どこまで史実なのかわからない部分はあるものの、司馬遼太郎とか清武英利に似た感じだろうか、太平洋戦争の知らぬ歴史を興味深く読んだ。ドキュメンタリーや映画よりもよっぽど戦争の悲惨さや人間の浅ましさが心に響く小説であった。他の本も読んでみたい。

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    2020年08月31日
  • 大本営が震えた日

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    ネタバレ


    吉村昭作品に、どハマりした常連さんから
    とても良かったと熱弁されたので、早速


    太平洋戦争開戦直前

    12月8日開戦を指令した
    極秘命令書を積んだ旅客機「上海号」が行方不明になった

    空路から、敵地である
    中国に不時着した可能性が考えられる

    絶対に、敵軍に漏れてはならない命令書を巡って、大本営に激震が走る

    と、いう記録小説



    昭和16年に入ってから
    ドイツ、イタリアと三国同盟を結ぶ日本に対して
    米英両国から、在外資産凍結令をはじめとして、重要物資の対日輸出禁止まで発展する

    野村駐米大使による、日米交渉が始められるも、外交交渉は難航し
    遂に、ハル国務長官から
    「ハルノート」を提示

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    2020年08月22日
  • 大本営が震えた日

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    吉村昭作品を読むのは、戦艦武蔵についで2作品目になる。
    開戦に至るまでの様々な出来事が緻密かつ丹念な取材で書かれている記録文学の良書。
    作戦の全容は少数の首脳部しか承知していなかったにも関わらず、ここまでの大規模な国家プロジェクトが徹底した企図秘匿の基にすすめられたことは只々驚いた。
    択捉島単冠湾からハワイまで航行し大艦隊で奇襲攻撃するという一か八かの作戦を立てたこと自体、日本が追い込まれていたんだと思う。歴史にタラレバは無意味かもしれないが、奇襲戦法が成功したことは奇跡と言えるが、もし成功してなければ原爆の犠牲者も出なかったかもしれないと思うと複雑。いずれにせよ、戦争ほど悲惨なものはない。

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    2020年08月17日
  • 関東大震災

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    1923年9月1日に発生した関東大震災の発生~復興への動き出しまでを人々の体験談んを元に記したルポの様な作品。

    大地震の怖さは揺れによる家屋の倒壊に伴う圧死や津波だけでなく、火災・人心・その後の疫病など広く存在する事を認識した。都市インフラ等現在と異なる点も多いが、歴史から震災の脅威を知る事ができる良書。

    ・震災での死者数は圧死ではなく、間もなく発生した火災によるものが最多という。
    当時は木造建築中心、路面の狭さに加え家財を持ち出して避難する人が多く、家財により消防が行き届かず、また家財に火が燃え移り被害を拡大させた。

    ・震災の被害により電報・新聞その他通信手段が失われた中、人々の間では

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    2020年08月16日
  • 闇を裂く道

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    土木工事と自然について 東海道本線の丹那トンネルという難工事についての、職員の努力と地域の苦悩。吉村昭氏お得意の歴史的事業について。
    トンネルの難工事ぶりについて「高熱隧道」同様によく伝わる。それと同じ大問題が、地域の方々の渇水問題についてだ。工事によって渇水が引き起こされた地域であるが、当初は因果関係がわからないため、相手にされない。しかし明らかにそして異常に、水不足が進んでいく。
    現在、リニアの工事が進み、それにおいても静岡県とJRの対立が進んでいる。余所者としてはどうしてこんなにこじれているのかと思うが、その背景にはこの難工事があり、県は同じ被害を発生させたくないのだろう。
    自然を相手に

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    2025年12月28日
  • 殉国 陸軍二等兵比嘉真一

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    終戦から75回目の8.15を前に選んだのは筆者の数ある記録小説の一つ。勇躍出征、14歳少年兵の目を通した沖縄戦。その余りにも凄惨な戦場の生々しい描写には言葉を失います。祖父母も戦後世代であろう今の中学生にこそ知ってもらいたい、そして語り継いでほしい、戦争の真実。

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    2020年08月05日
  • 戦艦武蔵

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    2015年3月、マイクロソフトの共同創業者の故ポール・アレン氏の捜索プロジェクトチームが8年がかりで、シブヤン海底に眠る武蔵を発見した。本書を読みながら発見時のテレビの衝撃的な映像を思い出した。

    大和は海軍の施設である呉海軍工廠で造艦されたのに対して、武蔵は三菱重工長崎造船所という民間企業が造ったことは初めて知った。
    武蔵の起工から竣工までが造艦に関わる人間ドラマとともに完成するまでの過程が克明に記されており記録文学の傑作と言える名著だと思う。

    造船所から海軍に引き渡されるまでを前編、海軍が所有してから沈没までを後編として、最新の映像技術でぜひ映画にしてほしい作品。豪華キャストに実力派の監

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    2022年06月05日
  • 陸奥爆沈

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    ネタバレ

    詳細な調査により紡ぐ戦艦陸奥沈没の真相に迫る! まあ結局は真相には辿り着けないのだけれども、当時の構造的な問題を掘り下げる筆致は、そうなんじゃないか? と思わせる...。現代の人事施策にも当て嵌まる著者の提言のように思えてならない。

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    2020年08月01日
  • 新装版 赤い人

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    読み応えのある文章量で、なおかつ史実が詳細に記録された価値のある書籍だと思います。

    この書籍をおかずにご飯が3杯食べられるくらいに満足出来ますよ。

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    2020年07月10日
  • 夜明けの雷鳴 医師 高松凌雲

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    高松凌雲、現代ではあまり知らていない医師の伝記的小説。幕末における医学事情、江戸末期から明治初期の歴史小説としても面白い

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    2020年06月27日
  • 冬の鷹

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    著者はこういう前例のないものに挑む人間ドラマが本当に好きなんだろうな。他作品もそうだが、地道に愚直に自身の求めるものを深く掘り下げていく様は危うさが感じられるものの、まっすぐで清々しさがある。玄白や源内との対比でよりキャラが立ち、良沢が孤高の存在として際立つ。署名を固辞した後の2人の生活、人生遍歴も興味深い。

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    2020年06月02日
  • 桜田門外ノ変(下)

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    「これは映像になる」
    と、どなたかが感知して映画になったのかどうか
    2,3前に映画が完成しブレイクしいたのを思い出す
    たしかに読んでいて
    雪の霏々と舞う中の惨劇を絶えず思い浮かべてしまう小説

    日本史の勉強で
    「安政の大獄」1859年(安政6年)
    「桜田門外の変」 1860年(蔓延1年)
    と暗記した昔が懐かしい
    けれどもたった2行の年表事項、試験が終われば忘れてしまう

    その歴史的事実を忠実に吉村昭さんは小説になさった
    ルポルタージュでもない、創作でもない作品
    ましていわゆる時代小説でもない

    しかし
    感動を呼び起こし夢中にさせる筆力
    それはなんだろうなぁ、誠実な筆運びというのかな

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    2020年05月10日
  • ふぉん・しいほるとの娘(下)

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    シーボルトの娘「いね」の波乱の生涯
    あるいは
    女性自立ものがたり&教養小説
    とみてもいいのであるが

    事実上スパイだった医師シーボルトと遊女の間に生まれ
    江戸時代末期、女でありハーフがゆえに辛酸刻苦して
    女医第一号になったという
    それはそう強調してなくて淡々

    吉村さんの筆は
    末と維新後の歴史事実にものすごく詳細に詳細に
    書かれてあったので、その雰囲気にのまれた

    つまり、その裏打ちがあるからこそ
    おいねさんがぴかりと光った女性だったのね
    との読後感なのである

    なるほどね、思うには思うが

    すっかり維新前夜維新後の歴史事実に目を覚まされた
    そりゃそうでしょ、港にゃ、外国軍艦押し寄せ

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    2020年05月08日
  • ふぉん・しいほるとの娘(下)

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    幕末の激動の時代と「あいのこ」の数奇な人生と。この時代の女性ならではの苦労に思いを馳せ、生まれたばかりの我が子の幸多かれを心から祈る。

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    2020年04月13日