吉村昭のレビュー一覧

  • 桜田門外ノ変(下)
    ☆☆☆2020年5月レビュー☆☆☆



    非常に緊迫感の伝わってくる内容だった。
    桜田門外の変、歴史を揺るがしたその時間が遂に起きる。
    雪の中を、井伊直弼の行列に迫る水戸藩士たち。
    P70~120ぐらいの、決行決定から井伊を斃すまでの展開は、本当に手に汗握る。自分がその場にいるような感覚に陥る。

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  • 桜田門外ノ変(上)
    ☆☆☆2020年5月レビュー☆☆☆



    桜田門外の変にいたる時代背景や、政治力学に焦点をあてた上巻。圧巻の下巻へとつながる足掛かりだ。
    水戸藩の守旧派である谷田部兄弟の捕縛から物語は始まる。
    急進派、関鉄之助を中心にこの物語は描かれる。


    藩主・斉昭の盛衰から、ペリー来航、井伊直弼の登場と、この...続きを読む
  • 破獄
    1935年準強盗致死罪で無期懲役となった佐久間は、なんと4回も脱獄した。実在した脱獄王をモデルにした小説。

    物凄く面白かった。脱獄そのものだけじゃなく、戦前から戦後までの世相や、食糧事情、米軍指導下で進む行政などの「歴史」がとても興味深い。
  • 生麦事件(上)
    生麦事件が起こった,としか日本史では習わないが,この事件こそが近代日本になるべく薩摩藩を押し進めた最大の要因とも言える一大事であり,あまりに面白く,手に汗握る展開で2冊を一気に読み終えてしまう.
  • 魚影の群れ

    さすがだ

    淡々と事実だけを追った筆致だからこそ人間の深い哀しい業を感じる。これだけ読み手を惹きつける文章力はすごいと思う。最近の添加物だらけの文章を書く作家の方に一度是非読んで欲しい。偉そうにすみません。
  • 三陸海岸大津波
    著者は1971年に聞き取り調査を行い、2004年に第一版を出版し、次の世代に危険を警告している。後世に伝え、二度と同じような失敗をしてはいけないと思う。この本は教訓として読んでほしい一冊である。
    福島第一原発は1959年に現地視察をおこなっている。もしこの調査時に著者と同様に過去起こった事実に耳をか...続きを読む
  • 羆嵐

    銀四郎おやじ

    三毛別のヒグマ襲撃事件の事はテレビやウィキペディアで知り、興味を持ったのでこの本を読んでみた。他のレビューにもあるとうり、確かにヒグマ怖えなあと思ったけれど、その怖さは他のメディアで見聞きしたときの方が怖かった。それはこの本がヒグマの怖さを誇張することなく表現しているからだと思う。そこに住む人々の暮...続きを読む
  • 海の史劇

    海の史劇について

    私は戦史 軍艦 艦船模型が好きで、もう長いことやっています。この本は吉村昭の代表作の1冊です。「戦艦武蔵」も読みました。
    吉村さんの知識には脱帽です。まだ半分も読んでいませんが、楽しく読んでいます。日本海海戦での日露の戦い、内容は知ってるが読みやすいです。
  • 長英逃亡(下)
    上巻に引き続き高野長英の逃避行。発覚した場合自分の家が没落するという大きな危険を孕みながらもこれだけの人々にゆく先々で助けられる姿や、薩摩藩・宇和島藩等までも協力する様子を見て高野長英という男が只者ではないことを再認識させられた。先見の明があり、学のあるものはどの時代も国からは恐れられる存在である。...続きを読む
  • 長英逃亡(上)
    現代に比べてSNSやインターネットなどの情報拡散ツールが圧倒的に少ないのに、各藩の村人たちの結束力や幕府の徹底した捜索により現代より遥かに逃げ延びるのが困難な世界で行く先々で多くの人に協力してもらいながら間一髪で逃げ延びる高野長英。
    歴史の授業では「蛮社の獄で捕らえられたが牢屋に放火して脱獄、後に捕...続きを読む
  • 仮釈放
    最初から最後まで、なんとも言えない鬱々とした気分で、読み進みました。どうなるんだろう、どうなるんだろうとドキドキします。仮釈放された主人公の不安がヒシヒシと伝わってきます。私自身、主人公とは少し違いますが若い頃、夜逃げの経験があり、世間の目を気にしながら生きていた時期があり胸が痛みました。人間の心の...続きを読む
  • ふぉん・しいほるとの娘(下)
    シーボルトが長崎出島で、遊女のお滝との間にお稲という子をもうけ、その子の話。
    シーボルトが鳴滝館で、外科を中心に医学を教えたこと、オランダ政府の命で、生徒を使い、日本の地理、学術等を調べたこと、シーボルトが江戸に呼ばれた際には更に詳しい情報を入手したことなど、知らなかったことばかり。
    シーボルトは、...続きを読む
  • 大本営が震えた日
    「開戦」という、絶対的な時間指定がある巨大プロジェクトを進めるために、広大な領域に広がる巨大な組織の隅々に機密情報を行き渡らせるのは困難な課題だが、いくつか失敗はあったものの我が国がそういった力を持っていたのは、いまだに陰に埋もれたままの無数の英雄がいたからなのだろう。
  • 虹の翼
    文明開化の波が到来した明治期の日本で、時代の先端を行く飛行器の原理を独力で探求し、実現まで残すは動力の問題というところまで辿り着いた二宮忠八の話。

    飛行器の研究開発を提案した上申書が陸軍に却下されなければ、ライト兄弟に先駆けて空を飛ぶことができたのか、想像は尽きない。ただ、もし研究開発を続けていれ...続きを読む
  • 漂流

    「創作する遺伝子」小島秀夫推薦

    断崖絶壁の木も生えない火山島で12年余りを過ごし、無事生還した人の記録を掘り起こした素晴らしい作品です。火打ち石が無く、火も起こせない、穀物も植物も取れない、ナイナイづくしの中で生きるすべを編み出し、一人になっても生きる気力を保つ前半部と、後半の帰還への努力と苦悩が深く胸を打ちます。色々なものがあり...続きを読む
  • ポーツマスの旗
    日露戦争終結に向け、小村寿太郎はポーツマス講和会議に臨みます。
    講話を成立させるために、ロシア側全権ウイッテとの交渉、駆け引きの末に劇的な講和を成立させます。
    日本人は交渉下手とよくいわれますが、小村寿太郎の交渉をみると、決してそうとはいえません。
    国民の憤懣を呼びますが、日本のために、平和のために...続きを読む
  • 夜明けの雷鳴 医師 高松凌雲
    19世紀のパリ万博に派遣された医師、高松凌雲
    オランダで海軍学を学び帰還した榎本武揚
    英国に留学し、その後開拓使に働いた村橋久成
    新政府軍を指揮した黒田清隆

    明治期の激動の時代を生きた人々のものがたり
  • 虹の翼
    ライト兄弟が、世界で初めて飛行機を飛ばした十数年前の明治期の日本。
    そこに、"飛行器"研究に生命を賭けた男がいた。
    男の名は、二宮忠八。
    ひたすらに、空を飛ぶことに憧れ、懸命に駆け抜けた人生。
    自分が夢見た、空飛ぶ器械。
    忠八が今の時代に生きていたら、どんなことを思うのだろうか。
  • 冬の鷹
    オランダ語で書かれた『ターヘル・アナトミア』を翻訳した前野良沢・杉田玄白、彼らの作業過程とその後の人生を詳細に描き出した作品。
    教科書などでは、この二人がほぼ同列の訳者として記載されているけれど、事実は前野良沢が苦心して翻訳したものを、杉田玄白が整理し文献の形に整えたという風に役割分担がなされていた...続きを読む
  • 戦艦武蔵
    とてつもない、とほうもない、徒労。
    人と、資源と、資材と、時間の、なんという無駄遣い、なんだろう。
    人間て、こんなことが出来ちゃうんだ。。。
    人々のエネルギーに、圧倒された。