吉村昭のレビュー一覧

  • 生麦事件(下)

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    ネタバレ

    薩英戦争と四国艦隊の砲撃、長州征伐と後半は少し駆け足な感じだったけど、面白い。『生麦事件』にあまり興味が無かったから読まないでいたけど、とても良かった。

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    2025年11月24日
  • 羆嵐

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    ニュースでは「羆に人が殺された」と報道されるが、羆に襲われた人間はどういう姿になってしまうのか、電気もない北海道の寒村時代とはいえ熊の狙撃に慣れていない人間がいかに空疎で無力か、他方、後半で登場した近隣の村でタダ1人の銃撃ちの名人銀四郎のかっこよさ、ところが羆を退治したあとは村人にとって邪魔でしかない、あたかも戦時の英雄は平時の厄介者、映画ランボーを地でいく展開が一筋縄でなくてよかったです。ぜひ邦画をとってほしい、銀四郎は浅野忠信、誠実は区長は小林薫、空っぽの分署長は西村雅彦とかね

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    2025年11月23日
  • プリズンの満月

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    巣鴨プリズンの一刑務官の評伝のように読めましたが、後書きで主人公が架空の人物と知る。
    この小説は、戦争責任の所在を問うものではありません。
    また、戦勝国や敗戦国の善悪を論じるものでもない。
    戦争という途方もないうねりの結果、戦犯という重苦しい処遇を背負った人々に対し、
    ほんの灯火に過ぎずとも、人道的なあたたかさに全力を尽くした人間たちの記録を集め、淡々とつづっている。
    (もちろん、戦中の日本上層部の行動を肯定している…という意味ではないですよ)

    人によっては、地味で退屈する筆致と感じるかもしれません。
    けれど、あの戦争はこうだったと簡単に論じる本より、遥かに誠実です。

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    2025年11月20日
  • 破獄

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    ネタバレ

    ・あらすじ
    昭和8年に青森県で起こった強盗致死事件の犯人として逮捕され無期刑判決を受けた佐久間清太郎は昭和11年、昭和17年、昭和19年、昭和22年と脱獄を繰り返す。
    4箇所の刑務所を脱獄した佐久間の執念と、戦中戦後の混乱期の世相や治安維持に努めた執行機関の取り組みなどを描く。

    ・感想
    読む前は主人公である佐久間がどうやって刑務所を脱獄したのか、という方法論やその執念がどこから来るのか?などの佐久間の人となりに焦点にあてた作品だと思ってた。
    でも実際は、佐久間という脱獄犯を通して戦中戦後の日本の
    移り変わりを描いた社会派作品だった。
    そうだよね、吉村先生だもんね。

    戦中の刑務所や警察組織が

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    2025年11月14日
  • 羆嵐

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    昨今のクマ被害から興味を惹かれ、読書開始。
    北海道の開拓民が、大型のヒグマの侵食に晒されるストーリー。

    ひたすらヒグマが怖い。
    序盤から中盤は、人間の無力さと野生の破壊力にひれ伏すばかりで、熊の生息地には近づかないでおこうと心に誓った。
    そんな中で現れる“救世主”の見せ場が、本当に痺れる。良い小説だった。

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    2025年10月27日
  • 深海の使者

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    第1次訪独潜水艦として、数々の困難の乗り越え、復路の終盤に自国の勢力圏内に寄港するも、触雷して沈没した伊号第三十潜水艦。無償譲渡されるUボートの引き取り搭乗員を送り、唯一無事帰国した伊8潜。ドイツから譲渡され、帰航路途上で消息不明となった呂号第五百一潜。ペナンに向かう航路で、英潜に撃沈された伊34潜。寄港予定の港が敵国の侵攻で分断され、消息不明となった伊52潜。…狭い艦内で、酸素消費を抑えた窮屈な姿勢で過ごし。何か月も耐えたあげく深海に沈む。浮かばない命。戦争とはそんな犠牲者も出すという現実を突きつける。

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    2025年10月22日
  • 羆嵐

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    ネタバレ

    熊の被害が毎日のようにニュースで流れていますが、過去(大正時代)にこんな凄惨な事件があったことも知らなかったです。だいたい知り合いに、ツキノワグマと羆では大きさがぜんぜん違うというのを教わりました。知らない事ってたくさんあります。
    羆に村の者たち6人も殺され、特に女の人の人肉がうまいと知るや、女の人だけ狙い男は殺されるだけ。村の者たちが集まっても、銃は5丁しかない。羆を見つけても、銃からは弾が出ず不整備が露見。
    もう、逃げるしかなく、警察に依頼さそ、他の村の者たちも羆刈りに参加する。
    しかし、囮の遺体を見て戦意喪失する者も多く、軍隊への救援要請をすることに。
    薪が崩れ落ちただけでも、皆先を競っ

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    2025年10月11日
  • 零式戦闘機

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    日本を代表する歴史小説家による第二次世界大戦のノンフィクション。人物ではなく戦闘機に焦点をあてる。
    三菱重工の技術者の知恵の結晶で1937年から圧倒的な存在感を示した零戦。中国だけではなく、真珠湾攻撃で欧米をも震撼させた戦闘機だが、現状維持が精一杯の日本と産業が進歩する米国では徐々に立場が逆転してくる。決定打は一機のゼロ戦が米国に渡ったことで、機密や弱点が解明され更に上をいく航空機の開発に繋がったこと。
    国力の圧倒的な差の前に、戦争の儚さが浮かび上がる。

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    2025年10月06日
  • 羆嵐

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    羆こわ
    人間 無力
    銃があって人数があっても熊一匹にこんなにもうろたえる
    熊との共生は難しい…お互い今あるテリトリーを守れるようにしなきゃねえ
    銀爺めっちゃかっこいい 最後の狩りのエピソードもめちゃかっこいい

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    2025年10月03日
  • 雪の花

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    まず、天然痘が日本でも既に江戸時代のうちに、種痘によって根絶に向かい始めていたのは知らなかった。
    同じ吉村昭氏の著書『破船』の後半にも天然痘について触れられており、それだけ昔は一般的な病気だったのだろうと想像できた。
    また、主人公となる笠原良策が天然痘に立ち向かうきっかけとなったのは1人の医者との偶然の出会いであり、天然痘に対して強い思いがあったからこそ、このようなわずかなきっかけが大きな転機になるのだと思った。

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    2025年10月03日
  • 冬の鷹

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    人体の部位の絵の脇で、横に這っている得体の知れない文字。限られた情報源から推測し、格闘すること3年半。遂に出版にこぎつける。翻訳を行ったのは主に良沢。しかし、訳業関係者として彼の名は連なっていない。中途半端な出来には満足せず、言語を極めることに没頭する。いつの間にか人を遠ざける。誉れ高き名声と巨万の富を得た玄白とは対照的。寂しく見える晩年も、美学追求の1つの姿。…歴史の授業。江戸時代中期の必須で覚える出来事。「解体新書」。そこにも学ぶべき人生訓があった。各々がならではの道を生きて、今の医学と語学がある。

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    2025年09月26日
  • 戦史の証言者たち

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    山本五十六が戦死した時の護衛のパイロットの話が面白い。6機しかいない時点で無理だったんだな…。アメリカにも暗号解読されてたみたいだし。

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    2025年09月20日
  • 冬の道 吉村昭自選中期短篇集

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    ネタバレ

    吉村さんの中期短編集。
    いずれも引き込まれるが、ホラーでもないのに冷ややかになる『苺』や『鋏』は流石。落ちが似ているのは残念だけど。

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    2025年09月09日
  • 破獄

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    タイトルや題材から難解な作品かと思ったが、読みやすく、脱獄囚と刑務官の人物描写も巧みで物語に没入できた。

    戦前戦中に脱獄を繰り返した脱獄囚のことは知っていたが、読後に凄まじい行動力と智力の持ち主だと思い、インターネットで調べるとモデルの脱獄囚はそれほど脚色されていないことがわかった。

    府中刑務所でのこの人物への扱いは、まさに「北風と太陽」だろう。

    いまは網走刑務所は博物館として保存公開されている。脱獄囚の脱獄する様子のモニュメントもあるそうだ。いつか行ってみたい。

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    2025年08月29日
  • 戦艦武蔵

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    吉村昭は信頼している作家であり好きな作家の一人である。
    本作も期待を裏切らなかった。

    記録文学というらしいが、かなり綿密に調べてあり、フィクションというよりほぼノンフィクションの趣である。

    武蔵が完成するまでが作品のおよそ七割を占め、残りの三割が実際の戦争での記録になる。この配分がポイントの一つであり、武蔵の完成までは正に「プロジェクトX」の趣きである。日本人の一つのことに取り組む粘り強さと緻密さがよく描かれ、職工たちの平均的な質の高さがよく分かる。

    実際の戦争に投入されてからは、割とあっさり書かれている。

    海軍上層部が船の諸元性能の情報が漏れるのを恐れるあまり、船を戦闘に積極的には投

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    2025年08月24日
  • 高熱隧道

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    黒部第三発電所の建設に伴う隧道(トンネル)工事の記録文学。建設当時は日中戦争から第二次世界大戦へと突き進んでおり、阪神地区の軍需利用のためにもトンネル貫通は国策であったと思う。

    人を寄せ付けない黒部峡谷の厳しい自然との戦い、最高温度166度の高熱岩盤との戦い、工事監督者と労働者との戦いなど読者のすぐそばで人夫の息遣いや発破の爆発音などが聞こえてくるような臨場感がある。余談だが、先日入ったサウナは85度。ただ座っているだけで5分と持たなかった。この倍の温度で隧道工事に当たった人夫たちは筆舌に尽くし難い環境下だっただろう。私たちは多くの犠牲者、人夫たちの尽力の元、今の豊かな暮らしがあることを忘れ

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    2025年08月17日
  • ポーツマスの旗

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    明治38年。大西洋に面する港町。海軍工廠で開催された調停会議。全権を委任されたのは「ねずみ公使」と呼ばれた小柄な人物。財政難で継続できない戦争。講和するのが絶対条件の中、弱味を悟られずに交渉する。12か条の要求に対し合意された骨子は6つ。賠償金がとれないのは予定通り。樺太南半分が割譲されたのは大きな成果。だが、苦境を隠されていた国民の不満は膨らみ、日比谷での焼き討ちを招く。誠実さを貫くしかなかった当時の指導者たち。この後、日本は勢力拡張を図り、大戦の悲劇を招く。因があって果になる。その時があり、今がある。

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    2025年08月02日
  • 殉国 陸軍二等兵比嘉真一

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    辛い、只々辛い…。先ず開始一頁目から泣いてしまう。年端も行かない子供達が戦士として
    お国の為に役に立ちたいと泣いてるんですよ。名誉ある死とか犬死は嫌だとか言ってるんですよ…。これを辛いと言わずに何を辛いと言うのか。

    現地での悲惨さ、惨さの描写もさる事ながら段々と死について何も感じなくなる事や、真一が最後まで
    軍国主義である事も辛かったです。戦争は何も生まない…悲惨しかない。

    当時何があったのか、凄惨だが語り継がねばならない出来事。それを知る事の出来る貴重な一冊だと思います。

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    2025年08月01日
  • 高熱隧道

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    今では空気のように当たり前の存在となっている電力が、自然との格闘の末、築き上げられたものであることを記した記録文学。

    170℃近い岩盤温度により自然発火するダイナマイトや泡雪崩など、想像をはるかに超える自然現象との死闘と、そこに当たり前のように払われる人命の犠牲によって、管理者側と労働者側の間に生み出される不協和の描写にリアリティがあり印象的だった。

    黒部の太陽の映画も見てみたが、上のような感情の機微が描かれている本作に対して、大味で淡々とストーリーが進むだけであり、長い割にはあまり楽しめなかった。

    黒部の太陽の原作小説や、吉村昭の他の作品も読んでみたい。

    また、黒部ダムは、立山に登山

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    2025年07月23日
  • 新装版 赤い人

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    各地の囚人が北海道開拓の為に集められ、過酷な人権を無視した作業につかされる。
    極寒の大地でまともな防寒着も与えられず、食事も冷たい味噌汁、麦飯、漬物。
    藪蚊が身体に群がり、刺された所が化膿する。想像しただけで身震いしてしまった。
    脱走しても見つけられたらその場で殺されるか、逃げ切っても餓死するか、囚人になったらもう最後だ。



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    2025年07月21日