吉村昭のレビュー一覧

  • 関東大震災

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    有名な関東大震災ですが、実際にどうだったのか?というのが克明にわかる小説でした。怖いです。本当に怖いです。よく復興したなあ、と感心するくらい未曾有の災害でした。が、人災の部分も多かったと思います。

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    2022年12月30日
  • 新装版 間宮林蔵

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    間宮林蔵といえば、樺太の地図作った事くらいしか知らなくて、「ひたすら歩いて測量して地図作ってる、クソ地味な男」くらいに思ってたけど、これ読んでほんともうすみません、って思った。
    めっちゃ気合い入ってる漢でした!!
    そーいえば樺太って昔日本領だったもんねーだから地図書いたのね〜とか思ってて、ほんとそれもすみません…。笑
    「江戸の文化」として、ただ人名を丸暗記してただけだけど、江戸後期の異国船対応を迫られた時代や政治の中で彼の人生が動いていくのが、臨場感あっておもしろかったなーー。
    幕末までいかない、揺れ動く江戸後期の話も面白い。

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    2022年12月27日
  • 虹の翼

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    ライト兄弟よりも先に飛行機を考え飛ばそうとしていた日本人がいたとはこれを読むまで知りませんでした。先見の明があったにもかかわらず、理解者を得られず資金もなく、ライト兄弟に先をこされてしまう。こういう人物についてしっかりと光を当てて書いてくれるのが、吉村昭という作家です。

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    2022年12月05日
  • 吉村昭の平家物語

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    祇園精舎の鐘の声諸行無常の響きあり。
    誰もが一度は耳にする平家物語の冒頭であるがその内容は初めて読んだ。
    独特の死生観を持った吉村氏による現代語訳で読みやすかった。

    清盛の横暴、それを諫めバランスを取っていた子重盛。その重盛の死後、一気に破滅へと突き進む平家一族。源平の戦いとその間で激流に巻き込まれる子や女性たち。頼りない法皇。イメージとは違う気性の荒い義経と嫉妬深いが情に厚い頼朝。

    様々な思惑とサムライたちの尊厳が栄枯盛衰の儚さを際立たせている。

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    2022年12月04日
  • 暁の旅人

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    昨日、吉村昭の「暁の旅人」を一気に読みました。
    このテンポの良さは何だろう!
    会話文が極端に少ないせいかもしれません。
    話は幕末時代の幕臣医師・松本良順の生涯です。
    幕府から派遣され、長崎でオランダの医師ポンペから本格的な近代的西洋医術を教わります。
    そのためには当時としては大変珍しい刑死した遺体の解剖までおこなっております。
    その後、幕府の西洋医学所頭取、幕府陸軍軍医なり、
    戊辰戦争となり維新をむかえ、一時投獄されます。
    彼の豊富な医学知識と技術をおしんだ山県有朋らは
    新政府の初代軍医総監としてむかえております。
    この様に書くと彼は英雄の様に思われそうですが、
    吉村の筆は実子を失った不幸、近

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    2022年11月24日
  • 生麦事件(下)

    購入済み

    事実は小説より

    筆者の描く史実は架空の物語をしのぐスリルを与えてくれる。世の中とはこんなに濃密な事実で満ち溢れているのかと。

    #感動する

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    2022年11月23日
  • ポーツマスの旗

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    歴史小説として個人的には満点の作品でした。
    国の尊厳をかけたギリギリの外交交渉。容易に譲れない全権たちが、それでも講和成立に向け妥協点を探りあう。そんな緊迫した様子をまるで同室で見ているような臨場感が、この小説にはありました。小村という人物にも大変興味をもちました。乃木や東郷が英雄ならば小村も同等に英雄なのでは、そう思いました。

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    2022年10月19日
  • 冬の鷹

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    解体新書を上梓した二人の医学者を通して、当時の思想や政治体制を背景に物語が進んでいく。比喩が正しいかわからないが、理系肌で頑固一徹な前野良沢、文系肌でコミュニケーション脳力が高い杉田玄白の生き方のどちらが正しいのか?
    学問を極める事とそれを世に広める事は、同じ人間には出来ないのか?を考えさせられる。
    吉村昭の洞察力の深さを思い知る作品である。
    前野良沢は、吉村昭の生き方に通ずるのだという事が理解できる。
    同じ時代を生きた高山彦九郎を主人公にした『彦九郎山河』を同時に読まれる事をお薦めする。

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    2022年10月12日
  • 冬の鷹

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    江戸時代後期、蘭学隆盛の端緒となった解体新書の翻訳・刊行の中心人物であった前野良沢、杉田玄白の話。技術英語の翻訳に関わることもある仕事柄、読む前から強く興味を惹かれるテーマだったが、未知の蘭語の翻訳の困難に関わる話は、解体新書の刊行に至る物語の中盤よりも前で触れられている。ここをより深く掘り下げて欲しかった気持ちがあることは否めない。しかし、辞書という概念すらほとんど知られていない時代にわずかな手掛かりから原書の記述の意味を探り出そうとする苦労は十分に伝わってきた。

    物語後半は、他者に抜きんでた専門性を持ちつつも学究肌で柔軟性に欠ける良沢と、専門知識には劣るが社会性に秀でて解体新書の刊行をき

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    2022年09月19日
  • ポーツマスの旗

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    作品は、基本的に叙事詩的な文章で書き進められており、淡々と当時の時間の流れと出来事を連ねているが、それがポーツマス条約の緊縛した場面をより強く浮き彫りにしていると思う。困難なポーツマス条約を成立させた優れた外交官、政治家として記憶していた小村であるが、"私"の方はとても陰の部分が濃い人生だったことは、この作品で知った。
    日本が近代国家として名乗りを挙げた日露戦争の勝利の一方、このポーツマス条約が後のさらなる悲惨な戦争の歴史に繋がっていくことを考えると歴史の皮肉さを思う。
    この度のウクライナ戦争もあり、読んでみた一作であった。

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    2022年09月04日
  • 三陸海岸大津波

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    事実が淡々と書かれているところがいい。三陸海岸の自然やそこに住む人々の暮らしが好きって著者が話しているところも好感が持てる。
    チリ地震津波について被害があったことは知っていたけど実際の様子は初めて知った。私自身は自分の地域にも他の地域にも知り合いの古老となる人はいないので、たとえ悲惨なものだったとしても過去にあった体験を教えてもらえる話は有り難い。明治、昭和の三陸地震の住民の声を基に短かめにまとめられていて被害の様相を比べながら読んでいくのにも分かりやすくてよかった。

    嫌な予感がして起きるんだけど「冬の日や晴れてる日は津波はこない」という迷信を信じて、それで安心してもう一度眠りにつく部分もと

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    2022年08月11日
  • 三陸海岸大津波

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    ネタバレ

    本書で特に私の心を掴んだのは昭和8年の津波で家族の全てを失った牧野アイさん(当時尋常6年)の作文である。
    無駄な表現を取り払い、目の前で起きた現象を淡々と描写するその文章は一見すると子供っぽくて単純にうつるかもしれない。だが私はこれこそが本当に美しい文章だと思う。大袈裟なことを言わずとも、牧野さんのような真っ直ぐな言葉で、彼女の悲しさや絶望は十分すぎるほど伝わった。
     私たちは大人になるまでに多くの言葉に触れ、覚え、使う。そしてその過程で何故か必然性のない比喩や誇張をよく用いるようになる。しかし目の前で何が起きているか正確に掴み取り、ありのままに表現することも大切だ。

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    2022年08月10日
  • 空白の戦記

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    3,4回目か。ちょうど、今頃に読むと、先人が悲惨な国情に伴い、命を捧げた時間に少しでも近づけ弔意の首を垂れることが出来たらと。

    7編は長短あれど、重さはいずれ劣らぬ力作、熱く、するフド委痛みで突き刺さってくる。臨場感はとてつもなく、読み手の周囲の時間が停まったかのような想いを抱かせてくれる。

    中身をそらんじられるほどに熟読した「艦首切断」は圧巻。吉村氏のペンはいつもながら、その場に居ないのになぜにこうまでと息をのむ想い。

    下手な戦争追悼番組や政府の域が掛った様な追従モノより、中学生に読んでほしい・・難しくてもこうして日本の軍は新た貴重な命を散らして行ったのだと。

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    2022年08月01日
  • 星への旅

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    【目次】
    鉄橋/少女架刑/透明標本/石の微笑/星への旅/白い道

    【感想】
    『名短篇、ここにあり 』で少女架刑が印象に残った為、購入。
    繊細な言葉選びと著者の死生観が分かる作品が連なった一冊。

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    2022年08月07日
  • 雪の花

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    江戸末期に天然痘の予防に力を尽くした笠原良策医師らを描いた歴史小説。なすすべなく死んでいく人々、なんの根拠もない治療法、祈るしかない厳しい現実。種痘への無理解は、現代のコロナワクチン接種忌避と重なる...(否定も肯定もしませんが)。後世に残したい一冊。

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    2022年07月21日
  • 島抜け

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    吉村昭の短編集。
    短編とは言え読み応えは十分すぎる。

    講釈師の島流から始まる島抜けは、講釈師という職業の凄さを想像させられる。
    思いがけず漂流し異国に流れつき、企てでないにしても嘘に嘘を重ねていくしかなくなる。
    あぁそのまま逃してやって…そう思わずにはいられない作品だった。

    欠けた腕は飢饉に喘ぐ農民夫婦の話。
    四つ足と、そんな言い方していたんだ…
    そんなに不貞腐れるならと意地悪な考えをしたが死んでいるなんて。
    食べるものがない、飢えるとは狂気だと考えさせられた。

    梅の刺青も感慨深い作品。
    献体に供したいと思う事があったが、今では足りており需要と供給が合わないと聞き諦めていた。
    もう一度献

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    2022年06月16日
  • 三陸海岸大津波

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    この地の古今の資料、関連する海外の災害記録、生き残った方々の生の声。
    丁寧に集められ誠実に書いた本書からは、長い間隔をとりながらも繰り返し襲う津波と人知との攻防の様子が迫ってくる。
    本書が世に出たのは、東日本大震災発生の40年も前。これほどの経験をしてきた三陸海岸に、なぜ住み続けるのか?という傍観者の疑問にも、一定の答えを提示してくれている。
    官民一体となって懸命に施してきた対策を易々と凌駕し、数々の漁村を壊滅させた、あの大津波。その後引き起こされた、ある意味人災とも言われている大きな事故。今後も三陸海岸に生きていく人々はどうすれば良いのか?同じ国土に生きる我々は何をしたらよいのか?
    いつ来る

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    2022年06月15日
  • 新装版 白い航跡(上)

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    2022.06.04土屋守氏推薦。薩摩藩が舞台ということもあって興味深い。なぜ、日本の医学界がドイツの流れを汲むのかがやっと理解できた。

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    2022年06月10日
  • 破獄

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    網走監獄で購入し、積読にしていたもの。ゴールデンカムイにハマった流れで読んでみると、みるみるうちに引き込まれた。
    Wikipediaで佐久間(白鳥)を調べても4回脱獄したことしか書かれていないが、本書のおかげで時代背景を事細かに知ることが出来た。まさか戦争真っ只中の出来事だったとは。

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    2023年05月20日
  • 破獄

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    想像していた以上に面白かった。
    最初は4回も脱獄だなんてどうやったのだろうという興味から読んでいたが、それ以外にも背景にあった戦争や食糧不足など当時の生活を沢山知ることが出来て満足だった。
    佐久間は体力も記憶力も計画性もあって、その能力を別のことに使えば良いのにと言うのはすごく思った。
    壁を何も道具なしによじ登れるのは半端ない。
    刑務所で看守は囚人に強く当たっているものだと思っていたが、そんな事はないのだと感じた。
    最後の方の場面の鈴江さんの優しさが身にしみた。
    佐久間が塀の外で亡くなる事ができて良かったなあ。

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    2022年05月11日