吉村昭のレビュー一覧
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「吉村昭」のノンフィクション作品『零式戦闘機』を読みました。
『東京の下町』、『歴史の影絵』に続き「吉村昭」作品です。
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日本が誇った名機を通して戦争の本質を抉り出した記録文学の大傑作。
昭和十五年=紀元二六〇〇年を記念し、その末尾の「0」をとって、零式艦上戦闘機と命名され、ゼロ戦とも通称される精鋭機が誕生した。
だが、当時の航空機の概念を越えた画期的な戦闘機も、太平洋戦争の盛衰と軌を一にするように、外国機に対して性能の限界をみせてゆき……。
機体開発から戦場での悲運までを、設計者、技師、操縦者の奮闘と哀歓とともに綴った記録文学の大巨編。
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日本が世界に誇る傑作機で、当時の航空機の概念を超えた画期的な戦闘機… その無類の能力により敵国のパイロットを恐怖に陥れた零式艦上戦闘機(ゼロ戦)の隆盛を通じて、日中戦争(重慶爆撃)から太平洋戦争における日本の緒戦の勝利、そして終焉(敗北)までの軌跡を冷静な筆致で描いた作品です。
ゼロ戦が長距離飛行能力と格闘能力に優れた精鋭機であり、傑作機であることは知っていましたが… 初期の戦果が、ここまで凄まじかったとは知りませんでしたね、、、
もちろんパイロットの技量も優れていたのでしょうが、ゼロ戦があったからこそ、そのスキルを存分に発揮することができたんでしょうね。
読み進むにつれて、太平洋戦争が日本にとって勝ち目の無い戦いだったことにに改めて気付かされました… そして、本作品の素晴らしさは、「堀越二郎」等の三菱重工業で設計や開発に携わった技師たちや実際の戦闘に携わった兵士たちだけでなく、三菱重工業名古屋航空製作所で厳しい労働環境の下で製造に携わった勤労学生等の市井の人々を描いていることだと思います、、、
敗戦前年の大震災や空襲による甚大な被害状況や、牛や馬を使って各務原飛行場への輸送等… 戦闘場面以上に印象に残る場面でしたね。
ゼロ戦を描いた秀作だと思います。 -
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ネタバレ面白かったです。 映画で203高地とか日本海海戦とか観ていますがこの本を読むと又印象が変わりました。 特に変わったところは①乃木大将の駄目さ。 自分や部下の士官を可愛がる?のか臆病なのか前線に出ていないから現状認識が出来ない結果有効な手を打てず兵力を無駄に消耗させてしまった。(戦死した兵隊さんは犬死と言わざるを得ない。)児玉源太郎が戦地に来てその光景を目の当たりにしたら激怒するのも無理はない。②ロシア海軍の航海能力の凄さ。日本海海戦であっけなく負けたように思ったいたが、遥々ロシアからアフリカ大陸を回って日本海まで航海したのは素晴らしい。今の時代では原子力を使えば燃料に不安はないがあの時代は食料、水、石炭を補給しつつ7ヶ月掛けての大航海は凄い。公開中の乗組員の不満や夜間の奇襲、エアコンなんてない気象条件が悪い中での航海。
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米村万里さんの書評がきっかけで読んでみた一冊。
恥ずかしながら、小村寿太郎という名前もポーツマス条約という名詞も「教科書に載ってたなぁ」くらいの記憶しかなかったけれど、こんなにも熾烈な駆け引きがあったとことが授業で教えられていたら興味の持ち方が違ったと思いました。
当時の外交、戦争、政治がどのようなものだったのか、垣間見ることができる良作。
果たして現代日本の政治家に、これほどの熱量があるのだろうかと改めて疑問を抱いてみたりもしました。
ポーツマス条約における小村氏の功績だけでなく、家庭人としてのダメっぷりも記されているのが本作の面白さ。
決して教科書っぽくならず、小説として楽しめる理由の1つはここにあるのでしょう。
これまであまり歴史小説は読んできませんでしたが、
戦争や人種差別に強い関心が出てきたのもあってか、近代歴史小説にはハマる予感がします。
2020年55冊目。 -
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江戸末期に長崎の出島にやってきたドイツ人医師シーボルト。当時の鎖国政策を掻い潜るため、オランダ人と偽って入国活動する。医師として、日本の医術の発展に貢献する一方で、オランダからの指示で日本の国情、地理、経済などを報告するいわば産業スパイのような一面もあった。これが元で日本を追放になる。出島に出入りさせていた遊女を妊娠させ、女児をもうけるわけだが、本書は妻となった女性と、その娘の物語。当時、外国人の子を産んだ女性やハーフの女子がどんな目で見られていたかを想像するととても切ない。男尊女卑の時勢であったとはいえ、この二人の女性のたどった運命を読み進めると、男の身勝手な行動に憤りを感じる。いつの世も、他者に対する配慮、思いやりを持ちたいと思う。
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「吉村昭」が太平洋戦争開戦前夜を描いたドキュメント作品『大本営が震えた日』を読みました。
『戦史の証言者たち』に続き「吉村昭」作品です。
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開戦を指令した極秘命令書の敵中紛失、南下輸送船団の隠密作戦。
太平洋戦争開戦前夜に大本営を震撼させた恐るべき事件の全容――。
昭和16年12月1日午後5時すぎ、大本営はDC3型旅客機「上海号」が行方不明になったとの報告を受けて、大恐慌に陥った。
機内には12月8日開戦を指令した極秘命令書が積まれており、空路から判断して敵地中国に不時着遭難した可能性が強い。
もし、その命令書が敵軍に渡れば、国運を賭した一大奇襲作戦が水泡に帰する。
太平洋戦争開戦前夜、大本営を震撼させた、緊迫のドキュメント。
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昭和16年11月から12月8日までの太平洋戦争開戦に関するエピソードを集め以下の構成でドキュメントした作品です。
■上海号に乗っていたもの
■開戦司令書は敵地に
■杉坂少佐の生死
■墜落機の中の生存者
■意外な友軍の行動
■敵地をさまよう二人
■斬首された杉坂少佐
■イギリス司令部一電文の衝撃
■郵船「竜田丸」の非常航海
■南方派遣作戦の前夜
■開戦前夜の隠密船団
■宣戦布告前日の戦闘開始
■タイ進駐の賭け
■ピブン首相の失踪
■失敗した辻参謀の謀略
■北辺の隠密艦隊
■真珠湾情報蒐集
■「新高山登レ一二〇八」
■これは演習ではない
■あとがき
■解説 泉三太郎
中心となっているのは、昭和16年12月1日に発生した上海号不時着事件、、、
香港攻略や南方作戦に関する作戦命令書を持った「杉坂共之陸軍少佐」や暗号書を持った「久野寅平陸軍曹長」が搭乗した旅客機「上海号」が中国軍勢力範囲の山岳地帯に不時着し、作戦命令書や暗号書等の軍事機密書類が敵(中国)側に渡るのを恐れた日本軍の行動や「上海号」から脱出した「杉坂少佐」や「久野曹長」の逃避行が描かれています。
軍事機密書類が敵の手に渡れば、これまで極秘裏に準備を進め、既に後戻りできないところまできているマレー半島上陸作戦、真珠湾奇襲作戦が明らかとなり、緒戦での勝利は覚束なくなることから、大本営を始め、関係者が震撼した事件です。
ノンフィクションであることを忘れそうになるような冒険小説さながらの展開には驚かされましたね。
また、太平洋戦争の開戦って、真珠湾攻撃ばかりが注目されがちですが、、、
本作品では真珠湾に向かった聯合艦隊ばかりではなく、同時に行われた陸軍によるマレー半島への上陸作戦についても詳しく触れられており、
○12月7日には、既に戦闘(戦争)が始まっていたことや、
○マレー半島への上陸時、荒天により上陸用舟艇への乗り込みにおいて死者を出していたことや、
○事前にタイとの交渉によりタイ国内を通過できる予定が、「ピブン首相」の失踪により調整が遅れ、タイ国軍や警察との間に武力衝突が発生したこと 等
初めて知ったことも多かったですね。
マレー半島上陸作戦と真珠湾奇襲作戦を描いた名著だと思います。
決して戦争を美化することのない、
「庶民の驚きは大きかった。
かれらは、だれ一人として戦争発生を知らなかった。
知っていたのは、極くかぎられたわずかな作戦関係担当の高級軍人だけであった。
陸海軍人230万、一般人80万のおびただしい死者をのみこんだ恐るべき太平洋戦争は、こんな風にしてはじまった。
しかも、それは庶民の知らぬうちにひそかに企画され、そして発生したのだ。」
という著者の言葉が印象的だし、太平洋戦争の本質を表していると感じましたね。
決して忘れてはならない歴史だと思います。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ昭和十六年十二月一日皇居内東一の間で開かれた御前会議において、十二月八日対英米蘭開戦の断を天皇が下してから戦端を開くに至るまでの一週間、陸海空軍第一線部隊の極秘行動のすべてを、事実に基づいて再現してみせた作品。
8月は意識して先の大戦に関する書籍を手にしてきましたが、そんな私の開戦のイメージは真珠湾への奇襲攻撃。
それはあくまでも日本が戦争を始めた瞬間であって、奇襲攻撃を仕掛けるにあたり作戦や準備も含め入念に計画され、準備を行なってきたという事実を改めて痛感させられました。
ハルノートによって開戦一択となったようなイメージをぼんやりと持っていましたが、それはまさに最後通牒でしか無く、軍部ではそれ以前から開戦に向けた準備を行なっていたということなんでしょう。
そして、無知故に私自身のイメージとして真珠湾(海軍)から始まったと思っていた認識は半分しか当たっておらず、同時並行でマレー半島への奇襲攻撃(陸軍)があったことを知りました。
真珠湾、ミッドウェイ、レイテ島、特攻、沖縄戦に本土空襲、原爆投下...
戦時中ではなく、日本が戦争をすると決めた時から開戦までの1週間。
そこで何が行われ、何を行っていたのか。
タイトルである「大本営が震えた日」とは、極秘にすすめられてきた開戦に向けた準備の証拠が敵側に渡ったかもしれないという緊張感。
一部の軍上層部の苦悩を描いた作品。
最前線で戦った多くの兵士には開戦の直前まで知らされなかった事実。
そして多くの国民は日本が戦争を始めたことを大本営発表のラジオにて知ることに。
軍人約230万、民間人約80万もの犠牲者を出した大戦はこのようにして始まった。
説明
内容紹介
開戦を指令した極秘命令書の敵中紛失、南下輸送船団の隠密作戦。太平洋戦争開戦前夜に大本営を震撼させた恐るべき事件の全容――。
内容(「BOOK」データベースより)
昭和16年12月1日午後5時すぎ、大本営はDC3型旅客機「上海号」が行方不明になったとの報告を受けて、大恐慌に陥った。機内には12月8日開戦を指令した極秘命令書が積まれており、空路から判断して敵地中国に不時着遭難した可能性が強い。もし、その命令書が敵軍に渡れば、国運を賭した一大奇襲作戦が水泡に帰する。太平洋戦争開戦前夜、大本営を震撼させた、緊迫のドキュメント。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
吉村/昭
1927(昭和2)年、東京日暮里生れ。学習院大学中退。’66年『星への旅』で太宰治賞を受賞。その後、ドキュメント作品に新境地を拓き、『戦艦武蔵』等で菊池寛賞を受賞。以来、多彩な長編小説を次々に発表。周到な取材と緻密な構成には定評がある。芸術院会員。主な作品に、『破獄』(読売文学賞)、『冷い夏、熱い夏』(毎日芸術賞)、『天狗争乱』(大仏次郎賞)等がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) -
Posted by ブクログ
ネタバレ毎年、この時期には先の大戦に関する書籍を意識して手にするようにしていますが、そんな中で終戦記念日に読み終えた一冊です。
今までは戦争中の悲惨な出来事を描いた作品を手にしてきましたが、本作は戦争終盤から始まり、主に描かれるのは戦後の戦争裁判。
主人公の琢也はまさに終戦となったその日、B29に搭乗していたアメリカ兵(捕虜)を斬首により処刑した。
本土決戦が現実味を帯びた戦争末期、本土に降り注ぐ爆弾、焼夷弾により国土は焼かれ、多くの人々が命を落とし、傷を負い、住むところも失った。
まさに民間人を狙った無差別な空襲。
実際にそれを行なっていたアメリカ兵に対し、敵討ちともいえる処刑は残念ながらその当時ある意味で当然のことのように思われることであろう。
そして迎えた終戦。
GHQによる統治と共に始まった戦争裁判。
そこから始まる琢也の逃亡劇。
私が生まれ育った街も舞台に登場し、息詰まる緊張感、人々の心の変化をリアルに感じることが出来ました。
本作で描かれた全てが史実ではないかも知れませんが、今までとは違った意味で私の心に刻まれる一冊になるでしょう。
今もウクライナをはじめ、戦争が行われている事実。
哀しき歴史が今も刻まれ続けていることから目を背けずに改めて戦争と平和について考えたいと思います。
説明
終戦の詔勅が下った昭和20年8月15日、福岡の西部軍司令部の防空情報主任・清原琢也は、米兵捕虜を処刑した。無差別空襲により家族を失った日本人すべての意志の代行であるとも彼には思えた。だが、敗戦はすべての価値観を逆転させた。戦犯として断罪され、日本人の恥と罵られる中、暗く怯えに満ちた戦後の逃亡の日々が始まる――。戦争犯罪を問い、戦後日本の歪みを抉る力作長編。 -
Posted by ブクログ
舞台は明治初頭、ほぼ開拓の進んでいない北海道に送り込まれた囚人らが、あまりに過酷な環境で土地を開拓していく様子が、ひたすらリアルに残酷に記された一冊。
当初は「赤い人」というタイトルから共産党員系の話かと思ったら、そんなことはなかった。
とにかくこの本を読むと、西欧列強に追いつこうと奮起していた当時の日本が、いかに基本的人権に対する意識が薄かったかが伺える。
特に鉱山に送られた囚人たちの末路が酷く、文字で目にするだけでも恐ろしい。
明治中期〜後期にかけての大罪人の多くは北海道の監獄に送られているので、「あいつも北海道にいたのか!」という発見も楽しめた。
内容の4割が脱走関連、3割が劣悪すぎる環境に関する描写で、正直これどう収集つけるんだ…と感じていた頃に、価値観の変化を感じさせる「時代の波」が押し寄せてきて、諸行無常を感じてしまった。
時代が求めていたものは当初「必要」であっても、いつしかその多くは「必要悪」となり、最終的には「不要」となってしまうのが世の常なのだろうか。