吉村昭のレビュー一覧

  • 羆嵐

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    Wikipediaに事件の詳細が載っている。以前、事前情報まったくなく読んでしまい…とても衝撃を受けたことがある。
    事件を元にした小説ではあるけれど、こちらには人の心情なども書かれているので…重い気持ちになりつつも、読み進める。女の肉、という表現が怖すぎる。

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    2026年04月26日
  • 冬の道 吉村昭自選中期短篇集

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    ネタバレ

    ・あらすじ
    吉村昭の中期短編集10篇。

    ・感想
    どれも面白かった!
    「鳳仙花」「休暇」「苺」「鋏」はどれも刑務官や篤志家(と言っていいのかな?服役中の受刑者を社会的に支える人たち)の話。
    この中だと特に「休暇」が重たかったかも…。
    鋏に出てくる片桐も不気味な印象があったな。
    なにあいつ、慇懃無礼なのかよくわからん。
    「無期刑を受けた犯罪者」という事実が余計に不気味さを醸し出してた。
    あんなやつ一刻も早く追い出したくなるよw

    「同情心を持たず一線引きつつも冷徹な視線で物事を観察する語り手」は読んでてストレスなくていい。

    吉村先生のお父さん三部作は時代を感じたw
    明治〜昭和初期の人間だもんな。
    今からたった100年前なのにこんなに社会も国民性も変わるんだなーと感慨深い。
    こんな父親からよくもまぁ立派な息子たちができたもんだわ。
    戦中戦後の社会の様子なども知れるので興味深く読んだ。

    そして巻末の編集者である池上冬樹の解説も面白かった。
    私はシーラッハも好きなんだけど、解説で吉村昭先生とシーラッハの相似点を指摘してて得心した。
    確かにこの二人は似てるわー。

    現代小説を「ストレートに感情を描き、時に厚く塗絵をして共感を呼ぶことを第一義とした小説」という解説にも納得。
    これでもか、というほどに一方的に押し付けて共感させようとする押し付けがましい作品が多くて最近の作品は読めなくなってしまった。
    「感情を描かず、共感という媚びなど一ミリもない吉村昭の硬質な文学」がなんとも心地いんだよなぁ。

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    2026年04月24日
  • 漂流

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    ネットでこの本のモデルになった人物のことを知る。
    長平。江戸中期の土佐のひと。
    漂着した孤島の鳥島でサバイバル生活を13年間。
    後年、さらに漂着した二つのグループも合流して、船を作り、ぶじに生還したという。
    その際、彼は島に生活道具や生活方法を記した書置きを残して、それがのちにジョン万次郎を救うことになったという。(←ジョン万次郎の部分は本書にはなく、史実なのかあやしいが)
    凄すぎる。
    漂流もの、島もの大好きの私が、この人物のことは全然知らなかったので、まずは、こんな人がいたんだ!と思った。
    怖すぎて面白すぎて、半日で一気読みでした。

    吉村は冒頭で、太平洋戦争の終結を知らぬまま、ジャングルに潜っていて、のちに発見された人々を、一種の漂流者だと評した。
    (このなかにあった、アナタハン島の男十数人と女一人の集団で、女の取り合いから発生した内ゲバ=アナタハン島の女王事件が、ピトケアン島のバトルロワイヤルを思い出してギョエーと思った。
    漂流ものに普通女性はいないけど、やっぱりいたら大変なことになるんやな。怖すぎ。)

    『漂流』では、長平の信念や賢さ、器用さには感心したが、なにより、諦めずに生きようと思い続けた意思の強さに感服した。
    私なんかは、絶望してまっさきに死ぬタイプだ。すんません。

    長平が孤独に過ごした二年ほどが一番凄い。
    気が狂うのが普通よな。
    ロビンソンクルーソーのモデル、アレキサンダー・セルカークも四年間一人で暮らしたら言葉を忘れかけてたらしいし。

    もともとある程度の知識や教養を持っていることも、非常に大切ですね。
    方角と星座の知識はもとより、字が書けたり、造船や鉄作りの技術、酒造りの知識があったりする。
    それがなくても、根気強さや明朗さ、器用さ、素直さが大事だ。そう、そういうことなんだぞ。

    後半、脱出用の船造りで、みんなの知識を集めて、生きて帰るために尽力していくシーンがアツすぎる。
    おみくじで適当に決めた方角が北西で本当に良かったね…。
    運を味方につけたんだ。
    そして苦労してやっと辿り着いた青ヶ島が、鳥島以上にヤバかったのには笑ってしまった。

    読後、改めてシマダス(島の情報事典)を引っ張り出して読んだ。
    鳥島もコラムコーナーにはちゃんと載っていたし、うっすら分かっていたけど、小笠原はもっともっと遠いんですね…!

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    2026年04月24日
  • ふぉん・しいほるとの娘(下)

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    ネタバレ

    読み応えのある長編歴史小説

    シーボルトとその娘に興味があり
    読み進めていった。
    シーボルトが日本に与えた影響は
    非常に大きく
    お滝との子供が成長していく姿が
    精細に描写されていく。

    一気に読める歴史小説である。

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    2026年04月19日
  • 破船

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    面白かったです。
    今よりだいぶ倫理観・価値観・理不尽さが違っていてやるせなかったです。
    自分が住んでいるのは山間部ですが、ご先祖さまはどんな暮らしをして、命を繋いでいったのか興味を持ちました。

    この作品は人間のエゴや業の話に括られるのでしょうか。
    個人的には命や命を繋いでいく使命の話のような気がしました。
    この作者の他の作品も読んでみようと思います。

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    2026年04月15日
  • 高熱隧道

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    ノンフィクションというのが信じられないくらい壮絶な仕事内容。現代では考えられない忍耐力と根性と主従関係とお金の力。いや、考えられなくないのかもしれないけど。残業なし、有給、フレックス、〇〇ハラスメント。ホワイト企業とブラック企業。間違いなくこの建設会社は現代ではブラックであるが、そんなことを言っていたら発電所が作れないとなると、ブラックであればあるほど、意義のある仕事のような矛盾がある。当時スコップを手に瓦礫をかき集めていた彼らもやりがいとか、これが社会のためとか、国が豊かになるためとか、全く思ってないのではないか。単に生きたいくため。家族を食わせていくため。この想いだけでここまで過酷な仕事ができ、環境に順応している彼らにはリスペクトしかない。

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    2026年04月15日
  • 天に遊ぶ

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    時代や場所が移り変わる中での人間心理の不変さに気付かされた。本当に読みやすい。著者曰く『超短編』らしい。

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    2026年04月12日
  • 羆嵐

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    昔の作品のため、少々文章が難しい。
    銃をもって意気揚々に熊を仕留めようと集まる大勢の大人たちが、実際の熊の恐ろしさを間近にして絶望するのがリアルだった。

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    2026年04月11日
  • ふぉん・しいほるとの娘(上)

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    シーボルト事件の全容を知った。かれの好奇心の大きさと当時の日本の国禁に対する無頓着さを感じた。罪とは知りつつ殺されることはないと知っていた方かもしれない。お滝との間に生まれたイネは女性としてかつ混血児としての宿命を背負い生きていかねばならないことを自覚して、故郷の長崎から遠くシーボルトの弟子だった二宮敬作の住む伊予まで旅に出るが、周囲の人々の親切で山越え海越え無事辿り着く。2026.4.7

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    2026年04月07日
  • 羆嵐

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     三毛別羆事件の全貌が語られています。人を襲うとは思いもしなかった羆が人間を食み襲う!しかも女性と子供の味を覚え、其ればかりを狙う。胎児を掻き出して襲撃する羆の描写は何度見てもきついです。
     最終的には伝説のマタギにより、その羆は狩られることで人間側に軍配が上がることになります。

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    2026年04月04日
  • 冬の鷹

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    元々歴史物はあんまり好きじゃない.
    特に,武将モノや戦記ものなど,権力とか戦争を物語化したものがコンセプト的に既に大嫌いで,そう言ったものは読んだことが無いと言っても過言ではない.

    しかし,こう言った作品は例外.
    勿論,時代背景として,鎖国であったり,それに伴う幕府の姿勢であるだとか,権力が学問に及ぼす影響であったりは出てくるのだけど,それはあくまでも市井の人々——医師や蘭学者まで含めた「非権力」側の人間の視点で描かれている.
    だからこそ,我々一般市民が推し量れる,推し量るべき「時代の空気感」として認識出来る.

    本書を手に取ったきっかけは,小学2年生の娘の公文の課題だった.
    ほんの短い引用であったが,「解体新書」の刊行を巡る杉田玄白と前野良沢の,専門家としての譲れない信念のぶつかり合いと葛藤は圧倒的に惹きつけるものがあった.
    最初は「面白くない」と言っていた娘も,問題文を読み進めるうちにどんどん引き込まれていって,最後には「え?もうこの話おしまい?もっと読みたかったのに!」というほどだった.

    1976年,今から50年も前に刊行されたものだけに,手紙のやり取りなどは原文を忠実に引用しており,現代文からの「落差」にちょっとスローダウンする場面はある.
    ただ,安易に全部現代語訳にしてしまわないのは,当時の作家としての「良心」や常識だったのかな,と理解出来る程度.

    みずみずしく,人間臭く,ページを躍動する歴史上の医家が放つエネルギーに,こちらも感化されてしまいそうだ.

    それにしても,当時の「学問」と呼ばれるものの多岐にわたって「医師」が関わっていたこと,先導していたことは大変興味深い.
    前野良沢など,翻訳家としての認識が強かっただけに,「そうか,そう言えば医者だったんだ」というところから,あの平賀源内も医者だったと知り,恥ずかしながら全然そんな認識がなかったので,とにかく興味の尽きない1冊だった.

    こういう歴史物なら大歓迎.
    これは日本の医学史の黎明期の躍動を描いたものであって,言ってみれば僕の「大先輩」である人たちの物語.面白くない訳がないのだ.

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    2026年04月04日
  • 逃亡

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    これは面白かったわ。ハードボイルドではあるけれど、そこまでグロい箇所は全くなく、不快さは無い。ストーリーの展開が秀逸なのと、実際の調査の上であったかもしれないフィクションが絡んでいる。戦時下の状況は考えられないほどこのような場面の過酷な日々、状況が日本国内にあっただろうことを感じた。

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    2026年04月02日
  • 大本営が震えた日

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    極秘の作戦命令書。運搬を任された少佐。移動中に起きた事故。航空機が不時着。場所は敵の領土。機密発覚の恐れ。生存者が存在するかもしれないところへの爆撃。…中立国を通過する進軍作戦。開戦前夜。先に攻撃された方と戦うというその国の首相を抱き込むために催された晩餐会。そこに首相は現れない。…北の海を出発した艦隊。存在を隠すために行われた工作。狙いは東南の海と思わせる偽装。天候が味方する。…不器用な戦争突入の下準備。数々の幸運がもたらした奇襲成功。悲惨な結末へのプロローグ。平和が脅かされ始めた今、その時を思う。

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    2026年04月01日
  • 雪の花

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    ネタバレ

    幕末の福井藩。天然痘の蔓延を防ぐことに生涯をかけた町医者の話。蘭学の知識を蓄え、牛痘の摂取により発症を防ぐ余地があることを知り、決死の思いで牛痘の種を手に入れ、福井藩に持ち帰る。漢方医学がメインストリームの時代、藩医などからの妨害を受けながらも必死に種を繋いでいく。

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    2026年03月30日
  • 漂流

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    絶望的な無人島で、人はどう「神」を生み出すのか。

    舟材の漂着を天に乞い、偶然に命を託す。拾い集めた七福神の像を、混沌とした島の中に祀る。それは単なる神頼みじゃない。壊れそうな精神を繋ぎ止めるための「秩序」の再構築。

    仲間の骨を拾い、形なき存在に語りかけ続ける12年。

    その淡々とした積み重ねの中に、宗教が生まれる根源的な瞬間を見た。「信じる」ことは、生き抜くための技術。

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    2026年03月20日
  • 三陸海岸大津波

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    実地に赴き足で稼いだ取材内容が淡々と綴られている。
    映像や科学的な記録がないに等しい時代。当時を知る人がいない今となってはとてつもない資料的価値があるだろう。
    可能な限りのデータ情報と人々の体験談の両面から浮かび上がる津波の実態。
    取材により導き出された考察がいかに真実に迫っていたか、3.11を経験したからこそよくわかる。
    多角的、立体的な視点が素晴らしい。

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    2026年03月10日
  • 新装版 海も暮れきる

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    「咳をしても一人」が代表句の自由律俳人の尾崎放哉の最晩年を描いた伝記文学。

    彼の詠の自由さ、滑稽さから気になって本作を手にしましたが最期までを知ってしまうと、彼の詠んだ歌に深みが滲んでくるというか

    どう仕様もないくらい酒狂わされたダメ人間でしたが、永く愛される理由の一端を知ることができました

    今年は尾崎放哉が亡くなって丁度没後100年らしく、知らずにそのタイミングで本作を読んだことも勝手ながら運命めいたものも感じました

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    2026年03月09日
  • 破船

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    淡々とした文章の中に、貧しく厳しい村の生活と、お船様が来た後の高揚した村の変化が目に浮かぶ。悲惨な最後も…。
    お船様という話に元ネタがあるのかは知らないけれど、かつての日本にはこういうことがあったのだろう、こうしなければ生きて行けない所もあったのだろうと思わせられた。
    文庫本の解説が的確に本書を表していた。吉村昭は初めて読んだけど、他の本も読んでみたい。

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    2026年03月05日
  • 漂流

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    タイトルから想像できるようにサバイバルもの。
    不毛の火山島が舞台なので、よくあるサバイバルものの大衆映画とは全く違って、できることが限られてて、無人島生活を謳歌するような内容では全くない。

    干し肉作ったり、池作ったり、果てには船まで作ってしまう。
    厳しい環境の中、少しの諍いはあっても協力して生活して、生きることを諦めない忍耐力に脱帽。

    念仏を唱えて精神の安定をはかったり、船の材料になるものを発見するたびに「神仏のおさずけものだ」と感謝したり、病に臥せってしまった仲間を甲斐甲斐しく世話し、亡くなった後も埋葬しお墓を作って丁重に弔う姿勢は、宗教関係なく尊く、こういう人達だったからこそ報われたのだなと感じた。

    これが実話を元にしてるっていうんだから、さらに畏敬の念を覚える。

    とはいえ、もちろん直接話を聞いたわけではなく、残された記録だけを元にした物語で、実際に何があったか詳しく残っているわけではない。
    解説内で評されているように、作者の吉村昭さんの“人間への愛情を伴った関心”で補完された物語。

    でも船に残ってた紋所や、何人出発して何人帰ってきて何を持ち帰ったかなどは確かな記録であるので、かけ離れてはいないんじゃないかな、と思いたい。

    終盤舟が完成する場面、舟の完成ももちろんだけど、舟の紋所を仲間の出身に合わせて三つ巴にするってのもお互いを尊重し合ってるのが伝わってきてグッときた。

    しかも島を去る前に、これからも来るであろう遭難者に向けて道具や情報を残すなんて。
    さらに仲間のお墓から遺骨もちゃんと持ち帰ってあげるなんて。
    人間って、仲間を思う心って本当に美しいと思った。

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    2026年03月04日
  • 雪の火祭り 吉村昭初期中篇・短篇集

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     二〇二五年十月に河出文庫から出た『死まで』の陰鬱さは相当なものだった。その二ヶ月後に出たこの文庫も無茶苦茶暗い。中心となっているテーマは今回も家族の崩壊。その崩壊しかけた家族が新たな形をみつけていくような「星の夜の会話」(pp117-138)や、崩壊した家族を捨てて上京し自分なりの生き方を見つけていく表題作(pp149-287)にはわずかながら希望がのぞく。でも一番印象に残ったのは巻頭に置かれている主人公の自分勝手さが本当に酷い「緑雨」(pp7-39)。

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    2026年03月29日