吉村昭のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレR6(2024).4.13~5.4
(きっかけ)
友人からもらった。
(感想)
吉村昭先生の本、2冊目。
1冊目は「桜田門外の変」。
その時(2016年)の感想は、「様々な資料をもとに、関係者がどのように動いたかを淡々と綴っており、教科書みたいで読みにくい!」でしたが、今回は「それがいいね~」でした。8年で私も成長したのでしょうか。
吉村先生の本を読むと、司馬遼太郎先生に叩き込まれた「長州藩すげえ」が、「長州藩、運がよかっただけでちょっとアレですね…」になりますね。勉強になります!
で、「生麦事件」自体はこの上巻の最初に終わってしまって、「え、もう物語終わったんだけど…」となりましたが、このあとの描写がこの小説のメインなんですね。
上巻では、生麦事件発生→幕府とイギリスの交渉(ここがメイン)→イギリス艦隊が薩摩へ。薩摩は迎え撃つべく武装強化
まで。
さてさて、この後は、まだ長州藩の暴走と、薩摩藩の成長がみられるのでしょうね。楽しみ! -
Posted by ブクログ
本書を手にしたのは、最近読んだ河﨑秋子・熊谷達也両作品の「狩猟者と熊が対峙する物語」関連です。加えて、本書と同一著者作品『羆嵐』の恐怖に慄いた経験が甦り、違いを含めて関心が高まりました。
本作は、吉村さんが雑誌連載のため1970〜翌年にかけて取材し、猟師たちから聞き取った話をもとにした短編小説集です。全7編のうち富山の1編を除き、6編が北海道が舞台の実話(登場人物も実在)とのこと。1篇ずつ独立し、各話の熊撃ちもそれぞれ個性的です。
上述の『羆嵐』は本作取材後に着手したようで、留萌の苫前村三毛別で起きた最悪の羆事件(7名死亡、3名重症)に基づいた作品で、本作とスタンスが違いどこまでも恐ろしい話でした。
本作のあとがきで、「短編という制約の中で、できる限り簡潔な筆致と構成を意図した、人間と土の匂いを描きたかった」と吉村さんは記しています。
確かに緻密な光景がリアリティを生み、無駄な主観的感情表現を削ぎ落として、事件の実態を淡々と記述している印象です。しかし各短編の中に、悲惨な状況、マタギの勇姿と人間の弱さなどが、臨場感たっぷりに展開されます。
単なる熊被害の羅列やホラー要素の強調でなく、自然や熊への畏敬の念、厳しさとの闘い、生と死、共生など、大自然の懐に抱かれて暮らす人々の生の声を掬い上げ、今の時代に伝える硬質で良質な短編集でした。 -
Posted by ブクログ
『羆嵐』『戦艦武蔵』『関東大震災』『海も暮れきる』と、吉村昭の本は色々と読んできた。壮絶な出来事が静かな筆致で描かれており、手に持つ本がひんやりと空恐ろしく感じる。
沖縄出張の帰路、那覇空港の書店で沖縄を舞台にした本が陳列されていたので、読みやすそうなこの本をチョイスした。
沖縄戦について小説を読むのは初めて。戦争の悲惨さ自体は、高校の修学旅行で当時の方々の話を伺ったり各施設を回った際に見聞きしていたが、15歳の軍国少年から見た沖縄戦というのはとても新鮮だった。少年時代の野望と挫折といった普遍的なテーマが沖縄戦という地獄と混ざり合って、悍ましい読み心地を与えてくる。
主人公の少年は当時の教育をしっかりと受けており、激しい戦闘の中で大量の死を目にして、命の価値がどんどん軽くなってゆくなかで、自分が兵士らしい行動がとれるようになってきたと満足感を抱くようになる。米国に降伏しようとする同胞の死を願うようにさえなる。
凄惨で悲しい物語なのだが、時代の価値観をそのまま飲み込み少年時代を過ごす一人の15歳の物語でもある。
現代日本にいれば戦争なんて歴史の教科書や他国の出来事のようにしか感じられないところだけど、意外と地続きのものなのかもしれないな、と思った。