吉村昭のレビュー一覧

  • 雪の花

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     幕末、予防法のなかった天然痘に立ち向かった福井藩の町医・笠原良策の闘いを描いた作品。
     今では当たり前になっている予防接種。江戸時代は鎖国政策もあり、東洋医学が中心であり、西洋医学への理解はなかなか進まなかった。そのため、西洋から持ち込まれた種痘を体内に入れるという考え方は、人々の恐怖心を煽り、なかなか浸透しなかった。
     鎖国下の唯一の貿易港・長崎から福井まで、どのように種痘を運ぶか、藩の理解をどのように得るか、人々にはどうすればわかってもらえるのか。そうした内容が描かれていて、学校の授業では決して教わらないが、天然痘と闘った一人の人間の生き様は非常に興味深く、大切なことを教わることができる

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    2025年05月11日
  • 漂流

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    文献を読み漁り、現地に赴き書き上げる吉村さんのノンフィクション小説は、細部にまでリアリティがあり、ゆえに没読してしまう。
    この「漂流」でも、無人島で12年も生き抜いた男が感じる匂いや痛みまでも伝わってくる。

    「熊嵐」にも感じた、この五感が牛耳られる感覚が私は好き。
    タイトル買いの私だが、吉村著書は読破したい。

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    2025年04月30日
  • 関東大震災

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    ネタバレ


    恐ろしい本でした。描写が時系列で丁寧にまとめられ読みやすかった分、凄惨な場面は読んでて不安や悲壮感を強く駆り立てられました。
    地震は圧死よりその後の火事で多くの人が亡くなると聞いた事がありましたが、避難時に持ち出した家財などが更なる延焼の起因なってたのは勉強になりました。
    また流言がまるで事実かのように報道され、朝鮮の方など多くの方が亡くなられたのは本当に悲しくなりました。視野狭窄になってるとは言え、排他的行為で簡単に殺人までしてしまう人間の愚かさに更なる震災の恐ろしさを感じました。
    震災で亡くなられた方々にお悔やみ申し上げます。

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    2025年04月19日
  • 大黒屋光太夫(下)

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    大黒屋光太夫は、ロシアの女帝エカテリナに拝謁し、ついに帰国する事になる。日本との通商開始を希望するロシア政府の意向を受け、光太夫はロシアで歓待され、また多くのロシア人からの助けを受けて、奇跡的な帰国となったのである
    ロシアとの現在の状況をみるとき、この光太夫の歴史は、振り返る必要があるのではないだろうか。

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    2025年04月03日
  • 蚤と爆弾

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    フィクションのようになっているが、ノンフィクションだった。関東軍防疫給水部は731部隊で、曽根二郎は実在の軍医らしい。ペスト菌の蚤を風船に乗せアメリカに飛ばすという発想が怖い、凄い。戦争はやはり異常だ。

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    2025年03月20日
  • 新装版 白い航跡(下)

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    高木兼寛は海軍に脚気が多いことを気に病み調査をしたところ白米中心の食事が原因であると推察した。食事の因果をはっきりさせるために軍に麦飯を導入し比較するよう進言するも白米という贅沢品をやめることに抵抗があった海軍はなかなか承諾しない。兼寛は明治天皇にまで提言し艦艇筑波にて実験を行うことができ白米が脚気の原因であることを突き止める。しかし森林太郎を中心とする帝国大学医学部界隈はドイツ医学の流れをくみ脚気は細菌によるものであると説を立て兼寛の説と対立する。帝国大学医学部出身者が多かった陸軍では依然白米が食事の中心としており、日清戦争・日露戦争では多くの脚気患者を出す一方で兼寛の説を受け入れた海軍では

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    2025年03月13日
  • 新装版 間宮林蔵

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    間宮海峡(タタール海峡)の名で知られる、間宮林蔵の知られざる生涯を描いた小説。前半はロシアの脅威から蝦夷地をはじめとした北方の防御を強める幕府の意向を受け、樺太からさらに海を渡ってアムール河口付近も探査するなど、冒険家としての未踏地帯を踏破していくサバイバル活劇となっている。後半は幕府の隠密として各藩の内情を探るといった動きが増えてきており、農家出身ながら幕府や体制維持に多大なる貢献を果たした人物である。

    間宮林蔵の才能は、会うべき人と出会いその人々の資質や想いを着実に受け継いで事を為すところにある。間宮林蔵の資質を最初に見抜き幕府の役人に取り立てた村上島之丞、測量の技術を惜しみなく伝え貴重

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    2025年03月09日
  • 新装版 白い航跡(上)

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    高木兼寛の伝記。兼寛は薩摩の軍医として戊辰戦争奥羽出兵に従軍しそこで蘭医関寛斎の治療を目の当たりにし自身の非力さと漢方の限界に気づく。戊辰戦争後鹿児島に帰り西洋医学を1からしっかり学ぶ決心をし師である石神良策の推薦で開成所洋学局に入学する。その頃中央政府では今後の日本の医学をドイツ式にするかイギリス式にするかで意見が割れ相良知安らにより当時世界で最も進歩的だったドイツ式を採用することになった。それにより内々でポジションが確保されていたイギリス医師ウィルソンがお役御免となり西郷隆盛、大久保利通らの画策で鹿児島へと派遣され兼寛はウィルソンから西洋医学について多くを学ぶ。その後石神の頼みもあり兼寛は

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    2025年03月08日
  • 雪の花

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    福井藩の町医である笠原良作が、種痘を用いて天然痘と戦った生涯について描かれている作品。松坂桃李主演で映画化されているので、手に取ってみた。

    コロナ禍を経て、現代人にも身近に感じるストーリー。
    また、昔から改革を行う人物には、変化を好まぬ気質の人間からの邪魔が入るということ。そして、人のために奔走する人物には、最後には天が味方するということが書かれていた。

    『世のため』という大義と志があれば、困難に当たっても、最後まで諦めぬことが重要である。

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    2025年03月03日
  • 三陸海岸大津波

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    三陸大津波の文献を丁寧に紐解いた文書。311前に発刊されているため、これには触れられていない。
    昔から三陸は大津波に見舞われたことは知っていましたが、実際見ると重くなりますね。小学生に津波発生前後の作文を書かせたのは貴重な証言になっているけど記憶が鮮明なうちに書くのもきつかっただろうな、とも思えます。

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    2025年02月22日
  • 新装版 赤い人

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    良本。日本史では学べない史実。素晴らしい史実本だが、これが実際に日本で起きたことかと絶望的な想いで読み進めた。

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    2025年02月18日
  • 敵討

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    ▼久しぶりに吉村昭さんを読みました。相変わらず、地味で硬派でコリコリしていて、エンタメにイキきらない独特の語り口が一種オモシロイ。森鴎外を読んでいる気分にちょっとなります。

    ▼確か、江戸時代の(明治大正もあった)、「かたきうち」の実話を歴史小説として描いていらっしゃる。そこではエンタメ性やヒロイズムは徹底的に排除されています。実にハードボイルド。ひとをころす、というしんどい肉体作業。長年かけて敵討ちをする精神的疲弊感。などなどがビシビシと容赦なく描かれて。それでいて、ちゃんと小説になっている。面白く読ませる。独特の背筋の伸びる持ち味、悪くないです。

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    2025年02月15日
  • 新装版 赤い人

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    「豊かに実れる石狩の野」が人権度外視の囚人労働により切り拓かれる過程を淡々と描写する。舞台となる町の町史を参照しており、特に札幌圏に住む高校生以上の人間への歴史教材としても秀逸だと思う。
    本筋ではないが、この作品で語られる積雪期の長さに僅か1世紀程度の気候変動の影を感じずにはいられなかった。

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    2025年02月10日
  • 雪の花

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    映画に、忘れられない台詞がたくさんあったので原作を読みたくなった。
    驚いたのは、脚本によって、かなり色彩が異なった作品になっていたのだと感じられたこと。
    どちらが良い、ということではなく、映画の力、その原点になった笠原良策という人の辛抱強さ、そして吉村昭さんが詳細に調べて小説にしなければ、ほとんどの人が知らずに終わっていたかもしれない、ということに驚いた。
    福井出身の津村節子さんの夫であるからか、福井藩を責めるような記述がほとんどないが、福井出身者としては「嫉妬」という言葉で全てを表しているように感じられた。
    天然痘が撲滅されてから久しく、福井医大(福井大医学部)の同窓会名に名前を遺していても

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    2025年02月07日
  • 冷い夏、熱い夏

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    作者自身の親兄弟のがん実体験であるので、がん末期の過酷さと看病する周りの疲弊が詳細に書かれている。
    当時、がん告知を本人にしないのが普通であったのを思うと、周りの人のストレスは相当だっただろう。
    作者の体調が終始悪いのが心配であった、そんな中仕事と両立しきったので、弟への愛情が大きかったのが分かる。

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    2025年02月01日
  • 夜明けの雷鳴 医師 高松凌雲

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    幕末の医師高松凌雲はパリでの最新医術の取得で戊辰戦争、東京の大洪水で負傷、被災した多くの人々を救ったことは、徳川への恩返しであり幕府側で戦死した凌雲の兄弟含め勇気を持って意志を貫いた抜いた事は人間として素晴らしい人だったと感銘する。また敵である薩摩藩士村橋氏、池田氏の姿勢も病人、負傷者には危害を加えず薬、食料などで支援した事は人間の道徳さの高さに感動する。文中での言葉「世の儚さを思ってさすらいの旅に出て客死した」(戊辰戦争での人間同士の悲惨な死闘の有り様を経験し孤独死した村橋への言葉)

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    2025年01月29日
  • 関東大震災

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    本所被服廠跡、二万四百三十坪余の広大な避難地で起こった悲劇。三万八千名の死者、多くの大八車に乗った家財等へ四方から火が襲いかかり引火。さらに思いがけぬ大旋風が巻き起こる。全東京市の死者の55%強に達する。大災害を克明に描く大作。

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    2025年01月23日
  • 新装版 赤い人

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    間違いなく読んでる

    ゴールデンカムイ、巻末にはアイヌ関連の文献しか載せていないが、この本は間違いなく読んでる。
    北海道の住民は読むべきでしょうね。
    お好みで。

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    2025年01月22日
  • 新装版 海も暮れきる

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    新年早々、クズ男に出会ってしまった。
    男の名は尾崎放哉。
    俳人。
    一高から東大、大手保険会社に就職。役職に付く。
    エリート。
    私生活が破綻。酒癖は悪い。友人知人に金借りまくる。
    奥さんには一緒に死んでくれと言う。
    クズっぷりに付き合いきれない。

    最後まで付き合った。
    小豆島へ渡り寺男として庵で暮らし友人知人に迷惑をかけながら結核で死んだ放哉。
    海の波の音とお遍路の鈴の音が心に残る。
    別れた最愛の奥さんが来てくれて良かったねぇ。
    「こんなよい月を一人で見て寝る」
    人格的にアレだからこそ心に響く俳句が読めたのだろう

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    2025年01月18日
  • 関東大震災

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    日本人にとっても不幸な災害であったが、それ以上に異常状態にあった人々の朝鮮人に対する行いはすさまじい。かくも人は簡単に理性を失うものだとつくづく思う。

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    2025年01月13日