あらすじ
14歳の少年は、何を見たのか。
少年の体験を通して、すさまじい沖縄戦の実相をつぶさに描いた長篇小説。
「郷土を渡すな。全員死ぬのだ」
太平洋戦争末期、沖縄戦の直前、中学生にガリ版ずりの招集令状が出された。小柄な14歳の比嘉真一は、だぶだぶの軍服の袖口を折って、ズボンの裾にゲートルを巻き付け、陸軍二等兵として絶望的な祖国の防衛線に参加する。
実在の人物の体験を、ことこまかに聞きとり、特異な事実をそっくりそのまま写し取った外面的リアリズムが、読む者の胸を強く打つ。
1991年に刊行された文庫本の新装版。元本は、累計102000部のロングセラー。
解説・森史朗
※この電子書籍は、1911年11月に文春文庫より刊行された文庫の新装版を底本としています。単行本は1982年6月に筑摩書房より「陸軍二等兵 比嘉真一」として刊行されました。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ほんの80年前に実際に沖縄であったこと。もし自分があの時代の中学生だったら、…
時代が常識を創り、思想を創り、正義を創る。
蛆と虱と蝿にまみれた死体の山。それを踏んで進むのが戦争か。
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太平洋戦争末期の沖縄戦を14歳男子の視点から綴る記録文学。
なんの疑念も持たない愛国心、忠誠心を育んだ軍国主義教育の結果、人の死になんの感慨も湧かなくなる過程...。虱、虱、蛆、蛆、蛆...。目を背けたくなる描写の数々...。後世に残すべき一冊。
Posted by ブクログ
14歳の少年が目撃した沖縄戦。
吉村氏の取材力によって、壮絶な沖縄戦の実態がノンフィクションのように描かれる。
鉄血勤皇隊と国のために奉仕、死もいとわない少年たち。
一人でも多くの米兵を殺し、生き恥をさらさずに死ぬ、純真な心はそれを当然のこととして、強く思い、願う。
しかし、戦況が悪化するにつれ、友人や沖縄の市民の死を目撃するにつれ、非日常であるはずの「死」が日常のものとなり、何の感慨ももたなくなってしまう。
風化させたくない沖縄戦の実相。
あの場所で何が起きたのか。
読み継がれるべき本だと感じた。
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当たり前のように、国のために死んでいく者たち。
そんな嘘のような時代が、日本にも確かにあった。
考えられないという言葉しか出てこない。
本書は、戦争の凄まじさを如実に物語っている。
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1945年8月15日の終戦の日から75年が過ぎた。
同年6月23日は沖縄戦終結の日。
例によって吉村昭氏の徹底した取材に基づく「鉄血勤皇隊 比嘉真一陸軍二等兵 わずか14歳」の物語。70年以上前の沖縄戦という史実を知るという意味において、日本人として読むべき小説と言っても良いのではないかと思いました。
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辛い、只々辛い…。先ず開始一頁目から泣いてしまう。年端も行かない子供達が戦士として
お国の為に役に立ちたいと泣いてるんですよ。名誉ある死とか犬死は嫌だとか言ってるんですよ…。これを辛いと言わずに何を辛いと言うのか。
現地での悲惨さ、惨さの描写もさる事ながら段々と死について何も感じなくなる事や、真一が最後まで
軍国主義である事も辛かったです。戦争は何も生まない…悲惨しかない。
当時何があったのか、凄惨だが語り継がねばならない出来事。それを知る事の出来る貴重な一冊だと思います。
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『羆嵐』『戦艦武蔵』『関東大震災』『海も暮れきる』と、吉村昭の本は色々と読んできた。壮絶な出来事が静かな筆致で描かれており、手に持つ本がひんやりと空恐ろしく感じる。
沖縄出張の帰路、那覇空港の書店で沖縄を舞台にした本が陳列されていたので、読みやすそうなこの本をチョイスした。
沖縄戦について小説を読むのは初めて。戦争の悲惨さ自体は、高校の修学旅行で当時の方々の話を伺ったり各施設を回った際に見聞きしていたが、15歳の軍国少年から見た沖縄戦というのはとても新鮮だった。少年時代の野望と挫折といった普遍的なテーマが沖縄戦という地獄と混ざり合って、悍ましい読み心地を与えてくる。
主人公の少年は当時の教育をしっかりと受けており、激しい戦闘の中で大量の死を目にして、命の価値がどんどん軽くなってゆくなかで、自分が兵士らしい行動がとれるようになってきたと満足感を抱くようになる。米国に降伏しようとする同胞の死を願うようにさえなる。
凄惨で悲しい物語なのだが、時代の価値観をそのまま飲み込み少年時代を過ごす一人の15歳の物語でもある。
現代日本にいれば戦争なんて歴史の教科書や他国の出来事のようにしか感じられないところだけど、意外と地続きのものなのかもしれないな、と思った。
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沖縄戦の生々しい戦闘。
生に向かう戦闘なのか、死への序章なのか、向かうべき先を見失う。
吉村昭のノンフィクションはスゴイ。そう思わせてくれる作品ばかりだが、この作品もその一つ。
戦争には、エゴや本能としての生、そして腐乱する死というものがある。
極端過ぎれば例えノンフィクションと言えエグすぎて読めないとなる人もいる。
この作品にも本当にあった火炎放射や戦車で馬乗りされるシーンもあるのだけど、その惨さは読んだ後になってありありとわかる…読んだ後だから読めてしまう、でも書いてあることは本当にスゴイ事実。
沖縄戦がいかに酷かったかはしらない人はいないと思うけれど、少年が急拵えの兵隊にされ移ろい行く心情が少年と背伸びの兵隊の両側面からしっかりと描かれている。
鎮魂の意味も込めて、そして今起こっているウクライナの戦争に、思いを馳せている。
Posted by ブクログ
終戦から75回目の8.15を前に選んだのは筆者の数ある記録小説の一つ。勇躍出征、14歳少年兵の目を通した沖縄戦。その余りにも凄惨な戦場の生々しい描写には言葉を失います。祖父母も戦後世代であろう今の中学生にこそ知ってもらいたい、そして語り継いでほしい、戦争の真実。
Posted by ブクログ
沖縄戦を取り上げた作品はいろいろあると思うが、本作は14歳の学徒兵の目を通して、ミクロの視点から、悲惨極まりない体験を描いている。
昭和25年3月25日、沖縄の全中等学校の3、4、5年生は正規の陸軍兵として召集された。
主人公の比嘉真一は、小柄で下級生にも引け目を感じてきたが、やっと一人前の資格が認められたと優越感を抱く。
砲兵隊に配属された真一だったが、任務は壕掘り、炊事、負傷兵搬送、食糧徴集など雑役ばかり。命をかけて、敵を撃滅させることに従事させてもらえない淋しさを覚えながら、「その日」を待っていた。
しかし、戦況は悪化、爆撃、砲弾、火炎放射器、一歩の違いが生と死を分ける戦場に巻き込まれながら、真一は、折り重なる死体の中に身を隠し、敵の目を欺くなど、たくましさを身につけていく。
本書では、3カ月余にわたり、奇跡的に生き延びる真一が見た濃密な体験が延々と書き綴られるが、そこには、悲惨、汚辱、苦痛に溢れる場面がこれでもか表現され、読んでいて、申し訳ないが、「もう、十分」と心の中で叫んでしまった。
降りしきる雨や泥濘、壕内では虱に悩まされ、負傷兵士たちがひしめく。血と膿、さらには蛆がたかり、腐臭が蔓延する。行く手には重なる死体。このような描写が繰り返される。
そんな中で、真一や他の兵隊を支える心の支柱は強烈な義務感と敵の臭いを嗅ぎ分ける本能のみ。
解説には、日本にとっての沖縄戦の戦略的意義について触れられている。
本土防衛のための時間稼ぎを、その尺度とするならば、この専守防衛は95点くらいの価値がある。極めて残酷な解釈だが、一方で、そんな評価をしなければ10万人の戦没者は浮かばれない。
孤立無援の島で絶望的な戦闘を強いられた兵士の無念は想像に余りあるが、生まれて間もない嬰児が死んだ母親の乳をまさぐる姿、壕内で泣く乳飲み子を殺せと命じられる母親、医薬、資材がほとんどない中、看護に従事させられる女学生など、沖縄県民が支払った莫大な代償は、絶対、頭の中から忘れ去ってはならないと改めて思った。