吉村昭のレビュー一覧

  • ふぉん・しいほるとの娘(下)

    購入済み

    ゴツゴツとした歯ごたえ

    作家吉村昭のゴツゴツとした歯ごたえが際立つ作品である。司馬遼太郎が時代小説家歴史小説家なら吉村昭は史談 史劇作家 と感じた。想像力の羽ばたきを意図的に抑え、史実に語らせる、という手法がこの作品にも満ちている。そのような手法で描き出される、時代に置き去りにされる老いたシーボルトや、正式な医学を前にして身を引くお稲を感傷を交えずに書き上げている。

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    2023年09月03日
  • 関東大震災

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    今年で関東大震災からちょうど100年。その間にも大きな地震を何度も体験してきた。将来、また大きな地震が起こると言われているが、過去からどれだけのことを学べているのだろう。

    本書は、関東大震災の発生前、発生後の様子、それによって起こったデマ、どさくさ紛れに起きた甘粕事件について、まるで見てきたかのような解像度で描かれている。

    建物の耐震性は向上し、関東大震災のような被害は多少起きにくくなったかもしれないが、津波への対策などまだ課題はある。また集団心理については、あの頃とあまり変わってないのではないかとも思った。

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    2023年08月31日
  • 関東大震災

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    100年前に起きた関東大震災の状況を丹念な取材と著者の筆力で当時の惨状が生々しく再現されています。
    飛んできたトタンで首が切り落とされた話や火災旋風やデマの恐怖などこれから起こると言われている大地震のイメージトレーニングとしても役立ちそうです

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    2023年08月20日
  • 冷い夏、熱い夏

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    ある冷夏の年の8月、主人公の「私」の弟の肺に影がみつかる。残念ながらそれは、悪性腫瘍の中でも特にタチの悪いものであり、1年以上の生存例が皆無であることを、「私」は医師から告げられる。「私」と親族たちは、弟が癌であることを隠しておくことを決める。手術後、弟は一時的に体調を回復させるが、徐々に痛みを訴え、体調を崩していき、再度入院することになる。癌は進行するが、治療する方法はなく、病院での措置は痛みを和らげること、そして、出来るだけ長く生きてもらうことしかない。徐々に身体の自由を失い、痛みが耐えられないものになっていく弟。まさに、闘病である。そして、残念ながら、前年とは打って変わった翌年の猛暑の夏に、弟は息を引き取る。本書は、その間の出来事を綴った長編小説であるが、吉村昭の弟さんは実際に癌で亡くなられており、本作品は一種のノンフィクションと言っても良いものでもある。
    作品の中で、吉村昭は、弟の病状や家族の様子などを、客観的に、淡々と記述している。時に子供時代の弟との思い出を描いたり、自分自身の崩れそうになる感情を書いているが、全体としてはあったことを出来るだけ記録しておこうというような態度をとっているように思える。
    ネットで調べてみると、吉村昭の弟さんが実際に癌で亡くなられたのは1981年の8月、そして、本作品が発表されたのが1984年7月である。その間に3年間の時が経過している。吉村昭がこの体験を小説にするには、3年の歳月が必要だったのだろう。そして、書くことは、弟さんの霊を慰めることであったと同時に、吉村昭自身の魂を鎮めることでもあったのだろうと思う。

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    2023年08月19日
  • 破獄

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    白鳥由栄と思って、読み進めた。
    佐久間の人間性は特異かも知れないが、実はかなり今でも通じる人間の根底にあるものだと思う。
    脱獄させないために手錠足錠をとること人間らしく扱うことが、更正につながる。この考えは、教育界にもつながると思う。

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    2023年08月06日
  • 桜田門外ノ変(下)

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    上巻の途中からはどんどん読める。

    事件そのものの描写は100頁から133頁までしかない。

    事件前後の緊迫した状況が、確かな筆致で描かれている。

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    2023年08月03日
  • 吉村昭の平家物語

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    吉村昭の作品は色々と読んでいるのだが、本作は「異色作」と言えるのかもしれない。が、なかなかに興味深く読んだ。
    本作は「古典文学を現代語訳というようにすることで、少年少女向けとして世に問う」という企画で登場しているのだという。言わば「現代語訳『平家物語』 吉村昭 訳」というような一冊なのだ。
    吉村昭は熱心に取材を重ね、そういう成果を踏まえた、作中世界で流れる時間や景色が強く感じられるような、濃厚で精緻な描写で知られていると思う。本作は必ずしもその「本来のスタイル」ということでもない。「翻訳」なのだ。同時に、伝えられている『平家物語』を詳細に訳出しようというのでもない。好いテンポで、「普通の小説」として読み易いように整理して綴っているのだ。そういうことで、作品の起りは「少年少女向け」ながらも、自身も含めて「嘗ての少年少女」、「少年少女と呼ばれた時期も在った筈」という人が読んでも、「有名な『平家物語』はこういう感じ」と興味深く愉しむことが叶う。
    『平家物語』は、通読したことがなくて―と言うより、個人的には「通読した」という方に出遭った記憶が無い…―も、題名は多くの人に知られ、作中に登場する史上の人物達の一部、描かれる挿話の一部も意外に知られていると思う。そういう訳で、『平家物語』にも言及が在る人物や挿話に題材を求めたような小説も色々と在るとは思う。が、本作はそういうモノとも違う。
    巻末の解説によれば、吉村昭は随分と悩みながら本作を完成させたようである。各作品で吉村昭が示した流儀を半ば封印して綴り続けたのだから、「産みの苦しみ」は大きかったのかもしれない。が、それだけに「『平家物語』とは?」に判り易い回答例を示してくれる一冊に仕上がっている。
    『平家物語』で取上げられる所謂「源平合戦」に関しては、物語と史実との違いが指摘されている事項も色々と見受けられる様子である。が、所謂“琵琶法師”の「弾き語り」という芸能の題材となって伝播し、継承され、時代が下って読物となって伝わっている『平家物語』の内容は、「俗にこういうように信じられている歴史」という観方が出来るかもしれない。それが判り易く整理された本書のようなモノに触れるのは、それ自体に価値が在るかもしれない。
    本作を読んでいて思った。「源平合戦」の時代は「遠い昔」である。が、実に「不透明な時代」で、当時の色々な人達の葛藤のようなモノが渦巻いている。そういう「時代の不透明さ」というような要素は、多分この『平家物語』の「源平合戦」のもっと以前から、現代に至る迄、「各々の時代なりに…」という具合に存在し続けているのではないだろうか。
    『平家物語』の原本のような、所謂“古文”を読むのは敷居が高過ぎるかもしれない。が、本作はその内容を「普通の小説」という感じで知ることが叶う。なかなかに好いと思う。

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    2023年06月27日
  • 桜田門外ノ変(下)

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    桜田門外の変が、現場を指揮した水戸藩士関鉄之助の視点から訥々と語られている。膨大な資料を基に徹底的にリアルに描かれており、読みながら大老井伊直弼は生かしてはおけぬと思わされるほどである。桜田門外での井伊大老の襲撃シーンは、鉄之助の横で観ていたかのような映像記憶が残る。事変後は、鉄之助はじめ関与者の過酷な逃避行には胸が締め付けられた。吉村昭の筆力に感動する。★5つでは足りない。

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    2023年06月16日
  • 新装版 海も暮れきる

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    ネタバレ

    尾崎放哉はじめて知った
    終盤はどんよりしていくが、お遍路さんの訪れや近所の看病してくれるおばさんのことなど、良いこともあり対比が素晴らしかった

    薫さんはなぜ最後の最後に飛んできたんだろう。どういう心境なのか

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    2023年05月06日
  • 新装版 間宮林蔵

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    かなり面白かった。歴史物で文章が頭に入りづらいこともあったが、間宮林蔵と海峡について知識を得ることができ面白かった。

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    2023年04月30日
  • 雪の花

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    福井藩町医だった笠原良策が天然痘の治療法である種痘を日野鼎哉と協力して福井で広める話。福井という土地柄異国の治療法を広めるのに苦労するところは陰湿な土地柄が出ているようだった。五臓六腑は心、肺、肝、腎、脾の五臓と大腸、小腸、胃、胆、三焦、膀胱の六腑の事らしい。

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    2024年11月19日
  • 逃亡

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    「吉村昭」の長編小説『新装版 逃亡』を読みました。

    この季節になると第二次世界大戦に関連する作品を読まなきゃな… という気持ちになるんですよね、、、

    「吉村昭」作品は、昨年10月に読んだ『漂流』以来ですね。

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    戦争に圧しつぶされた人間の苦悩を描いた傑作

    軍用飛行機をバラせ……戦時下の緊迫した海軍航空隊で、若き整備兵が背負った過酷な運命とは?
    初期の力作長篇が待望の再登場
    解説・「杉山隆男」
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    1971年(昭和46年)に発表された作品… 逃げる男の心理を、戦争という暗い存在とともに巧みに描いた傑作でしたね、、、

    当時の風景や雰囲気が、すっと頭に浮かんできて、まるで本当にその場に居るような感覚に陥るほどの、とても丁寧な描写に惹き込まれ、そして、主人公に感情移入しながら読めて愉しめました。


    霞ヶ浦海軍航空隊に所属していた若い整備兵「望月幸司郎」は、外出先から隊に戻る際、上野駅で最終列車に乗り遅れ激しく動揺する… その時、助けてくれたのが「山田」だった、、、

    年長の「山田」に親しみを抱き、信頼を寄せるようになった「望月」に「山田」は航空隊が管理している落下傘を持ち出すよう頼んできた… ためらいながらも「山田」の求めに応じた「望月」だったが、そこから彼の運命は狂い始める。

    そして、落下傘窃盗の発覚を防ぐために「山田」の指示で九七式艦上攻撃機を爆破することに… その犯行が発覚しそうになり、「望月」は軍を脱走して“逃げる立場の人間”へと追い込まれていく。

    「望月」は、東京に出て運送店に勤めるが、顔をさらすことに危険を感じ、軍属として北海道に渡る… 過酷な労働に耐え、再度の逃亡の後、終戦に救われる、、、

    この作品はフィクションなのか、ノンフィクションなのか… どちらとも解釈できるようなミステリアスなプロローグとエピローグが良かったですね。

    でも、ホントに逃げる男の心理の描き方が絶妙でしたね… ひとつの嘘を隠すために、嘘を積み重ねることになり、軍から逃れようとする主人公、、、

    作中、ずっと続く恐怖と緊張感、焦燥、苦悩がリアルに感じられて心がヒリヒリする感じ… 久しぶりの「吉村昭」作品でしたが、面白くて大満足でした。

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    2023年03月19日
  • 海の史劇

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    日露戦争の事は全く無知であったが、この本で旅順戦での乃木将軍の稚拙な作戦行動、バルチック艦隊が喜望峰を迂回して壮絶な大航海の後に日本海に来た事、日本海海戦が僅か2日で決着がついた事などが吉村昭氏の淡々とした書法で書かれており、とても楽しく興味深く、面白く読むことができた。

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    2023年03月13日
  • 三陸海岸大津波

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    昭和45年に、明治以降の、三陸海岸で起きた3回の津波について調査、聞き取りをした記録。
    実際の津波はもっと多く発生しているが、大きかったものが3回らしい。
    犠牲者は明治29年は26360、昭和8年は2995、昭和35年は105名。いろいろ対策をして、犠牲を減らせるようになっている、今後は亡くなる人もいなくなるのではないか、というセリフがある。
    2023年3月に読んでいるので、その予測が裏切られていることがらわかる。
    被害のたびに対策しても、それでも被害があるという事実を忘れずに、自分も準備しようと改めて思った。

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    2023年03月12日
  • 新装版 赤い人

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    明治初期の囚人が北海道に送られて開拓していく。彼らは皆重罪犯だが、時代の転換期だったし本当は悪く無い人もいたんじゃないか…?囚人の扱われ方がとにかく酷くて真冬でも足袋すら支給されない。典獄は上席に足袋などを求めるが、北海道の寒さをわかっていないのか、却下される。で、支給されない。日本らしい縦割りだなぁ。作業効率を考えて自腹で勝手に支給してもバレなそうだけど。典獄は桁違いにお給料もらってたみたいだし。そんな感じで囚人は安い労働力としてこき使われバタバタと死んでいく。脱走する人も続出し、逃げきれず死んだり、看守に殺されたりする。海外を視察した偉い人によってこの待遇はあり得ない。という風潮が流れ、明治後期か?監獄自体廃止される。生き残った人もいるらしい。人権とは、を考えさせられる。

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    2023年02月21日
  • 三陸海岸大津波

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    すごい記録!
    この本が出版されたのは、2004年。2011年6月に12刷。
    津波がどんなふうに襲ってくるのか、映像も写真もない、文章だけの表現は本当にこわい。当時の教職員が熱い思いで児童生徒に記録させているのも、それを紹介してるのも、凄いとしかいいようがない!

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    2023年02月10日
  • 蚤と爆弾

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    731部隊の歴史的史実の小説でここ迄赤裸々に内容を知ってしまった事実が爆弾級でした。
    曾根二郎と言う天才細菌学者が作り出す戦争兵器…
    正義とは何か,各々にどう解釈する事が出来るか問われる1冊でした。

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    2023年02月04日
  • 新装版 海も暮れきる

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    口語自由俳律で知られる尾崎放哉。その小豆島での最期の8カ月を描いた作品。享年41。
    酒乱で酒を飲めば攻撃的になる。人の施しによってしか生きられない。どうしようもない人間だと思うのだが、「結核」を病み、家族から疎んじられ、長くは生きられないと悟ると、そうなるのかもしれない。もっと句を詠みたかっただろうし。

    没後、放哉の師にあたる井泉水が「捨てて捨てきつて、かうした句境にはいつてきた」「大自然と同化していた」と表現したそうだ。俳人として名を残すには、この捨てきった8カ月が大切だったのかもしれない。

     はるの山のうしろからけむりが出だした

    春の訪れを誰よりも待っていた放哉だったのに。

    吉村昭氏は、やはり島に渡って、徹底した取材をされたのだろう。8月の蝉の声、島では咲かない梅や桃の花のこと、島の季節が細部にまでわたって描かれている。

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    2023年01月24日
  • 星への旅

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    人の心の動きと体の動きはどちらも不可解なんだけれど、どちらも鮮やかに描写されて息の止まるような瞬間だった。

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    2023年01月14日
  • 戦艦武蔵

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    戦艦武蔵が建造されてから沈むまで。
    見つからないように隠して建造するのは大変だし設計図の管理も厳重。
    大変な思いをしてできた船が沈むのは悲しいですね。
    その戦闘シーンも生々しくて実際にその場にいるような感覚にとらわれました。
    とにかく読みごたえがあり読みだしたら止まりません!

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    2023年01月07日