吉村昭のレビュー一覧

  • 虹の翼

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    明治時代から日清・日露戦争の中、飛行〝器″を発明した天才 二宮忠八の苦難に満ちた人生の記録。そして、航空史も学べる。絶対に傑作です。

    名作「漂流」の心理描写、代表作「戦艦武蔵」の歴史記録小説の間をとったバランスが絶妙。

    貧乏ながら、企業家・ビジネスマンとしても一流で、画期的な発明家である、このような鬼才を登用できなかったこの国とは。

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    2018年09月11日
  • 魚影の群れ

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    「海の鼠」「蝸牛」「鵜」「魚影の群れ」の4篇の短篇集。

    実話に基づくらしい。
    筆者の綿密な取材により、ありありとその世界が伝わる。

    中でも、大量発生する鼠に苦慮する島の顛末を描いた「海の鼠」。自然現象にいかに人は無力か。島民の悲哀。そして、「鼠駆除」がもたらしたもの…。氏の筆致が秀逸。

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    2018年08月07日
  • 冬の鷹

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    『解体新書』といえば、杉田玄白。
    しかし、前野良沢という名前を聞いたことがある人は、少ないのではないか。
    自分もその1人だった。
    陽の杉田玄白と陰の前野良沢。
    このふたりがいたからこそ、『解体新書』が生まれた。
    それならば、何故、前野良沢は『解体新書』に名を残さなかったのか。
    頑固で潔癖なる性格ゆえか。
    頑固で潔癖。
    これが、良沢の人生を表している。
    オランダ語に人生を捧げた前野良沢と名声を得るために人生を捧げた杉田玄白の対比が如実に現れている。

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    2018年07月21日
  • 星への旅

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    「鉄橋」「少女架刑」「透明標本」「石の微笑」「星への旅」「白い道」の六篇。
    吉村昭氏の初期作品。「死」が色濃く表れている。
    表題作「星への旅」。名状しがたい読後感。

    個人的には、「少女架刑」「透明標本」が印象的。ある意味。対のようになっている。
    「少女架刑」は、吉村昭氏には珍しい、「私」という一人称の語り。また、物語る「少女」の視点も不思議で。そして、怖い。

    収録されている6つの短篇の登場人物たちは、“星への旅”になっていくのだろう。
    “星への旅”という言葉の響きは綺麗だが、表題作の「星への旅」は、テーマが重い。

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    2018年06月30日
  • 仮釈放

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    己の犯した罪に悔いは無いと思っている男。
    その男が、仮釈放で世に出てきたらどうなるのか。
    暖かい目で迎えられながらも、心の底では冷めた己がいる。
    男は、何を悔い、どう改悛すればいいのか分からないまま時だけが過ぎていく。
    己の犯した罪の大きさと己の心情の狭間で揺れ動くさまを吉村昭の大胆で繊細な筆致で重厚に描いていく。
    これは、間違いなく大名作である。

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    2018年06月27日
  • 新装版 赤い人

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    北海道開拓史の暗部。
    囚人による苛酷な強制労働の上に成り立つ。北海道開拓の一端を囚人達が担っていた。しかし、囚人達は国益のために使い捨ての労力として扱われていた。
    樺戸集治監の盛衰物語とも言える。
    ほんの少し昔の日本の暗部であり、史実でもある。
    それを多くの資料から掘り起こし、淡々とした筆致で描きる吉村昭氏。すごい。

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    2018年06月08日
  • 海の史劇

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    日本海海戦を描いた吉村昭の記録文学の傑作。

    日本海海戦と言えば司馬遼太郎の傑作小説「坂の上の雲」のクライマックスシーンとして有名である。
    私も手に汗握りながらあのシーンを読んだものである。
    それ以来日本海海戦には関心を抱いていたが、他にも同じテーマを扱った作品で良いものがあると聞いて本書にたどり着いた。

    非常に緻密な調査の上に成り立っている作品と感じた。
    これを読んでしまうと司馬さんの作品は、彼の評価している人物とそうでない人物の書き分けが極端で、小説としては面白くなるのだろうが、現実とは乖離してしまうの
    だろうなと思ってしまう。


    日本海海戦とは日本史だけではなく世界の海戦史においても

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    2018年05月04日
  • 新装版 間宮林蔵

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    間宮林蔵といえば、江戸時代、樺太を調査し、世界で初めて樺太が島であることを発見。その功績で「間宮海峡」という地名を後世に残した。というのが、教科書的説明。本小説でも、林蔵の樺太探検は詳細に描かれ、当時の乏しい装備で死を覚悟して赴く林蔵の覚悟が伝わってくる。

    しかし、間宮林蔵がアドベンチャーというのは彼の一面に過ぎない。彼の人生の真骨頂は樺太探検後、豊富な地理の知識と行動力が認められ、スパイや政治アドバイザーとして幕府に貢献したことだ。

    何よりも、林蔵は正義を重んじる。若き頃、日本領土にロシア人が侵入したとき、徹底抗戦を主張する。樺太探検のために異国のユーラシア大陸にまで足を踏み入れてしまっ

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    2018年05月11日
  • 逃亡

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    人間の弱さ、そして、作中ずっと続く、主人公が体験する恐怖と緊張感を、自分も味わう。

    太平洋戦争末期、主人公が犯したある犯罪が引き金となり…。

    一気に読んだ。

    終戦前後の空気感も背景として描かれている。

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    2018年04月24日
  • 冷い夏、熱い夏

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    作者と弟の熱い結びつきに心の底から熱いものが込み上げてきた。
    徐々に弟の体を蝕んでいく癌細胞。
    実際に体験した作者でないと描けない緊迫感。
    吉村昭は、弟の死をどう見つめたのか。
    魂を揺さぶられる傑作。

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    2018年04月02日
  • 敵討

    購入済み

    作品自体に不服はないが

    ふりがなが少ないので、なんて読むのかわからない人名がいっぱい出てきた。

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    2018年03月05日
  • 羆嵐

    ネタバレ 購入済み

    開拓地での惨劇

    入植間もない集落が、文字通り羆の餌食になった事件を扱っている。
    厳しい気候のもと農作物を育て、農閑期には出稼ぎをする。貧しさに耐えながら必死に生きようとする人々。
    集落の人達はもちろん、隣接集落の人達も羆のことを詳しく知らない。
    これは意外なことだった。


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    2018年02月14日
  • 零式戦闘機

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    吉村昭が書いた歴史文学の傑作の一つ。

    ゼロ戦(零式戦闘機)の誕生からその最後までを綴ることにより、太平洋戦争を描き出した傑作小説。
    恥ずかしい話だが、戦争末期のゼロ戦が無残に米軍の戦闘機や対空砲火に撃ち落とされていくイメージが強く、ゼロ戦もまた世界の水準に到達しえない兵器であり、そんな兵器で戦わされた将兵の悲哀のみ感じていた。

    しかし、この本で描かれていたゼロ戦は、私の思っていたものと全く違っていた。
    相反する要素を含んだ厳しい戦闘機の仕様に技術者堀越二郎が心血を注いで答えた結果生み出された航空機は、当時類を見ない長大な航続距離と速度そして優れた格闘戦能力を持った世界最強の戦闘機であった。

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    2018年01月13日
  • 東京の下町

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    吉村昭の、子供の頃のエッセイが好きで購入。何度か読んだことのあるエピソードもあるんだけど、何度だって読みたい。

    淡白な文章はエッセイでも同じで、だからこそ、急に遠くに去る光景や人々の背を追ってしまう気持ちになる。戦争の波、白黒でしか頭に浮かんでいなかった少女に突然色がのる瞬間。つい自分も少年吉村昭になって息をつめていたり。

    当時の日常の資料としてもいいとのことだが、もう遠くに去ってしまった日々を思うのも、生きることを振り返るためにはいいかもしれない。

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    2018年01月02日
  • 仮釈放

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    吉村昭による立派な仮釈放された人物かいる。
    ノンフィクションが多い吉村昭にしては珍しいフィクションだが、ノンフィクションのように仮釈放と言うなかで生きる菊谷がいる。
    無期懲役から仮釈放され、長期刑が染み付いた人の考え方心情、変わり行く時代はとてもリアル。
    菊谷が慎ましく生きささやかな幸せわ感じて行くステップの一つにまた悲劇があり、上手くいかないもどかしさを感じた作品。

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    2018年01月01日
  • 新装版 赤い人

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    明治期の北海道開拓には、樺戸集治監をはじめとする囚人たちの労働が大きな役割を果たしていた、というお話。囚人vs看守の緊迫した攻防はドキドキする。
    罪を犯して北海道におくりこまれるならともかく、囚人監視のために未開の地に送り込まれた看守の方がよっぽどお気の毒…という気がする…。
    冬の間に雪の上に囚人が埋葬されていくさまが、アンデス山中の飛行機事故で生き延びた「生きてこそ」を思い出して怖かった…

    ゴールデンカムイの元ネタのような話がいっぱい出てきて面白い。慶さんとか長庵とか四郎助とか。

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    2017年12月03日
  • 海の史劇

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    日露戦争の、その始まりと終わって講和を結び、その後の日本の行く先が見えるようなところまでが描かれていた。
    もう途中、ロシア艦隊がつらすぎてつらすぎて、暑さに喘ぐロシアの兵と同じようにして、私も帰りたくなりました。イギリスや日本の外交、怖い。文章が淡白だから、想像が膨らんで余計に寒気がする。

    でも一番鳥肌ものだったのは、小村寿太郎の講和を結ぶまでの場面。
    この悲壮感。教科書にこの背景くらい書いた方がいいんじゃないのと思う。急に日比谷焼き討ち来るから単純すぎて。書かないのはあれかな、戦争は軍部が仕込んだものだと言いたいからなのかな。

    吉村昭は大衆の熱量と戦争のつながりを特に注視しているのだけれ

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    2017年10月08日
  • 夜明けの雷鳴 医師 高松凌雲

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    幕府への忠義も素晴らしいが、箱館戦争で幕府軍、官軍分け隔てなく負傷者の治療にあたった博愛の精神は学ぶべきところが多い。想像するに、西郷隆盛が座右の銘としていた「敬天愛人」は凌雲の姿勢に影響されたのではないか?そもそも凌雲を取り巻くキーパーソンが凄い。渋沢栄一、榎本武揚、徳川慶喜。考えてみたら奇跡としか言いようがない。

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    2017年09月25日
  • 海軍乙事件

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     氏の小説は記録小説というジャンルらしい。本書創作のための氏の調査から、歴史の新事実が発見され、ほぼほぼ解を見たというのがまず感動した。短い小説ではあるが、凝縮された情報に基づくことを想像しつつ読み進めた。

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    2017年09月16日
  • 新装版 落日の宴 勘定奉行川路聖謨(下)

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    川路は毎日ランニングをしていたこともあって、身体が頑健であった。そのために58歳で隠居しようと思ったのに止められてしまう。幕末、川路は自分たち一派の推す一橋慶喜が将軍になれず、井伊直弼らの推す一派が政治的に勝利したおかげで不遇をかこつ。また私生活でも残念なことなどもあり、井伊らが大老になるまでの成功した人生からは哀しい状態となってしまう。最後を考えると、勝海舟のように幕府ではなく、もっと国そのものを考えても良かったのではと思ってしまう。

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    2017年09月07日