吉村昭のレビュー一覧

  • 新装版 間宮林蔵

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    樺太は島か半島か。サハリンと樺太は別物か。アイヌ人を説得し、ギリヤーク人と協力し、山丹人をかわし、当時の世界地図上のただ一つの謎に決着をつける。”間宮海峡”のその人物を描いた小説。…つくばの農民の子として生まれ、地理と算術の才能を買われ役人に登用。北海道の地理を探索。海峡発見後は、幕府の隠密となる。シーボルト事件発覚のきっかけを作ったとされ、洋学者らからあらぬ恨みを買う。日々足の鍛錬を怠らず、高齢まで全国を行脚。生涯独身。時折寂しさを感じながらも、プロ意識を欠かさず、激動の時代の人生を全うしたと想像する。

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    2024年05月27日
  • 零式戦闘機

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    「攻撃は最大の防御」と言う考えは大戦当時の日本軍の愚かな考えから来てた言葉なのか…
    漫画なんかを通して美化された言葉として受け止めていたなぁ

    第1線で4年間も活躍した戦闘機を日本の人達が作った事はとても誇らしく感じるけれど、重慶爆撃での活躍の場面で強い主人公が無双するような高揚感を少し感じてしまうのはなんとも言えない気持ち…
    パヤオが良く言うのは戦争に対するこういった受け止め方なのか

    遊就館や太刀洗記念館で実物見ましたが、沢山の人達の努力の結晶だとゆう事がまじまじと感じられ、とても感慨深かった

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    2024年05月15日
  • 高熱隧道

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    黒部渓谷は、人間が挑むのは到底不可能な世界
    この渓谷は、人の住みつくことを頑強に拒否している。雪崩を起し崖くずれを発生させて、人の近づくことを許さない

    そんな中、あなたはなんで働くのですか?
    「国のため、トンネル掘師技術のため、金のため」
    それぞれの思いをもってこの黒部第三に挑む

    死者300内佐川組233名ノンフィクション
    今では考えられない人柱国家公認プロジェクト

    トンネル開通するまでは、それぞれが一つの薄い目標に向かっていたが、開通後の老人夫頭に寒気を感じた
    ■長い年月人夫たちを使ってきた経験、阿曾原谷事故以来はっきりとした形をとってきた人夫たちの異様な空気とダイナマイトの紛失の間に

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    2024年05月11日
  • 生麦事件(上)

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    R6(2024).4.13~5.4

    (きっかけ)
    友人からもらった。

    (感想)
    吉村昭先生の本、2冊目。
    1冊目は「桜田門外の変」。
    その時(2016年)の感想は、「様々な資料をもとに、関係者がどのように動いたかを淡々と綴っており、教科書みたいで読みにくい!」でしたが、今回は「それがいいね~」でした。8年で私も成長したのでしょうか。
    吉村先生の本を読むと、司馬遼太郎先生に叩き込まれた「長州藩すげえ」が、「長州藩、運がよかっただけでちょっとアレですね…」になりますね。勉強になります!

    で、「生麦事件」自体はこの上巻の最初に終わってしまって、「え、もう物語終わったんだけど…」となりましたが、

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    2024年05月05日
  • 海の祭礼

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    有色の肌に生まれ、超えられない米社会の壁。自らのルーツを日本に見る。捕鯨船に乗り込み、ボートで単身島へ渡る。鎖国下の日本。どういう運命が待つかわからない。差別はそこまでの覚悟をさせる。座敷牢で暮らすが、丁重に扱われる。日本語を覚える一方、英語を教える。結局送り返されることになるが、通詞たちが生の英語に触れたことは、その後の日米交渉に計り知れない功績をもたらす。…途中、主人公が入れ替わり、最後は史実の叙述になる。焦点定まらず、小説としては読みずらいところもあるかもしれない。それでも、読後は充実感を味わえる。

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    2024年05月05日
  • 戦艦武蔵

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    漁具である棕櫚が日本全国から消えるという一見戦艦とは関係なさそうな話から始まり、2/3を建造まで、1/3を進水してからシブヤン海で沈むまでを描く本作。

    世界最大の主砲を有する戦艦を建造しておきながら、最後までほぼ出番がなく、雷撃隊の前に海中に没した最期は、戦艦の能力云々の前に、巨艦大砲主義に邁進し、戦略・作戦・戦術レベルで語られる際の戦略レベルでの決断に誤りがあったことが痛いほど伝わってくる。

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    2024年05月03日
  • 高熱隧道

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    一度、水力発電所を見学したことがあったので、本の内容が少しイメージできた。

    この時代の人たちの情熱と意志の強さを感じた。
    事故の内容は知る度に衝撃を受けた。どうやって竣工するのかが全く想像もつかなかった。
    主人公となる人物とその周りの人々の心情をこと細かいに描かれていて素晴らしい。
    多くの人の屍の上に成り立っていると考えると心苦しさを感じるが、それの感情だけでは語れない力強さも同時に感じた。

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    2024年04月28日
  • 破船

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    なんかもうずっとつらいのよ。大自然のペースに合わせてしがみつくような生き方とか、村ぐるみで犯罪を隠したりしてるとか。お船様で一時は生き延びられるかもしれないけど、それが永遠ではないってわかってるところとか。
    それでも好きな娘との淡い交流とか、漁の腕前が上がったとか、友人との関係が穏やかなものになっていったりとか、きらめく瞬間がある、あったのにさぁ~~…

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    2024年04月16日
  • 長英逃亡(下)

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    高野長英という名は知っていたが、こんなにも過酷な人生だったなんて知らなかった、吉村昭さんの語る長栄にグイグイ引き込まれて、地図を見ながら自身も逃亡している気分で読み込みました。

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    2024年04月08日
  • 三陸海岸大津波

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    昭和45年発刊。明治29年、昭和8年の三陸海岸沖地震、昭和35年のチリ沖地震の大津波について書かれている。大津波の特徴、当時の発生や被害状況、三陸海岸に住む人々の作文などを紹介している。ただ回数を重ねるごとに被害は小さくなっているという記述があるので、大津波に対する恐怖心、警戒心を持たせる説得力を失ってしまうのが惜しい。

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    2024年03月27日
  • 雪の花

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    職場で薦められた本です。
    頁数、文字数は多くないけれど、中身はとても重いものでした。

    ワクチン概念のない時代の人たちに、病気の種を身体に入れることを説くのは大変なことだと思う。
    私利私欲なしに、「人々を天然痘から救いたい」という熱い思いに、感謝したい。

    映画化されるようですが、京都から福井への山越え、豪雪の中での撮影は過酷だな。

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    2024年03月27日
  • 長英逃亡(下)

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    壮絶な終わり方だった。伊達宗城、島津斉彬など幕末の有名人が登場して、時代は一気に動いていく。せっかく開けたと思った長英の運命が、生活費のために落ちていってしまったのが悲哀である。

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    2024年03月24日
  • 熊撃ち

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     本書を手にしたのは、最近読んだ河﨑秋子・熊谷達也両作品の「狩猟者と熊が対峙する物語」関連です。加えて、本書と同一著者作品『羆嵐』の恐怖に慄いた経験が甦り、違いを含めて関心が高まりました。

     本作は、吉村さんが雑誌連載のため1970〜翌年にかけて取材し、猟師たちから聞き取った話をもとにした短編小説集です。全7編のうち富山の1編を除き、6編が北海道が舞台の実話(登場人物も実在)とのこと。1篇ずつ独立し、各話の熊撃ちもそれぞれ個性的です。
     上述の『羆嵐』は本作取材後に着手したようで、留萌の苫前村三毛別で起きた最悪の羆事件(7名死亡、3名重症)に基づいた作品で、本作とスタンスが違いどこまでも恐ろ

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    2024年03月24日
  • 殉国 陸軍二等兵比嘉真一

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     『羆嵐』『戦艦武蔵』『関東大震災』『海も暮れきる』と、吉村昭の本は色々と読んできた。壮絶な出来事が静かな筆致で描かれており、手に持つ本がひんやりと空恐ろしく感じる。
     沖縄出張の帰路、那覇空港の書店で沖縄を舞台にした本が陳列されていたので、読みやすそうなこの本をチョイスした。

     沖縄戦について小説を読むのは初めて。戦争の悲惨さ自体は、高校の修学旅行で当時の方々の話を伺ったり各施設を回った際に見聞きしていたが、15歳の軍国少年から見た沖縄戦というのはとても新鮮だった。少年時代の野望と挫折といった普遍的なテーマが沖縄戦という地獄と混ざり合って、悍ましい読み心地を与えてくる。

     主人公の少年は

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    2024年03月23日
  • 雪の花

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    一定年齢以上の人の腕にあるワクチン接種の痕。
    これを始めた方の話。
    せっかくの薬も信じてもらえなければ打てないのか…
    私財を投げ出してまで、周囲に白い目で見られてまで、感染症を無くそうとした医者がいた。今の日本にそんな人いるのか?

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    2024年03月23日
  • アメリカ彦蔵

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    漂流してアメリカ船に助けてられて、帰化したが
    ふるさとは日本と本人は思っているがその故郷には受け入れてもらえない。日本の為に働くが。
    日本人ともアメリカ人ともつかない気持ちは辛かったと
    思います。遭難してから亡くなるまで遭難したまま一生を終えてしまった。悲しいですね(ToT)

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    2024年03月22日
  • 冷い夏、熱い夏

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    著者の弟が肺癌となり、亡くなるまでの1年間を綴った実体験小説。特徴的なのは、弟に癌であることを隠すこと。1980年頃の話のため、告知しないのが一般的だった時代とはいえ、どうしても不憫さを感じてしまう。
    弱っていく弟さんの様子と日々見舞いに訪れる著者のやりとりが淡々と描かれているのでそれが迫力を増しています。
    身近な人で癌患者が出たら、と考えさせられる本。

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    2024年03月10日
  • 大本営が震えた日

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    開戦日に向かって、当時の日本の中枢が、右往左往し不安に駆られながら目的達成のために進めていく様が、なんともすごいリアルな感じで、当時の雰囲気を感じ取れた。
    でも、結果、ものすごい犠牲が出てしまうのだが、、
    その犠牲の上に今の日本があることは、忘れてはいけないと思った。

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    2024年03月03日
  • 戦艦武蔵

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    太平洋戦争直前、米英日の不公平な軍縮条約は国際連盟脱退につながり、日本海軍が大型軍艦造船に舵を切る。第2号艦として長崎で建造される武蔵を、まず造船大国日本の技術力の面から記述。艦建造の各段階における担当者・作業員たちの群像である。しかし、時代は航空兵力が中心になり、戦艦ではなく空母が海洋戦の主力になると山本五十六大将などが予見していたにも関わらず大型戦艦が建造された。戦隊に編入後はさして活躍することなく米航空兵力によって撃沈される、悪手といえる軍の戦略に翻弄されていく戦艦武蔵の最期は読んでいて辛かった。

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    2024年02月27日
  • 漂流

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    しばらく鳥肉が食べられなくなりそうでした…。
    悪夢を見るほど場面を想起させる圧巻の描写力で、読後はどっと疲れました。思い出すと今でも波に揺られている気がします。

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    2024年02月25日