吉村昭のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ吉村昭さんの作品は淡々と書かれているので何とも言えない怖さがある。
幸司郎が全て誤った判断で罪を重ねていく前半部分と、その罰から逃れるためにあらゆる思考を巡らす後半とで主人公に対する印象が180度変わる。
戦争の渦中にあって、規律にしばられ倫理的に暴走していく旧日本軍の影響を強く受けた者は冷静な判断ができなくなるという受け取りかたをしました。
そして、逃げてはいるがしかし自由に自分の思考を活かせる環境下で徐々に冷静に人間らしさを取り戻すように感じました。
物語の構成も、第三者の目線から描かれていて、いわばネタバレからスタートしているのがなんとも面白い。
すっきりした読後感ながら、やっぱり -
Posted by ブクログ
川路聖謨は幕末の官吏である.官吏としては異例の出世を遂げ,開国を求めてやってきたロシアの使節プチャーチンとの開国交渉の幕府側責任者のような役割につき,高圧的な態度のプチャーチンに対しても一歩も引かず,穏当な和親条約の締結にこぎつけるところまでが第一幕.
後半はアメリカのハリスからの通商条約締結に関する,さらに(当時の日本側からの見方からすると)一方的な要求を受け,幕府側の意見をまとめ,一方,攘夷論に固執する徳川斉昭や朝廷との板挟みとなり,右往左往する.井伊直弼の大老就任の辺りからは年齢的な問題もあり,川路は第一線から外れ,幕府崩壊までは引いた立場で幕末の動乱を見守ることになる.
それほど身分は -
購入済み
吉村昭らしい作風
ドライで淡々としかも詳細に記述する。いわゆる記録文学の典型とも言える作風の作品である。この上巻で多くのページを費やして描かれているのは、フォン.シーボルトその人である。当時の典型的な知識人として、進歩が遅れている日本へ、進んだ医学を伝えると同時に、帝国主義.植民地主義の尖兵として地理的情報 風物情報を入手しようとする。一口に善悪を言い難い彼の言動を詳細に記述している。
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Posted by ブクログ
暗い物語であった。
僻地の漁村で日々を生き抜く三年間を、一人の少年を通して語った「破船」。
農作は期待できず、季節ごとの漁労で糊口を凌ぐ生活。その暮らしの中、唯一の僥倖が難破船の訪れ。その船の積荷を奪うことが、稀に見る豊作と同様。ただ、積荷の略奪であるために、難破船の船員が生きていても、殺して口封じをするという残酷さが、村全体の共通の認識として受け継がれている。
生きて行くために。生きるという目的が優先されるは「人」でなく「村」。「村」の存続が第一であり、そのためには個人の意志は破棄されるべき。という思考が隅々まで行き渡っている様は、過酷であり悲哀しかない。それが何よりも象徴されるのが、物