吉村昭のレビュー一覧

  • 破船

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     「破船」は2022年の本屋大賞の「超発掘本!」選ばれた本でもあります。本屋大賞の「超発掘本!」とは、ジャンルや刊行年を問わず今読み返しても面白い本が選出されるものです。
     日本海沿岸の閉鎖的な貧しい寒村。土壌が痩せて作物もうまく育たず、魚介類もその場しのぎ程度の漁が精一杯の土地。村人たちは近海を通る貨物船の船荷をあてに座礁を祈る。
     生きることがこんなに苛酷だとは...。ちょっと気分が暗くなってしまいますが、海外でも広く評価され、多くの国の言語に翻訳された作品でもあります。

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    2023年09月17日
  • 吉村昭の平家物語

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    諸行無常。記録文学の名士が描く平家物語。歴史の証跡を辿るのではなく古典の記述そのものを再現する。盗作しているようで後ろめたさを感じたという。膨大な登場人物。それぞれの運命。少ない感情描写の中にその思いを想像する。流れる歴史を一話一話でも完結させてる。全盛期の驕り高ぶり。根にもたれた恨みは衰えた時に表出する。頭を丸め感傷に浸りながら生きる。敗れた後はそれすら許されない。栄枯盛衰。賢者は歴史に学ぶ。権力交代は何某かの進歩をもたらす。…栄えてなくても終わらぬ政権。過ちが正されることもない。現代日本の衰退は続く。

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    2023年09月16日
  • 関東大震災

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    吉村昭『関東大震災』文春文庫。

    関東大震災から丁度100年という区切りの年。我々日本人は、この100年の間に阪神淡路大震災、東日本大震災という2つの震災を経験している。日本列島が大陸のプレートの狭間に存在する以上、これからもこのような大震災を経験するのは間違いない。大切なことは震災への備えと心構えといざという時の知恵、情報であろう。

    記録文学の第一人者である吉村昭の菊池寛賞受賞作。

    少し前に読んだ江馬修の『羊の怒る時 関東大震災の三日間』では、当時の東京市とその近郊の混乱の状況が生々しく描かれていたが、本作では関東大震災の8年前の前震と思われる群発地震から震災当日からその後の状況までが、

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    2023年09月14日
  • 破獄

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    すごい奴が世の中にはいるもんだ。最後は少し心が温かくなる。戦前から戦後にかけての混乱も感じ取れて、よかったです。

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    2023年09月08日
  • ふぉん・しいほるとの娘(上)

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    幕末の長崎出島、シーボルトの妻、娘を描いた物語。
    感想は次巻へ。
    タイトルはシーボルトの娘とあるが、むしろ上巻はシーボルトお抱えの女郎おたきの物語だった。
    人間らしい生々しいシーボルトが描かれた物語だと思う。

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    2023年08月30日
  • 逃亡

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    ネタバレ

    吉村昭さんの作品は淡々と書かれているので何とも言えない怖さがある。
    幸司郎が全て誤った判断で罪を重ねていく前半部分と、その罰から逃れるためにあらゆる思考を巡らす後半とで主人公に対する印象が180度変わる。
    戦争の渦中にあって、規律にしばられ倫理的に暴走していく旧日本軍の影響を強く受けた者は冷静な判断ができなくなるという受け取りかたをしました。
    そして、逃げてはいるがしかし自由に自分の思考を活かせる環境下で徐々に冷静に人間らしさを取り戻すように感じました。

    物語の構成も、第三者の目線から描かれていて、いわばネタバレからスタートしているのがなんとも面白い。

    すっきりした読後感ながら、やっぱり

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    2023年08月23日
  • 高熱隧道

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    昭和11年から昭和15年、軍需産業のために建設が進められた黒部第三発電所。

    未開の大自然を切り拓く人々のエネルギーと、それを阻むかのように犠牲を生むその大自然。
    大きく熱く冷たいこの自然は本当に人間が入り込み、制してよいのかとたくさんの疑問を持たざるを得ない迫力があった。

    その人々が費やした時間やエネルギーに、現代の人々は支えられ知らぬ間に恵みをも与えられている。

    少なくともそうした事実を知り、考える時間が出来たことに感謝。

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    2023年08月29日
  • 新装版 落日の宴 勘定奉行川路聖謨(下)

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    川路聖謨は幕末の官吏である.官吏としては異例の出世を遂げ,開国を求めてやってきたロシアの使節プチャーチンとの開国交渉の幕府側責任者のような役割につき,高圧的な態度のプチャーチンに対しても一歩も引かず,穏当な和親条約の締結にこぎつけるところまでが第一幕.
    後半はアメリカのハリスからの通商条約締結に関する,さらに(当時の日本側からの見方からすると)一方的な要求を受け,幕府側の意見をまとめ,一方,攘夷論に固執する徳川斉昭や朝廷との板挟みとなり,右往左往する.井伊直弼の大老就任の辺りからは年齢的な問題もあり,川路は第一線から外れ,幕府崩壊までは引いた立場で幕末の動乱を見守ることになる.
    それほど身分は

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    2023年08月12日
  • 破船

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     帯に「本屋大賞超発掘本!」とあったので、気になって買ってみた。
     貧しい生活の村で、幸をもたらす「お船様」。簡単に言うと荷を多く積んだ商人の難破船のことだが、難破船をあえて呼び込むための方法もこの村には伝わっている。
     これを読むと人々の生活は誰かの犠牲の上に成り立っているのだなということが実感される。
     しかし、難破船が必ずしも幸のみをもたらしてくれるものではなく、時には災厄ももたらしてしまう。因果応報と言ってしまえばそれまでだが、そうでもしないと生きられない厳しい環境下に置かれた人々の苦しさもある。
     かなりのパンチ力を持っている作品。

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    2023年08月12日
  • 蚤と爆弾

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    戦中の細菌兵器研究の施設で行われた戦慄の事実。
    丸太と呼ばれた人々。
    苦しめられ死んでいった人々。
    それに従事していた人々。
    戦争は、人を人でいられなくする。殺し合い。
    知るべき事実がそこにありました。
    七三一部隊の本を読んだことがあるけれど、それとはまた違う、吉村昭さんの語り口に一気読み。

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    2023年08月11日
  • 破船

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    時代背景・地域不明、作者の作品群で異色なドキュメンタリー風小説。
    200pと控えめなボリュームながら、貧しい漁村の哀しい運命が過不足無く描かれる。
    個人的には、『漂流』を生み出した作者が、漂流者を餌食とする本作を描く事にとてつもない作家意欲を感じる。

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    2023年08月04日
  • ふぉん・しいほるとの娘(上)

    購入済み

    吉村昭らしい作風

    ドライで淡々としかも詳細に記述する。いわゆる記録文学の典型とも言える作風の作品である。この上巻で多くのページを費やして描かれているのは、フォン.シーボルトその人である。当時の典型的な知識人として、進歩が遅れている日本へ、進んだ医学を伝えると同時に、帝国主義.植民地主義の尖兵として地理的情報 風物情報を入手しようとする。一口に善悪を言い難い彼の言動を詳細に記述している。

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    2023年08月04日
  • 破船

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    暗い物語であった。

    僻地の漁村で日々を生き抜く三年間を、一人の少年を通して語った「破船」。
    農作は期待できず、季節ごとの漁労で糊口を凌ぐ生活。その暮らしの中、唯一の僥倖が難破船の訪れ。その船の積荷を奪うことが、稀に見る豊作と同様。ただ、積荷の略奪であるために、難破船の船員が生きていても、殺して口封じをするという残酷さが、村全体の共通の認識として受け継がれている。

    生きて行くために。生きるという目的が優先されるは「人」でなく「村」。「村」の存続が第一であり、そのためには個人の意志は破棄されるべき。という思考が隅々まで行き渡っている様は、過酷であり悲哀しかない。それが何よりも象徴されるのが、物

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    2023年08月03日
  • 破船

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    極めて悲劇的。貧しい村の暮らしを丹念に描くことで、船が来て欲しいと読者に思わせる手法がすごい。短いながら読み応えがすごい作品。名作!

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    2023年07月21日
  • 雪の花

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    天然痘による死者を減らしたい。その一念で私財を投げ打ち種痘の入手と接種に取り組み、戦い抜いた福井藩の町医、笠原良策、その人生。
    予備知識も興味もなくても、ぐんぐん読み進められる吉村昭さんの作品。読後には、読めてよかった、知ることができてよかった、と思わせてくれる。
    次の作品もたのしみ。

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    2023年07月15日
  • 海の史劇

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    原作者の遺志に背いて映像化された「坂の上の雲」。同時期に連載されていた本作。日ロ戦争。歴史文学と記録文学。事実が淡々と記述されてるだけのようでいて、引き込まれる。その作風にはいつも感心させられる。ロシア側の立場での描述も長い。両者の視点で考えられる。勝利したのは日本。負けていれば独立国としての存続はなかっただろう。一方、得た者は乏しい。そして、失ったものも大きい。夥しい数の戦死者、戦傷者。政情不安。米国の警戒。そしてあの大戦につながっていく。TVドラマは美しく作られる。だが、現実の戦争はきれい事ではない。

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    2023年07月15日
  • 新装版 落日の宴 勘定奉行川路聖謨(下)

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    幕府公務員の凄さを感じた。
    なんとなく幕府の家臣と政府役人ってイメージ違ったけど普通に感覚同じなんだなと気付かされた。FAIREとか絶対言ってないわな 笑

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    2023年07月09日
  • 闇を裂く道

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    ただのトンネル工事だけの話ではなく、7年の予定だった工期が16年にもなった原因、崩落事故や旦那盆地の渇水問題、その時の時代にあった出来事も詳しく書かれており、その頃のトンネル工事の大変さがよく書かれていた。

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    2023年07月01日
  • 光る壁画

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    世界初の胃カメラ開発物語。胃カメラを開発したのが日本人だとは知りませんでした。東大の先生が起案したものを現オリンパスの光学開発者が試行錯誤しながら試作・改良していく姿は、ベタながら胸が熱くなるものがあります。
    オリンパス社のホームページには、本書の初代胃カメラの開発背景と写真が掲載されていますが、とても飲めそうにはないサイズだなと...
    しかし、人類の健康に資する世界初の試みを日本が手掛けていたという事実に、単純に嬉しくなるものがあります。

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    2023年06月27日
  • 破獄

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    実話を元にした小説。

    佐久間清太郎は秋田、青森刑務所を破獄し当時一番の体制の網走刑務所に移送される。

    極寒の地、網走。破獄は不可能と思われた日、佐久間は破獄する。

    捜索もかなわず見つからなかった佐久間。とても冬は越せず死んだと思われていた。
    そして、終戦。

    突然砂川で佐久間が逮捕されたというニュースが入り、札幌刑務所に収監。
    破獄の責任を回避したい進駐軍の考えもあり、府中刑務所に移送。

    府中刑務所ではそれまでと違った破獄対策を佐久間に施す。

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    2023年06月25日