日露戦争終結に向け、小村寿太郎はポーツマス講和会議に臨みます。
講話を成立させるために、ロシア側全権ウイッテとの交渉、駆け引きの末に劇的な講和を成立させます。
日本人は交渉下手とよくいわれますが、小村寿太郎の交渉をみると、決してそうとはいえません。
国民の憤懣を呼びますが、日本のために、平和のために
...続きを読む、名利を求めず交渉妥結に生命をかけた外相小村寿太郎の物語です。
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小村は、欧米殊にヨーロッパ各国の外交に長い歴史の重みを感じていた。国境を接するそれらの国々では、常に外交は戦争と表裏一体の関係にある。外交が戦争の回避に功を奏したこともあれば、逆に多くの人々に血を流させたことも数知れない。そのようなことをくりかえしている間に、外交は、攻めと守りの術を巧妙に駆使し、自国の利益を守るため他国との間でむすばれた約束事を一方的に廃棄することすらある。 そうした多様な欧米列強の外交政策に対して、日本の外交姿勢はどのようなものであるべきかを小村は常に考えつづけてきた。結論は、一つしかなかった。歴史の浅い日本の外交は、誠実さを基本方針として貫くことだ、と思っていた。列強の外交関係者からは愚直と蔑称されても、それを唯一の武器とする以外に対抗できる手段はなさそうだった。 ー 228ページ