吉村昭のレビュー一覧

  • 関東大震災

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    大震災の記録が克明に書かれています。
    被害の詳細な数字、混乱の生々しい記憶などあまりにも具体的で身に迫る物を感じました。
    時代は変われど、受け継いでいかなければならない内容だと思いました。

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    2021年06月05日
  • 磔

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    著者の歴史小説の原点となる作品群。中でも「コロリ」がコロナ禍で起こりうる世相を予見していたかのよう。沼野玄昌、知りませんでした...。
    天狗党の悲哀を描いた「動く牙」もいい。時代を経ても人の本質は変わらないことを突きつける一冊。

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    2021年06月05日
  • 総員起シ

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    戦中戦後の恐怖、理不尽、悲哀を綴った短編5編。
    「海の柩」が一番刺さったが、他にも三船殉難事件を扱った「烏の浜」、伊号第三十三潜水艦を扱った標題作など良作が鎮座。戦争という不気味な怪物が生み出した事象は、極限下での状況を踏まえた意思決定の在り様について考えさせられた。

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    2021年05月04日
  • 海の史劇

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    ここまで調べ上げるのは物凄い労力だと思うが、この著者ならではとも思う。この本を読むと「坂の上の雲」「ポーツマスの旗」あたりを読み返したくなる。

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    2021年05月03日
  • 蜜蜂乱舞

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    共生というテーマ

    筆者のテーマ選びにはいつも感嘆させられる。物語はミツバチを通して、一貫して共に生きることを見つめているように思う。人もミツバチも一人で生きられはしない。そのことをミツバチの克明な生態を軸に、見事に浮かび上がらせている。

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    2021年05月01日
  • 零式戦闘機

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    零式戦闘機、いわゆるゼロ戦がその名を轟かせている理由がこのドキュメンタリーにより理解できる。その十数年前までは、欧米に学ぶしかなかった航空技術は、戦闘機を世界一の座に4年余りも君臨させた。戦争は技術を過激なまでに進歩させる。もちろん戦争に利用するものではないことは言うまでもない。特攻機の描写には戦慄が走った。戦争の愚かさ、事実を忘れてはならない。2021.4.30

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    2021年04月30日
  • 雪の花

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    江戸時代に流行した感染症である天然痘の予防接種に尽力した医師の話。

    医師は、西洋から伝わる予防接種を気味悪がる人々や漢方医術の医師からの妨害等、様々な障壁に立ち向かう。

    人が感染症に苦しめられる歴史は繰り返す。
    人を介して病気が拡散していく以上、それを封じ込めるのも人の考えや行動次第であるというのは、今も昔も変わらないということを思い知らされる。

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    2021年04月27日
  • 天に遊ぶ

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    吉村昭『天に遊ぶ』新潮文庫。

    吉村昭の21編を収録した掌編集。今どき文庫本で490円という価格はかなり珍しい。

    普通に生きる市井の人びとの様々な人生の場面を切り取り、背後にある過去と後悔をも描写してみせた味わい深い掌編が並ぶ。

    『鰭紙』。南部藩の庄屋だった家で見付かった古文書にはかつての飢饉の様子が描かれていた。明らかにしなくともよい歴史もある。

    『同居』。上手く行くと思われた縁談だったが、まさかの理由で破談に終わりそう。

    『頭蓋骨』。取材で北海道の漁師町を訪れた小説家は帰り道に思わぬ雨に途方に暮れる……

    『香奠袋』。頻繁に文壇の著名人の葬儀に姿を現す老女は香奠婆さんと呼ばれ、香典

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    2021年04月18日
  • 戦艦武蔵

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    ネタバレ

    太平洋戦争の最中、当時の技術を結集して作られた最強の戦艦武蔵の建造とその最後を描く。

    前半では、超機密裏のうち、多大なる資源、時間、労力が投入され、製造されていく武蔵が描かれている。
    その裏には巧みな機密保持工作や造船技術者の苦悩があった。

    武蔵は完成後、あまり実戦に出るチャンスが無く、最終的には米軍の航空隊と魚雷攻撃の集中砲火でコテンパンにやられて沈没する。

    前半で描かれていた機密保持や技術者の苦労は一体何だったのか…というほどのあっけない最後であり、なんとも言えない虚しさが残る。
    吉村氏特有の冷静で客観的な表現で描かれており、とても読みやすい。

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    2021年04月11日
  • 破獄

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    切り取り

    歴史って、人生って、こんな角度からも切り取れるんだ。筆者の作品は読むたびに気付かせてくれる。戦時下の状況を刑務所から眺めるという発想はこの本を読まなければ一生持たなかったと思う。

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    2021年04月11日
  • 少女架刑 吉村昭自選初期短篇集I

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    淡々と、出来事と人々を観察するように描かれていました。
    表題作と「死体」「喪服の夏」が好きです。
    逃れられない貧しさや家の柵。逃げ出してる女性もいたけれど、我慢して虐げられているのが、時代といえば時代だったのかな。読んでいて辛かったです。
    「喪服の夏」のおばあちゃんの最期の決意、胸にくるものがありました。それまでやってきたことから、この人物は好きではないけれど。
    「少女架刑」で、献体の料金(?)が安かったからと母親が遺骨を引き取らないのも酷い話だけど、その後の納骨堂の描写で、ああこういう家庭多かったのかな…って感じるのも悲惨です。亡くなって死体になってる女の子の目線で物語が語られるの、乙一さん

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    2021年04月04日
  • 冬の道 吉村昭自選中期短篇集

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    吉村昭『冬の道 吉村昭自選中期短篇集』中公文庫。

    吉村昭が中期に描いた短編の中から選りすぐりの10編の短編を収録。

    吉村昭と言えば、過去に埋もれ行く歴史の断片を描いた記録文学作品の他に、日本人の心を描いた一連の短編にも定評がある。『三陸海大岸津波』『関東大震災』『破獄』『羆嵐』『漂流』は前者で、後者の代表作は岩手県田野畑村を舞台にした『梅の蕾』だろう。『梅の蕾』は何度読んでも泣けてしまう。

    本作では刑務所の看守を題材にした短編と戦争に翻弄される家族の姿を描いた短編が収録されている。『梅の蕾』同様、極めて淡々とした洗練された文章が読み手の心を揺さぶる。

    『鳳仙花』。四季のうつろいと共に平

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    2021年04月04日
  • 星への旅

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    タイトルからファンタジー的要素があるかと期待したのがバカだった。これまでの吉村昭だったことを読後に痛感した。なぜここまで詳細に深く描写するのか。その意図は多分実行に至るまでの気持ちの動きを追うことなのだろう。死んで星になるなんて甘いものではない。しかし、主人公のその瞬間の描写には痛みや苦痛かなく、淡々と客観的な心情が語られるのみ。思いとどまるきっかけを期待したが、思いとどまる理由がなかった。最後はそんなものかもしれないと納得するしかなかった。

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    2021年04月03日
  • 新装版 赤い人

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    ネタバレ

    囚人を通した北海道開拓史、いや、日本近代史。解説もすばらしい。ここまでひたすら事実に忠実に、そしてあまりリアルで残酷なストーリーな裏側に、冷徹な歴史を語る切り口は、読んでいて鳥肌もの。

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    2021年04月04日
  • 彰義隊

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    輪王寺宮の生涯を通して、明治維新を見る。
    徳川方という敗者の視点から見た歴史は、今までの話しとちょっと違って新鮮。
    40代で台湾で従軍中に病死というのも切ないものがあるが、その理由は理解できる。

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    2021年03月18日
  • 三陸海岸大津波

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    読むことをためらっていたけど、読んで良かった。決して感傷的ではなく、あくまで記録に忠実に被害の様相を記した「記録文学」。いまなら正常化バイアスという言葉で表される行動が、被害を大きく広げていた。髙山文彦氏が解説に書かれた「迷信は人を怠惰にする」の言葉が重い。

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    2021年03月06日
  • 陸奥爆沈

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    ドキュメントタッチの作品で、著者自身が取材を進めていく様が描かれている。旺盛な取材力で、この時期に後世に残してくれたのはありがたい。戦艦が、多種多様な人間を詰め込んだ容器と形容したのは慧眼。2021.3.6

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    2021年03月06日
  • 三陸海岸大津波

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    明治29年の大津波体験者にもインタビューを試みている貴重な記録本。執筆当時(1970年)は心強く思われたであろう宮古市田老地区(旧田老町)の大防潮堤も、2011年には津波を防ぎきれなかったのを見るにつけ、人間の想像力をはるかに越える自然の力を改めて思い知る。筆者が最後に警鐘を鳴らしていた通り、再び同じ悲劇が繰り返されてしまった…。夫が知ることのなかった東日本大震災の後、遺志を継いで執筆された津村節子さんの「三陸の海」も読んでみようと思う。

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    2021年03月05日
  • 関東大震災

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    震災の類型では、関東大震災は火災だと教えられる。また、「井戸に朝鮮人が毒を入れた」などといった流言から虐殺が行われたことも知識としては知っていた。しかし、本書を読むとそれ以上の酷いことが行われていた。また、震災直後の避難民が過ごした過酷な環境も想像を絶していた。読むのが辛い部分もあった。軍、警察、消防の通信インフラは脆弱で、東京が孤立することになった一因と思われた。現代では、通信インフラが完全にダウンすることはなくなった。しかし、SNSなどによるデマの拡散という悪い面も看過できなくなったのは皮肉なものだ。

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    2021年02月02日
  • 長英逃亡(下)

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    非常に面白く、細部まで圧倒される力が注がれた作品だった。
    根を込めて読んだ事もあり、長英の目線でoneショットカメラ的に彼の人間的なものを共有して行った想い。

    当所は「インテリ特有の不遜傲岸」さが有れども、長い逃避行の裡に、下賤問わず(たいていは裕福な医師や商人だったが)人に触れて、温もりへの謝意に溢れて行った日々。それでも晩年では「世話になり続けたことへの卑屈な感情の高まり」は押し殺せず、拗ねた思いになったことも有ったろう。

    驚のは毎度の事、筆者の考え・・どこまで資料が有ったのか!
    例えば、捕縛のきっかけとなった男・・良く「身内に気をつけろ」というものの、アリ得る設定。
    一番納得がいくの

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    2021年01月24日