吉村昭のレビュー一覧

  • 長英逃亡(下)

    Posted by ブクログ

    綿密な調査で史実に基づいた作品。生涯のうちの僅か6年の短い期間の逃亡生活をスリルに満ちた長編に仕立てた。長英の強い意志はもとより、周囲の人が命懸けで支援する。友人はありがたい存在だ。追われる身で妻子と過ごせたのは信じ難いが、娘が吉原に売られる話は真実味があって暗澹たる気持ちになった。2019.1.22

    0
    2019年01月22日
  • 脱出

    Posted by ブクログ

    戦争に関する記録文学。
    戦争という現代の我々からすると非日常なできごとについて、描き方が上手い。死体などの「死」との対面については、丁寧な描き方がされており、ぐいぐいと引き込まれてしまう。

    0
    2019年01月19日
  • 総員起シ

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    終戦前後に起きた悲劇を題材とした5篇を収めた短篇集。
    残念なことにいずれも、現代では風化し、
    忘れ去られた事件になり下がっているようだが、
    それだけに衝撃的だった。
    とりわけ『海の柩』、『手首の記憶』、『総員起シ』の読後感は重かった。
    戦争とは、軍隊とは理不尽の塊であり、
    戦争に負けるとはこういう事なのだなあ。
    目頭が熱くなった。

    0
    2018年12月20日
  • 少女架刑 吉村昭自選初期短篇集I

    Posted by ブクログ

    吉村昭さんといえば、膨大な資料を基に綿密な背景と共にストーリーが進んでいくイメージが強かったけれど、初期短編集では死と隣り合わせた小品が七編。
    氏が肺の病で病床にいたことから、身体についての描写が細かい事に気付いた。この傾向は後々にも引き継がれていて、興味深い。

    0
    2019年01月12日
  • 陸奥爆沈

    Posted by ブクログ

    陸奥の爆沈原因の探求よりも、それを探るうちにドンドン出てくる明治から昭和にかけて海軍軍艦が起こした数々の爆発事件。その発生状況や原因および海軍内での処理方法が興味深い。

    0
    2018年11月28日
  • ニコライ遭難

    Posted by ブクログ

    超大国ロシアへの恐れと疑心暗鬼も相まって、その対応に四苦八苦する明治政府。欧米列強に対しても、国内世論に対しても、対応に四苦八苦するできたて政府の姿が哀れでもあり滑稽でもある。再演で観た、三谷幸喜脚本+東京ヴォードヴィルショー公演の「その場しのぎの男たち」は、まさにこの政府要人達の滑稽なまでの慌てふためきを描いている。
    芝居とは異なり、実際の当事者たちは日々蒼白だったに違いないことが本書を読むとよく分かる。それにしても登場人物がなんと多いことか。事件に関わった或いは関わらざるを得なかった人たちのその後が気になる。彼らは日露戦争中やその後の時代をどう生きたのだろう。

    0
    2018年11月22日
  • 東京の戦争

    Posted by ブクログ

    14歳から19歳にかけて戦争と終戦直後の混乱を体験した著者の個人的な回想記。

    作風は違うが色川武大の「怪しい来客簿」を思い出す。戦争をバックにして、虚無主義的な感覚が通底しているのだろう。

    空襲の焼け跡から電柱を掘り出して木材にする逞しさは、たぶん今の日本人だとないよなあ。電柱が木じゃないことを別にしても。

    0
    2018年11月05日
  • 冷い夏、熱い夏

    Posted by ブクログ

    癌に侵された弟が死に至るまでを見つめた「私」。余命一年の肺がんだと診断された後も弟には癌ではないと突き通す。兄弟が多い中幼少期からずっと親しく過ごしてきた弟への愛情が伝わり、彼が弱っていく姿を見るのはとてもつらかった。今や3人に1人が癌になる時代だ。広志のような境遇は珍しくないのだろう。人は皆死ぬ。しかし親しい家族がなくなること、それまで共に過ごしてきた思い出があることを考えると、やはり胸が苦しくなる。

    0
    2018年10月31日
  • 海軍乙事件

    Posted by ブクログ

    もともと海軍乙事件というものがあった事を知らなかった。
    これがあるからこそレイテ沖海戦などに大きな影響をあたえたんですね。

    0
    2018年10月27日
  • アメリカ彦蔵

    Posted by ブクログ

    漂流の果て、アメリカに辿り着き英語を習得して帰国した日本人はジョン万次郎が有名だが、その万次郎の帰国と入れ違うように、同じような運命を辿った播磨の漁師の子、彦蔵の物語である。永平丸という漁船で初漁に出るも台風に遭遇、運良くアメリカの捕鯨船に救助され13歳でアメリカに渡った彦蔵。当時、日本は未だ徳川幕府が支配しており、外国船が頻繁に現れはじめ攘夷の機運が高まった時期と重なり、海外渡航者の帰国は認められていなかった時代である。絶望の中、彦蔵は同時に救助された13人の水主たちを離れ、2人の仲間とアメリカ本土に向かう。そこで出会うアメリカ人たちは皆優しく、丁重に彼を取り扱ってくれている。当時は、すでに

    0
    2018年10月08日
  • 桜田門外ノ変(上)

    Posted by ブクログ

    歴史の教科書にも必ず載っている「桜田門外の変」という事件は、年号や事実だけが知られているが意外に、その背景までは理解されていないように思う。その背景とは、水戸藩による尊皇攘夷思想、そして当時の藩主であった水戸斉昭による幕政改革に対する反感という伏線があり、さらに将軍家定の世継問題の動きに対して、彦根藩主井伊直弼を筆頭とする紀州派と斉昭を中心とした一橋派の対立という構図である。

    しかし、著者はそうした政治的背景のみならず、彦根藩と水戸藩の間で起きた水上港運における積年のいさかいなどの描写も含め、特に水戸藩側からみた視点での怨恨が、読者にとってのそれであるような錯覚を覚えさせるかの如く描いている

    0
    2018年10月08日
  • 逃亡

    Posted by ブクログ

    ひとつの嘘を隠すために嘘を積み重ねていく男。
    戦時下、あらゆる物が不足している中で、海軍航空隊から逃亡を図る。
    紙面から伝わる緊迫感、焦慮、恐怖、苦悩。
    過酷な逃亡生活を克明に描き切った傑作。

    0
    2018年09月25日
  • 背中の勲章

    Posted by ブクログ

    「生きて虜囚の辱めを受くる勿れ」狂信的な軍律に縛られた一兵卒が過ごした4年半の俘虜生活を冷静に書き記す。戦闘で亡くなった人だけでなく、自ら命を絶った人が少なくない。帰国の輸送船で富士山を目にして海に飛込んだ人。戦争の悲惨さに息苦しくなる。題名が「背中の勲章」となってるが勲章ではないように思える。2018.9.3

    0
    2018年09月03日
  • 一家の主

    Posted by ブクログ

    肺病(結核)を患って肋骨を5本取った、会社員で小説家の主人公圭一と、これまた小説家の妻春子との、貧乏だけれども満ち足りた生活。

    1年に1回以上引っ越しをする圭一・春子夫婦は、お金もないのにアパートを転々とし、借金を繰り返しながら同人誌を出版するような生活をしている。一方で、仕事に関しては、結核上がりということもあって、最低限で細々と暮らしている。骨と死体ばかりをテーマにした小説ばかり書いている圭一だが、ある時、芥川賞候補に推薦されたという知らせが舞い込んでくる。

    結核上がりで奥さんも作家。これ吉村昭氏だよねえと読んでいるが、時代がよくわからないのと、他の吉村作品のようなぶん殴られるようなパ

    0
    2018年05月15日
  • プリズンの満月

    Posted by ブクログ

    戦後、戦争犯罪人が収容されていた巣鴨プリズン。
    戦勝国、アメリカから一方的に戦争犯罪人と言われ収容された者たち。
    敗戦国、日本としては従うしかない。
    だが、自分たちが何をしたのか、何故、収容されているのか分からない。
    徐々に処刑されていく者たち。
    残されていく者たちには、恐怖しか残らない。
    日本人を処刑する道具を日本人に作らせるアメリカ兵。
    作った者たちは、処刑されていく戦争犯罪人を見て徐々に狂っていく。
    全てが狂っていた時代だったのか。
    巣鴨プリズンの跡地は今、サンシャイン60として戦争犯罪人の墓石のように高々と聳えている。

    0
    2018年05月14日
  • 光る壁画

    Posted by ブクログ

    世界初となる胃カメラを作った男たちの記録。
    前例が無く、参考になるものが無い中でまったくの手探りの状態。
    失敗に失敗を重ね、それでも挫けることなく挑み続けた。
    挑み続ける姿は、格好良かった。
    これぞ、モノづくりニッポンの原点。

    0
    2018年05月08日
  • 桜田門外ノ変(下)

    Posted by ブクログ

    感想は上巻とほぼ同様なのだけど、事変に関しても現場から離れてみている関鉄之助の淡々とした記述であり、この徹底具合に驚いた。上巻でも書いた通り、これを情感たっぷりに書かれても何か違う気がして、この距離感だったからこそ、張り詰めた雰囲気が醸し出されているんではないかと思った。

    0
    2018年05月08日
  • 桜田門外ノ変(上)

    Posted by ブクログ

    感情移入を拒否するような淡々とした文章がちょっと退屈に感じる部分もあるが、価値観が全く異なる江戸時代の人間の感情を、現代の人に響くように描く事は無理なのかもしれなくて、そこに拘る事でわざとらしさが付きまとうのであれば、このような距離感のある文章だっていいのではないか、と思って読み進めた。

    この距離感のせいか、全体に対する記述内容の割合にも表れていると思うけど、主人公の考えや気持ちという事よりも、場所を移動する事に対する重みが今と全然違うなと思った。目的を達成するための移動に時間と体力がかかっている。私だったら耐えられない。そんな通信手段・移動手段が存在しない中で、しかも蟄居させられている主犯

    0
    2018年05月08日
  • 遠い日の戦争

    Posted by ブクログ

    戦争に勝てば英雄。
    負ければ戦争犯罪容疑者。
    そして、敗戦後、数年して空気が一変して戦争被害者へ。
    戦争とは、何なのか。
    戦争の為に国民を洗脳し、戦わせる。
    国と国が争って、負ければ個人へ責任を擦り付ける。
    こんなことがまかり通っていいのだろうか。
    こんなことに青春を奪われた若者が可哀想だ。

    0
    2018年05月04日
  • 三陸海岸大津波

    Posted by ブクログ

    歴史の継承 明治、昭和における三陸 津波の歴史。

    吉村氏らしい綿密な取材に基づいた作品。語り部もいなくなった明治・昭和の津波についてこれ以上無い記録と感じる。

    繰り返した歴史から、これ以上死者は出ないと綴っている。しかし3.11は発生した。いつも、想定以上は起こりうる。津波は忘れた頃にやってくる。歴史の継承が難しくなっている今、どう伝え、どう戦うのか。津波に限らず全ての事象に対する問いかけだ。

    0
    2025年12月28日