吉村昭のレビュー一覧

  • 漂流

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    作品は素晴らしい!人間って、ここまでできるのか…と圧倒され、胸を打たれた。
    ただし――おい、新潮文庫!事実に基づくドキュメンタリー小説とはいえ、背表紙のあらすじで全部ネタバレするのはやめてくれ。たしかに、生還したからこそ話が伝わってるわけだけど、そこは読者の想像に委ねてくれよ…
    と言うわけで、これから読む人は、カバーでもつけて、背表紙は見ずに読み進めることをオススメします。

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    2025年06月27日
  • 高熱隧道

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    人間の侵入を拒んできた黒部峡谷に、ダムを建設するために、人間が自然に立ち向かう話である。また同時に、隧道を作るという強い意志を持った技術者と、高い賃金のために命の危険を省みず働く人夫の話でもある。黒部宇奈月キャニオンルートのツアーに参加して、その歴史を肌で実感したい。

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    2025年06月27日
  • 破船

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    ぬるい個人主義に浸かりながら、それでも不平不満を言って暮らしている自分の頬を打たれたような。
    共同体が優先順位が一番高く、個人の幸せなどそんな概念がない。
    誰かのわがままや判断ミスで、共同体自体の存続を危うくするからだ。
    僅か数世代前まで、私たちの先祖はこんな暮らしをしていたのだのだと、おそらく昭和初期の地方はまだその記憶を持っていただろうと思う。
    生きるために、村ぐるみの犯罪に手を染める。
    おそらく、本当にそういうことはあっただろうと思う。
    因果応報とかそんな簡単な話ではなく、それがなければ人を売るしかない、そんなギリギリの暮らし。
    方言や感情の共感など一切排除された厳しい文体なのに、一気に

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    2025年06月22日
  • 破船

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    小説にこんなに引き込まれるのはいつぶりかってくらい、すごい文章だった。
    作物もろくに育たない厳しい環境で、たった十七戸で身を寄せ合い破船がもたらす恵を待ち望む小さな漁村の密かな風習と事件。身を切るような貧しさが、鮮やかに心に斬り込んでくるようだった。

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    2025年06月19日
  • 新装版 白い航跡(下)

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    またも面白くて一気読み。
    脚気予防には海軍医高木兼寛が推奨する麦食、陸軍医と帝国大学医学部が推奨する米食の戦いが下巻の主なストーリー。
    麦食にして脚気病者をほぼ皆無にした海軍実績があるのに、ドイツ医学を重んじるあまり大量の病死者を出し続けてる陸軍に腹立たしくなった。その意地に犠牲となった兵士が気の毒でならない。
    高木兼寛の晩年は呪われてるのかと思うほど悲しい。

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    2025年06月08日
  • 新装版 白い航跡(上)

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    主人公の高木兼寛。
    幸運もあったと思うが優秀で、立身出世の展開が面白く短時間で読み終えた。
    明治維新で世の中の常識、様式がガラッと変わり、それは多方面で衝突も多かっただろうと思う。
    藩政政治が終わり、身分関係なく優秀な者が台頭できるようになったのは素晴らしい、今の日本の政治もガラッと変わればいいのにと思う。
    下巻が楽しみだ

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    2025年05月26日
  • 破船

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    ネタバレ

    現代の価値観からすると、

    どうして貧しい村を離れ、たとえば皆が身売りする豊かな隣町へ引っ越さないんだろう?
    なぜ口減らしを考えながらも子どもを産むんだろう?
    祈祷するとか火を焚く以外に、むしろもっと積極的にお船さまを狙ってみては?
    お船さまが来たら船を解体せずそれに乗って航海に出かけられないものだろうか?
    村おさの言葉を誰彼疑いなく信じてしまうのはなぜ?

    などと色々考えてしまうんだが、それは自分が厳しい暮らしを強いられたことのない現代人だからだろう。
    毎日の食事にも事欠く日々を送っていたら、現状を変える気力もないだろうし。
    第一ご先祖さまや死者の魂をつなぎ、村を存続させていくことが、彼らの

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    2025年05月25日
  • 漂流

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    実話を基にしているとのことで、主人公の生き方も興味深いが、読みものとしても飄々とした文体でとても面白い。

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    2025年05月21日
  • 破獄

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    首都圏を環状に回る武蔵野線。始発を出て次の駅。府中街道を北へと歩けば、高く聳える壁が右手に見える。その向こうで、かつての脱獄王が懲役を果たした。青森、秋田、網走、札幌と、手錠足枷もろともせず、難攻不落の獄舎を抜け出した。中にいれば食いはぐれはない。外に出れば、食うにも困る。雨風凌げる屋根も壁もない。猛獣も棲息する地域。襲われる恐怖。それでも、逃げることに執念を燃やした。何を思い、何故最後は止めたのか?戦前から戦中、戦後へと、受刑する側もさせる側も、時代に翻弄されながら、厳しさから暖かさへと変わって行った。

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    2025年04月23日
  • 仮釈放

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    ネタバレ

    ・あらすじ
    浮気した妻を刺殺し、間男を刺し、男の実家に放火しその母親を焼死させた罪で無期懲役の判決を受け服役中の菊谷史郎。
    25年後に仮釈放され、保護司の指導や援助のもと就職をし、貧しいながらも自立して生活できるようになっていた。
    傍目には更生したように見える菊谷だが、25年間の服役生活を送っても心中では未だ己の行為に対して後悔の念は持っていなかった。
    そんな男の逃げきれない運命の話。

    ・感想
    えっ……つらっ。
    読んで2日ほど経ってるけどまだちょっと引きずってるし、表紙見るだけで陰鬱になる。

    吉村先生の作品はこれで6作目なんだけど、今まで読んだ本の中で1番精神を抉られた。
    ずーーーっと陰鬱

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    2025年04月02日
  • 大黒屋光太夫(上)

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    ジョン万次郎のロシア版、といった思いで半ばまで読んでいた。しかし状況は全く異なりらロシア政府の思惑が見え恐ろしい流れに。今の北朝鮮の拉致とも似ている感じもする。
    すぐ下巻を手に取りたくなる一冊です。

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    2025年03月18日
  • 漂流

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    すごくよかった。
    長平が冷静に自分を律して周りを見て考えているからこそ生き延びることができてと思う。

    島と鳥をよく読み間違えてた自分に歳を感じた

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    2025年03月15日
  • 漂流

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    感動です。驚きです。これが江戸時代に本当にあった話とは。物語りは漂流から無人島での苦闘、孤独、帰還と息をつかせません。没頭して一気読みでした。自然しかない中で人間は本当に無力。それなのに、私には無理でしょうが人間はここまで頑張れる。素晴らしい本でした。

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    2025年03月15日
  • 破獄

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    吉村昭さんの小説は本当にハズレがありません。
    綿密な取材や時代考証を経て作り上げられる作品は完全なるノンフィクションと信じて疑わないようなリアリティがあり、そして人間味がありありと描かれています。

    本作の中心人物、佐久間の終始漂う不気味さと、その奥には必ず秘めたる真髄があることをしっかり印象付けて400ページを超える間、まったく飽きさせず、最後に急展開を見せる。
    出来すぎた物語ですが嘘くささを感じさせない。

    この上ない満足度を味わさてくれる吉村作品です。

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    2025年03月10日
  • 破船

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    すごい本でした。柚月裕子さんが手元に置いている本ということで購入しましたが一気に読まされました。少し古い本ですが、客観的でテンポ感のある無駄のない文章がとても読みやすく、感情に流されない描写は小さな貧しい漁村の風景や人々の生活を目の前に甦らせてくれました。流行りの軽いストーリーの本で時間を潰すのも良いですが、このような重厚感のある内容の本は読書をしたという充実感を与えてくれると思いました。しばらく余韻に浸りたいと思います。

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    2025年02月24日
  • 三陸海岸大津波

    購入済み

    教訓

    「天災は忘れた頃にやって来る」という言葉がありますが、私も含めて今住んでいる場所にかつてどのような災害が有ったのかを調べて準備していた方は多くなかったのでは無いかと思います。自らの身に降りかからなければ、実感することは出来なかった多くの事。幾度となく繰り返される災害に対し先人は伝えようと石碑等を残していましたが、時が立つにつれてそれを意識する人は少なくなりまた多くの人が同じ様に被害を被る。とても残念なことです。現代は過去よりも映像等も含めて伝えていくことが容易になっているかと思いますが、それをどの様に受け止めて備え、起こった時にどの様な行動をするかで運命が分かれるのではないかと。

    #タメになる

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    2025年02月24日
  • 高熱隧道

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    黒部第三発電所につながるトンネル(隧道)は岩盤温度165度!
    当時のダイナマイト自然発火温度を50度以上超でもお咎めなし(戦時体制下にあり電力確保は国家命題)の異常な大土木工事を描く。着工から完工までたったの4年間!そりゃ犠牲者は300名以上でますわな。。

    ドキュメンタリーの体裁をとっているが、筆者の卓越した筆力により一気に読ませる。前半と後半で技術者たちを悩ませる内容に大きな変化があるのも魅力のひとつ。

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    2025年02月23日
  • 大本営が震えた日

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    太平洋戦争開戦の時の危機的状況を伝えるドキュメンタリー。上海号墜落、そこには米英蘭を敵に回す軍事作戦の暗号書が持ち込まれていた。電送だけでなく、文書による直接伝達を必須とした日本軍の愚かしさを感じる。真珠湾攻撃に至る場面では、日本の攻撃艦船部隊の隠密行動はほぼ成功していたことが分かった。しかし、宣戦布告の暗号文は米国にいち早く解読されていた。南方戦線での日本軍の先制攻撃を想定した米国は、結果として真珠湾を見殺しにし、「リメンバー・パールハーバー」がプロパガンダとして利用されることを許すことになったのだなぁ。

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    2025年02月22日
  • 少女架刑 吉村昭自選初期短篇集I

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    歴史小説のイメージが強い著者だったが初期にはこのような作品も出されていたのだなと発見。
    初出はいずれも昭和30年前後。7つの「死」の形が、当時の社会的な背景をベースに色濃く描かれている。一言一句が吟味、洗練され、過不足ない文章が心地いい。「服喪の夏」「星と葬列」が好きだった。いずれもまたじっくり読み返したい作品。

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    2025年02月17日
  • 雪の花

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    一生涯を種痘に賭けた一人の町医者。天然痘の流行の前に無力な福井藩の町医者、笠原良策。種痘の存在を知り長崎や京で学び故郷で予防治療に当たるのだが。
    映画化を機会に読んでみた感動作。余計な装飾がなく話のテンポが早いのが良い。
    吉村昭の医学もののジャンルも面白い。書籍、読書習慣が廃れていく中、今でも人気の衰えない稀有な作家。

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    2025年01月27日