吉村昭のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ世界で初めて胃カメラを開発したオリンパスの技術者たちと東大の医師の実話に基づく物語.
光ファイバーがない時代なので,樹脂チューブの先端にフラッシュがわりの電球,フィルムカートリッジ,特殊レンズを据え付けた胃カメラの開発に成功する.遠隔操作のためには三味線の弦を用い,レンズと胃壁の距離の確保のためにはコンドームを使う,等々の試行錯誤を繰り返し,ついに1950年,胃カメラが完成する.
オリンパスは今では一般的なカメラを作るのをやめてしまったが,内視鏡の分野では世界の売り上げの70%を占める超ガリバー企業である.
ところで気になったのは,東大の「犬」である.フラスコで実験を繰り返したのち,人に使う前には「茶色い毛をした大きな犬」で動物実験が繰り返された.
この犬で実験を行なう様子が何度も描かれるのであるが,この犬は全人類の大恩人(犬)であるにもかかわらず,名前がなく,ずっっと「犬」と書かれている.
「意識がわずかに戻ったのか,犬は薄く目を開けてしばたたいていた.」
「犬は,ふらつく足取りで,作業員にひかれて廊下に出ていった.」
「その瞬間,犬の腹部が円形に光り,消えた」
ああ,名前のない犬よ!!本当にありがとう!! -
Posted by ブクログ
博物館網走監獄で紹介されていたので、手に取った。
明治初期、新政府の敵となった旧幕府軍などの政治犯が全国的に増えており、それらを収容する施設が不足していたので、極寒の北海道に新たな監獄を作るという背景から始まる。
監獄の建設は、赤い囚人服を着た囚人によって原野の森林を伐採し、それを材料にして作られた。
北海道月形という地名は、初代監獄となった月形潔の名前に因む。
樺戸郡月形の監獄は、樺戸監獄として、北海道監獄の中心となる。
その後も、囚人を使った監獄の建設が北海道各地で行われ、空知監獄では三笠で危険な炭鉱作業に従事させて多数の死傷者を出したり、釧路監獄では、アトサヌプリ(硫黄山)で硫黄の採取により失明者を多数出したりした。これらの鉱物を運搬するために鉄道が敷かれ、それは幌内鉄道や釧路鉄道となる。
また、網走から旭川に至る道は、鎖を繋がれた囚人が開いた道であり、工事の過程で亡くなった囚人が葬られている鎖塚が、沿道にひっそりと佇んでいる。
北海道は、広大な風景、美味しい食べ物、全ての体験が魅力的である。しかし、北海道開拓の歴史はこのような囚人の存在があるということを忘れてはならないと思った。 -
Posted by ブクログ
主人公のお名前と私生活以外はすべてドキュメンタリーというちょっと珍しく感じる手法です。戦後の胃カメラ開発実話。胃カメラが最初に日本で開発されたとは知りませんでした。
私の母が子供時代にすでに大人だったひとたちのお仕事。戦後から高度経済成長期にかけての空気感がすっと入ってくる感じ。渋谷、恵比寿、箱根、という馴染みのある土地が登場するせいでもあろうが。
職場で、過去に退職した人々がおいていった本を処分することになって、欲しい本は貰えたのでピックアップしたうちの一冊。吉村昭さんはお名前は存じ上げていたけれど読むのは初めてでした。
一回書いた感想が消えてしまって、書き直ししました。最初よりちょっと冗漫じゃなくなったような気はする。 -
Posted by ブクログ
ネタバレトーク番組で百田尚樹さんが薦めていて読んでみたら冒頭から惹きこまれ一心不乱に読んだ。吉村さんの本は本当に描写力、筆力がすごい。これまで読んだ作家さんで我が本棚に一番多いのは五木寛之さんか吉村昭さん。ただ、五木さんが好きなのは昭和から平成初期まで。今はあんまり…。吉村さん作品は読後感が実にどっしりとしていて読んだ感が濃く深い。
この本、百田さんがオチをしゃべってしまっていたので、それを知らなかったらもっと心躍らせ、没頭し、感動したと思う。百田さんに“喝!”もひとつ、イエローカード、いやレッドカードか。それ(オチ)をいっちゃぁ、おしまいよ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ江戸時代、土佐の船乗りが嵐にあい、無人島に流れ着き生きていくサバイバル小説。
たった4人で、森も川もないため飲み水もない。
もちろん無人島なので人もなく、野菜も果物もなく、生き物らしい生き物は大量のあほう鳥だけ。道具もないので火も立てられない。とても生きていけるとは思えない。
漂流者たちは基本的に皆善人であり、しんどすぎる運命に翻弄される彼らの人生と、その中で僅かに見える希望との落差の連続に泣けてしまった。
驚くべきはこれが実話であること。フィクションならまだもう少し生きられそうなマシな設定にするのではないだろうか。
実話であり、その物語が今読めるということは…是非結末は調べずに読んで欲しい本。(自分は先に結末知ってしまいましたが
ネタバレ少し
最後、島を抜け出すシーンで数年かけて準備しても、船出の方向は神頼みというところに改めて何もないところなのだと声が出た
あと、船出前に次に遭難した人たちのために大事な道具を残していくというところで泣けてしまった