あらすじ
透徹した視線、研ぎ澄まされた文体、凝縮されたイメージ――重厚な歴史小説で知られる一方、短篇を数多く残した吉村昭。その全盛期とも言える『戦艦武蔵』以降、昭和後期までの「中期」に書かれた作品群から、吉村文学の結晶たる十篇を収録。
「吉村昭は刺激的で、とても現代的で、いまなお読者を圧倒する力をもつ」池上冬樹(編者解説より)
※収録作品
鳳仙花
休暇
苺
破魔矢
黄水仙
欠けた月
冬の道
飛行機雲
鋏
月下美人
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
・あらすじ
吉村昭の中期短編集10篇。
・感想
どれも面白かった!
「鳳仙花」「休暇」「苺」「鋏」はどれも刑務官や篤志家(と言っていいのかな?服役中の受刑者を社会的に支える人たち)の話。
この中だと特に「休暇」が重たかったかも…。
鋏に出てくる片桐も不気味な印象があったな。
なにあいつ、慇懃無礼なのかよくわからん。
「無期刑を受けた犯罪者」という事実が余計に不気味さを醸し出してた。
あんなやつ一刻も早く追い出したくなるよw
「同情心を持たず一線引きつつも冷徹な視線で物事を観察する語り手」は読んでてストレスなくていい。
吉村先生のお父さん三部作は時代を感じたw
明治〜昭和初期の人間だもんな。
今からたった100年前なのにこんなに社会も国民性も変わるんだなーと感慨深い。
こんな父親からよくもまぁ立派な息子たちができたもんだわ。
戦中戦後の社会の様子なども知れるので興味深く読んだ。
そして巻末の編集者である池上冬樹の解説も面白かった。
私はシーラッハも好きなんだけど、解説で吉村昭先生とシーラッハの相似点を指摘してて得心した。
確かにこの二人は似てるわー。
現代小説を「ストレートに感情を描き、時に厚く塗絵をして共感を呼ぶことを第一義とした小説」という解説にも納得。
これでもか、というほどに一方的に押し付けて共感させようとする押し付けがましい作品が多くて最近の作品は読めなくなってしまった。
「感情を描かず、共感という媚びなど一ミリもない吉村昭の硬質な文学」がなんとも心地いんだよなぁ。
Posted by ブクログ
吉村さんの中期短編集。
いずれも引き込まれるが、ホラーでもないのに冷ややかになる『苺』や『鋏』は流石。落ちが似ているのは残念だけど。
Posted by ブクログ
吉村昭『冬の道 吉村昭自選中期短篇集』中公文庫。
吉村昭が中期に描いた短編の中から選りすぐりの10編の短編を収録。
吉村昭と言えば、過去に埋もれ行く歴史の断片を描いた記録文学作品の他に、日本人の心を描いた一連の短編にも定評がある。『三陸海大岸津波』『関東大震災』『破獄』『羆嵐』『漂流』は前者で、後者の代表作は岩手県田野畑村を舞台にした『梅の蕾』だろう。『梅の蕾』は何度読んでも泣けてしまう。
本作では刑務所の看守を題材にした短編と戦争に翻弄される家族の姿を描いた短編が収録されている。『梅の蕾』同様、極めて淡々とした洗練された文章が読み手の心を揺さぶる。
『鳳仙花』。四季のうつろいと共に平穏に過ぎていく日常も普通の人には当たり前のこと。儚さと物悲しさが同居する吉村昭ならではの短編。刑務所の死刑囚たちを集めた句会。閉鎖された環境の中で僅かに感じる自然と四季のうつろい。櫛の歯が欠けるように少しずつ居なくなる句会の仲間。いつの間にか桜の季節は鳳仙花の季節に……
『休暇』。主人公の男のアイロニー的な心の内を描いた短編。子持ちの女性と結婚した刑務所の看守の男。結婚式の前日に死刑執行の支え役を勝って出て一週間の特別休暇を得た男は新妻と子供と3人で新婚旅行を楽しむ。しかし、心の中を過るのは……
他に『苺』『破魔矢』『黄水仙』『欠けた月』『冬の道』『飛行機雲』『鋏』『月下美人』を収録。
本体価格840円
★★★★